日中北朝鮮150年戦争史(15)日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。日本最強の陸奥外交力⑧『「蹇蹇録』の結論「他策なかりしを信ぜむと欲っす」(これ以外の策はなかった)最後の1戦だった」
2016/07/21
日中北朝鮮150年戦争史(15)
日清戦争の発端ー日本最強の陸奥宗光の外交力⑧
『「蹇蹇録』の結論「他策なかりしを信ぜむと欲っす」
(これ以外の策はなかった)最後の1戦だった」
東亞同文会編集『対支回顧録(上)』〈1936年刊〉
から『日清戦役概論』の『開戦に至る経過』を紹介。
以上、これまでの日清戦争開戦までのいきさつについて、李氏朝鮮、清国側の対応、両国の日本観、朝鮮の宮廷政治、経済社会状況などを見てきた。
陸奥外交の強圧、強引ぶりばかりが強調されて、『加害者』日本、「被害者」朝鮮、中国という固定した、ステレオタイプ的な視点から、研究が多いからである。
戦争になるまでの経緯については、当事者3国からと、それを取り巻く西欧列強の多国間外交、軍事、恫喝、圧力、インテリジェンス(謀略)の駆け引き、各国のメディア、世論など含めた、総合的な多重関係から見ていかないと、その真相に肉薄することはできない。
中塚明著「日清戦争の研究」(青木書店、1968年)では「日清戦争のきっかけの1つとなった金玉均暗殺事件(朝鮮、清国の陰謀)について、あまり触れられていない。
防穀令事件については、日本帝国主義の収奪、搾取との視点からとらえられているが、東学党の乱そのものが過酷な徴税に対する積年の恨みからの農民一揆、百姓一揆の面が強く、朝鮮農民がどのような苦難の状況におかれて、反乱に立ち上がったのかという点を知るために、黄文雄その他の本から以下のように引用したのである。
日中北朝鮮150年戦争史(13)日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。 日本最強の陸奥外交力⑥『北朝鮮は世界最悪の人権弾圧国家、腐敗国家であり、李氏朝鮮が今も続いているとみれば、納得できる。』●『朝鮮事情』(ダレ著、東洋文庫)『〝生き地獄″を生きた李朝朝鮮の農民たち』
http://www.maesaka-toshiyuki.com/longlife/18384.html
日中北朝鮮150年戦争史(14)日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。日本最強の陸奥外交力⑦『朝鮮農民の置かれた状態はどうだったのか?』→『貪官汚吏の苛欽誅求(きびしく、容赦ない取り立て)な税金の取り立てにより「骨髄を剥ぐ」悲惨、過酷な惨状だった。
http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/18416.html
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以後、日清両国は戦争に向かっていよいよエスカレートしていき、両国とも先を競って大部隊を送り込み、互いに戦端の機をうかがい、外交交渉、謀略戦を展開していく。
日本側の対応、陸奥外交、川上参謀本部次長の戦略、インテリジェンスだけではなく、清国側・李鴻章指揮下の袁世凱・朝鮮担当、李鴻章指揮下の陸軍、北洋艦隊の動きの両面を逐一、見ていく必要がある。
東学党の乱が一応収まった段階で、両軍とも撤兵せず、特に日本軍の撤兵には『何が何でも先延ばししてとどまり、開戦のきっかけをつかめ』との陸奥の指示が、『侵略的意図の丸出し』と研究者から指摘されている。
この時点で、大国清国との戦争に勝てると思っているトップは川上、陸奥2人くらいのもので有り、勝負の前から勝って侵略を意図していたなどとは、結果オーライ、あとだしジャンケン的推測で、事実のプロセスを徹底して検証したうえでの結論ではありえない。
その後、日本側は日清両国での朝鮮政府へ『内政、地方制度、財政、法律、裁判、教育改正、反乱鎮圧、軍備増強などを改革せよ』を突き付けるが、これも開戦、侵略のきっかけをつかむための陰謀だとする―中塚本の見方である。
しかし、日清朝間の2回にわたる戦乱、数々の紛争の根本原因は「朝鮮政府の前近代的な封建体質、旧弊制度」(この連載12,13,14回で言及)にあり、この改革なくして近代国家に脱皮できないのは自明であり、開戦、侵略的意図とは、またべつものであろう。
陸奥は『「蹇蹇録(けんけんろく)」の最後の部分で「他策なかりしを信ぜむと欲っす」と書いている。「他の誰であってもこれ以外の策はなかった」との意味だが、これは三国干渉への対応をめぐっての思いと同時に、日清戦争全般に対しての『これ以外に方法はなかった』という正直な告白録であるとおもう。
日本よりも陰謀、策謀、奸計に数倍たけた清国、朝鮮を相手に手を焼いて、30年近く振り回されてきた明治政府、軍部の「話してもわからない相手に」外交で対決して決裂、ついに、堪忍袋の緒を切って「ほかに策のない最後の1手としての開戦であった」というのが正解であろう。
次に、東亞同文会編『対支回顧録』〈1936年刊〉から
『日清戦役概論』『第一項 開戦に至る経過』を紹介する。
明治十五年(1882)壬申事変、十七年(1884)の甲申事変の以後、朝鮮における日清両国の立場は、日清条約によって律せられていたが、年少気鋭の袁世凱はなおも朝鮮に留まってこれを『属国視』することを改めないばかりでなく、進んで朝鮮の内政に積極的に干渉し、日本の勢力排除に腐心していた。
これに対して、微力な朝鮮宮廷は、事大主義に因はれて、清国の圧迫、干渉に手も足も出せず、明治二十年の初め、韓国が修好のため公使を欧米諸国に派遣しようとした際、袁世凱は朝鮮宮廷のこの行動は、当然、清国政府に相談の上で決めるべきことである圧力をかけて、清国政府には計らず独断で、抗議を申してきたが、朝鮮宮廷は飽までも自主的に外交官派遣を敢行しようとした。
そこで袁世凱は大いに憤慨してこの旨を李鴻章に報告したところ、さすがに機を見て敏な李鴻章は
① 朝鮮公使が任地へ着いた場合は、必ず先づ清国公使館に赴き、清国公使から駐在国政府に紹介する。
② 会の席においては朝鮮公使は必ず清国公使の下位に坐し、重要事件は一切、清国公使の意見を聞いて後、朝鮮公使がこれを処理する。
ーなどの條件の下に宗属関係を明かにすることにして、朝鮮宮廷もこの李鴻章の説を容れて実行したとい事実があった。
又、明治二十三年〈1890〉から二十六年〈1893〉に至るまで、日本と朝鮮間に紛争を続けた防穀令の問題についても、袁世凱が裏面から朝鮮政府をあれこれ指図して、あくまでも日本に抵抗させた事実があったり、朝鮮の内治も外交も殆んど極度の乱脈,紊乱に陥り、自主的な所は微塵もなく漸次、腐敗の度を増していった。
殊に当時の王妃閔氏はその一族とともに政権を執って、専横至らざるなしといふわけであったから、政治に対する民心の不平は随所に充満するという状態であった。このような情勢下で明治二十七年五月、全羅、忠清両道を中心として京城にまでも及んだ東学党の乱が蜂起し、閔族政府反対の叫びが、朝鮮内に満ちてきた。
もちろん、朝鮮宮廷は無力で、これを抑圧する力はなく、険悪の状態は各都郡に続々と蔓延するありさまとなったので、朝鮮国王は清国駐韓商務総弁・袁世凱宛に援兵を乞うたのであった。
袁世凱はこの旨、直ちに北洋大臣李鴻章に電稟したので、李は水師提督丁汝昌に命じて、軍艦済遠、揚威を仁川に急行せしめ、方直諌提督葉志超に命じ、陸兵千五百名を率いて朝鮮へ急派し、駐日公使・汪鳳藻をして、天津條約に基いてこの旨を。我が外務省へ通牒せしめた。
清国がかくも敏捷に時務を処理し、出兵の事を運んだのは、当時、日本は議会再解散の時で、内治多忙の折柄であり、かつ日本には戦意なしとの李鴻章の謬見から、この機会において朝鮮を完全に属国としようとの、李鴻章一流の武断的野心から出たもので、袁世凱の日本軽視、韓国強圧論が更に拍車をかけたものに外ならない。
そして、六月七日、駐日公使・汪鳳藻から外務省へ『行文知照』の通知があった。
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