前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

★『明治裏面史』 -『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,リスク管理 ,インテリジェンス㊻★『児玉参謀次長が日露開戦と同時に命令したのは満州馬賊をシベリア鉄道の破壊工作に活用する 『特別任務班』の編成で福島に指示した。』★『青木宣純大佐を『特別任務班』隊長に任命』

      2017/08/12

 ★『明治裏面史』 –

『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,

リスク管理 ,インテリジェンス㊻★

 ダウンロード

児玉参謀次長が日露開戦と同時に命令したのは満州馬賊をシベリア鉄道の破壊工作に活用する『特別任務班』の編成で福島に指示した。

1863年(明治維新の5年前)に創設された赤十字国際委員会(戦時における中立かつ人道的な活動を行う7つ基本原則「人道、公平、中立。独立、奉仕、単一、世界性」の精神、1864年のジュネーブ条約(赤十字条約とも言われる)などによって、戦時においての暴力の無制限な使用を禁止し、負傷者の収容や捕虜の取扱い等について各別の救護措置の規定を設ける等の交戦法規が定められた。

ただしこれらの適用を受ける権利のある者は正規の服装をした軍人に限られており、各国とも軍人の服装については相互に厳重に規定を守らせていた。

 ところが戦争規模の拡大と国民戦争的傾向が増して、軍人以外の服装をした、いわゆる清国などの便衣隊(軍服を脱いで市民に紛れ込んで戦う)と称する者の戦闘加入が多くなり、特に戦線背後で遊撃戦やゲリラ戦という交戦法規ギリギリの巧妙なやり方の便衣隊を戦法が生まれた。

満州馬賊を利用して敵背後をかく乱する作戦はロシアが満州侵入以来、常套手段としてきたものである。

その「満州馬賊の実態」について-

島貫節重著「福島安正と『単騎シベリア横断(下)』

 満洲には山賊、野盗と言った盗賊の類が非常に多く(注・日本でいえば中世の戦国時代の前のような乱世の社会状態。黒澤明監督の「七人の侍」で農村を野武士,野盗の集団が襲って食糧や女子をさらっていく拡大版的内容)、一般に匪子(フーズ)と呼んでいた。匪子のことを匪賊と呼んだり、また多くの場合、彼等は馬を利用して出没するので馬賊と言うようになったのは日本人の呼び名であろう。

 満州は余りにも広大で清国の警察力が行き届かず、特に辺境の地方に匪子の絶えたことはなく、そのため各部落毎に自衛のため築城と自警団が組織されるようになったが、この自警団は、暗により要人や商人の旅行を護衛するため

遠方に旅行するが、この場合、自警団同士の抗争もあり、また新式兵器を欲しがる余り、争奪戦も相当に多い。

 なお各地に群生した軍閥の勢力争いのため、そのも派閥も非常に多く、特にその敗者の残党どもは自活のために、勝手に掠奪して廻るものも多い。なお乱世に嫌気をさして、少しでも武術に心得のある者は匪賊を商売にして、すまし

ている奴もかなり多いといわれている。

 しかし小人数の盗賊や、一時の不心得者の類は論ずるに足りないが、大規模の組織と集団を作っている匪賊の中には、いわゆる時世の権力に反対し、または圧政に抵抗して徒党を組み、いわゆる正義感の強い義賊を以って任じているような集団も少なくない

 なお何れの集団も自活のために農耕、営業を兼ね行い、又は他の権力者(時により外部の外国勢力)から資金の補給を受けたり、武器弾薬の供与を仰いでいたものもいた。

 

 また資金獲得に最も効果のある密輸入や、禁制の麻薬の密売等もこれらの団体が最もねらっているところである。

 福島中佐が溝洲馬賊を研究してみて最も注目したことは、彼等の巧妙な情報組織であり、またその回緒と規律の厳正な頭目たちの指導力の素晴しさであった)(436-437P)

——————————

陸軍参謀本部は日露開戦を目前に控えて満州馬賊の利用を検討していた。

明治35年までロシア公使館付武官としてサンクトペテルブルグに勤務していた参謀本部の田中義一中佐(後の首相、大将)は福島安正少将よりこの企画を命ぜられて、詳細な計画を準備していたが、明治36年秋頃になってもわが政府の方針が決定せず、当時の『開戦に慎重だった』田村怡与造参謀次長もこの特別任務班の準備開始を許可しなかった。

 

ところが、田村の急死により、「開戦急先鋒派」の児玉次長の登場となったのは明治36年10月である。児玉次長は、モルトケ、川上操六流の「はじめ熟慮、おわり断行」の戦略を心得ており、一転して特別任務班の準備を命じた。

「少なくとも三カ月以上の準備なくして、この種の図上の計画は、たとえそれが名案であっても、その実際はないも同然である」との理由である。明治36年11月20日即刻準備開始を命令した。

 

普通、「特別任務班」「秘密ゲリラ部隊」による作戦はいかに名案であったとしても、実行に移すには、最低、一年以上の準備期間がかかる。相手が清国人との合作であり、しかも広大な満州の現地の敵背後での活躍である。そのためには担当者たちの団結と、爆破作業等の特殊教育が不可決である。一番肝心なのは指揮者を誰にするかというトップリーダーの人選である。

それらを含めてあくまでも用意周到に進めても時間がかかる。 そこをどう克服すればよいのか。

 

児玉次長は福島部長に相談した。

 

福島「それはこの特別任務班の全敗指揮を執る指揮官を早く決定することです」

児玉「その指揮官となるべき者が貝備すべき最大の条件は何か」

福島「清国の将軍から完全に協力を得られる人物ということになりましょう」

児玉「そして清国の将軍とは袁世凱将軍ということになると思うが」

福島「閣下も袁世凱将軍にもっぱら希望を託するとあらば、袁世凱将軍に信頼を受けている者としては青木宣純大佐の右に出るものはおりません」

児玉「青木は今、どこに勤務しちょるか」

福島「彼は大佐に進級して砲兵連隊長として、盛んに対露砲兵戦の訓練に熱中していると聞いております」し

児玉「よし。然らば即刻彼を招致して特別任務班の準備を命令することにしよう」

「以上は島貫著「戦略・日露戦争」(上)原書房 244P」

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(97)』「第2次世界大戦での各国の死者数の統計」「朝日新聞の部数減について」

 『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(97)』 <F氏のコ …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(75)』『音楽祭に「オザワ」の冠小澤征爾80歳への決意」『佐世保少女、暴走放置した父の世間体」 

     『F国際ビジネスマンのワールド …

no image
日本メルトダウン(918)『扇動政治家の論調、実はファシズムと同じだ』●『英国EU離脱が示した「グローバル化の終わり」(池田信夫) 「世界が1つ」になる日は来ない』●『 愚かな英国と賢いドイツ、この差はどこで生じたか ブレグジット以降の成長戦略』●『中国が東シナ海で日本を威嚇する本当の理由』●『人工知能:機械の進化 (英エコノミスト誌)』

 日本メルトダウン(918)   扇動政治家の論調、実はファシズムと同 …

no image
速報(113)『日本のメルトダウン』『小沢一郎氏討論会-「震災は国民主導最大のチャンスーウォルフレンと対談』、小出裕章情報

速報(113)『日本のメルトダウン』 『小沢一郎氏公開討論会-「震災は国民主導最 …

『オンライン講座/真珠湾攻撃から80年②』★『 国難突破法の研究②』ー『山本五十六のリーダーシップー日独伊三国同盟とどう戦ったか』★『ヒトラーはバカにした日本人をうまく利用するためだけの三国同盟だったが、陸軍は見事にだまされ、国内はナチドイツブーム、ヒトラー賛美に満ち溢れた』

  2012/07/29 記事再録・日本リーダーパワー史(288) < …

no image
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1053)> 『パリ協定を離脱した米国の孤立化』★ 『トランプの連続オウンゴールで中国が『漁夫の利』を占めた』●『PM2.5などの大気汚染、水質汚染、土壌汚染、汚染食物など史上最悪の 『超汚染環境破壊巨大国家」中国に明日はない。』

 ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1053)> …

「オンライン・鎌倉古寺巡礼動画』★『わが愛する『鎌倉五山の寿福寺』山門から本堂までの遠近法の静かな参道の杉木立の枯根と苔のわび、さびが美しく調和する、なごみと癒しのスポット』

           &nb …

『Z世代のための日本インテリジェンス史』★『日露戦争の日本海海戦で英海軍ネルソン提督を上回る完全勝利に導いた天才参謀・秋山真之のインテリジェンス②』★『山梨勝之進大将の証言』による「ジョミニ(フランスの少将)、クラウゼヴィッツ、マハン、山本権兵衛の戦略論』

2024/06/24の記事再録、再編集 『山梨勝之進大将の証言』によると、 ロシ …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(166)』『海外出張経費について、ロンドン市から返信あり!文字通り、舛添知事の豪遊とケタ違いだった』●『★小泉元首相インタビュー「原発ゼロやればできる!」「みんな安全って言ってたんだ。ほんと悔しいよ』●『多くの日本人が貧困に沈むのは、なぜなのか』

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(166)』   海 …

no image
書評/河田宏著「第一次世界大戦と水野広徳」三一書房(1996)★『中野正剛と水野広徳を論議させたところはまるで「三酔人経綸問答」』

書評「図書新聞」(1996年6月15日)掲載 河田宏「第一次世界大戦と水野広徳」 …