前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(350)◎国難最強のリーダーシップ・勝海舟に学ぶ(11) すべて金が土台じゃ、借金するな』

   

日本リーダーパワー史(350)
(総選挙公示―徳川幕府の末期症状と国難現在を比較する)

◎明治維新から150年-国難日本を救った最強の
リーダーシップ・勝海舟に学ぶ(11)
 
①       『政治家の秘訣は正心誠意、何事でもすべて知行合一』(今の政治家にはもっとこの精神が必要。何事も正直に実行あるのみ)
 
②      『すべて金が土台じゃ、借金をするな、こしらえるな』(これこそ今の1千兆円を越える債務をふくらませた政治を一喝、直ぐ取り組めという厳命)
 
③      『借金、外債で国がつぶれて植民地にされる』(政府の現在の1千兆円の借金が命取りになる。いかに国内で95%持っているから大丈夫という政府のウソにだまされるな、と勝先生の体験を基にした歴史的な遺言である)
 
④      『昔の英雄、明君は経済に苦心し成功した』(現在の国債を発行して国民の金を使いうだけで、経済自立再建策を1つも実行できない政治家は全員落第)
 
⑤      『他人の本を読んだだけの学者、専門家の審議会はダメ』(おれは学者が役に立たないということを、維新前からよくよく実験したヨ。学者の学問は、容易だけれども、おれらがやる無学の学間は、実にむつかしい)
 
 
前坂 俊之(ジャーナリスト)

 
以下は「氷川清話」(明治35年版)の現代訳です。
 
      政治家の秘訣は正心誠意、何事でもすべて知行合一(今の政治家には
もっとこの精神が必要。何事も正直に実行あるのみ)
 
 政治家の秘訣は、ほかに何もない。ただただ正心誠意の四字ばかりだ。この四字に拠りてやりさへすれば、たとえいかなる人民でも、これに心服しないものはない筈だ。

また、たとへいかなる無法の国でも、ゆえなく乱暴する国はない筈だ。ところで見なさい、今の政治家は、僅か四千万や、五千万足らずの人心を収撹することの出来ないのは勿論、いつも列国のために恥辱を受けて、独立国の体面をさへ全うすることが出来ないとは、いかにも歯がいではないか。

つまり彼らは、この政治家の秘訣を知らないからだ。よし知って居ても行はないのだから、やはり知らないのも同じことだ。何事でもすべて知行合一でなければいけないよ。

 
すべて金が土台じゃ、借金をするな、こしらえるな(これこそ今の1千兆円を
越える債務をふくらませた政治を一喝、直ぐ取り組めという厳命)
 
 
いかに民を治める術を呑み込んでいても、今も昔も人間万事金といふものがその土台であるから、もしこれが無かった日には、いかなる大政治家が出ても、到底その手腕を発揮すことは出来ない。
見なさい、いかに仲のよい夫婦でも、金が無くなって、家政が左前になると、犬も喰はない喧嘩をやるではないか。国家の事だって、それに異ることは無い。財政が困難になると、議論ばかりやかましくなって、何の仕事も出来ない。そこへ付け込んで、種々の魔がさすものだ。
 
外債は絶対によくない(国債発行は命取りになる。いかに国内で95%持っているから大丈夫というウソにだまされるな、という勝先生の絶対反対の遺言である。
 
 
 ところでおれもこの財政の事では、これまで心配したの、しないの、といふ段ではないよ。まーお聴き。幕府の末年は、何のことはない、まるで今の朝鮮さ。金はない、カは弱い、そして人心は離反して居る、その際を見込んで外国の奴らが付け込んで来るといふ風で、なかにもオロシャ(ロシア)は、前々から銭を貸そう!貸そうといって、おれが局に立った時にも、箱館に居た公使が、実にうるさく言って来た。
 
 もっともこの時おれが局に立って居たのも、決して自分から進んでやったのではない。幕府の内輪は傾いて来る。官軍は攻めて来る。さあその用意をしなければならないと言って、みなが箱根あたりまで詰めかけていくと、官軍がもはや眼の前まで来て居たといふ騒ぎで、上も下も狼狽してしまった。
                       
そんな間際であるから、誰も好んで局に当る人はない。そこで止むなくおれが出ると、例のオロシャなどが、一時の間に合せのために、是非金を貸そうから、それで存分戦争をして内国の始末をお付けなさい、その間は、われわれも黙って、箱館で見て居ませうといって、しきりに迫って来る。
 
おれも 1その時、戦争はしたし、金はないし、力は弱いし、実に途方に暮れてしまって、
よりは、むしろ打死でもする方がいくら易いか知れないと思ったくらいであったけれど、しかしながら、一時凌ぎに外国から金を借りるといふことは、たとへ死んでもやるまいと決心した。
 
 といふものは、まあ嫌なのと、不面目なのとは、耐へるにしたところで、借金のために、抵当を外国人に取られるのが、実に堪らない。よしまたそれをも耐へるとしたところで、借金を返す見込がないから仕方がない。これが一家や、一個人のことなら、どうなってもたいしたことはないが、なにしろ一国のことだから、もし一歩誤れば、何千万人といふものが、子々孫々までも大変なことになってしまうのだ。
 
それでおれが局に立って居る間は、手の届く限りはどこまでも借金政略(外債)を拒み通した。
 
 しかし、その後、徳川慶喜(最後の将軍)様の時になっては、とうとう幕府も往生して、はるばる仏蘭西(フランス)まで金借りに行くことになった。使者は、あの向山黄村で、随行員は、田辺などの連中であった。
 
ところがかへって仏蘭西(フランス)自身が彼のやうな革命騒ぎになったものだから、他国へ金を貸すどころの話でない。そこで、向山らは仕方が無いから、和蘭(オランダ)まで回っては来たが、さてそれから日本へ帰る旅費がない。それは最初、向山らは、仏蘭西へ着きさへすれば、金は確かに借れるものと、あまり大丈夫に当て込んだから、行く時に帰国の旅費を持たなかったのだ。しかし、まあ、やっとのことで、和蘭で旅費だけを工面して、ようやく帰った。
 
そこで、ご覧よ。朝鮮(韓国)でも支那(中国)でもいま、ちょうど日本の幕末の通りで、貧乏で弱り切って金を外国からから借りるといふ段になったのだが、さあこれからがほんとうに禍(わざわいー金の担保に植民地にされてしまった)が襲って来るのだ。
 
 
 
昔の英雄、明君は経済に苦心し成功した―(現在の国債を発行して国民の金を
使うだけで、経済自立再建策を1つも実行できない政治家は全員失格)
 
 天下の富をもってして、天下の経済に困るといふ理窟は無い筈だ。
古の英雄は、みな経済のために苦心したヨ。織田信長は、経済上の着眼が周密であったから、六雄八将に頭となり得たのサ。
武田信玄も甲州の砂金をひそかに掘り出して、いろいろな経済制度を立てた。また南朝の正統も、北朝の細川頼之の経済のために倒れた。あの芭蕉のごときも、非常の経済家だったヨ。近江商人は、みな芭蕉の遺法に則ってやるのサ。
 
一番感心するのは北条氏の政治だ。元冠が三年続いても、軍事公債は募らず、総理大臣白から奔走することはなく、九州の探題に防禦させておいて、それで綽々として余裕があるのだからノー。
 
承久の乱の時には、北条泰時が単騎、西に馳せ向へば、行くこと三日で十万騎が集まったとは、当時の兵姑や募兵の事は、羨ましいほど整って居たらしい。これは平生経済の事に注意して居たからの事サ。陪臣であって九代も続き、しかも国富み、民服したのは、もっともの次第だ。北条氏の栄えたのは、つまり倹(倹約)のためで、その亡びたのは、驕り(ぜいたく)のためだヨ。
 
 北条氏の仏法に帰依したのを見て、単に禅に凝ったと思ふのは問違ひだヨ。これもその大目的は経済のためサ。当時宋が亡んで、元が起るときだったから、北条氏は宋の明僧智詩を多く招いて五山を開き、盛んに仏法を信じた。そこでかの無学禅師を初めとして、末の人民が引き里きらず、続々と日本へやって来るにつれて、銭の輸入は実に驚くほどであった。

この事は、宋元通寶の我国に存することが現におびたゞしいのを見ても分る。つまり仏教を信じたのも、経済に利用するためサ。

 しかし、利用といっても、真正の信仰がなくては、宗教の利用は出来ないヨ。
                          
北条氏の憂うるところは、ただただ天下の子民といふことばかりだった。それゆえに、栂尾の明慧が、あるとき、泰時に向つて、北条氏が帝室に対する処行につきて告した際にも泰時hs、いかにも恐れ多いことだけれども、民百姓のことを思ふと、止むなく、かくせざるを得ないと、先父も常々申されたと答へたさうだ。その決心は、実に敬服べしだ。おれも幕末の時に、果して北条氏の決心にならいえるか得ないかと、白から省みて考へたら、とても自分はできなかった。
             
北条氏は、この通り善良なる政治家であったけれども、いづれ無学文盲で、後醍醐天皇の勅文をさへ読むことが出来なかった。

しかし、実際の手腕は、あの通りサ。おれは学者が役に立たないということを、維新前からよくよく実験したヨ。学者の学問は、容易だけれども、おれらがやる無学の学間は、実にむつかしい。

 
 
 

 - 人物研究 , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日露300年戦争(2)-『徳川時代の日露関係 /日露交渉の発端の真相』★『こうしてロシアは千島列島と樺太を侵攻した⑵』

★『こうしてロシアは千島列島と樺太を侵攻した⑵』  その侵攻ぶりを、当時の長崎奉 …

「オンライン決定的瞬間講座・日本興亡史」⑬」★『国会議員63年間のギネス政治家・尾崎行雄(96歳)の「昭和国難・長寿逆連突破力』★「日本盛衰の原理はー売り家と唐様で書く三代目」で不敬罪で82歳で起訴される』

  第5章―国会議員63年間のギネス政治家・尾崎行雄(96歳) ますま …

no image
『オンライン/75年目の終戦記念日/講座④』歴代宰相で最強のリーダーシップは1945年終戦を決断実行した鈴木貫太郎(77)ー山本勝之進の講話『 兵を興すは易く、兵を引くのは至難である』★『プロジェクトも興すのは易く、成功させるのは難い』●『アベクロミクスも7年間も先延ばしを続けていれば、 最後はハードランニング、国家破産しかない』

   2016/10/31   …

no image
日本リーダーパワー史(764)―『さらば!「東芝」の150年歴史は「名門」から「迷門」、「瞑門」へ』● 『墓銘碑』経営の鬼・土光敏夫の経営行動指針100語を読む』③『社内の人間の顔をたてるよりも、社外への会社の顔をつぶさぬことを考えよ』★『賃上げは生産性向上の範囲内で」ではなく「賃上げを上回る生産性向上を」と考えよ』

  日本リーダーパワー史(764) さらば!「東芝」の150年歴史は「名門」から …

no image
『世界サッカー戦国史』④『西野サッカーはベスト16位に辛くも食い込み、さらにベルギー戦(7/3)での奮戦が期待される』★『西野監督の「名将」の証ーポーランド戦最後の15分間でコロンビアの勝利にかけた決断力(勝負勘)こそ、2次リーグへの突破を決めた名将の戦略』

『世界サッカー戦国史』④ 前坂 俊之(ジャーナリスト) 予選敗退確実とみられてい …

no image
日本リーダーパワー史(251)「日本を救った男」というべき空前絶後の参謀総長・川上操六(31)田村怡与造について

 日本リーダーパワー史(251) 「日本を救った男」というべき空前絶後の 参謀総 …

『Z世代のための<憲政の神様・尾崎咢堂の語る「対中国・韓国論①」の講義⑧『中国は無力、無秩序であるにも拘らず、中国人は尊大に構えている誤りと、日本人の過度な中国心酔の誤りとを同時に正すには両国は一度戦って見るより外にないと考えた。』

2013/04/02   <日中韓160年三国志―尖閣問題ル …

no image
『オンライン/天才老人になる方法④』★『天才老人NO1<エジソン(84)の秘密>➁落第生 アインシュタイン、エジソン、福沢諭吉からの警告』★『天才、リーダーは学校教育では作れない』★『秀才、優等生よりは、落ちこぼれ、落第生の方が天才になれるのよ』

『リーダーシップの日本近現代史』(64)記事再録/    & …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(9)記事再録/ 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 ⑫『福島安正のインテリジェンスが日清,日露戦争の勝利の主因①わが国初の国防書「隣邦兵備略」を刊行、清国の新海軍建設情報 を入手、朝鮮を属国化し大院君を強引に連れ去った

    2015/12/03 &nbsp …

no image
世界/日本リーダーパワー史(966)ー『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショナリズムの対立(上)』★『トランプとロシアとマフィアの三角関係』★『政治ショウ化した弾劾裁判のむつかしさ』

世界/日本リーダーパワー史(966) トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショナ …