前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

クイズ「坂の上の雲」(日露戦争の原因となった満州・韓国をめぐる外交衝突)

   

クイズ「坂の上の雲」(日露戦争の原因となった満州・韓国をめぐる外交衝突)
 
「ロシアの違約、日本は進歩の闘士」<ニューヨークタイムズ記事>1903年4月26日
 
前坂 俊之
 
1・・日露戦争へ前史

1903年4月8日は,露清「ロシア・清国(中国)」協約に規定されたロシア軍撤兵第2期期限の満期に当っていたが、ロシア側は約束を全く実行しないどころか18日,清国政府に新たな7項目の強硬な要求をつきつけた。
① 返還地は他国に割譲したり租借させてはならない。
② ロシアの同意なしに,満州で新たに開市、開港をせず、領事を駐在させてはならない。
③ 清国が外国人をやとって行政を管理させる場合には,その権力は直隷省を含む北部地方に及んではならない。
④ 北部事務には別個の機構をつくり,ロシア人に指導させる。
⑤ 宮口の税関をロシアが返還したのちも,霧清銀行が同地の海関銀行の役割を果すこと。
⑥ 満州占領中,ロシア人やロシアの会社が獲得した権利は,撤兵後も有効とする。
⑦ 蒙古の現行体制は変更しないー
など7項目で満州から蒙古まで、いかなる権益をもロシア以外の国には与えてはないという、三国干渉によって奪った権益を絶対離さないという宣言そのものだった。
5月になると、鴨緑江を越え,韓国内の竜宕浦を租借して軍事基地化、8月には極東の軍事・行政・外交すべてを掌握する極東総督府が旅順に設置され,対日温和派の蔵相ヴィッテが失脚した。
 これらロシア撤兵後に日本や他の国々が満州に入りこんでくることは,ロシアの地位を低下させ,旅順にまで達する鉄道の安全をおびやかすという強硬意見によるものだった。
 これに対して日本は,4月18日直ちにロシアに英米と共に強い抗議をおこない,清国はロシアの要求を拒否した。4月21日,桂太郎・伊藤博文・山県有朋・小村寿太郎の4名は京都で会談をおこない,事態解決のために対露交渉を開始する方針を決めた。
 
この間のロシアと日本の外交のやり取りを「ニューヨークタイムス」は次のように論評している。
 
1
2・・1903年4月26日『ニューヨーク・タイムズ』の「ロシアの違約」の記事紹介
 
「ランスダウン卿が去年8月上院で、ロシアの対満州協定につき説明を行った際、われわれはロシアが協定を結んだからといって,それを守る可能性が高まったわけではないと指摘した。
ロシアの背信性は,その破廉恥さにおいて文明国中でも類を見ない。誠意、信義に関してはロシアの評判は最悪だから,これが大国でなく一個人であったなら,だれも付き合おうとはしないだろう。
ロシアは満州から6か月ずつ3回に分けて撤退すると約束したが,それを誠意をもって実行するだろうなどと想像するお人よしはいなかった。協定を結んだのは時間稼ぎ-軍備を強化し,満州全土で自国独占と見なす利益を確保し、ヨ一口ッパ・ロシアおよび中央アジアの汗の諸国と通信連絡を整備し反対勢力に対抗する時間を稼ぐためだと想像された。
ロシアは望み通り約束破りのお膳立てを整えてから,口先では履行を唱え続けるだろうとロシア専門家は予想した。
 
 ロシアはそれすらもせず,最低の日常儀礼すら無視した。満州の牛荘、「(ニューチャン)港を含む地域から撤退する誓約を果たすときが来ると,約束履行の前提条件として.全く新しい7条件を突然持ち出すのだ。この諸条件を最初に持ち出していたなら,不当きわまる,いかにも不遜なものと言えただろう。
というのも、これらの条件は,揚子江流域と同様に中国帝国のれっきとした一部の地域に同国の有効な支配権をなんら認めず,それをロシアの保護領とするものだからだ。ロシアがこうした条件を約束履行の条件として上乗せするのは違約に侮辱を.背信に破廉恥を加えるものだ。
さらにこれは「人類世論をしかるべく尊重」するというあの文言を反古にするだけでなく一経験を積んだ観測筋はもともと期待もしていなかったが-人類にあえて挑戦するだけの力を意議していることを示すものだ。ロシアは関係諸国に対し,地元でのみ悪名をはせている泥棒のように「さあ,どうする?」と開き直っているのだ。
さて人類はどうするか?ロシアが押しつけた条件は事実上満州のすべての貿易を支配・独占するというものだ。現存の唯一の外国貿易港をロシアの出先機関が支配し,その他の港は一切外国貿易には開かないというのだ。後者のこの条件は特に合衆国への反発だとロンドンで解釈されているのは正しい。
 
というのは牛荘以外に,ロシアの軍事干渉に直接さらされることの少ない2港の開放を提案したのがわが国だったからだ。他の条件はこの現在の条約港をまるでロシアの港のように完全支配することを規定している。同港を外国貿易に開放した条約は,中国がロシアの新要求をのめば事実上無効とされ,引きちぎられた破片を「締約諸国」の面前に投げつけられた形となるだろう。
この非道な強制措置により,締約国は1つ残らず侮辱され、その現在将来の貿易量に応じ,損害を被るのだ。わが国はどのヨーロッパ列強にも増して大きな打撃を受ける。というのは,わが国の満州貿易は中国の他の地方よりも,また他の諸国よりも大きかったし,さらにロシアの干渉で奪われる以前は,これまでよりはるかに大規模になることが有望だったからだ。牛荘は大英帝国にとってもきわめて重要な港である。
 だがわが国の満州貿易を現在将来とも貫くため,武力行使もやむなしというそぶりをしても始まらない。だが武力こそ,われわれの見るところでは,条約の保障措置としてロシアが尊重する唯一のものだ。
前提条件において大英帝国は無力となった。大英帝国は中国における平等な通商手段と門戸開放の闘士というそもそもの立場をわが国に譲った。同国は中国を列強の「勢力圏」に分割する事態となった場合は自分もその一部を分け前に取ることに同意したときに.その立場を放棄したのだ。
 
大英帝国がその事態を考慮し、通商の便宜を門戸閉鎖と交換する形で「補償」を受け取ることに同意したのと同時に,まさにその瞬間,同国はその主張の主導権を放棄したのだ。合衆国はへイ国務長官の指揮下に,大英帝国が放棄した闘士の座に就き.倦まず変わらずそれを守ってきた。
 
 だが最も密接なかかわりを持っているのはわが国でもヨーロッパの国でもなく,また極東の「門戸開放」の最も有力な闘士だった国でもない。その栄冠は日本に属し、同国の満州処分に対する利害関係は中国自身を除いては他のどの国よりも深刻だ。もっとも中国は国ではなく,巨大で無力な弱虫として扱われているが。日本は中国に対する勝利の代償として強要した条約により、中国貿易を平等な条件で全人類に開放した。
 
この進歩的な行為を阻み無効にしたのが.ロシアが率いフランスとドイツが追随した連合だった。ロシアは3国連合の力で日本を威圧しただけでなく,同盟国のフランス・ドイツをも出し抜きだました。そして今や日本はロシアのために中国の火中の栗を拾わされたと悟っている。日本の対中勝利の果実を横取りし.独り占めにしようとしているのがロシアなのだ。
ロシアが満州で地歩を築き,軍備を確立して北部アジア一帯を撮るなら,太平洋岸の軍港から島国帝国を攻撃可能な距離まで迫ることになると日本は見ている。ロシアが攻撃のときが来たと判断すれば,日本は存亡をかけて戦わねばならない。
 極東問題における英日同盟をイギリス外務省がどこまで考えてイギリスを現在の事態に関与させるのかが見ものだが,この同盟が想定したのはまさにこのような事態なのだ。
 
しかし少なくとも日本が満州の現状に憤激しているのは驚くにあたらず、このままで行けば将来はさらにせっぱ詰まったものになりかねない。抵抗の時至る、待てば待つほど抵抗は不利になると日本が決意したとしても驚くにあたらない。日本がロシアの進出に異議を唱えることを決めるなら,日本は通商を守り軍国主義に反対し,近代思想を掲げ古くさい特権に反対する闘士,自由と進歩の闘士になるだろう。
 
すべての文明的な人類の好意と共感を得るだろう。それは相当なことである。それ以上を与えるのが自国の利益になると判断する国が1つもないとしても。
 

 - 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史]』(21)記事再録/『山岡鉄舟の国難突破力⑤『金も名誉も命もいらぬ人でなければ天下の偉業は達成できぬ』

    2011/06/22 &nbsp …

no image
新国立競技場問題を含めて森喜朗 東京オリンピック組織委会長が日本記者クラブで会見(7/22)90分

  新国立競技場問題を含めて森喜朗 東京オリンピック・パラリンピック組 …

「世界最先端技術<見える化>チャンネル」『TSMC関連最新動画ニュース』★『半導体受託生産の世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)はソニーグループの半導体製造小会社の横の熊本県菊池郡菊陽町に建設予定。熊本空港、熊本市、阿蘇山との地理的関係などを現地レポートする。

「世界最先端技術<見える化>チャンネル」   工場建設のための造成工事 …

no image
 日本リーダーパワー史(756)ー映画「海賊と呼ばれた男」 のモデル/『国難突破力ナンバーワンの男 <出光佐三の最強のリーダーシップとは> 『人間尊重』★『つとめて困難を歩み、苦労人になれ』 ★★『順境にいて悲観し、逆境にいて楽観せよ』●『『利益優先」の単なる資本家ではなく「論語とソロバン」の公益資本主義を唱えた 渋沢栄一をしのぐ、戦前からの「人間尊重」「定年なし」「出勤簿なし」の出光経営は、 今、テレワークや働き方改革なんて、70年前に実践している』

「海賊と呼ばれた男」の公式サイト http://kaizoku-movie.jp

no image
日本リーダーパワー史(598)『安倍・歴史外交への教訓(5)』「大東亜戦争中の沢本頼雄海軍次官の<敗戦の原因>」を読む―鳩山元首相の「従軍慰安婦」発言、国益、国民益無視、党利党略、 各省益のみ、市民、個人無視の思考、行動パターンは変わらず

 日本リーダーパワー史(598) 『安倍・歴史外交への教訓(5) 「大東亜戦争中 …

no image
片野勧の衝撃レポート(60)戦後70年-原発と国家<1952~53> 封印された核の真実ー原爆報道が一気に噴出①

片野勧の衝撃レポート(60)  戦後70年-原発と国家<1952~53> 封印さ …

no image
(記事再録)140年前の外国新聞 (フランス紙『ル・タン』)が指摘した日本病の正体とは①論理的な学問なし②記憶力、詰め込むだけの教育③理性的学問では小学生レベルの無能な学者を量産④優柔不断で論理性のない人間ばかり⑤新しい状況に適応できない、実際的な良識にかけた人間を作っている。

  (記事再録) 1874(明治7)年5月23日付 フランス紙『ル・タ …

no image
 ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟はなぜ結ばれたのか」⑥1902(明治35)年2月19日『ノース.チヤイナ・ヘラルド」『日英同盟の内幕』●『西太后が信頼した外国は①米国②日本➂英国で『日本は血縁関係の帝国同士で、 中国に対する友情をもって決して外れたことはない』★『袁世凱とその同僚の総督たちは日本派で日英同盟を 結ぶようイギリスに働きかけた。』

 ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟はなぜ結ばれたのか」⑥   …

日本の最先端技術「見える化』チャンネル『CEATEC JAPAN 2017』★『muRata(村田製作所)の「チアーリーダー部の応援ロボット」は可愛いいね』★『OKI(沖電気)の交通・防災・製造などの各種ソリューションを紹介』

日本の最先端技術「見える化』チャンネル 「CEATEC JAPAN 2017」( …

日本リーダーパワー史(609)『110年前の伊藤博文の観光立国論』(美しい日本風景・文化遺産こそ宝)の 驚くべき先駆的な経済文化ビジネスセンスに学べー外国人を拒否せずおもてなしをすれば富国になれる

                     日本リーダーパワー史(609) 『安倍 …