世界史の中の『日露戦争』⑱『日露戦争-朝鮮の独立と領土保全のための戦争』『タイムズ』【開戦3週間】
2016/03/03
英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイムズ」
は「日露戦争をどう報道したか」⑱
『日露戦争-朝鮮の独立と領土保全のための戦争』
【開戦3週間】<『タイムズ』1904(明治37)年2月29日 >—
<インテリジェンスの教科書としての日露戦争>―
<記事のポイント>
① 日本軍の戦略家たち(参謀本部、児玉源太郎ら)はスピーディーで大胆細心な作戦、戦術をとっている。
② 近代日本の陸軍はこれから戦闘を始めるが、海軍同様の優秀さを発揮して勝利するであろうとみている。(この軍事的な予見能力の高さ)
③ 日本が朝鮮と締結した条約の全文は,英米両国は好意的にみている。
④ 日本は朝鮮の皇室の「安寧」と,「朝鮮帝国の独立と領土保全」を保障している。
北部朝鮮における相当規模の戦闘が迫っているのは明らかだ。天皇とロシア皇帝のそれぞれの軍隊が平壌近くで相互に接触しており,両国の最初の地上戦がここ数日間に起こることは確実だ。
ロシアの騎兵が咋日朝,同市の数百ヤード以内まで接近したが,日本の歩兵部隊に発砲されて撤退,損害はなかったもようだ。彼らが単に偵察に来たことは間違いないが,その出現は.ロシア軍がすでに若干の兵力をもってここまで南下してきたことを示すものと受け取らなければならない。その兵力,また日本側の兵力がどれほどかは,推定が容易ではない。
本社特派員が済物浦から土曜日に送ってきたド・フォリスト無線通信は,朝鮮側の推定によれば-これをあまり盲信すべきではないが-先週の昨日までにロシア軍3000が越境してきたという。このうち
1000は義州,1000は慈山にあり,そのはかは小部隊で分散しているとされる。その1つは当時兵数40程度だったが.水曜日に順安にいたそうで,これは平壌の北20マイルの北京街道上にあり,日本の歩兵部隊に昨日発砲されたのは,増強されていたかどうかはともかく,この部隊だったかもしれない。
慈山は平壌から北東に20マイルのわき道にあり,兵力1000のロシア軍部隊が選びそうな場所とは思われない。名前が北京街道にある嘉山と混同された可能性もあり,嘉山は安州の西へ約20マイルのところにある
。一方日本側は済物浦に兵力2万と砲兵中隊6を上陸させたことは確かで,朝鮮にはそのはかにも明らかに部隊を入れているだろう。海州の南の沿岸にも部隊を上陸させつつあるが,その数は多くないと考えられる。彼らは田舎道を通って黄州に向かい,そこで北京街道を進んできた友軍と合流すると見られる。この作戦だと5日間節約できる上,北京街道に対する圧力を軽減するという重要な副次的利点もあると信じられている。また日本軍部隊については,ソウル南の悪路に悩まされているとの情報もあるが,彼らがどこに上陸したか,どこへ向かって移動中かは不明だ。
日本軍8000が今平壌へ向かっていると想像され,同地には土曜日の前に小兵力が到着している。
本紙東京通信員の報告では,鴨緑江の南でロシア軍が本格的な移動を行うことは不可能と見られており,その理由はまず,まだしばらくは氷の上を渡河できるとはいえ,川には橋が架かっておらず,第2に,前進中の部隊の連絡は海上から容易に遮断することができるというもので,また現在朝鮮にいるロシア軍は全員が騎兵だと信じられているという。
反面,日本側は,本社の済物浦の特派員によれば,旅順前面の作戦が完了するまで「主計画」なるものの展開は考えていないもようだ。同港で決定的な成功を収めれば,日本側は旅順と鴨緑江の間のロシア軍の側面にはっきりした効果のある打撃を加えることができるだろうし,そうなれば朝鮮北西部のロシア軍の立場をまさに維持不能に追い込むだろう。同特派員は,日本はまず遼東半島の占拠を試みるまでは,朝鮮内の行軍を余儀なくされるような作戦に乗り出さないことは確実と見ている。
この方針は,日本軍の戦略家たちの協議が,時宜を得た大胆さにほかならない熟慮によって導かれていることを示しているようだ。
陸上の緒戦の精神的影響は,その軍事的重要性が仮にたいしたものでな-くても,侮りがたいのはもちろんで,特に中国人への影響は強く.本紙北京通信員が最近述べたように,彼らは海上の勝利より陸上の勝利にはるかに深い感銘を覚えるだろう。
近代日本の陸軍はまだどの大国の軍隊とも力を比べていないが,軍人として海軍の戦友に劣ると想像すべき理由はない。彼らも同等に細心の訓練と規律を注入されているし,彼らを指揮する将校も同等の知能と同等の徹底さをもって職務を研究してきたし,彼らの装備も組織も同じく優秀だと信じられており,また同じ勇気と同じ愛国心に鼓舞されている。彼らが戦闘の苦労を同じ勝利で乗り越えるだろうと信じるすべての理由がある。
しかし試練はこれからであり,試練を越えるまでは,この戦争の将来についてのすべての推測と憶測は決め手を欠かざるを得ない。日本が朝鮮と締結した条約の全文は,英米両国が当初電報による要約を検討の上,その内容について好意的な見解に達したのを確認するものだ
。日本が朝鮮の皇室に「安寧」を,また世界全体のさらに大きな関心事である「朝鮮帝国の独立と領土保全」を保障していることは,望み得る限り正確かつ十分と言えよう。
この条約は,イギリスのインド行政官に周知の用語を使うなら.朝鮮側にとって一種の「従属的同盟」を暗示していることは間違いないが,同国にその国土の所有権とすべての適正な自由を保障しており,そのことは同国の安全と福祉に合致しないわけではない。
関連記事
-
-
「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース➂」『開戦2週間前の『ノース・チャイナ・ヘラルド』(1904年1月8日付) 』★『ロシアは極東全体の侵略を狙っており、日本はロシアの熊をアムール川の向こうの自分のすみかに送り返して,極東の平和と安全を,中国人、朝鮮人,日本人のために望んでいるだけだ』
2019/11/22 『日本戦争外交史の研究』 …
-
-
日本リーダーパワー史(641) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(34) 明石元二郎のインテリジェンスー対ロシア破壊工作をどのように進めたのか 『明石工作」(落花流水)の全容ーレーニンは協力者となったのか⑤
日本リーダーパワー史(641) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(34) …
-
-
記事再録/『中国/内モンゴルのゴビ沙漠の不毛の砂漠を300万本のポプラの木を植えてと緑の農地によみがえらせた奇跡の男・遠山正瑛(97歳)★『中国で、生前銅像が建てられたのは毛沢東と遠山の2人だけで、その台座には「90歳の高齢ながらたゆまず努力し、志を変えなかった」』
2009/05/06   …
-
-
日中北朝鮮150年戦争史(1)『金玉均暗殺事件が日清戦争の発火点の1つ』朝鮮政府は日本亡命中の金玉均の暗殺指令を出していた①<金大中拉致事件(1973年)と全く同じ手口>
日中北朝鮮150年戦争史(1) 『金玉均暗殺事件が日清戦争の発火点の1つ』 朝 …
-
-
●リクエスト再録記事『日本インテリジェンスの父』『日本リーダーパワー史(331)空前絶後の参謀総長・川上操六(44)鉄道敷設,通信設備の兵站戦略こそ日清戦争必勝のカギ
日本リーダーパワー史(331)空前絶後の参謀総長・川上操六(44)鉄道敷設,通信 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(317)★『日本近代化の父・福沢諭吉が語る「徳川時代の真実」(旧藩事情)③』★『徳川時代の中津藩の武士階級(1500人)は格差・貧困社会にあえいでいた』★『福沢諭吉の驚くべき先見性で「人口減少・少子化社会」の対策を明示している』★『日本は真の民主国家ではない』
①福沢はなぜ「門閥制度は親の敵(かたき)でござる」と言ったのか …
-
-
『オンライン/日本政治リーダーシップの研究』★『日本の近代化の基礎は誰が作ったのか』★『西郷隆盛でも大久保利通でも伊藤博文でもないよ』★『わしは総理の器ではないとナンバー2に徹した西郷従道なのじゃ」
2012/09/09   …
-
-
『Z世代のための米大統領選挙連続講座⑨』★『 ハリス氏対トランプ氏のスピーチバトルはヒートアップするばかり』
英BBC(8月1日配信)は「ハリス氏はインド人か? 黒人か?」 トランプ前大統領 …
-
-
日本リーダーパワー必読史(743)『歴史復習応用編』<まとめ>勝海舟②ー日本史上最大の巨人・西郷隆盛と並び徳川幕府の最期を見事に幕引きした勝海舟はスゴイ!
日本リーダーパワー必読史(743)『歴史復習応用編』 <まとめ>勝海舟ー日本史上 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(44)記事再録/明治維新の革命児・高杉晋作の「平生はむろん、死地に入り難局に処しても、困ったという一言だけは断じていうなかれ」①
2015/07/29日本リーダーパワー史( …
