前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

知的巨人の百歳学(122)-「地産地消のチャンピオン/真珠王・御木本幸吉(96歳)の創造力こそ長寿力なり」②「資源もない」「金もない」「情報もない」「技術もない」ないないづくしの日本で御木本はモノづくりで外貨を稼ぐ「貿易、技術立国」目指して、独力で真珠養殖に成功した』

   

知的巨人の百歳学(122)-「真珠王・御木本幸吉(96歳)の長寿、健康訓」②

 

志摩国鳥羽(三重県)の神明湾の養殖場で、 御木本幸吉(36歳)、うめ(29歳)夫婦は人工真珠の種を埋め込んだアコヤ貝を開けていた。莫大な借金をつぎ込み「狂っている?」「大法螺吹きや!」と 周囲から疎んじられながら、徒手空拳で真珠の人工養殖に取組んできて、早や5年がたつ。

来る日も来る日も何百というアコヤ貝を開くが、一向に変化はない。明治26年(1893)7月11日、妻うめが相島(現在の真珠島)の養殖場でいつものように開けた貝の中にピンクに輝くものがあった。驚いたうめは大声で幸吉を呼んで確認すると、紛れもない半円形の5ミリほどの真珠ができていた。人工真珠を世界で初めてできた瞬間である。

「その時歴史が動いた」風に言えば、105年前のこの明治26年(1893)7月11日こそ、わが国ではじめて世界的なベンチャービジネスが誕生した歴史的な日なのである。

御木本幸吉は安政5年(1858)年1月に 志摩国鳥羽(三重県)でうどん屋の長男でまれた。明治11年、21歳の時、当時、東海道はまだ鉄道が開通していないため、江戸時代と同じく徒歩で11日か けて上京し、文明開化の風が吹く東京、横浜の異人街など、2ヵ月間も商売の勉強と新知識の吸収に出かけた。

ここで、外国人たちがアワビや干魚、海産物 などを高額で買いあさり、中でも天然真珠が世界の王侯貴族、金持ちに愛される女性の最高の装飾品であり、最高級の輸出品であることを知った。商才に長けた 幸吉は世界のビジネスに目を開くとともに、やり方次第で地元の海産物を世界的ブランドにできるとピンとひらめいた。

30歳で東大・箕作佳吉博士の指導を受けながら、全財産をつぎ込み、英虞湾の孤島に一家で移住して、真珠の養殖に取り組んだ。半円真珠の養殖成功に力を得て、さらに天然の真珠に近い真円真珠の開発に悪戦苦闘する。赤潮、冷水の発生によって養殖貝が全滅するなどの大被害に何度も襲われながら、そのたびにさらに大借金と血のにjむような研究開発の努力によって、最終的に真珠養殖の技術が完成したのは明治38年(1905)、幸吉48歳の時であった。

「資源もない」「金もない」「情報もない」「技術もない」ないないづくしの当時の日本で御木本はモノづくりによって外貨を稼ぐ「貿易、技術立国」しかないことを見抜いて、独力で真珠養殖にチャレンジして、成功したのである。

明治38年、 明治天皇が伊勢神宮に行幸した際に、御木本は「世界中の女の首を真珠でしめてご覧にいれます」と大見得を切ったが、その通りミキモト・パールの大部分は海 外に輸出され、外貨を大いに稼いだ。その意味では豊田佐吉と並ぶ独創的な発明王であり、日本人初の国際ビジネスマンであったといえよう。

御木本の独創性は

①    地方のハンディーを乗り越えて、三重県という片田舎の海産物を世界な高級ブランド、高価な輸出品に仕上げたという地域おこし、町おこしの典型的な成功事例であること

②    明治44年のロンドン支店を皮切りにパリ、ニューヨークに出店するなど海外販売網を築き、日本企業の海外進出のさきがけ的な存在となった。

③    来日した世界のVIPがこぞって真珠島を訪れたが、御木本は大いに歓迎して、真珠と日本を大いに売り込んだPRの天才だった。

④ 異文化コミュニケーションの天才でもあり、外国人とのコミュニケーションに抜群の才能を発揮したーなどである。

昭和2年(1926)2月、欧米視察旅行にでかけた御木本はニューヨークでエジソンと会見、「私はダイヤモンドと真珠だけはどうしてもできなかった。その真珠を発明されたことは世界の驚異です。おめでとう」と世界の発明王から絶賛され、当時69歳の御木本は大感激した。

もう1つ御木本の偉大さは、明治の経済人の中でも最も長寿であったことで、独自の健康法、食事法を実践して、96歳8月の長寿を保ち、昭和29年9月にその生涯を終えた。

 – 人物研究健康長寿

 - 人物研究, 健康長寿, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
 ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < チャイナ・メルトダウン(1056)>『中国政府を批判し有罪となり、服役中にノーベル平和賞を受賞した人権活動家の劉暁波氏が7月13日、肝臓がんのため中国・瀋陽の病院で亡くなった。』★『日清戦争の原因の1つとなった「金玉均暗殺事件」はこの中国の人権弾圧、テロ国家の体質から生まれた、同じケースである』

 『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < チャイナ・メルトダウン(1056) …

日本リーダーパワー史(680) 『日本国憲法公布70年』 『吉田首相のリーダーシップと憲法論と神学論争』吉田が偉大なリアリストであり国際政治経済への「先見の明」があったことは確かだ

日本リーダーパワー史(680) 『日本国憲法公布70年』 『吉田首相のリーダーシ …

no image
速報「日本のメルトダウン」(493)日本の電気IT産業の復活は可能か「アイリスオーヤマ社長・大山健太郎氏の動画会見」

 速報「日本のメルトダウン」(493) <日本の電気IT産業の復活は可 …

no image
日本一の「徳川時代日本史」授業⑥ 福沢諭吉の語る「中津藩で体験した封建日本の差別構造」(旧藩情)を読む⑥  

 日本一の「徳川時代の日本史」授業 ⑥   「門閥制度は親の …

◎「オンライン外交史・動画講座/日本・スリランカ友好の父」★『ジャヤワルデネ前スリランカ大統領ー感謝の記念碑は鎌倉大仏の境内にある(動画)』

    2014/11/30 &nbsp …

no image
日本メルダウン脱出法(634)『日本の格差:身分の保証された人vs貧しい人」『”動的な独占”こそが、技術革新を加速するピーター・ティールが語る「成功する起業など8本

 日本メルダウン脱出法(634) 『日本の格差:身分の保証された人vs貧しい人( …

no image
日本リーダーパワー史(410)『安倍首相が消費税値上げ決断。東京五輪を成長戦略第4の矢に⑦短期国家戦略提言

   日本リーダーパワー史(410) 『安倍首相が消費税値上 …

no image
日本メルトダウン脱出法(673)「日本のために中国と対決したくはない ー米国の本音」●「脱添加物!海外企業はここまでやっているー日本の「安全」は世界の「危険」かもしれない」

日本メルトダウン脱出法(673) 日本のために中国と対決したくはない ー新ガイド …

no image
速報(347)『日本のメルトダウン』自民両党首選動画の『この国のイカれた惨状!』②「尖閣問題』と「日本経済再生問題』

速報(347)『日本のメルトダウン』 ★民主、自民両党首選の『この国のイカれた惨 …

no image
速報(50)『日本のメルトダウン』ー原発メディアリテラシー・何よりダメな日本の新聞の社説

速報(50)『日本のメルトダウン』 原発メディアリテラシー・何よりダメな日本の新 …