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高杉晋吾レポート⑨『空理空論で連戦連敗の総括はできないー八ッ場ダム反対集会に参加しての感想』

      2015/01/02

高杉晋吾レポート⑨
 
空理空論で連戦連敗の総括はできないー八ッ場ダム反対集会に
参加しての感想

                                                           高杉晋吾(フリージャナリスト)

 
「基本高水って何?」、2011年6月28日午後三時、衆議院第二議員会館第七会議室の集まりに出席しました。集まりは40名ほどでした。
その集まりに配布された弁護団の資料では『八ッ場ダム住民訴訟6年目の決算書』と銘打たれていました。
 私は結論的な感想を述べれば、このような集まりがダム被害に遭った人々や大地震、大津波に遭った人々の前で行われたら、その集まりは住民の怒りと不満によって空中分解したり、惨憺たる結果を招いただろうと思いました。
この『戦いの総括』によれば八斗島毎秒2万2千㎥の虚構の追及と虚構の証明暴露こそが「八ッ場ダム裁判の決算だ」ということになるらしいのです。この集まりの趣旨を説明すると、説明するだけで舌がねじ切れるような混乱に陥ります。
<難解語のオンパレード?>
「基本高水」「パラメーター」「飽和雨量」「ハイドログラフ」「貯留関数法」
などという普通社会では全く使われず、なじみのない言葉が、生で講演者によって語られるのです。
エリートだと自分で思っている専門家等が普通の言葉で語れば分かることをエリートの自己身分保障語としてチンプンカンプンに話すものだから、日本人の誰にもわからない。
分からないことを話すと「偉い人だから難しいことを言っているのだ」と尊敬してしまう人が多いのでエリートたちはますます難解語の効用を感じて難しくする。
代表例として法律用語があります。裁判官、検事、警察、弁護士にしか分からない用語が使われるので普通の人たちは法曹の世界には参加できない。そのことで法曹の世界は、エリートの特権生活圏を作りだしているようです。住民のものであるはずの反対運動の集会が、このような難解な言葉が飛び交うような場になったのでは誰でも反対運動への参加は嫌になってしまいます。
災害の問題は自分の命を守ることです。エリートの難解語を尊敬することではないことは、今回の東日本大震災と巨大津波が証明しています。あんな巨大地震と津波を難解な用語で語った巨大治水施設推進の大学教授がいますが、彼の推進した巨大施設、ギネスブックに載ったほど巨大な湾口防波堤は、一瞬のうちに津波で破壊されてしまい釜石市は二千人におよぶ死者、行方不明者、都市部全滅ト云う大被害を出しました。
『百日の説法、屁一つ』とはこのことです。
そしてこの集まりの初頭に関良基拓殖大学準教授の講演が行われました。
講演の趣旨は、私なりにうんとかみ砕いていえば、
「国交省が八ッ場ダムを作る根拠としている昭和22年9月のカスリーン台風からの想定では、群馬県伊勢崎市の『利根川の基準点である八斗島』ではダムが無いと毎秒2万2千㎥の大洪水が襲うという想定になっている。しかしこの想定は嘘だ。実際の台風の流量はもっと少ない。実績の流量は1万7千㎥/秒である。」
「しかも、1万7千㎥と云う洪水量は戦中戦後の山林皆伐の時代に山の森林の保水量が極端に減少した時代の異常に多い洪水量である。したがって山がすっかり緑に覆われ、森林が比較にならないくらい増え山の保水量が大きくなった現在では1万7千㎥という台風による洪水実績さえも過剰な洪水量である」
「だから、国交省の想定は嘘であり、八ッ場ダムは要らない」
というのです。国交省の嘘は「貯留関数法」という計算法でやった。この誤りを自分は自分のやり方で証明した」と。
八ッ場ダムの反対するのは当然です。
しかし貯留関数法で掲載した結果出した国交省の数値が誤りで、自分が計算してその誤りを糺した、という災害問題を数字で証明し、争うと云うのが八ッ場ダム問題の戦いの焦点ではありません。
国、国交省や事業者が国民を嘘によって騙し公共事業を展開してきたことは、災害の現実に中では、その嘘によって進められてきた事業によって、自然災害は人災となり、災害が取り返しのつかないほど巨大なものに増大し、国民が命を失い、財産を喪失し、果てしなく逃げ惑い、恐怖と不安の人生を強要されること。
地球が現実によって証明したのであって、難解語による空理空論が証明したのではありません。こういう現実から遊離した思想で展開された八ッ場ダム裁判が連戦連敗するのは当たり前ですね。
加害者である巨大企業や国家は東電などの株主総会を見れば分かるように、現場では土下座までして見せて、総会では一切の責任を拒否するのが現実です。
この現実の前で、貯留関数法が誤りだ等という矮小な空理空論は消し飛んでしまいます。
この集会は8回も続けられるそうです。集会を企画したまさのあつ子さんは、高水論が理解されるようにと企画したそうですが、高水論を理解させようという視点が高いところから国民を見る視点です
。しかも、この最初の集まりを見れば、ますます難解な理論が展開されて市民、農民、漁民などが目を白黒させて嫌がるでしょう。試みに、9月の集会でやってみますか?国民から縁の無い思想貧困な抽象論議の集まりになりそうですからやめた方が良いですね。
の集会に参加しました。いかはその感想です。
 

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