前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

 日本リーダーパワー必読史(745)★『 対ロシア外交は完敗の歴史、その歴史復習問題)  欧米が心配する『安倍ロシア朝貢外交の行方は!?』②日清戦争後のロシアの三国干渉と遼東半島の武力、 占領支配が日露戦争の原因なのである。

   

 

 日本リーダーパワー必読史(745)

対ロシア外交は完敗の歴史、その歴史復習問題)②

 欧米が心配する『安倍ロシア朝貢外交の行方は!?』

日清戦争後のロシアの三国干渉と遼東半島の武力、

占領支配が日露戦争の原因なのである。

 

 ロシア、ドイツ、フランスの三国は三国干渉後に、どのような行動をとったのか。

日本が泣く泣く返還した遼東半島について、清国の日本への戦争賠償金をロシアはフランスから借款して、清国へ貸して、その見かえりを要求して、遼東半島の植民地化を企てた。

 

明治二十九年(1896)五月、サンクトペテルブルグで開かれたニコライ二世戴冠式に出席した李鴻章は、ロシア蔵相ウイツテとの間で秘密裏に「露清条約」(カシー二条約)を調印し、その見かえりにロシアは李鴻章に300万ルーブルの巨額のワイロを送った。

 

「露清密約」とは日本を第1敵国とした軍事同盟で、①日本がロシア、朝鮮、清国を攻撃した場合、露清両国は相互に援助する②戦争となった場合、旅順など全港湾はロシア海軍に開放するーなどが骨子。さらにロシアは資金提供し国策会社の露清銀行、東清鉄道会社(満州内にシベリア鉄道を建設する)を設立するなどの内容、ロシアは満州支配の第一歩を踏み出した。

この密約は5年後の李鴻章が死んだ明治34年10月、次の清国の実力者、慶親王側からの知らせで日本政府は初めて知った。

小国日本がやっと手に入れた中国の領土を武力恫喝外交の『三国干渉』で、1兵も、1発の弾丸を撃つをことなく、火事場泥棒よろしく遼東半島を奪い去った『ロシア』の強盗行為に対して川上は一層の復讐心を燃やした。

一方、ドイツも同じハイエナであった。清国での利権獲得をめざし軍艦を派遣して膠州湾沿岸を測量していた明治三十年(一八九七)十一月、山東省でドイツ人宣教師二人が暴徒に殺害される事件が起きた。

 

清国側は即座に賠償金支払を申し出たが、ドイツ皇帝は拒否「われらの権利を阻害する者は、武装した拳で撃つべし」と皇太子を派遣し、暴徒鎮圧の砲艦外交を命じた。

この「武装の拳」は、第一次世界大戦の「条約は一片の反古なり」の言葉とともに外交史上に残る有名なカイゼル主義(強権主義)である。

皇太子の乗ったドイツ東洋艦隊は十一月十日に膠州に向い、あっという間に十四日には膠州湾を占領した。

 

ドイツは、①被害者の遺族、破壊された教会堂などの建設費など約七万両の償金②青島占領の軍費償還③山東省内鉄道敷設権、鉱山採掘の専有権をドイツに付与④膠洲湾をドイツの海軍根拠地とする九十九年間の租借権を要求した。

 

あまりの不当な要求に清国は朝野をあげて憤激し、「夷をもって夷を制する」の中国の常套手段で、ロシア、フランス、イギリス、アメリカに応援を頼んだが拒否され、泣く泣く要求をのみ、明治三十一年三月、独活条約を結んだ。

 

このドイツのやり方のさらに上をいったのがロシアで、明治三十年十二月、突然東洋艦

隊九隻が旅順港に入港し、膠州湾問題がかたづくまでの臨時の処置であると通告、居座った。ロシア流の強引な交渉で清国側に脅迫して翌明治三十二年三月、①旅順、大連、関東州の二十五年間の租借権獲得③付帯する鉄道権益の獲得と、シベリア鉄道の支線を関東州に延ばすなどーなどの『旅順大連租借条約』を結んだ。

さらに明治三十三年には、ロシアは韓国の馬山浦付近を租借し、明治三十四年にはシベリア鉄道をウラジオストックまで開通させた。

フランスも追随して、明治三十一年四月、広州湾の租借権(九十九年間)を得ていた。これに対して、イギリスはロシアの旅順租借は極東における均勢を破壊するとして日本軍の撤退後、旅順と同一条件をもって威海衛を租借する、と清国に申し出て、これまた同年七月、威海衛租借権(二十五年間)を得た。租借地というのは各国とも行政長官などを自国から派遣して植民地とまったく変わらないものである。

つまり、力の強い軍事国家が弱い国にささいなことに因縁をつけて、金や土地を奪っていくやく、暴力団と同じ行動パターンであり「植民地主義・帝国主義的な国家』がイギリス、ロシア、フランス、ドイツであり、万国法、国際法を旗印にして、ビスマルクの忠告も聞いていた日本は見事にだまされた。

 

この明治三十一年(一八九八) は、アジアだけではなく世界中で列強の

侵略主義の嵐が吹きあれた年でもあった。

 

四月にアメリカはスペインと開戦した(米西戦争)。七月には米国はハワイを併合した(日本・ハワイ関係史では明治十四年に、ハワイのカラカウア王が外国元首として初めて来日し、西欧列強の支配に対抗してハワイと日本の合併まで提案していたが、これは日本がそこまでの力はないと拒否していた)。

 

九月にはイギリス・エジプト軍がスーダンを占領し、十二月には米西戦争の講和が成立し、米国はスペインからプエルトリコ、グアム、フィリピン、キューバを順次獲得した。

 

日本は大国のパワーゲームに揉潤される弱小国の悲哀を胸に、軍事力の増強以外にこの苦境を脱する道はないと「臥薪嘗胆」して復讐戦に備えていった。

 

川上のこの時期(明治28-31年)の戦略はモルトケの「熟慮断行」の応用段階である。

モルトケは86歳まで参謀総長を続けたが、晩年は特に視察、巡視、旅行についやす時間が増えた。インテリジェンスで収集した情報を分析し、トップの敵前視察で情報の制度と現実を確認チェックして整合したうえで、決断命令する。そのための『チェック旅行』であったが、川上もこれに倣い、部下を連れて、参謀旅行を繰り返した。

 

明治二十九年9月、明石元二郎少佐をつれて台湾より対岸の広東省、ベトナムなどを巡視した。明治31年春にはロシア・ウラジオストック港に航行し、東部シベリアをまわった。田中義一をロシアに派遣し、花田仲之介をひそかにシベリアに送り込み、参謀本部の精鋭たちをヨーロッパにも派遣して情報収集に全力を挙げた。

ロシアの満州侵攻、満州経営のスピードぶりに危機感を持った。

 - 健康長寿

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『50,60,70歳のための晩年長寿学入門(93)★『エジソン(84)の<天才長寿脳>の作り方①」★『発明発見・健康長寿・研究実験、仕事成功10ヵ条①』★『生涯の発明特許件数1000以上。死の前日まで勉強、研究、努力を続けた生涯現役研究者ナンバーワン』

     2015/01/01百歳学入門(93)再 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(173)記事再録/「山本権兵衛(海軍の父、首相)を激賞した福沢諭吉(上)」★『「山本権兵衛は実にエライ男だ、彼は唯の軍人でない、学者だ、全体、薩摩(鹿児島)のヤツには数字の分らぬ男が多いが、彼は徹頭徹尾、実学(現実論)に根拠する話のできる男だ」』

    2015/01/05 &nbsp …

no image
記事再録/知的巨人たちの百歳学(129 )-日本興業銀行特別顧問/中山素平(99歳)昭和戦後の高度経済成長の立役者・中山素平の経営哲学10ヵ条「大事は軽く、小事は重く」★『八幡、富士製鉄の合併を推進』『進むときは人任せ、退く時は自ら決せ』★『人を挙ぐるには、すべからく退を好む者を挙ぐるべし』

    2018/05/12 /日本リー …

「オンライン・日本史決定的瞬間講座⑪」★『電力の鬼」松永安左エ門(95歳)の75歳からの長寿逆転突破力②』★『戦時下は「渇しても盗泉の水をのまず 独立自尊の心証を知らんや」と隠棲し茶道三昧に徹する』★『雌雄10年、75歳で「電気事業再編成審議会会長」に復帰』★『池田勇人と松永安左エ門の「一期一会」』★『地獄で仏のGHQのケネディ顧問』』

  渇しても盗泉の水をのまず 独立自尊の心証を知らんや 戦時下には社会 …

ハチャメチャ日本人列伝(36)ー『大正時代の不良少年NO1はサトウハチローだよ』★★『 転校十一回、落第三回、父親から勘当されること十七回。 ひどい時には一日二回勘当された」

ハチャメチャ日本人列伝(36) 大正時代の不良少年NO1はサトウハチローだよ   …

no image
知的巨人の百歳学(153)記事再録★『昭和経済大国』を築いた男・松下幸之助(94歳)の名言30選」/★『松下の生涯は波乱万丈/『経済大国サクセスストーリー』● 『企業は社会の公器である』 ● 『こけたら立たなあかん』● 『ダム経営は経営の基本である』● 『経営は総合芸術である』●『無税国家」は実現できる』●『長生きの秘けつは心配すること』

  2016/12/23 記事再録/『明治から150年― 日 …

『私が取材した世界が尊敬した日本人⑱ 1億の『インド・カースト』(不可触民)を救う仏教最高指導者・佐々井秀嶺師』★『インドに立つ碑・佐々井秀嶺師と山際素男先生」(増田政巳氏(編集者)』

2009/09/25  日本リーダーパワー史⑱再録 『現代の聖者』『奇 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(199)ー『先日101歳で逝去され中曽根康弘元首相の戦略とリーダーシップ』★『「戦後総決算」を唱え、国内的には明治以来の歴代内閣でいづれも実現できなかった行財政改革「JR,NTT,JTの民営化」を敢然と実行』★『「ロン・ヤス」の親密な日米関係だけでなく、韓国を電撃訪問し、日韓関係を一挙に改革し、胡耀邦氏と肝胆合い照らす仲となり、日中関係も最高の良好な関係を築いた、口だけではない即実行型の戦後最高の首相だった』』

中曽根康弘元首相の戦略とリーダーシップ    前坂 俊之(ジャーナリスト) 中曽 …

no image
日本リーダーパワー史(731)再録記事・日本の最強の経済リーダーベスト10・本田宗一郎の名語録⑥『怖いのは失敗することではなく、失敗を恐れて何もしないこと 』●『⑤需要がそこにあるのではない。われわれが需要を作り出すのだ』

日本リーダーパワー史(731) 再録記事ー日本リーダーパワー史(80)   日本 …

no image
知的巨人の百歳学(100)ーギネスブック世界最長寿の彫刻家・平櫛田中(107歳)の長寿の秘訣は!『70、80、洟垂れ小僧、洟垂れ娘、人間盛りは100から、100から』★『今やらねばいつできる、わしがやらねば、だれがやる」』

ギネスブック世界最長寿の彫刻家・平櫛田中(107歳)   平櫛田中記念 …