鎌倉カヤック釣れないバカ日記『鎌倉材木座沖のシロキスは激減、絶滅種(アオギス)の運命をたどるのか』
<鎌倉カヤック釣れないバカ日記>
『ゴールデン・キス・ウイーク開幕は夢か!』
「鎌倉材木座沖のシロキスは激減、絶滅種(アオギス)
の運命をたどるのか!?』
前坂 俊之(ジャーナリスト)
もう三十年近く、毎週末に、カヤックフィッシングを鎌倉、逗子沖の海で続けている。三十年来のわが「老人と海」「半筆半漁」「晴釣雨読」「天然釣りバカ生活」にとって5月の『ゴールデンウイーク』は、待ち遠しいシーズンなのだ。相模湾では暖かくなる連休頃から海岸近くにキスが接近してきて釣れはじまるからだ。鎌倉釣りバカ」にとって「ゴールデン・キスウイーク」の開幕でもある。
30年前には休みは家族、子供もほったらかして相模湾で遊漁船にのって一人でタイ釣りに興じ、夏は早朝4時から貸しボートで鎌倉材木座沖の海へ漕ぎだした。午前四時の日の出前から出かける。
近くに江の島、遠く富士山を眺めながら『ククッ―』『ガガッー、キューン』と静寂の海からキスの鋭角的な魚信が伝わる。一週間、脳にたまりにたまったゴミ箱いっぱいのストレスが一瞬にしてクリーンアップされる。午前七時には帰って、釣ったキスを塩焼き、サシミにして朝食をかけこむ。そして東京への通勤電車に乗る。まさに,先に亡くなった三国連太郎、西田敏行主演『釣りバカ日誌』のハマちゃんである。
四十五歳の時にカナダ・バンクーバーに旅行した。カヤックを乗せた車が街中を行きかい、静かな海でカヌーを楽しむ人々のスローライフに目からウロコが落ちた。
『よし、鎌倉でカヤックーフィッシングのハマちゃんになるで』と、一艇買った。それから三十年、
毎年毎年、春夏秋冬、正月も欠かさず海に出る「釣りバカ生活」を続けてきたのである。
海には毎回、大自然のドラマがあり、サプライズがある。そのころ保育園児の娘2人とよく見た宮崎駿のアニメ「トトロ」の海版である。ある日、トトロのような巨大魚が釣れた。移り住んで、すぐの頃である。遊魚船での釣りだったが、鎌倉沖で80センチ、6キロという巨大マダイをつり上げたのだ。竿が折れんばかりの強烈な引きで上がるまで20分ほど格闘した。これ以来、病み付きとなった。「逗子マリーナ」(現在リベエラ)の防波堤から目と鼻の先で30センチ弱の巨キスが釣れた。何と、逗子小坪漁港のすぐおきにイルカがすみついて、わがカヤックの回りを悠々と回遊したこともあった。
鎌倉沖2キロほどの海上でカヤックのすぐ近くでイワシの数十万匹という大群がピシャピシャと波間を乱舞して、盛り上がり、それに回遊魚が襲いかかる。イワシの大群は狂驚して、黒い塊となってピョン、ピョン銀色の魚塊を太陽にキラキラ反射させながら猛スピードで逃げ回り、それをシーラ、イナダ、カツオが追い回して丸呑みする。まるでケニアのサバンナでシマウマの大群にチーターやライオンが猛スピードで襲いかかる弱肉強食の世界の海上版である。
さてさて、こうした『トトロ』の海版といっていい自然満喫生活は今では、幻のように消えてしまった。「沈黙の春」(レイチェル・カーソン,1962年版)、「死につつある海」の風景は30年前から材木座海岸で遊び、散歩し、定点観測観している「釣りバカ老人」だけに、わかることなのだ。
和賀江島(日本最古の築港跡)の回りにあった海草類も三分の一以下に激減した。ここは魚の産卵場所だが、この砂漠化によって魚はいなくなる。砂浜の貝もヤドカリもほぼ全滅、フナムシもいなくなってしまった。食物連鎖で当然、大きな魚もいなくなった。キスなどはもはや鎌倉、逗子沖では数匹もつれない。20センチ以上など滅多につれない。材木座海岸砂浜も30年前の二分の一に減った。台風のときなど、海岸横の道路に冠水するほどだ。海の生物多様性の世界的宝庫がこの鎌倉の海の「相模湾」なのである。世界の海のホットスポットが、いまや「死の海」へと近づいているのだ。
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