『Z世代のための日本宰相論・加藤友三郎』★『平和のために、軍縮論、行革論をまとめるのが政治家の最大の課題』★『ワシントン軍縮会議をまとめた加藤友三郎(首相)の評価は低いが「冷徹で大局的に判断した唯一の宰相」と賀屋興宣は高く評価した』
2024/12/20
2013年/11月10日/日本リーダ―パワー史(431)
記事再録再編集
前坂俊之(ジャーナリスト)
今から5年後の2018年は明治維新(1868年)からちょうど150年目に当たる。明治維新によって日本は封建国家から近代国家に生まれ変わり、有色人種の国ではじめて百年前に西欧列強と肩を並べる先進国になった。明治は「坂の上の雲」の躍進の時代であり、その原動力となった明治人の進取の気性とリーダーパワーを今こそ学ぶ必要がある。
明治のリーダーの中で加藤友三郎は忘れ去れた存在である。日露戦争では連合艦隊参謀長として日本海海戦の参加、東郷平八郎司令長官、秋山真之参謀とコンビを組んで戦艦「三笠」で指揮をとり、大勝利をした名将なのに東郷、秋山の陰に隠れて一向に目立たない。
しかし、「ワシントン軍縮会議」で海軍を抑えきってまとめ挙げたその政治力は、その後の「ロンドン軍縮会議」(これが海軍の艦隊派と条約派の分裂をもたらして日米戦争につながった)を見れば格段のリーダーパワーである。
首相になって段階で「燃え残りのロウソクの残燭内閣」と批判され、病弱体質でわずか1年でなくなったために余計に影が薄くなってしまったが、加藤を身近に知る賀屋興宣(1889-1977)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B3%80%E5%B1%8B%E8%88%88%E5%AE%A3
の証言をここに紹介する。「明治の評価と明治人の感触」(動向社編集部、動向社、1967年刊 395-399P)から参照する
冷徹で反応の正確な加藤友三郎賀屋 興宣(大蔵大臣、法務大臣)
明治時代で、とくに私の印象に残っている人というと、軍人では加藤友三郎(1861-1923、総理大臣)さん
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E8%97%A4%E5%8F%8B%E4%B8%89%E9%83%8E
それに政治家では、大正に近くなりますが高橋是清です。
加藤友三郎という人は、大へん傑出した人で、日露戦争の日本海海戦のとき、東郷司令長官の参謀長でした。この人は非常に頭のいい冷徹な人です。この頭のいいという感じは、ただの優等生みたいな頭のよさじゃなくて、物事に処するに、それに徹底して真相を掴む人でした。あのくらいの人も少いと思っております。
いらないことは言わない。必要な事は言う。生理的に言うと、非常に反応の正確な人です。だから、あわてるとか、まごつくとかという言葉は、あの人にはない。海軍の軍人では、前に山本権兵衛、後が加藤友三郎でしょうね。
あの人は、ワシントン会議(1921-22)
の全椎で行き更したが、ワシントン会議というのは、専門的に見ると非常にバカなことをしているんですよ。たとえば、新造艦「陸奥」を活かしたいために、日本の勢力が非常に損をしている。少し専門的になりますが、「長門」と「陸奥」と二隻にするために、アメリカがメリーランド一隻を3隻に増したんです。イギリスは十六インチ砲がなかったのに2隻作っちゃった。
勢力のバランスで損をしちゃったんですよ。しかし、この事については、海軍の実に訳のわからん要望が強かったからで……:。加藤さんは普通ならば、そんなバカバカしいことはやらないでしょう。しかしあの人は先をみているんですよ。どうせ少々どうなろうが、アメリカなんかと戦争をしちゃいかん、そんなバカなことはしちゃいけないんだから、結局は同じことだ……・・みんなのやる通りにしてやるという、実に大きくものを見ているんですね。これは徹底していますね。
だからあのときのワシントン条約が、実にバカげた条約であるといま言った意味で批判しているのは、私一人ですよ。これは最近の人だって、私の意見に太刀打できない訳です。これは非常に専門的な見方であって、常識を超越しているんです。
私はちょうど大蔵省の主計局におったものだから、ワシントン会議に随いていったわけです。
私はアメリカへ行ってもよく冗談言って、「軍縮の専門家だぞ」 といっているんです。ワシントン条約にずっと関係して、理論的に勉強していたんだから山本五十六君なんかとずいぶん喧嘩したもんです。
議会で平気でウソを言う
軍縮問題については、加藤さんは終始一貫大局的な見地から「結局これは結ばなくてはならない。つまらない軍備競争をやったのではいけない。ヤレ六割だ、七割だと騒ぐけれども、どうせアメリカと観争するようなことになったら、日本がやられるのは決まっているんだから」と、いわば子どもがギャアギャア言うのをまとめる意味での行動を貫いておりましたね。
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(438)日米中韓150年戦争史ー第1次米朝戦争を勝利と錯覚、誤認した大院君の朝鮮、韓国①
日本リーダーパワー史(438) 日米中韓150年戦争史をしっかり踏 …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(931)-(重要記事再録)日中韓パーセプションギャップの歴史(1)『日中韓150年戦争史の原因を読み解く(連載70回中1ー20回まで)★『申報、英タイムズ、ルー・タン、ノース・チャイナ・ヘラルドなどの外国新聞の報道から読み解く』●『朝鮮半島をめぐる150年間続く紛争のルーツがここにある』
日中韓異文化理解の歴史学(1)(まとめ記事再録)『日中韓150年戦争史の原因を読 …
-
-
日本リーダーパワー史(456) 「明治の国父・伊藤博文のグローバルリーダーシップ 『伊藤博文直話』(新人物文庫)」を読む⑧
日本リーダーパワー史(456) …
-
-
『オンライン講座/日本ベンチャービジネス巨人伝』★『 鈴木商店を日本一の商社にのし上げた<財界のナポレオン>金子直吉』★『「もし、金子が米国で生まれていたならば、カーネギー、ロックフェラーと並んで偉大な事業家として成功しただろう。金子は科学的な頭脳を持っており、無から有を作る事業家であったから』
2009/02/10 記事再録 日本の〝怪物″実業家・ …
-
-
日本リーダーパワー史(538)「FOREIGN AFFAIRS REPORT」(2015年1月号)からの『ゾンビ日本」への警告
[amazonjs asin=”4622078767″ …
-
-
『オンライン日本の戦争講座②/<日本はなぜ無謀な戦争を選んだのか、500年間の世界戦争史の中から考える>②『明治維新の志士たちは20歳代の下級武士』★『英国、ロシアのサンドイッチ侵略で日中韓の運命は<風前の灯!>に、日本は日中間の連携を模索したが、拒否された』★『福沢諭吉の「脱亜論」の真相』★『朝鮮の「反日的姿勢の歴史(過去千年の恨の思想)』★『中華思想、漢民族至上主義のエスノセントリズム』
『世 …
-
-
『池田知隆の原発事故ウオッチ⑩』ー『最悪のシナリオから考えるー小出情報と南相馬市、桜井市長の話
『池田知隆の原発事故ウオッチ⑩』 『最悪のシナリオから考えるー小出 …
-
-
速報(210)●『中国vs米国:中国が世界一の経済大国になる日』●『SPEEDIデータを公表しなかったのは 小出裕章』
速報(210)『日本のメルトダウン』 ●『中国vs米国:中国が世界一の経済大国に …
-
-
『F国際ビジネスマンの『世界漫遊・ヨーロッパ・カメラ・ウオッチ(16』★『オーストリア・ウイーンぶらり散歩⑥』(2016/5) 『世界遺産/シェーンブルン宮殿』その広大な庭園に驚く(上)」★『6才のモーツアルトが女帝の前で演奏し、アントワネットと遊んだと言う逸話がある』
2021/11/26 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(173) …
-
-
日本リーダーパワー史(764)―『さらば!「東芝」の150年歴史は「名門」から「迷門」、「瞑門」へ』● 『墓銘碑』経営の鬼・土光敏夫の経営行動指針100語を読む』③『社内の人間の顔をたてるよりも、社外への会社の顔をつぶさぬことを考えよ』★『賃上げは生産性向上の範囲内で」ではなく「賃上げを上回る生産性向上を」と考えよ』
日本リーダーパワー史(764) さらば!「東芝」の150年歴史は「名門」から …