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終戦70年・日本敗戦史(105)「情報タレ流し」から「情報正確追及・分析」企業へ脱皮を。製造物責任法(PL法)を自覚せよ

   

 終戦70年・日本敗戦史(105

再録 <ネット時代の社説論説『本質に迫るための

検証報道ーメディアは速報性のワナにはまらず、

その背景に迫れ』②『新聞研究』2007/6(No,671)

             静岡県立大学国際関係学部教授 前坂 俊之

ニュースの製造・販売責任

松坂ケースの前例として、二〇〇六年のサッヵーW杯ドイツ大会での報道を思い出してみよぅ。ジーコジャパンは一回戦の突破は間違いないというような戦前、楽観的な予測だったことは記憶に新しい。オーストラリアには勝てる、クロアチアよりFIFAランキングは上なので日本が強い、ブラジルもジーコに敬意をもっているので全くチャンスがなくもない、などなどスポーツ紙はもちろん、新聞、テレビは希望的観測記事で占められていたが、いざ成績は目も当てられぬ惨敗だった。

それまでの得点力、決定力不足、アウエーで弱い日本病」が本番で一挙に再発した。期待過剰の応援団報道は無惨な結果に終わったが、ここでもまた徹底した敗因分析もサッカー協会の責任追及の声もジャーナリズムからは起こらなかった。

見通しを誤り、結果的に誤報したジャーナリズムの責任を問うも発せられなかった。失敗の総括なくしては勝利の展望は開けないが、当のサッカー協会も敗戦を十分総括せず、問題を先送りしてしまう。ジャーナリズムもこれに呼応して、きびしく検証しないという政・財・官・メディアの総癒着、なれ合い構造の一端がここにも現れている。(以下の文章は今回付け加えた=大東亜戦争とまるで同じ総無責任体制、国家総動員体制・赤信号みんな渡れば怖くない、そして、みんな転んで死んじゃった病なのである。トップがころべばみな転んじゃった日本病なのである)

ちょうどこのサッカー大会の前後に、日本にとって最大のテーマとなった国連安保理常任理事国入り問題でもこのパターンが繰り返された。国連外交を高く掲げた日本外交のこの悲願は靖国神社参拝問題で、中国からの支持が難しい状況に陥り、日米同盟一本やりの小泉外交では難航が予測された。

しかし、米国に次いで第二位の国連分担金(〇五年で全体の一九・五%)を長年払い続け、従来からの多額のODAの実績によってアジア各国を中心とした日本支持は固いと見て、政府、外務省は総力を挙げて取り組んだ。

イザふたを開けると共同提案国になってくれたのはブータン、アフガニスタン、モルジブのわずか三か国のみ、他のアジア各国には完全にそっぽを向かれるという惨々たる結果に終わった。事前の政府、外務省の強さの読みは完全に外れた。日本にとって千載一遇のチャンスを逃がした。これまでに巨額のODA資金をつぎ込んだ対

ァジア外交は完全な敗北で、政治家の外交能力の欠如、外務省の見通しの甘さ、メディアの情報分析力の欠如という三重のインテリジェンス不能症によって、戦後の外交史上に残る一大敗戦となった。

歴史的に見ると、日本は創設以来の国際連盟

の常任理事国(英、仏、イタリア、日本)だったが、一九三三年に満州国独立の支持が得られず国際連盟から脱退した。この結果、国際的な孤立化を深め、戦争の道に転落していく外交失敗となったが、いずれのケースも対中国外交の失敗のはね返りである。

この歴史的な敗北の原因も責任も政治レベルでは十分総括されず、問題先送り、メディアもきびしく検証する姿勢もみられなかった。こうしたことの連続、敗北と問題先送り、再び失敗というくり返しではないか。

っまり、日本の停滞、じり貧の原因の一つは政治、行政サイドのこうした政策の失敗とその責任をジャーナリズムが徹底して追及せず、その後もまた検証しないことにある、と思う。

事実の本質に迫るのがジャーナリズムの役割なのに、単に状況を追っていくだけの情報伝達を報道の任務と考えており、結果的にまちがった予測を書いた責任、誤報はこれは欠陥商品(間違った情報、誤報)を出したことになるが、その製造、販売責任を自覚していないのである。

製造物責任法(PL法)に規定する製造物とメディアの情報、ニュースとしての商品とは確かに違う面もあるが、一般商品と比べてニュースの社会的な影響力、誤報による損害は圧倒的に大きい。それなのに、ジャーナリズムはその社会的責任を自覚していないのである。

アジェンダセッティングの強化を

筆はこの百年、日本のジャーナリズム(主に新聞)のスタイルはあまり変わっていないな、と書いたが、それは【太平洋戦争と新開」を出版した中で、昭和の初期から太平洋戦争敗戦までの新聞の戦争報道、社説を調べた結果の感想である。

たとえばこれは十五年戦争の引き金となった日本軍が謀略によって引き起こした満州事変後(三一年) の各紙の社説をみると、関東軍の軍事行動を即支持して、「中国を撃て、懲らしめろ」という強硬な暴支庸懲論を展開している。情報統制によって軍、国のプロパガンダしか書けない状況下に新聞が置かれていたとはいえ、紙面は誤報の連続である。

国際連盟脱退の際の社説を見ると、これまた大部分の新聞が「即脱退せよ、国連は認識不足」と、国際認識の欠けた、内向きの思考の強硬論、脱退論のオンパレードである。

全新聞がほぼ歩調を合わせた集団画一的、挙国一致・ヒステリック報道である。このあと、太平洋戦争に突入し、敗戦までの間は、ウソの発表の代名詞となった大本営発表しか書けない状態となったが、より一層「勝った、勝った」 の間違いだらけの戦意高揚紙面の連続である。

七十年前の紙面だが、センセーショナルな大胆な見出し、紙面展開でプロパガンダ一色となっており読み返すのが恐ろしいほどである。

確かに言論統制法規で手足をしぼられて書けなかった面もあるが、戦況の速報競争に血道をあげて、軍事行動の即追認におわれ、立ち止まって事実に過り、プロパガンダを暴いていく本質報道ができなかった。それ以上に新開に事実を見抜き、政策の間違いを見破る日、情報分析力と書く勇気がなく、軍、国の暴走に歯止めをかけられなかったのである。

それは戦時下当時のジャーナリストの石橋湛山、清沢冽、桐生悠々、正木ひろし、水野広徳らの日記や論説と新聞社説を比較すれば、どちらが現状認識力、情勢分析が正しく、戦争の行方を的確に見通していたかはよくわかる。結局、戦争の.原因は国も軍人も政治家もメディアもインテリジェンスに欠けていたということであり、特に情報のプロであるべき新聞記者の責任は大きい。

こうした戦争中の「戦局報道」、政治報道での「政局報道」が七十年たっても質的転換を遂げられなかったように、九〇年代の「バブルの金融、経済敗戦」「失われた十年」も、国による公共事業優先・国債大発行の経済対策失敗の「失った十年」と化したが、この不況景気報道も、同じパターンがくり返された。毎年の経済対策や構造改革の結果がどうだったのか、その結果と本質を立ち止まってきびしく検証する作業をメディアは十分果たしてこなかった。

「国際会議で中国人、インド人を黙らせるのは難しい。それ以上に日本人にしゃべらせるのはもっと難しい」とのジョークがある。発言しない、議論しない、交渉下手でコミュニケーションの苦手な日本人は当然外交力も弱い。そのせいで日本のジャーナリズムも議論が少ないし、アジェンダセッティングカが弱いと思う。

新聞はテレビ、インターネットに速報性では全くかなわないので、じつてり本質にせまる検証報道、P情報分析力、情報鑑定力でこそ勝負すべきだし、社説はその新開の見識、インテリジェンスが最も反映される桐なのである。

そんなことを考えながら、この五月三日の各紙の社説をみて、驚いたのは朝日の紙面展開である。「提言・日本の新戦略」として、社説二十】本を同時に全八ページをつぶして掲載していた。これは新聞史上でも初めての試みだろう。大いに議論すべきである。

(まえさか・としゆき)

 - 戦争報道

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