前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(858)ー来年1月からNHK大河ドラマ「西郷どん」が始まる。国難の救世主「西郷隆盛のリーダーシップ」に学ぶ。

      2017/11/11

日本リーダーパワー史(858)

国難の救世主「西郷隆盛のリーダーシップ」に学ぶ。

明治維新の主な大改革は西郷総理の2年間に達成された。

 

10月23日、総選挙の結果が出た。自民党が過半数を超える圧勝で、安倍首相の続投が決まった。11月にはベトナムでAPECが開催され、同5日にはトランプ大統領が来日し、北朝鮮問題危機は新たなステージに入る。

同時に国内問題も難問山済みで米中覇権争いの狭間で翻弄される「か弱い」日本では改めて安倍首相の強力なリーダーシップが問われる。

来年はちょうど明治維新から150年。1月からNHK大河ドラマは「西郷どん」が始まる。幕末明治以来、最高の剛腕ぶりの西郷どんに学ぶときであろう。

月刊『中央公論』(2017年9月号)の「ハーバード大の日本再発見』という特集で、アルバート・M・クレイグ名誉教授(日本近代史専攻)は「竜馬、西郷は脇役に過ぎない」として『西郷隆盛は非常に魅力的な人物だが、明治維新における役割を考えれば、大久保利通、木戸孝允の方がはるかに重要」と述べている。

私はこれには間違っていると思う。当時の明治新政府は維新三傑の論功行賞では西郷に最高の二千石を授け、千八百石の大久保、木戸を上回る筆頭に評価した。

 

西郷は260年間続いた徳川幕藩体制を破壊して、明治維新の扉を開いた「破壊者・革命家」で、大久保はその基礎の上に近代明治国家をデザインした「建設者」である。

破壊がなければ建設もできない。西郷のバカ力がなければ、明治維新は達成できなかったことは間違いない。

その後、明治政府は西南戦争で賊将となった西郷の役割を完全否定し、『勝てば官軍、負ければ賊軍』の官製の明治史を作った。

1873年(明治四)六月、西郷は参議(実質的な総理)に就任以来、岩倉欧米使節団(岩倉具視団長、大久保利通・木戸孝允・伊藤博文らの政府高官ら107人)が世界一周の国造りの外遊に出かけた後、留守居役しながら国内大改革をやりとげ同6年10月には征韓論で野に下った。

この2年半の間に成し遂げた政治改革をあげると、

▽廃藩置県▽文教改革(文部省設置、義務教育発布)

▽封建的身分差撤廃と人権確立推進(自由通婚許可、部落差別廃止、人身売買禁止と娼妓・年季奉公人の解放)

▽宗教の自由化(神社・仏閣の女人禁制廃止、僧侶の肉食・妻帯許可)

▽軍制と国民皆兵(徴兵令発布)

▽土地制度の改革(水呑百姓の解放と農民職業自由化、封建的土地領有権否認、地租改正)

▽全国初の戸籍調査、裁判所整備と司法制度確立、太陽暦採用などなど。

 

封建的な徳川諸制度を近代国家制度に一挙に大改革した。後に大久保派の伊藤、山県らが政権を担いこの西郷路線を引き継いでいくが、西郷のスピード決断、実行力には「英タイムズ」「米ニューヨークタイムズ」などの外国紙も驚嘆している。

 

今ちょうど隣の中国では、5年に1度の第19回共産党大会が開幕中で、習近平主席が「新時代の社会主義国築く」「2020年代には米国を抜いて世界1のGDP大国となる』などと豪語しているが、西郷どんが150年前にやり遂げた民主的大改革と比べると、中国がいかに遅れた非民主的な封建国家であるかがよくわかる。

 

 特に、廃藩置県は明治近代国家の根幹をなす最大の懸案で、三百諸藩の大名の権限を取り上げて中央集権の天皇制国家に移行するもの。一藩でも反抗し、幕府、諸藩が手を組んで抵抗すれば全国各地で内乱が頻発する。

新政府の高官も各藩の下級武士たちの成り上がり者なので、わが藩主に遠慮して言い出せない。結局、この反対を抑え込む威望と勢力を持っているのは大西郷しかいないというので、鹿児島に引っ込んでいた西郷を無理矢理に新政府にひっぱり出した。

 

気の小さい山県有朋が西郷に恐る恐るお願いに行くと『わかり申した』と一言答えたのみで、あとは無言。拍子抜けした山県はさらにあれこれ説明すると「もし反対する藩があれば、おいどんが成敗しもうす」と同意した。この結果、明治47月、廃藩置県が断行され、中央集権体制が確立した。

これには「薩摩藩主」島津久光が西郷の奴めと猛反対し、花火を盛大に打ち上げて、怒りをぶちまけた、という。

西郷は御誓文の「万機公論に決すべし」を固く守り、権力者を憎み、貧しい百姓、農民らの権利を擁護した真の民主主義者であると、福沢諭吉は高く評価している。

「敬天愛人」「命も名誉も金もいらぬ」「子孫に美田を残さぬ」が信条の西郷は総理となっても、その百姓的な態度、無欲恬淡、『知合合一』のリーダーシップは変わらなかった。

 五百両の総理月給も一度受けとったきりで、あとは全く取りに来なかった。

「自分の生活費は月に十両もあれば足りる。政府の大切な金を余分にいただいては相すまない。もちろん入用な人が月給を毎月頂戴なさるのは結構だが、おいどんは不要でごわす」と拒否するので、大蔵省租税頭・渋沢栄一はその処遇に困り果てた。                       

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
イラク戦争研究ー『グローバルメディアとしてのアラブ衛星放送の影響―アルジャジーラを中心にー』

グローバルメディアとしてのアラブ衛星放送の影響―アルジャジーラを中心にー     …

no image
記事再録/巨人ベンチャー列伝ー石橋正二郎(86歳)(ブリジストン創業者)の名言、確言、凡語百選ー『遠きを謀る者は富み、近きを謀る者は貧なり』➀

      2016/07/13巨人ベン …

no image
 日本リーダーパワー史(181)<百年前にアジア諸民族の師父と尊敬された犬養毅①>大アジア時代の先駆者

 日本リーダーパワー史(181)   <百年前にアジア諸民族の師父と尊 …

no image
日本リーダーパワー史(805)/記事追加再録版 「国難日本史の歴史復習問題」-「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス⑥」 ◎「ロシアの無法に対し開戦準備を始めた陸軍参謀本部』★「早期開戦論唱えた外務、陸海軍人のグループが『湖月会』を結成」●『田村参謀次長は「湖月会の寄合など、茶飲み話の書生論に過ぎぬ」と一喝』

日本リーダーパワー史(805) 記事追加再録版  「国難日本史の歴史復習問題」ー …

no image
知的巨人たちの百歳学(167)記事再録/『日本歴史上の最長寿、118歳(?)永田徳本の長寿の秘訣は・『豪邁不羈(ごうまいふき)の奇行です』

    2012/03/04 / 百歳学 …

『オンライン動画』★『鎌倉稲村ケ崎サーフィンGoGo!(2021/5/14am730)ー富士山、江の島をバックのこの「サーフィンパラダイス」は最高だよ、台風シーズンに突入、ビッグサーフィン開幕へ。

     

『世界漫遊/ヨーロッパ・パリ美術館ぶらり散歩』★『ピカソ美術館編」(5/3日)⑥『「ピカソはオルガ・コクローヴァーの完璧な無表情と平静さを湛えた美しさを数多く肖像画に描いている』

  ‏  2015/06/01  『F国 …

no image
日本リーダーパワー史(576)昭和戦後宰相最大の怪物・田中角栄の功罪ー「日本列島改造論』で日本を興し、 金権政治で日本をつぶした

   日本リーダーパワー史(576) 昭和戦後宰相列伝の最大の怪物・田 …

no image
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』⑯「伊藤博文統監はどう行動したか」(小松緑『明治史実外交秘話』昭和2年刊)①

  「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓 …

no image
日本リーダーパワー史(636)日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(29) 『川上操六の日清戦争インテリジェンス② 『広島大本営」設置と「ワンボイス」で陸海軍を指揮したリーダーシップと決断力「山県有朋を解任」

日本リーダーパワー史(636) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(29)   …