世界史の中の『日露戦争』⑰『日本は戦う度胸などなく、 脅かせば簡単に屈するとみたロシア』 英国「タイムズ」<開戦16日目>
英国『タイムズ』米国「ニューヨーク・タイムズ」
は「日露戦争をどう報道したか」⑰
『日露戦争―日本は戦う度胸などなく、
脅かせば簡単に屈するとみたロシア』<開戦16日目>
英国「タイムズ」1904(明治37)年2月24日
<この記事の概要>
① ロシア外務省が極端な引延ばしを図って日本に堪忍袋の緒を切らせたのは,おそらく戦争準備のため時間を稼ぎたかったからだろうと認めている。
② ロシア皇帝や上流階級は,小国日本がロシア帝国と事を構える度胸があるわけはないという認識が行き渡っていた。
③ 日本は見え透いた「ブラフ」(脅かし)で,たかが東洋の1国に過ぎず,アレクセーエフ提督は東洋人の扱い方をわきまえていると考えられていた。
④ 大国同士の交際に伴う丁重で敬意を込めた行動は.日本に対しては故意に放棄された。
⑤ ロシアは政策上,東洋の諸国との紛争処理に成功した高圧的な態度をとること,日本の目を覚まさせようとした。
⑥ しかし、日本は遼東半島を,偽りの口実で日本を追い出したときから,ロシアと戦う決意を固めていたことで.またロシアの情報部も,日本の海軍建造計画が1903~4年にはその戦争準備が整うことを示していたことに気づいていなかった。
⑦ ロシアは究極の勝利にはまだ自信を持っているが、敗北もあり得るというのは革命派だけだ。
「ロシア政府と戦争」に関し今朝われわれが掲載する記事は,ロシアの政治制度の内部の動きを研究するという異例の機会に恵まれた,ある通信員からのもので,これは,ロシアが一刻だに予期も望みもしなかった紛争へと,同国を突如追いやったかに見えるできごとのもっともな解説となろう。
同通信員は,ロシア外務省が極端な引延ばしを図って日本に堪忍袋の緒を切らせたのは,おそらく戦争準備のため時間を稼ぎたかったからだろうと認めている。だが他の理由もあったと考える。
外務省は,そのわずか前に交渉権を極東総督から取り戻すのに成功したばかりで,同通信員によれば,外務省は論争が彼らの手を離れた時点まで戻って妥協を試みたかったのだろうという。自分の手腕と,おそらく自身に対しても,外務省は無限の自信があるようだ。同省は,重要な外交紛争を自分の手から船乗りの粗野で芸のない処理に移されたことを,快く思っていなかったに相違いない。
彼は大失態をやったから,その道にかけてはベテランの外務省が,どう始末をつけるか教えてやろうというわけだった。不幸にして外務省は,最終決定権が自分でなく主人にあり,そのロシア皇帝は国の名誉がすでに取返しのつかぬところまでかかっていると思うだろうということを忘れていた。この見解によれば,プロの外交官が戦争のようなぶざまな手段への伝統的な嫌悪感から,譲歩の準備をしただろうが,これを平和的な皇帝が,国の名誉の守護者として,拒否するのが務めだと考えたという、ことになろう。
この説は,皇帝陛下の誠実かつ凝問の余地なき平和愛好を思えば,皮肉に聞こえるかもしれないが,あり得ないことではない。皇帝が,そもそも誤った進言によりアレクセーエフ提督に交渉の采配をゆだねた可能性があることは容易に理解できる。
まさにわれわれは過去数か月来,この説明のこの主たる要因を,しばしば予想してきた。
皇帝の行動範囲の社会的環境は当然最上流階級に限られており,こうした階級にあっては,小国日本がロシア帝国と事を構える度胸があるわけはないという認識が行き渡っていたと,わが通信員は断言する。日本の政策は見え透いた「ブラフ」で,同国はたかが東洋の1国に過ぎず,アレクセーエフ提督のような人間が東洋人の扱い方をわきまえていると考えられていた。
大国同士の交際に伴う丁重で敬意を込めた行動は.日本に対しては故意に放棄し,ロシアは政策上,東洋の諸国との紛争処理にあたりよく用いては成功した高圧的な態度をとることにより,日本の目を覚まさせようとした。ロシアの政治家が気づかなかったのは,同国が遼東半島に入り込むため,偽りの口実で日本を追い出したときから,日本はロシアと戦う決意を固めていたことで.またロシアの情報部も,日本の海軍建造計画が「道しるべのように」1903~4年にはその戦争準備が整うことを示していたことに気づいていなかった。
政治家,外交官,軍事指導者とも居眠りの最中を襲われたのであり,本紙通信員によれば外交官が決裂を回避しようと思案しているとき,ロシア皇帝は譲歩の時期が過ぎ去ったことを悟っていたもようだという。
入ってくる細かいニュースがすべて確認しているように,ロシアは戦争の不意打ちを食って驚いているが,本紙通信員によれば,究極の勝利にはまだ自信を持っているという。敗北もあり得るというのは革命派だけで,彼らが不吉な予想をするのは,もちろん独自の理由があるからだ。その他の国民の間ではロシアが「黄色人種」に負けてたまるかという感情が行き渡っているという。戦争の現段階では,それももっともだと思われ,特に,本紙通信員も言うよう
に,ロシア人が日本艦隊に大打撃を被ったことをきわめて不完全にしか理解していないことが明らかな以上,なおさらだ。ロシアの弱点が鉄道の輸送能力が不十分なことにあるのは分かっているが,西欧でときに思われるほどロシアの立場が絶望的だとは一般に認めていない。確かに絶望的ではないが,深刻なことは間違いない。ロシア国民がいかに深刻かの感覚をまるで持ち合わせていないことは,鉄道連絡の欠陥が「1年以内」に改善されると信じていることに表れている。
平穏無事な時期なら,金を惜し気もなくつぎ込んで,そんな改善もできよう。だが,そんな妄想を秘めた国民は,日本の陸海軍が1年間にどんなことをす
ると思っているのだろうか? ロシアが悠々と待避線を引いたり橋を補強したりする間,日本軍が何もしないでいると,本気で思っているのだろうか?彼らは,工事が完了する前に日本が交通路を切断するかもしれず,交通路が切断されたら,旅順も,そこの要塞の下に停泊中の艦隊-ないしはその残り-も降伏しなければなるまいとは認めているようだ。だが,こうした好ましからざる事態は「より大きな勝負」の中の単なる事件に過ぎず,成行きに任せればよいと,軽く考えているようだ。
敵の力と意図に対し同様に盲目だったことが,そもそも準備不足のまま戦争に追い込まれる要因となったし,次いで敵と制海権を争うすべての力と,自国艦隊の最精鋭の部分を失うに至ったのだ。今朝掲載の本紙軍事通信の記事を研究すれば,ロシア人,ないしはそれを読むことを警察に許されているロシア人は,日本が1年間も彼らが鉄道を改善するのをほってはおかないことを納得するだろう。島国の日本が陸軍を戦争に投入するには,海軍より時間がかかるが,
いったん上陸したなら,海上と同様に,敏速かつ活発に攻撃するだろうと,専門家は一致した意見を持っている。
ロシアの外交官は,挫折をもっとユーモアをもって受けとめた方が,戦術としてもマナーとしても,上等だ。彼らの言分は通りにくいが,日本の裏切りや無法をあしざまに非難しても,事態がよくなりはしない。
ラムズドルフ伯爵が,ロシアの表明した以前の苦情を新たな回状覚書でさらに後追いしたのは失策だった。これは以前提示されたロシアの主張に酷似している。対日非難の強さは変わらず,その証拠の薄弱かつ不十分なことも変わらない。このロシア外相は世界に対し,交渉決裂以来,東京政府の態度は「文明国間の相互関係を支配する慣習法すべてへの公然たる違反」だったと表明するよう呼びかけている。こうした大がかりな主張をするからには,日本が犯した
とされる遵法行為の数々を列挙するものとわれわれは当然予期していた。だがラムズドルフ伯爵は相変わらず「個別的な違反をいちいち特定」するのは控えるのが賢明だと思っている。彼は,日本がすべての国から完全な独立国と認められた「朝鮮の独立と保全」を侵害したという非難をするにとどめている。
朝鮮皇帝は何も苦情を呈した様子はない。それどころか,彼は日本軍の駐留を歓迎したと言われる。だが,いずれにせよ,ロシアの苦情は,満州撤退をかたくなに拒否したことが戦争の直接的かっ主たる原因となった国がロにするのはいささか変だと,ラムズドルフ伯爵は気づかないのだろうか?満州は中国の一部であり,中国の「独立と保全」はすべての国から完全に認められ,ロシアもそのことをしげしぼ声高に言ってきたことを,彼は忘れたのだろうか?
関連記事
-
-
『Z世代への昭和史・国難突破力講座⑯』★『戦後の高度経済成長の立役者・世界第2の経済大国の基盤を作った『電力の鬼』・松永安左エ門(95歳)の長寿健康10ヵ条」★『遺書には▶栄典類はヘドが出るほど嫌い▶死後一切の葬儀・法要は不要▶墓碑一切不用、線香も嫌い』
2019/03/27「知的巨人の百歳学」(147)記事再録再編集 「何事にも『出 …
-
-
速報(213)『「脱原発世界会議」in 横浜1日目』『さよなら原発、バイバイ!原発のない世界の創り方』
速報(213)『日本のメルトダウン』 『「脱原発世界会議」in 横 …
-
-
『Z世代のための昭和100年、戦後80 年の戦争史講座』★『「元寇の役」はなぜ勝てたのか⑸』★『当時の日本は今と同じ『一国平和主義のガラパゴスジャパン』★『一方、史上最大のモンゴル帝国は軍国主義/侵略主義の戦争国家』★『中国の『中華思想』『中国の夢』(習近平主義),北朝鮮と『核戦略』に共通する』
2017/12/01日本の「戦略思想不在の歴史」⑸ 記事再編集 クビ …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(95)記事再録/『戦うジャーナリスト列伝・菊竹六鼓(淳)』★『日本ジャーナリズムの光、リベラリストであり、ヒューマニストであった稀有の記者』★『明治末期から一貫した公娼廃止論、試験全廃論など、今から見ても非常に進歩的、先駆的な言論の数々』
2018/06/27 の記事再録 書評『記 …
-
-
人気記事再録<21世紀の新アジア・グローバル主義のリーダーをめざせ>●『 アジアが世界の中心となる今こそ,100年前に <アジア諸民族の師父と尊敬された大アジア主義者・犬養毅(木堂)から学ぼう』
2014/03/30 2015/01/21 日本リーダーパワー史(488 …
-
-
『オンライン講座/ウクライナ戦争と日露戦争の共通性の研究 ⑨』★『日露戦争勝利と「ポーツマス講和会議」の外交決戦②』★『その国の外交インテリジェンスが試される講和談判』★『ロシア側の外交分裂ー講和全権という仕事、ウイッテが引き受けた』
以下は、 前坂俊之著「明治37年のインテジェンス外交」(祥伝社 2 …
-
-
鎌倉サーフィンチャンネル』★『材木座ウインドサーフィン(23年4月16日)ブルースカイとキラキラ海で、カラフルに舞い踊る』
鎌倉材木座海岸ウインドサーフィン(23年4月16日)ブルースカイとキラキラ海で、 …
-
-
第70回鎌倉花火大会(7/24pm7,20-8、10)-残念ながら雲と煙にさえぎられて、花火の半分以上は見えなかったよ。(15分間に圧縮)
第70回鎌倉花火大会(7/24pm7,20-8、10) 7月24日夜、開催の鎌倉 …
-
-
日本メルトダウン脱出法(881)『三菱自動車という不正を繰り返す企業は社会に必要か?』●『中国人は独裁政治に“麻痺”しているのか リスクだらけでも重大なクライシスには見舞われない中国社会(柯 隆)』●『海兵隊がオスプレイを出動させた本当の理由 ピント外れの「政治利用」議論』●『分散型時代のメディア戦略はどうあるべきか 有料化&リアル戦略の正しい描き方とは?』
日本メルトダウン脱出法(881) 三菱自動車という不正を繰り …
-
-
日本敗戦史(45)「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内幕<「暴走機関車大日本帝国アジア号」の脱線転覆④
日本敗戦史(45) 「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内 …
