前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(381)児玉源太郎伝(4)『日露戦争<黄禍論>に対し日本を高く評価した英国タイムズ紙

      2016/03/05

  日本リーダーパワー史(381

児玉源太郎伝(4

 

●『日露戦争の<黄禍論>に対して<日本人を高く評価

した<英国タイムズ紙>を読む

現在の中国躍進への世界の注目は100年前の黄禍論

(日本台頭論)、「西欧の没落」(シュペングラー)と同類。

安倍外交は明治外交史を検討する必要がある。

             

前坂 俊之(ジャーナリスト)

 『黄禍論』に対して―日露戦争で国際法の慣例に従って戦争を
遂行している徳性ある日本」
<英国タイムズ紙、
1905(明治38)年17日記事>

黄禍論の反響が折々聞こえてくる。もともと黄禍論は,日本が中国に勝利して得た成果を日本から奪って,それをヨーロッパ列強が私物化するのを正当化するために唱えられたものだ。

一部の人々はこの議論をかなり真に受けているため,1白人国家に対する1東洋人種の勝利を予想せざるを得なくなって,本当に不安になっている。

 ヨーロッパ諸国はお互い同士の戦争のためにやむにやまれず常に完全武装して備えているのに,この人々はヨーロッパ民族の結束を漠然と思い描いている。

また,いわゆる黄色人種は全く同質で.白人が互いの領土を奪おうと常にもくろんでいるように,黄色人種も白人国家を侵略する欲望にかられていると,この人々はやはり漠然と想像している。

日本軍に侵略される方がロシア軍に侵略されるよりなぜずっと不幸なのか,害悪が等しいとして,近くのより起こりそうなことよりも遠方の不確定なことを恐れるのがなぜ理屈にかなっているのか,これについては説明が全くない。

実際は,黄色人種の間の結束は見られない。日本人と中国人が大きく異なるのはヨーロッパの2つの民族が互いに大きく異なるのと変わらない。ヨーロッパの2つの異なる民族と同様,これらの民族にも人種的な偏見があり,大昔からの対立がある。

彼らをまとめて黄色人と呼ぶのは,中国人がすべての白人をいっしょくたにして外国の悪魔と呼ぶのと同様.全くの無知を示すものだ。

この誤解をさらにこっけいなものにしているのは,われわれが,自ら考案した試金石に照らして,彼らが根本的に異なる民族だという決定的な確証を得ようとしていることだ。少なくとも半世紀の間,イギリスを先頭にしたヨーロッパ諸国は,東洋諸国が救済される唯一の道は,西洋の思考方法と西洋の文明を採用することだと東洋諸国に告げてきた。

この教えをよく思い知らせるために,ヨーロッパは東洋の領土を侵略し,その国民を殺りくし.その財源を着服し,その国土を奪った。東洋民族の1つ(日本)がこのヨーロッパの助言を受け入れた。この民族は西洋文明の手法を並外れて完璧に修得し,こうしてこの民族は他の黄色人種とは非常に異なること,その再生のためにわれわれの長年の努力を役立てたいと思っていることを同時に示した。

しかし,この民族がわれわれの助言を受け入れ,われわれが育む進歩と知性の理念に従ったとたん,ヨーロッパは態度を一変させ,この民族は平和と文明に対する脅威であると非難した。

この民族には1000年間にわたる独自の文明があり,この文明は物心両面の教養を生み出し,それは今,可能な最大限の試練に耐えている。この民族はだれとも交わらなかったし,世界に対して不干渉以外の何も要求しなかった。

しかしヨーロッパはほうっておかなかった。この民族は賢かったので,ヨーロッパの干渉は所望のものが手に入れればそれに比例して強まることを近隣のできごとから知った。

この民族は,ヨーロッパの方式によってヨーロッパの国の侵略から自国を守れるようになると、それ以外のすべてのヨーロッパ諸国の当然の敵であると決めっけられた。

これらのヨーロッパ諸国は今まではこの民族の適対者の方を恐れていたのだが。この民族から見て,ヨーロッパはいかに賢く,理性的で,公平で,全く高貴に見えることだろう!

 今日,黄禍があるとするなら,それは新しいものではなく.古いものを新しく見せかけたものだ。ほとんどだれも気にも留めなかったが,1年前に本当の黄禍があった。

中国がロシアの支配下に置かれる危険が迫っていた。実際そうなれば,中国の資源はロシアの侵略と専制のために組織されただろう。ロシアの狙いは隠れもなかった。ロシア.は極東で特別の使命を帯びており,東洋人を扱う本質的な適性を持っており,それを考えれば,中国での他の列強の活動は神の摂理に対する不遜な介入も同然だと,大胆に宣言されていた。

ロシアの手先は弱体で腐敗した中国政府を威嚇した。ロシア領事は地方政府を指図した。ロシアの技師はロシアの中国支配を強化するのに便利な戦略鉄道を計画した。ロシアの銀行は中国財政の大きな部分の支配権を得た。

一地方全体が併合され,難攻不落と見なされた要塞が中国の海を支配するために建設された。ロシアの官僚によって管理された中国帝国こそ.ヨーロッパが無力感に襲われながら予期した黄禍だった。それより悪い黄禍はあり得ない。一部の人が薄弱な根拠に基づいておそらく懸念しているように,中国が日本に管理されるのなら,ともかくその方が世界にとってはよいだろう。なぜなら,中国帝国の潜在力を支配するのは,自由で,開明的で,高貴で,教養の高い国民であって,最も危険な種類の寡頭政治ではないからだ。

この寡頭政治の力が依拠するのは恐ろしく無知な1億農民の凶暴な力だからだ。妄想的な懸念に確実な根拠があると仮定しても,その恐るべき運動の司令部が地球の反対側にある方が,ヨーロッパのすべての首府から数時間の旅程にあるよりもヨーロッパにとってはましだろう。

しかし実際の話,中国国民の潜在的可能性がどうであろうとも,世界が考慮に入れるべきは中国官僚で,彼らは日本が鼓舞されたすべての理念と原則に深い敵意を抱いていることで際だっている。

中国の官僚と宦官が啓発されて地上から姿を消すまでは,日 中間の真の協力はなく,日本の理念に従った再編成すらあり得ない一。本紙通信員「ファー・イースト」は,日本に留学している若い中国人の手紙の抜粋を本日送ってきたが,この手紙は北京の中国支配階級の態度を分かりやすく説明している。

彼らの態度は,中国で大きな変革が起きなければ,ロシアが日本に敗れた後でも,われわれの言う真の黄禍はなくならないという見解を裏づけている。

 世界の力の均衡が1世紀,2世紀の間にどう変わるか予想しようとしてもむだなことだ。現実的なすべての政策の目標のためにはもう少し短い視野で十分だ。もし中国帝国が何か日本に似たものを手本に組織されれば,それは日本の塊らいではなく日本の手ごわい競争相手になるだろう。

白人同様,黄色人にも人種の違いや多様な利益があるので,黄色人が結束して白人に対抗するという意味での真鍋は政治的な悪夢に過ぎない。さらに忘れてはならないことは,ロシアを白人またはヨーロッパ列強の部類に入れると,多くの人種問題をはぐらかしてしまうことだ。

ロシア自身,どの程度までか正確には判断できないが,間違いなくきわめて大きな程度までアジア系であり黄色人種系である。また,次のように考える理由も全くない。それは,もし他の黄色人種が日本と並び立つ能力を証明して,西洋文明が伝授できるすべてを摂取した場合,彼らは,彼らを無知故に依然として横柄に軽蔑している白人よりも,力をゆだねる相手としてはややふさわしくない,というものだ。

日本人の徳性は,少なくとも世界のこちら側でわれわれが示せる何よりも高い。以上の結論は,本紙軍事通信員の共感あふれる考察だけに基づいているわけではない。この考案はわが国の非常に多くの者にとって新しい啓示だった。しかし以上の結論は,日本人が途方もない戦いの緊張に耐えてきて今も耐えている態度にも基づいている。

東西を問わず,人々はさまざまなことを信じていると語り,さまざまなことを信じていると考える。しかし人々が本当に信じていることを知るには,その行動,特に緊張と重圧の時期の行動を見なければならない。今われわれの目前に堅忍不抜で気高く愛国的な光景を見事に現出させているこの本質的な徳性は,これを持つ民族に人類からきわめて高く信頼される資格を与えるものだ。

 - 人物研究, 戦争報道 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

「Z世代のための日本リーダーパワー史研究』★『電力の鬼」松永安左エ門(95歳)の75歳からの長寿逆転突破力③』が世界第2の経済大国』の基礎を作った』★『人は信念とともに若く、疑惑とともに老ゆる』★『葬儀、法要は一切不要、財産は倅(せがれ)、遺族に一切やらぬ。彼らが堕落するだけだ」(遺書)』★『生きているうち鬼といわれても、死んで仏となり返さん』

2021/10/06  「日本史決定的瞬間講座⑫」記事再録 …

『日露インテリジェンス戦争を制した天才参謀・明石元二郎大佐』-戦時特別任務➁

 『日露インテリジェンス戦争を制した天才参謀・明石元二郎大佐』-戦時特別任務➁ …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(57)記事再録/『日中韓の外交戦・『日米同盟』のルーツを林董(ただす)の外交論を読む=「日本は開国以来、未だかつて真の外交なるものの経験なし」

 2013年4月25日 日本リーダーパワー史(378)&nb …

『オンライン講座/日本興亡史の研究③』★『明治大発展の影のキーマンは誰か?②』★『インテリジェンスの父・川上操六参謀総長ー田村 怡与造ー児玉源太郎の3人の殉職 ②』★『「インテリジェンスの父・川上操六参謀総長(50) の急死とその影響➁ー田村 怡与造が後継するが、日露戦開戦4ヵ月前にこれまた過労死する。』

  2016/02/22    …

日本リーダーパワー史(925)人気記事再録『戦時下の良心のジャーナリスト・桐生悠々の戦い②』★『権力と戦うには組織内ジャーナリストでは不可能とさとり、フリージャーナリストとして個人誌「他山の石」(いまならSNS,ブログ)で戦った』★『言論機関は今、内務省と陸軍省の二重の監督下にある。私たちは『三猿』の世界に棲む。何事も、見まい、聞くまい、しやべるまいむ否、見てはならない。聞いてはならない。しやべってはならない「死の世界」に棲まされている』★『「言論の自由を圧迫し、国民をして何物をもいわしめない。これが非常時なのだ」』★『「畜生道に堕落した地球より去る」と 69 歳で壮絶死』

2010年1月26日  日本リーダーパワー史(34) 日本リーダーパワー史(34 …

no image
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟の清国への影響」⑦1902(明治35)年2月24日 『申報』『日英同盟の意図は対ロシア戦争ーこの機会に乗じて富強に尽力すべし』★『日本はロシアを仇とし『臥薪嘗胆』しロシアを破ることを誓っているが、自国の戦力、財源は 豊かではないので、イギリスを盾にした。』

   ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟は清国にどうはね返るか …

『長寿逆転突破力を発揮したスーパーシニア―』★農業経済 学者・近藤康男(106歳)―越え難き70歳の峠。それでも旺盛な研究力が衰えず、七十七歳のときからは目も悪くなったが、それも克服し七十歳以降の編著だけで四十冊を超えた。

   2014/05/16   <百歳学 …

『オンライン講座/日本興亡史の研究④』★『日本史最大の国難・日露戦争で自ら地位を2階級(大臣→ 参謀次長)降下して、 陸軍を全指揮した最強トップ リーダー・児玉源太郎がいなければ、日露戦争の勝利はなかったのだ。 ーいまの政治家にその叡智・胆識・決断力・国難突破力の持ち主がいるのか?』★『予(児玉)は、全責任を自己一身に負担し、この責任を内閣にも、又参謀総長にも分たず、一身を国家に捧げる決心を以て熟慮考究の上、一策を按じ、着々これが実行を試みつつある』

  2017/05/22  日本リーダーパワー史( …

「Z世代のための、約120年前に生成AI(人工頭脳)などはるかに超えた『世界の知の極限値』ー『森こそ生命多様性の根源』エコロジーの世界の先駆者、南方熊楠の方法論を学ぼう』★『「 鎖につながれた知の巨人」熊楠の全貌がやっと明らかに(3)。』

2009/10/04  日本リーダーパワー史 (24)記事再録 前坂  …

no image
終戦70年・日本敗戦史(86)陸軍反逆児・田中隆吉の証言⑥『紛糾せる大東亜省問題――東條内閣終に崩壊せず』

  終戦70年・日本敗戦史(86) 敗戦直後の1946年に「敗因を衝くー軍閥専横 …