『リーダーシップの日本近現代史』(204)記事転載/『新しい女・青鞜』100年-日本女性はどこまで変わったのか①ー100年前の女性、結婚事情』★『働き方改革、女性の社会進出、少子化対策が叫ばれる現在とどこまで女性の地位は向上したのか』』
『新しい女・青鞜』100年
『新しい女・青鞜』百年-日本女性は変わったのか①
前坂俊之(ジャーナリスト)
(社説)婦人の新しき地位 門戸開放、機会均等
〔大阪時事新報 大正2年11月1日付〕
これは外交上の術話であるが近頃の婦人運動者はこの語を転用して居る、婦人運動の意義は 「女子の人格の全部承認の要求」なる語を以て包括することが出来るが、更に具体的に云へば、完全なる自由と均等の機会を得たいと云ふ組織的の運動である。尤も進化の程度も高い組織の複雑な人類社会に於ては、一般の幸福の為めに個人の自由が幾分制限を受けるから、夫れ以上の自由を貪ろうとするのではない。
事情の許す範囲に於て、男子と同様にありたいと彼等は要求するのである、此事情と云ふのは男女性を異にするより起る事情なので、例へば婦人は母の義務を尽すが為めには掛からず個人的の自由を犠牲とせなければならぬ。
之は如何なる人為的方法を以てしても免る能はざる婦人の特別の任務であるから、彼等は寧ろ光栄ある責任、重大なる職務として之に当ることを希望すると云ふのであるが、此子孫の生殖と養育を女子唯一の職責として強要し此の内に女子を押し込めて其以外の活動を抑圧しやうと試みても其手は喰はぬと彼等は反抗する。
人類の他の一半、男女性の区別は除く可らざる自然の障壁であるが、人類と云ふ上から見れば男女共通の実が無数にある、彼等は此性能を遺憾なく発揮し人類の一半として人類社会の進歩と幸福の為に尽したいと要求するのである、
然らば、彼等は如何なる程度まで、又た如何なる方面に向って活動の範囲を拡大したいと云ふのであるか、云ふ迄もなく時代と人種と国と事情の相違からして自然此程度と方面が異って来るから簡単に之を説明することは一寸難しいが、大体に於て男女平等主義を掲げて男女を説き伏すると云ふのが近世婦人運動の特色である。
オーストリア・ロシア両国の婦人は教育と職業の門戸開放を迫って居ると云ふ現状であるが英国では既に此時代を経過し、目下婦人参政権運動に新しい精力を傾注して居る、併し其同じ英国の内でも教育と職業の機会を幾分拡張して既に滴足し婦人運動の落伍者になったものもあれば、尚之を以て満足せず最高学位を女子にも許し弁護士、僧職の資格をも与へよと迫って居るものもある。
保守的性情の或一派は急進派の運動に反対はせざるまでも傍観的の態度を振って或は其無謀を戒め強ひて引き止めやうとする同様の仕事に対して、男女同様の給金を仕払ふべきであると迫る婦人労働者の一派、抑も男女道徳の標準を具にすると云ふことは不合理極まるまるもので、女子に貞操を強ふる位なら男子の貞操の純潔をも律せなければなら由と云ふもの之には如何に保守的の婦人も異論にないらしい。
要するに婦人運動の起るや、必ず或一定の問題の上に特別に重きを置き其全綱領を揚げて立つ場合は滅多にない、之れに到底全部の承認を得ることは出来ないと予想するからで先最も緊切なものから始め、漸次理想の彼岸に達しやうとするのである。
一部か全部か婦人参政運動は女子の人権、殊に結婚財産に関する法律を婦人に有利なやうに変改せなければならぬ、と主張した随分古い傾向に胚胎して居る、而かも法律の改廃は男子のみより成れる立法府の権内にあって女子は之に対して圧迫を加へることきへ出来ぬから、到底其目的を達することは出来ない、故に少くとも部分的にでも女子の参政権を要求すべきであると永い間主張されたのである。
夫れが前世紀の半ば頃から俄に頭を持上げ一盛一衰して今日に至ったのであるが此間、明かに二種の傾向が生じた、一は参政権の獲得を婦人運動の全部と認め此根城さへ抜けば余の境砦は労せずして陥れることが出来ると楽観するもの、一は之に反し婦人問題はしかく浅薄なものではない、夫れ以上に深甚なる意義を包含も進化の道程に沿うて徐徐に解決さるべきものであると主張するのである。
何れの国の例を見るも先づ教育上の機会均等に向って運動を開始し、幾分の成功を収めて居る、そしてそれが自然の成行きとして彼等は新教育に依って得たる知識を実地に応用すべく職業の門戸開放を迫り、先づ教育事業に関係することとなり之と殆ど同時に各種の慈善事業にも従事するやうになった。
斯くて漸次に各種職業の門戸が婦人の為めに開かれ、又た将に開かれんとして居る世界に於ける大体の趨勢を観察すると、米国英国及び其殖民地が最も多くの自由を婦人に許しチュートン、アラブ人種と東洋人種の婦人が最も不幸の位置に居る。
要するに婦人運動は社会主義と同じく今や世界的の運動となって或一国に於ける婦人運動の成功は他の諸国の婦人に依って歓喜せられ祝福せられると云ふ有様である、で世界各国の婦人は夫れ夫れ如何なる点まで運動の目的を達して居るか又夫れが他の国の婦人の位置に如何なる影響を及ぼして居るか、換育すれば各国婦人の現在の社会的地位如何を知るのは随分興味あることと息ふから之を国別普くは人種別に記述することにする
100年前の結婚の裏おもて 結婚の年輪・日本人の結婚期
〔時事新報〕 大正2(1913)年11月6日付
一体日本人の結婚は何歳位の者に最も多からうか、明治維新前にあっては武家は家録の関係から割合に晩婚であったが、其他にあっては女子は大抵十七八歳、男子は二十四五歳には結婚し、二十歳以上の女子、三十歳前後の男子の未婚者は殆んど無く、苦し有れば不具者として人から嘲笑されたものである。
然るに維新後は之に反して教育の進歩した結果、女子は小学校より高等女学校を卒業し続いて家事道義等の実修を了へる頃には恰ど二十歳前後になるので、今や二十四五歳にして猶ほ未婚の女子も多く、世人また夫れを少しも怪しまねやうになったと共に、男子もまた中等以上の教育を受け社会に活動して自活の途を得る頃には少くも二十五、六歳になるを例とし従って三十歳以上にして未婚の人も少からず、殊に大学を終へ洋行でもする着の結婚となると自然三十歳以上になるを免かれない。
日本の民法では男子は十七歳、女子は十五歳から結婚を許してあるが内務省の統計に依ると現に女子は十五歳の結婚者は年々少くも二百以上に達し、十六歳のは急増して六七千以上に上り、更に二十歳は四万人近くに激増して居る。
勿論年々増減はあるが先づ女子にして一番結婚の多いのは二十歳からで明治四十三年の統計で見ると二十一歳は四万七千五百三十六人、二十二歳は四万五千二百二十二人になって
居る、
其後に於ける年々の統計も同じ様に二十歳から二十一歳まで増加し二十二歳からは減少して居る所を見ると日本女子の結婚期は二十一歳を絶頂であるというべきであらう、又同統計によるに男子十五歳の結婚はわずかに二、三十人で法定の年齢が約四千人、一番多いの
は二十六歳で三万六千四百一人、而して二十七歳からは漸次減少して居る、即ち男子の緒婚期は二十六歳を絶頂として居ると言ふことが出来る。
凋落の早き女子
注意すべき現象は女子の結婚数は二十歳まで非常の率で増加し其後は急激に減じて居るに
拘はらず男子は増加も緩慢なれば、減少も亦た緩慢で二十歳期の結婚は女子に比して男子がはるかにに少くないに反し三十歳期になると男子の一万八千人に対し女子は僅かに八千人、又四十歳には男子の三千七百人に対し、女子は千六百人、五十歳期には男子の千二百人に対し女子は四百人、六十歳期には男子の四百五十人に対し女子は百二十人になって居る。是れで見ても女子の男子に比して凋落の早きことを知ることが出来やう
▲結婚の最終期
法定の結婚年齢は前記の通り女子は十五歳、男子は十七歳であるが、最終年齢は別に規定してない、しかし統計に示す所に依ると明治四十三年中六十歳で結婚した男子は九十五人、女子十三人、六十五歳では男子九十九人、女子二十八人、六十七歳では男子六十八人女子二十人となって居る.
惜しいかな七十歳以上の統計は見えないが走れに依ると先づ人間は死ぬまで結婚するものと言ふことも出来やう、世間では老人の結婚するのほ茶呑み友達を作ると唱へて居るが全く是等の結婚は結婚其物が希望ではなくして、他に何等かの目的の存して居るものと思ほれる。
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