前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉗「長崎事件に対しての英側の見解」(英「ノース・チャイナ・ヘラルド」)

      2015/01/01

  


 

『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史

日中韓のパーセプションギャップの研究



 

長崎清国水兵事件とは1886年(明治1981日にアジア随一を豪語した清国海軍(日本の海軍力など目ではない)が北洋艦隊の定遠、鎮遠、済遠、威遠の4隻をデモンストレーションに日本に向けて、長崎港に入港、清国水兵が勝手に上陸して遊郭『丸山楼』に上がり、コミュニケーションギャップから乱闘事件を起こし、それを阻止しようとした警官、市民と大乱闘事件に発展し、結局、清国人士官1人死亡、3名負傷。清国人水兵3名死亡、50人余りが負傷。日本人側も警部3名負傷、巡査2名が死亡、16名が負傷。日本人住民も十数名が負傷)という大事件となった。

この事件の交渉役は鳩山由紀夫の曽祖父の鳩山和夫(衆議院議員、国際弁護士)が担当、被害弁済の交渉を行ったが、いつもの通りの『パーセプションギャップ』によって裁判紛争で、これも8年後の日清戦争の原因の1つになった。

 

長崎における紛争事件(長崎清国水兵事件)

http://maesaka-toshiyuki.com/detail?id=1833

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E5%B4%8E%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 

 

 

 1886(明治19)年1215日、英「ノース・チャイナ・ヘラルド」

 

 

長崎事件に対しての英側の見解

 

長崎の暴動について,有益と思われる提言を行いたいと思う。最新の情報によると,この暴動の長崎における折衝が暗礁に乗り上げたため.場所を東京に移したという。そこでもまた,審理は果てしなく続きそうな気配で,中国にとっても,日本にとっても,費用がかさみそうだ。

 

これはまた.日本で今のところ収まっている中国への反感を呼び覚ましそうで.

現地語新聞は,ノルマントン号事件

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%A
B%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3
%E5%8F%B7%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 

http://www.ffortune.net/social/history/nihon-mei/normanton.htm

 

から人々の関心をそらす副次的な目的で,この件について書き立てては,反感をあおり立てている。

 

実際,東京の有力紙の中には,長崎の暴動に際して中国人がとった行動,そして,ノルマントン号事件の際に日本在留のイギリス臣民がとった行動が,どれほど日本人の感情に大きな違いを与えているかについて,指摘しているものが12紙ある。

 

が,2つの場合に類似点は全くない。中国側の感情はすべて政府筋のものだけで,中国の一般民衆の中には,この暴動について知る者は2人といないだろう。

 

一方のノルマントン号事件で,日本人に強く同情したのは.ほかならぬ.日本にいる一般のイギリス人たちだった。長崎の暴動はかなり前に起きたことなので,ここで.もう1度.簡単にそのあらましを振り返ってみるのもよいかと思

われる。

 

中国の艦隊が.去る8月に中国人の丁提督とイギリス海軍のラング提督の指揮の下、長崎を訪れたとき,上陸許可を得た船員たち(彼らは往々にしてけんか早い人間なのだが)は.その月の13日に陸で警察とトラブルを起こし,日本人警官1人が負傷,中国人1人が逮捕された。

 

そして,その2日後,400人近い中国人が休暇を与えられた。日本側の説明によれば,中国人は,このとき,同僚の仇を討つつもりで陸に上がり,街に住む中国人から武器を受け取ったという。

 

だが,中国側は.いっものとおり武器を持たずに,全く平和的意図で.陸に上がったところが,両国の下層階級の間に存在する長年にわたる嫌悪感にあおられて.日本の警官が日本人商店主といっしょになって熱烈な出迎えの用意を整えていたのだと主張している。

 

だれがこの騒動を引き起こしたにしろ,中国人がいったん陸に上がると,事態は深刻なものになり,暴動が起きて.中回人7人,日本人2人が死亡,中国人50人.日本人30人が負傷した。

 

 中国と日本の間には,さまざまな緊張があるが.中でも朝鮮と琉球諸島は顕著な問題で,両国間は,多かれ少なかれいっも緊張状態にある。

 

だから.今回の暴動は.どこの海港都市でも見受けられるけんか騒ぎとして.地元当局者に処置を任せておくほうが賢明だったのだ。

 

不運なことに,中国の高級官吏の多くは,日ごろから,日本を見下していたのに,最近日本が,西洋文明化の中で進歩をとげたために,その感情が激化し,日本を成り上がり者と考え,「高慢の鼻をへし折ってやるべき」だと考えている。

 

これに対して,日本人は,全く違う目で.自分たちの立場と力を見ていたのだ。

今回の事件に対する憤りは.日本のイギリス新聞各紙が,両方の言い分を聞かずに,一様に中国人を批判したので,火に油を注いだ形になった。

 

日本のイギリス紙は事件当時.長崎に停泊中だった中立国の軍艦の士官たちが.暴動の本当の責任は.日本の警察側にあると考えていたことは知らなかったのだ。

 

もし,それぞれの政府が,この件に関しては,あまり騒ぎを大きくしないようにと示唆していたならば,地元の役人たちを前にした審理でも.けんか両成敗という結果になり,これ以上とやかく言わないようにという提案がなされたことだろう。

 

ところが,李総督は,全く違う処置(それも,われわれの目からすれば.賢明な処置とは言えないものだった)をとった。

 

彼は,即座に長崎にイギリスの弁護士を派遣し,日本側も,むろん,その対抗措置として,横浜からイギリス人弁護士を送り込んだ。

 公式審理が始められ,上海からは.地代納付者の間でもあまり評判の良くない弁護士(彼は,以前,市の調査官をやっていた男で.偽名を使っていた)が送り込まれ,時間にして3か月.金にすれば,計り知れないほどの額がむだにされたというのに,その成果はなにひとっ出ていない。

 

さまざまなうわさが,日本の現地語新聞を飾り立てているが.新聞は,もちろん長崎警察が正しかったと信じ込んでいるし.中国側の委員たちが,ずるいやり方に出たと信じ込んでいる。

 

その上,どちらの国も専制君主制なので,一般大衆に今何が起きているのかがわかるように.審理の内容を明らかにせよと主張することさえできない。イギリス人弁護士が,故意に,審理の時間を延ばしているといううわさは,事実ではないと思う。

 

しかしもし彼らが登用されなかったならば,金銭上の水かけ論も,とうに決着がついただろう。つまり外国人の純粋な心は,みんなが望んだ結末を妨げるの

でしかなかったということだろう。

 

両国がこれ以上,深みに足をとられないよう,泥沼と化した審理に早くふたをする必要があるが,それには.中国と日本が.これまでに集めた事実を中立国の公使の前に差し出し,調停役になってもらうのが一番かと思われる。

 

これによって.どのような処置がとられようとも.このほうが,東京で新たに審理を始めるよりは.両国のふところにとっても,感情にとっても,いいのではないだろうか。東京で判決が出たとしても,負けた側が異議を唱えるのは明らかなことだが,それがもし.公明正大な調停者によって出された判決となれば,まさか.それを非難するようなことはあり得ないからだ。

 

 

 - 戦争報道 , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための近代史復習問題』★『<ロシアの侵略防止のために、山県有朋首相は『国家独立の道は一つは主権線(日本領土)を守ること、もう一つは利益線(朝鮮半島)を防護すること」と第一回議会で演説した』(国家リスク管理/「外交政略論)

2016/04/20/日本リーダーパワー史(701)/日中韓150年史の真実(7 …

『Z世代のための日本興亡史研究④』★『日本海海戦完勝の<東郷平八郎神話>が40年後の<太平洋戦争開戦と敗北>の原因の1つになった』★『ネルソン神話と40年後の東郷神話の同一性』

  第2次近衛内閣(1940年7月22日から1941年7月18)の和戦 …

no image
  ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < チャイナ・メルトダウン(1055)>『習近平のメディア・ネットコントロールの恐怖』●『言論規制下の中国で、「ネット経済圏」が繁栄するフシギ』★『習近平、3大国営メディアに「党の代弁」要請 全権掌握へ、「江沢民の牙城」に乗り込む』●『「マスコミの使命は党の宣伝」習主席がメディアの「世論工作」に期待する重要講話』★『中国式ネット規制強化で企業情報がダダ漏れの予感』●『習近平が危ない!「言論統制」がもたらすワナーメディアへの締め付けはいつか反動で爆発も』

  ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < チャイナ・メルトダウン(105 …

『Z世代のための安保防衛(戦争)論の歴史研究講座』★『世界・日本リーダーパワー史(537)三宅雪嶺(第一回文化勲章受章)の「日英の英雄比較論」―「東郷平八郎とネルソンと山本五十六」

 2015/01/15日本リーダーパワー史(537)記事再録 三宅雪嶺 …

no image
日中ロシア北朝鮮150年戦争史(46)『日本・ロシア歴史復習問題』★ 「満州を独占するシベリア大鉄道問題」-ウィッテ伯回想記から 『李鴻章と交渉に入る』『ニコライ皇帝と李鴻章の謁見と敵国 の日本の密約締結』

  日中ロシア北朝鮮150年戦争史(46) 『日本・ロシア歴史復習問題』★  「 …

no image
世界/日本リーダーパワー史(901)米朝会談への参考記事再掲ー『1993、94年にかけての北朝鮮の寧辺核施設疑惑でIAEAの「特別査察」を拒否した北朝鮮がNPT(核拡散防止条約)を脱退したのがすべての始まり』★『米軍はF-117戦闘機で寧辺の「核施設」をピンポイント爆撃し、精密誘導爆弾で原子炉を破壊する作戦を立案した』

2009/02/10掲載 有事法制とジャーナリズム-1993年の北朝鮮核疑惑から …

「トランプ関税と戦う方法論⑭」★『日露戦争勝利と「ポーツマス講和会議」の外交決戦始まる②』★『その国の外交インテリジェンスが試される講和談判』★『ロシア側の外交分裂ー講和全権という仕事をウイッテが引き受けた』

  2022/04/07/ オンライン講座/ウクライナ戦争と …

『Z世代のための<日本政治がなぜダメになったのか、真の民主主義国家になれないのか>の講義⑥『憲政の神様/尾崎行雄の遺言』★『先進国の政治と比べると、日本は非常識な「世襲議員政治』★『頭にチョンマゲをつければ江戸時代を思わせる御殿様議員、若様議員、お姫さま議員のバカの壁』★『総理大臣8割、各大臣では4割、自民党世襲率は30%。米国連邦議会の世襲率は約5%、英国の世襲議員は9%』★『封建時代の竹刀腰抜けの田舎芝居政治を今だに続けている』

2018/06/29   日本リーダーパワー史(921)記事 …

no image
『リーダーシップの日本世界近現代史』(300)★『明治トップリーダーのインテリジェンス』★『英仏独、ロシアのアジア侵略で「日中韓」は「風前の灯火」の危機に!』★『国家危機管理能力が「日本の興隆」と「中韓の亡国」を分けた②』

 2015/07/11終戦70年・日本敗戦史(107)記事再録 <歴史 …

no image
日本敗戦史(51) A級戦犯徳富蘇峰が語る 『なぜ日本は敗れたのか』③「米英ソ中のリーダーと東條、近衛の指導者との圧倒的な差」

日本敗戦史(51) マスコミ人のA級戦犯指定の徳富蘇峰が語る 『なぜ日本は敗れた …