前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『「申報」『外紙』からみた「日中韓150年戦争史」(64)『(日清戦争開戦50日後)-『ロイターと戦争報道』

      2015/01/01

『「申報」『外紙』からみた「日中韓150年戦争史」

日中韓のパーセプションギャップの研究』64

 

  1894(明治27)年919ニューヨーク・タイムズ

 

『(日清戦争開戦50日後)-ロイターと戦争報道

セントラル・ニュースとユナイテッド・プレスの大活躍

 

 

ロンドンの新聞業界は,日本と中国の戦争に関する報道に関して,ロイターの東洋における活動が破綻をきたしていることに驚きを表している。朝鮮をめぐる中国と日本の問題に関し.ロイター通信社は当初より.その情報源として上海に住む1人の老競売人に依存していた。

 

この人物は新聞記者でもなく,また上海市の中でも情報を即座にかつ正確に得られる地域に住んでいるのもでない。すでに老境に達した同通信員は,現在起こっている戦争が欧米にとって取るに足らない関心事であるとみなしていたようで,送られてくる情報の数も少なく.どれも短信で即時性に欠けるものだった。

 

 ロイターはこれ以外に,戦争の舞台となっている地から直接情報を入手する手段を持っておらず,同通信社が発送するニュースはどれも,ロンドンにある各国公使館から収集されたものだ。

 

当然そうしたニュースは,地元ロンドンで得られたものとして発信されるべきだが,同社は海外の発信日時を付けて電信情報として送り出している。ロンドンの地元紙は.こうしたからくりに惑わされることはないが,アメリカの大衆は「アソシエーテッド・プレス」と称するシカゴの組織を通じて,まんまとこの手のニュースをつかまされることになる。

 

アソシエーテッド・プレスへは,あたかもはるか海外から送られてきたニュースであるかのように,上海や東京の日付の記された電信が入るわけだ。しかしそれは,実際にはロンドンの各国公使館から得た情報であり,当然ながらセントラル・ニュースやユナイテッド・プレスが,戦場から直接受信する迅速で正確な電信情報に比べ.はるかに後れをとったものとなっている。

 

 ロンドン各紙は,全くロイターに依存することをやめてしまった。代わりに,ユナイテッド・プレスが,アメリカ国内でセントラル・ニュース電をすっかり配信し終えるのを待って,同電を転載するようにしている。

 

このためロンドン各紙は,朝鮮における戦争のニュースを得るのに.それが同市から西へ30006000マイルも離れた,ニューヨークからサンフランシスコに至るまでの地域で.新聞記事になるのを待たなくてはならないのだ。

 

 こうした状況が最も顕著に浮彫りにされたのは,日本軍が中国軍を朝鮮において打ち破り,同半島の支配を掌握したという,あのきわめて重大な平壌の戦いに関する報道だった。

 

ユナイテッド・プレスに加入している各紙は,917日月曜日,アメリカ全土でこの重大なる戦闘に閑し詳細な長文記事を掲載している。同記事はユナイテ

ッド・プレス加入の夕刊各紙に掲載されたが.ロイターと提携するいわゆる「アソシェーテッド・プレス」からニュースの供給を受けている新聞は,同記事が出るまで戦闘に関しひと言の言及もなかった。今朝のロンドン各紙は.1段以上を割いてセントラル・ニュースの戦争関連記事を掲載しているが.ロイターに基づく記事はわずか12行だけだ。

 

 セントラル.ニュースは以前から,イギリスおよびヨーロッパ大陸における情報収集に関する限り,近代的な方法と有能な通信員とをもって,駅馬車時代そのままの機構を擁するロイターに,すでに取って代わったとみなされてきた。

 

しかし,欧米から遠く離れた地域のできごとに関するニュースについては,ロイターに頼らざるを得ないという,消しがたい伝説がいまだ多くの人々の心に根づいている。スーダンでの戦闘や,戦艦ヴィクトリア号の沈没をはじめ,東方での重大事件においてセントラル・ニュースが見せたすばらしい活躍は,実際こうした妄想を揺るがしたと言えるだろう。

 

そして今,日本による宣戦布告から李鴻章の面目失墜までを.最初に報道したという功績にふさわしく,その続報として平壌の戦いでものにしたすばらしい「特ダネ」は,従来の幻想を完全に消散させたと言えるだろう。セントラル・ニュースとの提携によって,ユナイテッド・プレスもまた,その恩恵にあずかっている。

 

 ロイター機構の弱体化については,しばらく前からうわさされていたが,同社の東洋における活動が完全に崩壊していることからも.先月ころから次第にその信憑性が高まってきた。かつては名だたるこの通信社が,いかに落ちぶれたかは,8ポンドだった同社の株価が,現在ではたったの2ポンド15シリングに下落したという事実からも,うかがい知ることができるだろう。

 - 戦争報道 , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 日本メルトダウン(1068)>★『北朝鮮の暴発はあるのか』第2次朝鮮戦争勃発の危機が高まる!?(7月ー8/25日までの経過)

★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 日本メルトダウン(1068) …

no image
日本リーダーパワー史(839)(人気記事再録)-『権力対メディアの仁義なき戦い』★『5・15事件で敢然とテロを批判した 勇気あるジャーナリスト・菊竹六鼓から学ぶ②』★『菅官房長官を狼狽させた東京新聞女性記者/望月衣塑子氏の“質問力”(動画20分)』★『ペットドック新聞記者多数の中で痛快ウオッチドック記者出現!

日本リーダーパワー史(95) 5・15事件で敢然とテロを批判した 菊竹六鼓から学 …

no image
人気記事再録/「日本興亡150年史―外国人が日本を救う』★『明治の大発展から昭和の戦争敗北が第一の敗戦』★『戦後(1946年)廃墟から立ち上がり独立、奇跡の高度成長で世界第2の経済大国にのし上がるが、一転、バブルがはじけて第2の敗戦へ』★『「少子超高齢人口急減国家」「ゾンビ社会」に明日はない』

2018年6月20日/日本興亡150年史―外国人が日本を救う。 日本はついに移民 …

no image
世界/日本リーダーパワー史(966)ー『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショナリズムの対立(上)』★『トランプとロシアとマフィアの三角関係』★『政治ショウ化した弾劾裁判のむつかしさ』

世界/日本リーダーパワー史(966) トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショナ …

no image
日中北朝鮮150年戦争史(11) 日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。日本最強の陸奥外交力④『陸奥が徹底したこだわった宗属関係の謎とはー』李朝は、宗主国「清朝」の代表的属国。 朝鮮国王は、清国皇帝の奴隷のまた奴隷である。

日中北朝鮮150年戦争史(11)  日清戦争の発端ー陸奥宗光の『蹇々録』で読む。 …

no image
  『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑥『日露戦争の原因となった満州・韓国をめぐる外交交渉決裂』●『<ニューヨークタイムズ記事>1903年4月26日 「ロシアの違約、日本は進歩の闘士」』

   『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑥ 日露戦争の原因となっ …

『Z世代のための日中韓外交史の研究』★『日中韓サミット、5月下旬で調整 実現すれば19年以来(ブルームバーグ)の幻?」★『日清戦争1ヵ月前の新聞報道を読む④「清国流の詐術にひっかかるな」と国民新聞は主張』

ブルームバーグ(4月5日付)は「(韓国主導で)日韓関係の悪化で2019年12月を …

『Z世代のための日中外交史講座②』★『日中異文化摩擦―中国皇帝の謁見に「三跪九叩頭の礼」を求めて各国と対立』★『日中外交を最初に切り開いた副島種臣外務卿(外相)の最強のインテリジェンス②』★『1873(明治6)年8月28日「英タイムズ」は「日中の異文化対応」を比較し、中国の排他性に対して維新後の日本の革新性を高く評価』

• 困難な日中外交を切り開いたのが副島種臣外務卿(外相)の外交力。 この困難な相 …

『Z世代のための明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破力講座⑧』★『杉山茂丸と玄洋社、頭山満の国難突破力3重奏』

●杉山茂丸と玄洋社について 夢野久作はその著「近世快人伝」中の「杉山茂丸」の項に …

no image
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉝総理大臣を入れない「大本営」、決断力ゼロの「最高戦争指導会議」の無責任体制➁

『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉝ 『来年は太平洋戦争敗戦から70年目― 『アジア …