日本リーダーパワー史(395)『尾崎行雄の「支那(中国)滅亡論」を読む(終)『清国に政治的能力なし-税関の役人はすべて外国人」
日中韓150年対立・戦争史をしっかり踏まえて
対中韓外交はどう展開すべきか④
ー尾崎行雄の「支那(中国)滅亡論」を読む(終)
(1901年(明治34)11月「中央公論」掲載)
『清国に政治的能力なし-なぜ税関の役人は
すべて外国人か日本人なのか?
前坂 俊之(ジャーナリスト)
この『清国滅亡論』の全集第4巻(1955年)収録の【解説】によると、次のように書いている。
1884年(明治17)年秋、尾崎行雄は25歳で、報知新聞特派員の名義で支那(中国)に遊び、上海を中心として支那及び支那人(中国人)を観察して帰国した結果、征清論(日中戦争論)を主張した。
支那(中国)は当時清朝の支配下にあったが、その実体の無力、無秩序なるにもかからず、支那人は尊大自負(中華思想)で、一方の日本人は過度な支那心酔(中国崇拝)に陥っていた。尾崎が征清論を唱えたのは清国(中国)と一戦を交えてその無力、無秩序を暴露すれば、支那人の尊大自負と日本人の過大な支那心酔とを一挙に是正する効果ある、と考えたためであった。
しかし、尾崎の征清論は当時一笑にふされ、熱心にこれを唱えた尾崎はクレイジー扱いされたほどであった。ところがその後十年を経て日清戦争が起ると、日本軍は大勝し、果して尾崎の観察の正しかったことが証明された。
この文章は支那観に関して行われた演説の大要であって、1901年(明治34)11月号の中央公論に掲載された。(尾崎咢堂全集第4巻に収録、1955年刊)尾崎は愛国心、戦闘力、政治能力の三つが国家発展の基であるが、清国にはその何れもないので滅亡への途をたどらざるを得ないとの結論を下して、まさにその通りになったのである。
さて、この尾崎の対中国論が発表されてから、現在110年を超えた。
今再び、日中関係は尖閣問題をめぐって軍事緊張が続いている。110年前の中国認識は大きく変わったのか、清国の中華思想、中華優越思想は未だに続いているのか、
一党独裁共産主義国家(非議会民主主義)皇帝支配の封建主義と変わりないではないのか、国際法を相変わらず順守せず、大国意識丸出しの、汚職大国の恐るべき実態も改善されたのか、張子の虎の軍隊の実態も変わったのかー『日本議会政治の父』「憲政の神様」尾崎が中国にわたって上海に2ヵ月間、生活した中での迫真の対中国レポートである。
支那に政治的能力なし-役人の泥棒根性
第三は政治的能力が足らぬ、これも前よりないのである。これも今の通り最もわかる、容易に証明があがる。支那の人民は極めて頑固なる人間である、外国人嫌いである。昨年、義和団の騒ぎの際にも、全国の中で罪なき宣教師や
これに附属するところの外国の女子供を、見さへすれば虐殺を致しました一事を見ましても、如何に外国人嫌ひということが分ります。
又、日本人は何十年来外国と交際しておりますが、支那では近来やうやく鉄道を敷き電信をそろそろ架けて郵便制度を備えて来た。すべての外国の制度の遅れておった一事を見ましても、如何に外国人嫌いということが分ります。
この如く外国人嫌であります故に、政府の各局部に外国人を採用するということは大嫌いであって、ただやむを得ず陸軍の方には採用ましたが、その他一切外国人というものは交際はない、ということが、支那全国の有様であったのである。
そういう外国人嫌であった支那帝国においては全く政府で外国人を使わなない。然るに単に一の役所だけが外国人によって監理され外国人で組織しておる。英国人のロバート・ハート氏の監督しておる税関であります。全国四十有余に扱っております税関におきましては、皆な外国人で小使いの外は支那人は一人も使っておらぬ。支那人では税関の職務が出来ぬからである。
このハートという人は支那人嫌いかというと、極端な支那人ひいきであって、英国に反対しても支那にひいきしたいという人で、昨年、英国で公使に任命することの話があったが、英国からから支那に役人になって行くよりは此方がよいといつた。本国の利害に反しても支那をひいきにしたという人である。
昨年義和団事件が起きた時に、バート氏の一番の支那通であるからその意見を世界の各新聞雑誌より要求したが、ハートは得意に五六編の論文を書きましが、その論文を吾々が見まするとまさに抱腹絶倒に堪えぬ、滅法に支那ひいきのことが書いてある、どうしてこういう馬鹿らしいことをいうか、あれだけ支那に、ながくおりまして支那の事情を知つておるに拘らず、こういう議論をするかというくらい支那ひいきの人である。
それゆえ、今日まで度々己れの配下に税官吏とてして支那人を使い支那人を善く使おうとして苦心したことは非常なものである。しかし皆失敗であった。
あるいは支那人の内で殊に清廉潔白な人を集め組織したが、それも失敗した。其次ぎには極小さい中から支那人の俊秀を欧米に迭って教育し多年、外国の風儀に染まったものを税関に使った、それでもいけない、支那人はとても税閥の事務は執れぬのである。やむを得ず支那狂のハートも今日は日本人を少し使って屠りますが支邦人は一切使っておりませぬ。
税閥の事務というものはそれ程むづかしい事ではない。支那人民の出来ぬところの脳力や若くして体力を要するでも何でもない。誰れも出来る仕事である。何故、支那人だけができぬのか、というと、ただ泥棒根性があるから出来ぬのである。
支那では全役人というものは粗税とか御用金とか種々に名をつけて人民から取ることを役人の商売としておる故に、役人は必ず盗賊で、必ず賄賂をとる。これを取られる支那人ならば、役人は賄賂を当然とるものとして別に怪まないが、税関では外国人相手であるからそうは行かぬ、外国人は1文でも道理に外れておれば直ちに反対で、大議論を惹起します。外国人から泥棒すると賄賂を受けることの出きぬというは当然である。
さりとて支那人の先天的泥棒根性は止まぬ、それで止むを得ず支那ひいきのハートも四十有余の税関に日本人を使っても支那人民は使はぬということである。
この1事を以て見ても賄賂を授受するということをやめてしまうような支那人ではない。役人になる精神というものは、賄賂をとることを競争して人民の資力を奪うといふことである。
これを支那人の脳中からとり除くということはできぬ。すべての国においては皆税関の如き仕事は皆やらなければならぬ。ところが支那人は税関の仕事ができない。其の他の仕事につきましても。われわれのいう所の政治のことになりますると、断じて支那の人民にはその能力がないのである。則ち政治的確力は全く欠けておる。(喝采)
既にこの三柱が三つとも欠けておる以上は、如何に日本がひいきしても英国が愛しても到底独立することはできませぬ。三本足が1本放欠けておるという位では助けてやれば、あるいは立って行かれるかも知れぬが、全体1本もないものがどうして立つことが出きるか、義足にでもすれば兎に角、今日、三本とも足のないものに世の中を走らせようといっても、それは到底。誰が骨を折つても出きることではない。ここにおいて支那の運命は到底、減ぶるより外に仕方がたいのである。
滅びると定めた以上は、日本は外交上の政略なども其の基礎より求めなければならぬ。今日は私は外交政略のことは論じませぬが、ただ外交上の根本骨子たるところの基礎のことを御話し致します。とに角、支那の運命は滅亡の二字にある。
(終わり)
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