前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

終戦70年・日本敗戦史(86)陸軍反逆児・田中隆吉の証言⑥『紛糾せる大東亜省問題――東條内閣終に崩壊せず』

      2015/06/02

 

終戦70年・日本敗戦史(86)

敗戦直後の1946年に「敗因を衝くー軍閥専横の実相』で

陸軍の内幕を暴露して東京裁判でも検事側の

証人に立った反逆児・田中隆吉の証言⑥

『紛糾せる大東亜省問題――東條内閣終に崩壊せず

         田中兵務局長は昭和17年9月に陸軍を去った。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E9%9A%86%E5%90%89

ミッドッドウェイ及びガダルカナルの敗戦は私をして、大東亜戦争の前途に対する悲観的見解を決定的のものにした。

この戦争は必敗である。必敗と定った戦争ならば、機を捉えて速かに和平を行わなければ、終に国は危うくするとの見解を抱かしめた。しかも東条首相及びこれををめぐる軍閥は、勝てば馬車馬の如く着地に突進して止まる所を知らぬであろうし、負けれは必ず最後の一人まで戦わんとして狂気の如く騒ぎ回るであろうことは疑う余地がない。

東条氏の如く独善にして直諫を好まず、阿諛追従の徒を喜ぶ私心の強き人を総理の地位に戴くことは国家の滅亡を招く以外何物もない。

従って私は一日も速かに東条氏をしてその地位より去らさせることが日本を救う道であると考えた。たまたま九月の始め頃から大東亜省設置問題

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%9D%B1%E4%BA%9C%E7%9C%81

http://www.c20.jp/1942/09daito.html

http://www.mekong.ne.jp/directory/military/daitouasho.htm

をめぐって東条首相と東郷外相の対立が表面化して来た。

大東亜省設置の発案者は鈴木企画院総裁

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%88%B4%E6%9C%A8%E8%B2%9E%E4%B8%80

と及川興亜院総裁

http://sakurataro.org/db/%E5%8F%8A%E5%B7%9D%E6%BA%90%E4%B8%83

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%88%88%E4%BA%9C%E9%99%A2

である。その目的とする所は表面はこれに依って、日本軍の占領地域内における、各独立国との関係を円満に処理せんとするに在るも、事実は、この地域内の戦用資源を最大限に利用せんとするものであって、ある意味においては、範を英国の印度省に採った、東亜諸民族に対する一種の搾取機関である。

この処置は大東亜戦争の遂行途上においては、或は巳むを得ざる所であるかも知れぬが、それがためにはむしろ外務省を拡大強化するのが、東西各地域の諸民族をして、あたかも日本の属領化さたるが如き誤解を抱かす点において、はるかに勝っておるのである。

ある消息通はこの大東亜省設置問題を捉えて宇垣一成外相の当時、陸軍が、外務省の反対を押し切って興亜院を設置したことがあるため、いまさらを外務省に併合することはその面目に関るものとし、これを拡大強化して大東亜省なる別個の機関を作り、しかも前興亜院総裁鈴木氏が大臣に、当時の興亜院総裁及川氏が次官たらんとした野望から出たものであるという。あまりにうがち過ぎた言なるも、もし事実なりとすれば正に唾棄すべき軍人の陰謀と言わねばならぬ。

敢然、この問題は是が非でもこれを設置せんとする東条首相と、絶対にこれを非とする東郷外相

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E9%83%B7%E8%8C%82%E5%BE%B3

との間に超ゆべからざる溝渠を作った。

東郷氏と同郷にして氏と親交ある臼井胤正氏が便として私を訪れ、東条対東郷の間は既に緩和の方法が絶無となった。この際東郷氏は如何なる態度を採るを可とするやと質問した。

私は「東条首相は速かに首相を止めて第一線に出るか、或は引退するのが国家並に本人の為であると信ずる。それは東条氏の性格から見て好機を捉えて、この戦争を打ち切ることは絶対に出来ないからである。若し此戦争を中途で打ち切り得ずとしたならば日本は、亡滅の外はない。

大東亜省の設置は、東亜各地域の民族としてややもすれば、我日本を帝国主義的国家なりと曲解せしめその結束を乱す恐がある。故に外相はこの問題を提げて東条内閣を総辞職させることが国家の為である。しかしこの意見は兵務局長としては政治に干興することになるから外相がもし失敗すれば、私も必ず軍職を去る」と答え、その伝言方を臼井氏に依頼した。

それかあらぬか東郷外相は決然として内閣の総辞職を固執して譲らず、最後まで頑張り通さんとしたが、嶋田海相が東条氏に替って東郷氏を慰撫し、最後に「外相の行為は御上に於て喜ばせられず」とてその翻意を懇請するに及んで、外相はこの上聖慮を煩し奉るは臣子の分にあらずと信じ終に単独辞職を決行した。かくして東条内閣は倒壊の危機を脱した。

私は東郷氏との約束に基き、其の職を辞して、1942(昭和17)年9月22日午後1時陸軍省を去った。去るに当って来訪した、年来の親友、東亜海運の副社長内田茂氏に辞職の理由を問われたので、机上に在った白紙に「軍閥亡国」の四字を書いて示した。内田氏は「自分もそれを恐れる」と答えた。

 - 戦争報道

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟の清国への影響」⑦1902(明治35)年2月24日 『申報』『日英同盟の意図は対ロシア戦争ーこの機会に乗じて富強に尽力すべし』★『日本はロシアを仇とし『臥薪嘗胆』しロシアを破ることを誓っているが、自国の戦力、財源は 豊かではないので、イギリスを盾にした。』

   ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟は清国にどうはね返るか …

no image
『オンライン/真珠湾攻撃(1941)から80年目講座➂』★『日米インテリジェンスの絶望的落差』★『ルーズベルト米大統領は、カントリーリスクマネージメントの失敗を是正するため新しい情報機関(CIA)の設置を命じた』★『一方、日本は未だに情報統合本部がな<<3・11日本敗戦>を招いた』★『2021年、新型コロナ/デジタル/経済全面敗戦を喫して、後進国に転落中だ』(下)』』

    2011/09/17  日本リー …

『Z世代のための昭和戦後宰相論』★『中曽根康弘首相の長寿逆転突破力』★『戦後総決算」を唱え、歴代内閣が実現できなかった行財政改革を敢然実行した』★『「ロン・ヤス」の日米関係蜜月、韓国を電撃訪問し、日韓関係を一挙に改革、胡耀邦氏と肝胆合い照らし日中関係も改善。口先だけではない即決断実行型の首相だった』

『Z世代のための昭和戦後宰相論』★『中曽根康弘首相の長寿逆転突破力』★『戦後総決 …

no image
「グローバル・ウイアーデイング(地球環境の異常変化)」の時代➀ー『今後、数百年にわたってこのうだるような暑さが続き、海面がそびえ立つほど上昇する地球の気温の上昇がギリギリの臨界点(地球上の森林、海、地面が吸収するCO2吸収のフィードバックプロセス)を超えてしまうまで、あとわずかしかない」』

  「グローバル・ウイアーデイング(地球環境の異常変化)」の時代 &n …

『 2025年は日露戦争120年、日ソ戦争80年とウクライナ戦争の比較研究②』★『日露戦争でサハリン攻撃を主張した長岡外史・児玉源太郎のインテリジェンス②』★『山県有朋や元老たちの判断停止・リダーシップの欠如』

●山県有朋や元老たちの判断停止・リダーシップの欠如    日露戦争当時 …

 『日中韓/異文化コミュニケ―ショウの研究』★『月刊誌『公評』(2014年7月号) 『異文化コミュニケーションの難しさ― 「中華思想」×『恨の文化』⇔『ガマン文化』の対立、ギャップ➃

  月刊誌『公評』7月号―特集『実感』❹   『異文化コミュ …

『Z世代への昭和史・国難突破力講座』★『戦後政治の礎を築いた大宰相・吉田茂首相のインテリジェンスと胆力・ユーモア』★『マッカーサーと昭和天皇の会談が13回、 吉田は合計75回も面会した』●『大往生(89歳)の秘けは「カスミを食うこと、いや人を食うことだな」

  2016/02/11 /日本リーダーパワー史(666) 昭和の大宰 …

no image
終戦70年・日本敗戦史(133) なぜ国際連盟を脱退し「世界の孤児」と化したのかー「満蒙の特殊権益」を死守するためで、 新聞は一致して脱退を支持した(1)

終戦70年・日本敗戦史(133) <世田谷市民大学2015> 戦後70年  7月 …

no image
 世界、日本メルトダウン(1020)―『金正男暗殺事件を追う』●『北朝鮮崩壊の「Xデー」迫る!金正恩は、中国にまもなく消される』★『金正男暗殺、北朝鮮の容疑者は国家保衛省4人と外務省2人か』●『金正男暗殺の謎 北朝鮮、従来の「工作作戦」と異なる手口』★『  北朝鮮レストラン「美貌ウェイトレス」が暴く金正恩体制の脆さ(1)』●『北朝鮮独裁者、「身内殺し」の系譜』●『金正男氏暗殺の裏で正恩氏の「拷問部隊」が暗躍か』

 世界、日本メルトダウン(1020)   北朝鮮崩壊の「Xデー」迫る! …

no image
世界/日本リーダーパワー史(903)-『米朝会談はどうなるか、米国はイラン問題を優先し、 東アジア情勢は先延ばしで日本ピンチか!』(下)『トランプへの片思いに過ぎなかったのか安倍首相!』★『欧米流のポーカーゲーム対日本流の「丁か半か」の外交戦!』★『習近平主席の「終身皇帝独裁者」の今後!』

世界/日本リーダーパワー史(903) トランプへの片思いに過ぎなかった安倍首相 …