前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

 日本リーダーパワー史(806)『明治裏面史』 ★『「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス㉑『第一回日露交渉(小村、ローゼン交渉)は両国の満州への「パーセプション(認識)ギャップ」が大きく物別れに終わる、日露開戦4ゕ月前)  

      2017/05/14

 

 日本リーダーパワー史(806)『明治裏面史』

★『「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、

リスク管理 、 インテリジェンス㉑

日露開戦クライシス

『第一回日露交渉(小村、ローゼン交渉)は満州への

「パーセプション(認識)ギャップ」

が大きく物別れに終わる、日露開戦4ゕ月前)  

交渉地は東京と決定し、ロシアの全権はロシア駐日公使ローゼンとなったので、小村寿太郎外相は10月6日、ローゼンを外相官邸に招き、第1回の会談を行った。当日の交渉内容は次の通り。(黒木勇吉『小村寿太郎』423-424P

小村は「清国の独立、保全の尊重は、ロシア自らしばしば声明しており、わが提案は少しも新条件をロシアに求めるものではない。従って、この点に関する両国の主義は全然一致するものと認めねばならない。」と述べた。

これに対してローゼンは「ロシアの満州占領は、清兵のロシア国境上の襲撃に対する応戦の結果によって起こったことで、ロシアは理論上,征服の権利としてこれを併呑することができる。ロシアと満州は特別の関係あり、これを本交渉に加えることはできない。」

小村「北清事変(義和団の乱)におけるロシアの地位は、他の列国と少しも異なるところはない。ロシアの満州での行動も、列国の直隷省におけると同じく、これを征服行為と認めることもできない。満州に対するロシアの軍費その他、一切の損害は、各国と一列に清国から賠償されている点をみて明らかである。

ましてロシアは、自らしばしば満州併呑の意思がないことを、宣明しているではないか。満州の併呑は、韓国の独立の脅威となり、わが国の安危に影響するので、わが国はこの点に関し必要な保障を求めざるを得ない。わが国は、満州で通商上すでに少なからざる利権を有し、清国との条約により諸種の権利も有するから、これら利益の安全とその平和の発達に対しても相当の保障を必要とする。

 ローゼン「満州における日本の商業上の利益は、ロシアもこれを認めるが、そのために特に保障を与える必要はない。日本は必然的に各国との均等の取り扱いを受けるべきで日本の権利はすでに清国との条約において明確にされておる。」

小村 「ロシアは従来、満州での日本の通商上の発達を妨害したことがしばしばある。現に北京でロシアが要求しっつある事項の中にも、満州での開港場の新設を禁止しょうとしている。満州における商業活動上のロシアの保障は必要である」

 ローゼン「ロシアの対案は、日本にすでに大幅の譲歩をしている。この上譲歩すればロシアはこの協商で何ら得るところはなく、いたずらに譲歩したとの非難を招く。ロシアでは、万機もとより聖断によって決定されるが、国民の意向もこれを無視することは出来ない。」

 小村「日本においても同様である。故に協商の永続を期するには、一方だけがよいのでなく、双方ともある程度の満足を期すべきは当然である」

このように、清国での両国の権益をめぐって最初からパーセプション(認識)ギャップがあり、日露両案は根本的に食い違い,並行線のまま。2日後の10月8日に第二回の会談を行うことになった。

しかし、ロシア側の態度は依然として強硬で、外交交渉での解決の道は困難となってきた。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『オンライン/トランプ大統領引き際の悪さの研究』★『NYポスト紙、トランプ氏に「狂乱を終わらせよ」と1面で呼び掛け(12月28日)』★『大阪自由大学講座 ー読書カフェ動画『世界で最も危険な男ー「トランプ家の暗部」を姪が告発』

「NYポスト紙、トランプ氏に「狂乱を終わらせよ」と1面で呼び掛け」 ブルンバーグ …

no image
<まとめ>頭山満について-『玄洋社』(頭山満)を研究することなくして、明治・大正裏面史を解くことはできないよ

 <まとめ>頭山満について  『明治維新から昭和敗戦史』 ま …

『安倍・トランプ蜜月外交を振り返る①』★『日本リーダーパワー史(979)ー『トランプ米大統領は2019年5月25日夕、令和初の国賓として来日した』★『140年前、日本初の国賓として来日したグラント将軍(元米大統領)が明治天皇にアドバイスした内容とは何か(上)』

    2019/06/16 日 トラン …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座(42)』★『金子サムライ外交官は刀を持たず『舌先3寸のスピーチ、リベート決戦」に単身、米国に乗り込んだ』

  『金子サムライ外交官は『スピーチ、リベート決戦」に単身、渡米す。 …

no image
速報(245)『中国最新ディープニュース』『中国ビジネス必勝法の指南役・上海在住ジャーナリスト・松山徳之氏から聞く』

速報(245)『日本のメルトダウン』   『中国最新ディープニュース』 …

no image
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑲ 『日本の最も長い日(1945年 8月15日)をめぐる死闘―終戦和平か、徹底抗戦か④』

 『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑲   『日本の最も長い日―大日本帝国最後の日( …

no image
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉖「開戦2ゕ月前の「英タイムズ」の報道』ー『極東情勢が改善されていないことは憂慮に耐えない』●『ロシアは中国に対し.いまだにあらゆる手段を用いて,ロシアの満州占領に関し協定を結ぶように仕向けようとしている。』★『日本が満州でロシアに自由裁量権を認めれば,ロシアは朝鮮で日本に自由裁量権を認めるだろうとの印象を抱いている。』

  『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』㉖ 1903(明治36)年 …

『Z世代のための講座・日本リーダーパワー史(385)』★『国家参謀・児玉源太郎伝(7)★「インテリジェンスから見た日露戦争ー膨張・南進・侵略国家ロシアに対して必勝の戦略を組んだ陸軍参謀総長』

  2013/05/30  日本リーダーパワー史( …

no image
日本の「戦略思想不在の歴史」⑭「ペリー米黒船はなぜ日本に開国を求めて来たのか」<以下は尾佐竹猛著『明治維新(上巻)』(白揚社、1942年刊、74-77P)>『開国の恩人は、ペリーではなく金華山沖のクジラである』

  <以下は尾佐竹猛著『明治維新(上巻)』(白揚社、1942年刊、74-77P) …

no image
高杉晋吾レポート④ ギネスブック世界一認証の釜石湾口防波堤、津波に役立たず無残な被害③

2011年3月24日 ギネスブック世界一認証の釜石湾口防波堤、津波に役立たず無残 …