『リーダーシップの日本近現代史』(309)★『コロナパニックは世界大恐慌に突入寸前か!』★『日清、日露戦争の勝利で国難突破力を発揮した 明治の インテリジェンス』★『児玉源太郎は日露戦争直前のクロパトキンの日本敵前視察、恫喝には包み隠さず、一切合切すべてみせろ』と指示した』
2020/03/17
日本リーダーパワー史(792)の記事再録
前坂 俊之(ジャーナリスト)
児玉源太郎中将は明治33年12月に発足した第四次伊藤内閣に続いて、翌34年6月成立の桂内閣でも陸軍大臣として活躍していたが、対ロシア問題が危機的様相を帯びてきた明治35年3月、陸軍大臣の職を寺内正毅中将に譲った。しかし、児玉は内務大臣兼台湾総督という地位で、依然として桂内閣の有力なメンバーであり、『対ロシア戦争指導の主任閣僚という役目』を密かに担っていた。
いわば内閣でのロシア戦担当であり、実際の参謀本部次長は後輩の田村田村 怡与造だったが、故・川上操六参謀総長の跡を継いだ実質上の参謀総長格だったのである。
ロシアは満州撤兵約束に違反
ロシャが列国に対し声明をだして満州から撤兵することを約束したのは明治35年4月8日であり、3回に分けて全軍撤退を表明した。第一次撤退は約束通り実施したが、第2次撤兵は明治36年4月8目までに盛京省の残部と吉林省からの撤兵を約束していたのに守らなかった。
清国駐在の内田康哉公使が北京からの4月19日の電報によれば、ロシャは満州が治安不良なために新設鉄道が馬賊に襲撃されて危険に陥っていることを理由に撤退を中止、第2次撤兵に関して新しく六ヵ条の要求を清国に突きつけ、その回答が出ない間は撤兵できないと主張した。
しかし、このロシア側の主張は嘘だった。福島安正情報参謀の情報では、ロシャ軍は馬賊を使って故意に鉄道を襲撃させているとの事実をつかんだ。また鴨緑江下流の新義州に近い竜岸浦を占領して、軍事的施設を加え、虎視眈々と朝鮮を狙い、旅順の総督府と一体となって「極東帝国建設」に邁進する勢いを示した。
ロシアの撤兵延期策は単なる口実で、腹の中では実力で満州占領、居座って、決して手放さないつもりだった。
京都「無隣庵」で四巨頭の会議が開催
日本政府も、いよいよ腹を固める時期が迫ってきた。内田公使の北京急電に接した翌々日、4月21日、伊藤、山県の二元老、桂首相、小村外相は、山県の京都南禅寺畔にある別邸「無隣庵」で会談した。
山県公ら四名は無隣庵2階の一室で対ロシア問題について長時間にわたって密議した。この時、山県から命じられて「対ロシア戦担当の児玉内相が呼ばれ、児玉と盟友の参謀役・杉山茂丸も東京から呼び出され『無隣庵』1階の別室で待機し、なりゆきを見守っていた。
http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/24127.html
この後、ロシア側から突然、クロパトキン陸相の極東視察の途中、日本を視察したいとの申し出があった。日本の戦意を探り、特に対ロシャ作戦準備の状況を確認するための敵前視察であることは明白であった。
陸軍参謀本部ではすわ一大事!「第2の大津事件か!」と驚き、あわてふためいた。クロバトキン大将をいかなる方針で迎えればよいのか、謀議を重ねたが結論には至らなかった。
思い余って陸軍随一の知恵袋、インテリジェンスの持ち主の児玉に相談に行った。すると、児玉は言下に結論を下した。
「タロハトキン大将の訪日について、何も騒ぐことはない。むしろこの機会を活用して、クロパトキンをして日本が平和主義で、少しも対露戦準備に夢中になっていないということを認識させて、これをロシャ皇帝に上奏させるのが上策である。クロパトキンの欲するものは何んでも見せてやって、何も隠したりするような馬鹿なことはするな」と一喝した。
クロパトキン大将一行の東京到着
タロパトキン大将の極東視察はロシャ皇帝の勅命によるものだった。一行は4月28日、ぺルスブルグを出発し、当時8分通りが出来上がっていたシべリヤ鉄道の実態を視察しながら、まずウラジオストックに到着し、ウラジオ要塞の戦備の状況を視察した。またウラジオ附近の沿海州一帯には当時満州撤兵用に備えて収容施設を建設中であったので、これも念入りに実況を調査した。
その後、在満州ロシャ軍の状況等を巡視した後にウラジオ軍港から巡洋艦アスコリ号に乗艦して日本海より関門海峡を経て神戸港に上陸。大阪、名古屋等の日本国中央部の実況を車中から視察しながら6月12日東京に到着した。
『「明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破力に学ぶ」
今こそ杉山の再来の<21世紀新アジア主義者>が必要な時」』①
http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/323.html
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