前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界史の中の『日露戦争』⑰『日本は戦う度胸などなく、 脅かせば簡単に屈するとみたロシア』 英国「タイムズ」<開戦16日目> 

   

   世界史の中の『日露戦争』⑰

英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイムズ」
は「日露戦争をどう報道したか」⑰

 

『日露戦争―日本は戦う度胸などなく、
脅かせば簡単に屈するとみたロシア
<開戦16日目> 
英国「タイムズ」
1904(明治37)年24

 

この記事の概要>

   ロシア外務省が極端な引延ばしを図って日本に堪忍袋の緒を切らせたのは,おそらく戦争準備のため時間を稼ぎたかったからだろうと認めている。

   ロシア皇帝や上流階級は,小国日本がロシア帝国と事を構える度胸があるわけはないという認識が行き渡っていた。

   日本は見え透いた「ブラフ」(脅かし)で,たかが東洋の1国に過ぎず,アレクセーエフ提督は東洋人の扱い方をわきまえていると考えられていた。

   大国同士の交際に伴う丁重で敬意を込めた行動は.日本に対しては故意に放棄された。

   ロシアは政策上,東洋の諸国との紛争処理に成功した高圧的な態度をとること,日本の目を覚まさせようとした。

   しかし、日本は遼東半島を,偽りの口実で日本を追い出したときから,ロシアと戦う決意を固めていたことで.またロシアの情報部も,日本の海軍建造計画が19034年にはその戦争準備が整うことを示していたことに気づいていなかった。

   ロシアは究極の勝利にはまだ自信を持っているが、敗北もあり得るというのは革命派だけだ。

 

「ロシア政府と戦争」に関し今朝われわれが掲載する記事は,ロシアの政治制度の内部の動きを研究するという異例の機会に恵まれた,ある通信員からのもので,これは,ロシアが一刻だに予期も望みもしなかった紛争へと,同国を突如追いやったかに見えるできごとのもっともな解説となろう。

 

同通信員は,ロシア外務省が極端な引延ばしを図って日本に堪忍袋の緒を切らせたのは,おそらく戦争準備のため時間を稼ぎたかったからだろうと認めている。だが他の理由もあったと考える。

外務省は,そのわずか前に交渉権を極東総督から取り戻すのに成功したばかりで,同通信員によれば,外務省は論争が彼らの手を離れた時点まで戻って妥協を試みたかったのだろうという。自分の手腕と,おそらく自身に対しても,外務省は無限の自信があるようだ。同省は,重要な外交紛争を自分の手から船乗りの粗野で芸のない処理に移されたことを,快く思っていなかったに相違いない。

彼は大失態をやったから,その道にかけてはベテランの外務省が,どう始末をつけるか教えてやろうというわけだった。不幸にして外務省は,最終決定権が自分でなく主人にあり,そのロシア皇帝は国の名誉がすでに取返しのつかぬところまでかかっていると思うだろうということを忘れていた。この見解によれば,プロの外交官が戦争のようなぶざまな手段への伝統的な嫌悪感から,譲歩の準備をしただろうが,これを平和的な皇帝が,国の名誉の守護者として,拒否するのが務めだと考えたという、ことになろう。

 

この説は,皇帝陛下の誠実かつ凝問の余地なき平和愛好を思えば,皮肉に聞こえるかもしれないが,あり得ないことではない。皇帝が,そもそも誤った進言によりアレクセーエフ提督に交渉の采配をゆだねた可能性があることは容易に理解できる。

まさにわれわれは過去数か月来,この説明のこの主たる要因を,しばしば予想してきた。

皇帝の行動範囲の社会的環境は当然最上流階級に限られており,こうした階級にあっては,小国日本がロシア帝国と事を構える度胸があるわけはないという認識が行き渡っていたと,わが通信員は断言する。日本の政策は見え透いた「ブラフ」で,同国はたかが東洋の1国に過ぎず,アレクセーエフ提督のような人間が東洋人の扱い方をわきまえていると考えられていた。

 

大国同士の交際に伴う丁重で敬意を込めた行動は.日本に対しては故意に放棄し,ロシアは政策上,東洋の諸国との紛争処理にあたりよく用いては成功した高圧的な態度をとることにより,日本の目を覚まさせようとした。ロシアの政治家が気づかなかったのは,同国が遼東半島に入り込むため,偽りの口実で日本を追い出したときから,日本はロシアと戦う決意を固めていたことで.またロシアの情報部も,日本の海軍建造計画が「道しるべのように」19034年にはその戦争準備が整うことを示していたことに気づいていなかった。

 

政治家,外交官,軍事指導者とも居眠りの最中を襲われたのであり,本紙通信員によれば外交官が決裂を回避しようと思案しているとき,ロシア皇帝は譲歩の時期が過ぎ去ったことを悟っていたもようだという。

 

 入ってくる細かいニュースがすべて確認しているように,ロシアは戦争の不意打ちを食って驚いているが,本紙通信員によれば,究極の勝利にはまだ自信を持っているという。敗北もあり得るというのは革命派だけで,彼らが不吉な予想をするのは,もちろん独自の理由があるからだ。その他の国民の間ではロシアが「黄色人種」に負けてたまるかという感情が行き渡っているという。戦争の現段階では,それももっともだと思われ,特に,本紙通信員も言うよう

に,ロシア人が日本艦隊に大打撃を被ったことをきわめて不完全にしか理解していないことが明らかな以上,なおさらだ。ロシアの弱点が鉄道の輸送能力が不十分なことにあるのは分かっているが,西欧でときに思われるほどロシアの立場が絶望的だとは一般に認めていない。確かに絶望的ではないが,深刻なことは間違いない。ロシア国民がいかに深刻かの感覚をまるで持ち合わせていないことは,鉄道連絡の欠陥が「1年以内」に改善されると信じていることに表れている。

 

平穏無事な時期なら,金を惜し気もなくつぎ込んで,そんな改善もできよう。だが,そんな妄想を秘めた国民は,日本の陸海軍が1年間にどんなことをす

ると思っているのだろうか? ロシアが悠々と待避線を引いたり橋を補強したりする間,日本軍が何もしないでいると,本気で思っているのだろうか?彼らは,工事が完了する前に日本が交通路を切断するかもしれず,交通路が切断されたら,旅順も,そこの要塞の下に停泊中の艦隊-ないしはその残り-も降伏しなければなるまいとは認めているようだ。だが,こうした好ましからざる事態は「より大きな勝負」の中の単なる事件に過ぎず,成行きに任せればよいと,軽く考えているようだ。

 

敵の力と意図に対し同様に盲目だったことが,そもそも準備不足のまま戦争に追い込まれる要因となったし,次いで敵と制海権を争うすべての力と,自国艦隊の最精鋭の部分を失うに至ったのだ。今朝掲載の本紙軍事通信の記事を研究すれば,ロシア人,ないしはそれを読むことを警察に許されているロシア人は,日本が1年間も彼らが鉄道を改善するのをほってはおかないことを納得するだろう。島国の日本が陸軍を戦争に投入するには,海軍より時間がかかるが,

いったん上陸したなら,海上と同様に,敏速かつ活発に攻撃するだろうと,専門家は一致した意見を持っている。

 

 ロシアの外交官は,挫折をもっとユーモアをもって受けとめた方が,戦術としてもマナーとしても,上等だ。彼らの言分は通りにくいが,日本の裏切りや無法をあしざまに非難しても,事態がよくなりはしない。

 

ラムズドルフ伯爵が,ロシアの表明した以前の苦情を新たな回状覚書でさらに後追いしたのは失策だった。これは以前提示されたロシアの主張に酷似している。対日非難の強さは変わらず,その証拠の薄弱かつ不十分なことも変わらない。このロシア外相は世界に対し,交渉決裂以来,東京政府の態度は「文明国間の相互関係を支配する慣習法すべてへの公然たる違反」だったと表明するよう呼びかけている。こうした大がかりな主張をするからには,日本が犯した

とされる遵法行為の数々を列挙するものとわれわれは当然予期していた。だがラムズドルフ伯爵は相変わらず「個別的な違反をいちいち特定」するのは控えるのが賢明だと思っている。彼は,日本がすべての国から完全な独立国と認められた「朝鮮の独立と保全」を侵害したという非難をするにとどめている。

 

朝鮮皇帝は何も苦情を呈した様子はない。それどころか,彼は日本軍の駐留を歓迎したと言われる。だが,いずれにせよ,ロシアの苦情は,満州撤退をかたくなに拒否したことが戦争の直接的かっ主たる原因となった国がロにするのはいささか変だと,ラムズドルフ伯爵は気づかないのだろうか?満州は中国の一部であり,中国の「独立と保全」はすべての国から完全に認められ,ロシアもそのことをしげしぼ声高に言ってきたことを,彼は忘れたのだろうか?

 - 現代史研究 , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本の「戦略思想不在の歴史⑾」『高杉晋作の大胆力、突破力③』★『「およそ英雄というものは、変なき時は、非人乞食となってかくれ、変ある時に及んで、竜のごとくに振舞わねばならない」』★『自分どもは、とかく平生、つまらぬことに、何の気もなく困ったという癖がある、あれはよろしくない、いかなる難局に処しても、必ず、窮すれば通ずで、どうにかなるもんだ。困るなどということはあるものでない』

  「弱ったな、拙者は、人の師たる器ではない」   「それならいたし方ござりませ …

『Z世代のための日本インド友好史③』★『日本とインドの架け橋』―大アジア主義者・頭山満はインド人革命家・ボースの亡命を受け入れた』★『アジア解放の夢をボ-スに託し、亡命を受け入れて匿い「新宿中村屋」相馬愛藏の娘・俊子と結婚させて「オレが最後に牢屋にゆけばよいのじゃ」と大度量を示した』

  2010/01/19 日本リーダーパワー史(33)記事再編集 前坂 …

『Z世代のための近代史の復習問題』★『よくわかる「尖閣問題の歴史基礎知識」③『ニューヨーク・タイムズ』や外国新聞が140年前に報道した日中、台湾、沖縄(琉球)の領土紛争問題』

2012/10/01  日本リーダーパワー史(327)記事再録 &nb …

no image
速報(35)『日本のメルトダウン』48日目ーー『ワンボイス、大連立、原発転換、国家破産ストップが優先課題』

  速報(35)『日本のメルトダウン』48日目 ◎『ワンボイス、大連立 …

『大谷翔平<3打走投>流の「YAKYUDOU」(野球道)とは何か』★『ベースボールと野球道の違い』★『大谷のルーツは宮本武蔵の二天一流兵法(「五輪書」を書いた霊巌洞の動画あり)』★『「打撃の神様」の巨人・川上哲治の「ボールが止まって見える」(心技体一致)』

激動の2024年を振り返って、私を一番「ハッピーな気持ちと元気にしてくれた」のは …

no image
『2018年「日本の死」を避ける道・日本興亡150年史』⑤『アベノミクスで政権百日は大成功、このナロウパスを突破せよ』(上)

★『2018年「日本の死」を避ける道はあるのか ー―日本興亡150年史』⑤― < …

『Z世代のための歴史クイズ?『世界的歴史学者アーノルド・トインビーが「織田信長、豊臣秀吉、徳川家康をしのぐ」と評価した日本史最大の偉人とは一体誰でしょうか①??」

『「電力の鬼」松永安左エ門(95歳)は70歳から再出発、昭和敗戦(1945年)の …

『ある国際ビジネスマンのイスラエル旅行記➂』★『イスラエルの嘆きの壁レポート』★『わがメモアールーイスラエルとの出会い、Wailing Wall , Western Wall 』(嘆きの壁)レポート(1)』

     2016/02/16『F国際ビ …

no image
百歳学入門(191)『京都清水寺の貫主・大西良慶(107歳)』★『人生は諸行無常や。いつまでも若いと思うてると大まちがい。年寄りとは意見が合わんというてる間に、自分自身がその年寄りになるのじゃ』

 百歳学入門(191) 人生は諸行無常や。いつまでも若いと思うてると大まちがい。 …

no image
速報(451)『言論の自由後進国の韓国―呉善花さん、 韓国入国拒否され「人権問題」『自民改憲主流派の危険な憲法観』

 速報(451)『日本のメルトダウン』   ●『人権低国、言 …