前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代のための日本リーダーパワー史講座』★『江戸を戦火から守った山岡鉄舟の国難突破力③』★『活禅談じゃ、読書の論は何のクソにもならぬ』★『児玉源太郎と南天棒との活禅談の一喝!』

      2024/11/03

 
/日本リーダーパワー史(159)記事再録編集

活 禅 談

 
 明治の初期、排仏毀釈のやかましかった頃、荻野独園禅師は山岡鉄舟の邸に請ぜられて、参禅に接した。
 ある日の説法に「忠孝仁義というも、いたずらに名目にとらわれてはならぬ。名は後からつけたもので本体ではない」というような言葉があった。それを鉄舟の門下の一人で、儒学の素養があり、剣道では山岡道場の師範代をも務めた頑固一徹な男が聴いていた。
 
「ただの坊主の言葉なら聴き流しにもしょうが、いやしくも大教正管長ともあろうものが、忠孝仁義は後からつけた名だといったのでは、世道人心を毒すること甚しい。断然、聞き捨てにはならん。われ独園禅師の異端の邪説を説破し、仕儀によっては坊主首をはねてくれる」
とえらい見幕で憤慨し、鉄舟が如何にさとしても承服しない。そこでついに鉄舟立会いの上、禅師と討論することとなった。
彼はその前に鉄舟に証文一札を入れ、もし禅師を論伏し得なかった時は自分は切腹すると約束したほどで、その意気込みが知れる。
さて対決の当日、口角泡を飛ばしてまくし立てた男の言葉が一段落というところで、禅師はプカリブカリと吹かしていたキセルで、前の煙草盆の灰吹をコツコツと叩き、返す手で金属製の火入れをチンと打つと
「どうじゃ、今の音は何と鳴ったかな。貴公の耳が聞いた通りを正直に言うて見なされ」と云った。
 

彼は怒って「私は禅師にそんなことを問うているんじやない。そんなことは子供だってわかり切ったことだ。初めのはコツコツで、後のはチンじゃないか」 と云うのを、禅師はすかさず

「それじゃよ。そうわかればよろしい。よいかな、名は後からつけられたものじゃ。人が都合上撃につけた符ちょうじゃよ。今の音も跡方もないものに、コツコツじゃの、チンじゃのと名を付けて呼ぶが、若し灰吹の方で、俺の音はコツコツじやないといい、火入れが俺の音はチンじゃないよ、と苦情を持ち出したとしたら何としよう。又、打ったのはキセルであるから、キセルが、それア俺の音じゃと物言いを付けたら何としよう。
音の本体はキセルにもあらず、灰吹にもあらず、火入れにもあらず、又チンでも、コツコツでもないとしたら、今の音はひっきょう何だというのじゃ。さア今の音をもう一度云ってみい。チンでも、コツコツでもないところの音の正体を云いあらわしてみい。どうじや、さアどうじや」
男は、ここに至って禅師にこうきめつけられるといよいよ頭を下げるばかり・一言も反論できなない。禅師は一段と声に力を入れて、
「書生の説、読書の論は何のクソにもならぬわい。忠孝仁義の名は、つまりはコツコツチンなのじゃ。名や論だけの忠孝仁義では役に立たぬ。シツカリせよ。今国家は多事多難の際じゃ。有為の男子が、物の本体を忘れて影法師の名儀のみを追いまわしているとしたら、何と恥しいことではないか。国家社会に申し訳ないことではないか。何がもとで何が本体なのか、退いてよくよく胸に手を当て、自分で自分に問うて見い。
儒教でも、君子は日に三省す、といい、日に新にして、また日日に新なり、というではないか。三省日新の工夫が大事じゃぞ、喝!」
訓然として目を開けられたかのような男は、禅師の前に平伏すると共に師の鉄舟に手をついてお詫びを述べ、約束により切腹するという。それを独園禅櫛がうまくつくるって、今後の精神生活への精進を誓わせ、証文を焼いてしまったという。
 
 
南天棒
 

·         中原南天棒 (なかはら-なんてんぼう )とは何者か

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%8E%9F%E9%84%A7%E5%B7%9E

 ある時、陸軍大将児玉源太郎が、東京市ヶ谷の道林寺に中原鄧州(ニックネームを南天棒和尚といった)を訪ね
「軍人は禅を如何にあつかったらよろしいか」と尋ねたが、和尚は
「今、ここで三千の兵を指揮して見せなさい。それが出来れば戦って勝たぬということはない」
「それは無理なお話だ。三千の兵を指揮することは、何のぞうさもないが、しかし居らぬ兵士を指揮する訳にはいかない」
「そんなことは朝飯前のお茶の子だ、まことに易いことじゃないか。それが出来ぬようでは真の軍人にはなれぬ。天下の将軍となって万卒を率い、大戦をすることはならぬのじゃ。それしきのことが出来なくて、どこに将軍面がある、このニセ軍人やッ」
 
 と、和尚は真向から罵倒した。児玉大将もその雑言にたまりかねたか、顔面サッと朱を注ぎ「しからば和尚やって見られよ」
「よし、やって見せよう」というが早いか、イキナリ大将を捕えて引き倒し、
「それっ、馬になれっ」と、手拭をクツワにかえて大将の背に跨がり、かねて持っていた南天棒を振って、「全隊進めッ」
 
 ピシャリとお尻に一ムチあてた。すると大将は思わず前進したが、その刹那、ハッと悟るところがあって、和尚を乗せたまま、
 
「解りました。解りました」という。そして和尚が座についた時、うやうやしく礼拝して
「今日、はじめて、この境をみました」と、児玉大将がいったのである。
 
南天棒・松島の瑞厳寺に居った頃、仙台師団長の佐久間将軍が、名士揃いのある席上で「一体坊主なんてものは天下の遊民、無用の長物云々」
 と口をすべらした。その席に南天棒がいたからたまらない。イキナリ立って行って大喝一声、将軍をねじ倒し、素早く馬乗りになって、首根っ子をギュサと押えつけ、
「さア、もっと言うのだ、坊主が何んだと、もう一度言って見よ」
 とどなった。その不思議な気力と体力に圧倒されて、さしもの豪傑将軍身動きも出来ず、口も利けなかった。
 
 その後、将軍は和尚に推服して弟子の礼をとり、心から禅の心要に参するようになったという。
 
 乃木将軍が殉死されて、その盛んな葬儀の席へ、一本の弔電が配達された。
「万歳、万歳、万万歳」
 この電文には時の文武百官、居並ぶ人々は驚き入ったまま不審の眉をひそめた。その弔電の発信人は、即ち豪放辛辣な禅機をもって鳴らした南天棒であった。
 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(140 )再録/日米の歴史パーセプションギャップ・誤解の原因は②・・ダンスは野蛮・国会は魚市場のセリと同じ日米の歴史パーセプションギャップ・誤解の原因は②・・ダンスは野蛮・国会は魚市場のセリと同じ

    2010/06/10 &nbsp …

no image
「軍靴」の足音が…「12・8」と「12・9」

1 平成16 年2 月1 日       新聞通信調査会報            …

no image
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』㉒「伊藤博文統監の言動」(小松緑『明治史実外交秘話』)⑦『前代未聞の退位と即位』

  「 英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が 報道した「 …

『フランス革命、米南北戦争と比べて最も少ない死亡者の明治維新の立役者は西郷隆盛と敗軍の将・勝海舟である』★「国難突破力NO1の勝海舟(75)の健康・長寿・修行・鍛錬10ヵ条」から学ぶ』

百歳学入門(92)「国難突破力NO1―勝海舟(75)の健康・長寿・修行・鍛錬10 …

『クイズ?Z世代のための日本最強のリーダパワーを発揮した宰相は一体誰ですか?』★『答えは平民宰相の原敬です。その暗殺事件の真相は?ー「お前は「腹を切れ」といわれたのを、「原を切れ」と勘違いした凶行だった』

  「逗子なぎさ橋通信、24/06/15/am720] 2012/08 …

no image
日本の最先端技術『見える化』動画チャンネルー次世代の「LPWA (Low Power Wide Area)ネットワーク」がよくわかる解説動画』●『『CEATEC JAPAN 2016』(10/4-7)-HUAWEIの「2020年までに SelIuIar ItoT接続の70%がLPWA」に』●『「LPWA (Low Power Wide Area)ネットワーク」最新記事一覧』●『  LPWANは5Gやメッシュネットワークを凌ぐスマートシティ技術になりえるか』

  日本の最先端技術『見える化』動画チャンネル 次世代の「LPWA (Low P …

『生涯現役の百歳学』★「昆虫記」を書いたファーブルの自然を教師として田舎で生活した長寿・研究・人生訓10ヵ条(清貧の思想)』

昆虫学者のファーブルは1823年―1915年のです。91歳です。 彼の晩年長寿の …

no image
『オンライン/日本の総理大臣の資格講座』★『150年かわらぬ日本の宰相の欠点とは―日本議会政治の父・尾崎咢堂が語る「宰相の資格」(6)★『宰相に最も必要なのは徳義。智慧・分別・学問は徳で使われる」

 2012/03/21  記事再録  日本リーダー …

no image
速報(277)『世界危機”不安は喉元を過ぎて忘れられたのか」●『橋下徹氏とテレビ」「日本の家電はガラパゴスへの道』

速報(277)『日本のメルトダウン』  ◎『世界危機”不安 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(269)★日本が真の民主国家(自由平等、男女平等)になれない理由は—日本の前近代的な政治閥、官僚閥のルーツはー「日本の秘密結社としての 陸軍は山県有朋の長州閥(山口閥)が作った」,

2012/05/03日本リーダーパワー史(256)記事再録 『明治の巨大国家プロ …