『Z世代のための戦争史講座②』★『トラファルガー海戦を上回るパーフェクトゲームの「日本海海戦」②』★『東郷艦隊の勝因 とバルチック艦隊の敗北』★『日本は「艦隊決戦」と「大艦巨砲主義」の成功体験におごり、固執して40年後の太平洋戦争で全面敗北した。』
2024/08/06
以下は「ツシマ世界が見た日本海海戦」(ロテム・コーネル著、滝川義人訳,並木書房、2600円、2023 年刊)を参考にし、引用した。
同書は「日露戦争が世界史を変えた」として、日露戦争の全面的検証をおこなった。その結果、日本海軍が近代技術(無線通信技術)を駆使して西欧有数の海軍国・ロシアに勝利した最初の海戦で、米欧各国から驚異、畏怖されたが、植民地各国からは大歓迎の祝福を受けた。有色人種国が初めて白人西欧諸国に勝利した戦争だったからである。
しかし、その後の日本はこの成功体験におごり「艦隊決戦」と「大艦巨砲主義」に固執して40年後の太平洋戦争では全面敗北した。同書は日露英米独の資料を徹底的に収集、分析した「日本海海戦の世界的影響を調査、分析した」決定版である。
現在の日本は過去の歴史を「世界史的な視点で総合的、客観的、事実的、エビデンス(証拠)的に再検証する必要がある。その教訓が未来を開くキーワードになる。
「逗子なぎさ橋珈琲だより」(7月31日pm700)
「バルチック艦隊の敗北と東郷艦隊の勝因の比較」日本は、この15ヵ月、日露戦争を戦い続け、今ここで敗退すれば、戦争そのもので敗北することになりかねないので、絶対に負けるわけにはいかなかった。
一方、ロジェストヴェンスキー司令官は、指揮下にある艦艇がたとえ20隻しかウラジオストクに到達しなくても、日本の海上覇権は深刻な危険にさらされると考え日本周辺水域を支配する意志に欠けていた。
彼の作戦は長期に及ぶ遠洋航海に乗り出すアフリ喜望峰周りの熱帯の地域の困難遠征、乏しい配給品、前途の不透明さが乗組員の間で、不安感と反抗心が高めて、命令不服従の空気を醸成した。
艦隊全体ひとまとめで行動するとしたロジェストヴェンスキーは補助艦船を切り離して独自に行動させる代わりに、戦闘艦の後から随伴させるという命令を下した。そのため全体の航行速度が遅くなり、さらに巡洋艦をその護衛にまわしたため、到着はおくれにおくれた。その結果、初戦の最も肝心な砲撃戦でその火力が使えなかつた。

一方、日本海軍は、東郷平八郎司令長官が魚雷を装備する駆逐艦、水需艇52隻を投入したが、気象条件と当初の期待外れにもかかわらず、極めて効果的だった。夜間戦闘時、この小型艦艇による雷撃戦術が海軍の主流になった。小型艦艇が発射した魚雷64発のうち10発(そして夜間戦闘時の42発のうち6発)が命中し、戦艦数隻を含む跛行中の艦艇を始末した。しかも、絶えず視界上にあって繰り返し攻撃したため、戦闘第2日日のロシアの乗組員たちの士気を低下させ、戦闘に多大な影響を及ぼした。
(8)日本海海戦の戦略比較
ロジェストヴェンスキー司令官が、さまざまな困難に直面しながら長途、対馬海峡を目指した努力は賞讃に値する。しかし、より深い戦略の準備とその実行には完全に失敗した。これとは対照的に、東郷は自分の立てた戦略を見事に遂行した。敵撃減のための最適の時と場所を考え、時機到来に備えた。彼は、敵艦隊が制海権を確保することも、安全なウラジオストクにいたロシア海軍の“牽制艦隊″も阻上して、海上覇権を握った。
東郷による場所の選択が決定的有利となり、比較的狭いツシマ海峡と彼の考案した捜索探知方法が、敵との遭遇をほぼ確実にした。日本海軍は史上初めて恒久的な海上支配権を獲得。海戦勝利の結果、日本は大陸上でもその支配権を維持し、和平交渉を急ぐことが可能になった。
日本の決定的な勝利の2キーワードは・・・
- 初期段階で最初から戦闘の主導権を握ったのが、日本側主力艦隊の一ダースの戦艦、装甲巡洋艦で、ロシアの最も強力な最新式戦艦に火力を集中してほぼ無力化した。日本艦隊は、優れた戦術指揮と速力で優位に立ち、砲撃を相手よりも効果的に加えた。その抵抗力を打ち砕いた。
- 2日目の最終段階では、特に夜間に昼間より大きい成果を上げ、決定的勝利をもたらしたのは小型艦艇の大量入で、主に駆逐艦と水雷艇による集中攻撃だった。
暗夜での行動で、敗走するロシアの艦隊を追跡し、分散させ、中立港へ追いやり、近距離から発射した魚需で撃沈した。戦術上の巧みな戦力の投入は、ロシア側の戦略的洞察力の機能不全によってより効果を上げた。

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