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◎<名経営者・人を奮い立たせる言葉>『ニトリ』似鳥昭雄会長と『ユニクロ』 柳井正会長の『戦略経営』『人生哲学』に学ぶ 」月刊「理念と経営」2016年7月号掲載)

   

 

 名経営者・人を奮い立たせる言葉―

『ニトリ』似鳥昭雄会長と『ユニクロ』

柳井正会長の『戦略経営』『人生哲学』に学ぶ

 (月刊「理念と経営」2016年7月号掲載)

              前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)

2000年以降のデジタルIT・スマホからAI(人工知能)時代へ突入する中で日本の代表的な電子、電器産業、各種大企業が次々にドミノ倒しとなったが、昨今はシャープ<1912(同45)年創業)、東芝<1875年(明治8)創業>、三菱自動車<1870年(同3)>などの経団連トップの老舗百年大企業の不祥事が続発、沈没に見舞われている。

人間も企業も国家も寿命がある。誕生して、成長、成熟、盛衰して最後は亡くなっていく。国家の興亡、運命もこの歴史サイクルを繰り返す。当然、老舗企業として数百年繁栄した大企業といえども、このサイクルから逃れることはできない。

いずれの企業も最初は個人企業、中小零細企業である。そこからスタートして、時代の波に乗り成長して『大企業』になり、興亡のサイクルにのり100年以上存続しても、最期には必ず寿命がくる。その面では自然的現象でもある。

ただ、日本で問題なのはこうした『老舗大企業』の消滅以上に、ベンチャーが育たないこと。既成の大企業を追い抜く新興ベンチャーが現れない日本の経済風土こそ問題で、これは日本社会の『超高齢・超少子化社会』の反映でもある。

ちなみに、シャープ、東芝も最初は零細、中小企業であった。シャープの創業者は早川徳次(1893-1980)は極貧の家庭に生まれて継母から、ひどいいじめと虐待とせっかんに苦しみながら成長し、九歳から17歳まで金属細工店の住み込み丁稚小僧として寝ずに働いた。

18歳で独立する。「禍福(不幸と幸福)はあざなえる縄のごとし」(名言)の逆境人生をバネに「ピンチの後にはチャンスが来る」(名言)と逆転、『7転び8起』の苦闘で大成功への階段を登って行った。

『シャープの栄光』はちょうど創業100年目に存亡の危機に見舞われるが、そのあたりのいきさつは『100周年を迎えたシャープは存亡の危機にたつー創業者・早川徳次の逆境・逆転・成功人生に帰れ「ピンチの後はチャンスが来る」(月刊「理念と経営」2012年5月号)で詳しく紹介したので、見ていただきたい。

一方、東芝の中興の祖、大発展の基礎を築いたのは土光敏夫(1896-1988)である。日本の経済界を背負って立った「経営の鬼」の土光イズム「モーレツ経営」は戦後の高度経済成長の経営バイブルである。

① 一般社員は三倍、重役は十倍、私はそれ以上に働く

② 六十点主義で即決せよ。決断はタイムリーになせ

③ 成果が上がったら報告するのではなく、報告するから成果が上がる

⑤ 廊下コミ(コミュニケーション)を積極的に行え、

⑥地位につけて能力を発揮させよ

⑧明日にしようという心にムチを打て

などなど、社員の心に火をつけて東芝を見事に再建し、第4代経団連会長となり、日本経済の国際化に尽力。1981(昭和56)年には第2次臨調会長にも就任した。その名門企業もトップの力量次第で時代の大波に飲み込まれ存亡の危機に立たっている。

 

『29年連続で増収増益を続けた『ニトリ』

創業者・似鳥昭雄氏の前代未聞の業績』

さて、そんな日本経済の衰退、停滞、日本のリーダー、経営者の悪い話ばかりの中で、がぜん脚光を浴びているのが「お、ねだん以上。」のフレーズでおなじみのニトリホールディングス。

家具・インテリア製造小売りで全国トップ、1989年から29年連続で増収増益を続ける超優良企業を一代で築き上げた創業者の似鳥昭雄会長である。『29年連続で増収増益を続けた経営者は日本企業史のなかでは前代未聞』であろう。

似鳥昭雄会長の『戦略経営』『人生哲学』1に学ぶ

似鳥昭雄会長(1944年3月―)は1972年に会社を株式会社にした際、60年の事業計画を立てた。「計画最終年の2032年に3000店舗、売上高3兆円となり、流通業界で先進的な米国に完全に追い付く」と高らかに宣言した。60年も先の目標を掲げた経営者は珍しい。しかし、これを着実に実行し、今年の2月決算では29期連続の増収増益を達成した。国内店舗数は400店を数え、売上高は4580億を超える。目標は3000店、売上高3兆円を目指しているのだ。

極寒の北海道・札幌市で育った。ここで味わった生死をさまようほどの貧乏暮らし。いつも死にたい、死にたいと思っていて、楽しみは寝るときだけで、いい思いは一つもなかった。『この貧乏体験が現在の自分を作ったと感謝しているんです』(名言①)という。

小学4年生からヤミ米の配達を手伝い、試験はカンニングが当たり前。父が経営する会社に就職したがシゴキに耐えかね家出した。23歳で似鳥家具店を創業した。

好きな言葉は『短所あるを喜び、長所なきを悲しめ』(名言②)。早川徳次、松下幸之助と同じ『貧乏どん底』育ちといい、忘れ物がひどいところを本田宗一郎にそっくりだという。

成功の鍵は「先手必勝、何をやるにしても誰よりも早くやる。後じゃだめ」(名言③)

流通業に身を置き痛切に感じたのは『どれだけ大きな企業も安泰ということはない。あのダイエーも歴史から消えた』「苦労しないのが社長になったら潰れる」(名言④)

経営方針は『常に、10~20年先は具体的に、5年先はもっと具体的に何をすべきか、改革案を持って、長期計画を立てて、期限内にきちんと達成する』(名言④)

そのためには「変化に対応して行う。たとえ遅れても、すぐに遅れを取り戻せば良い。多少のジグザグ、恐れる必要はない(名言⑤)

 

すべて、体当たりで『1人でやってきた』(名言⑥)―1986年に他社に先駆けて海外輸入を開始。似鳥は通訳1人をつれて、ベトナム、インドネシア、中国などアジアに単身乗り込んで、電話をかけまくり営業して商談をまとめてきた。

『危機はチャンスである』(名言⑦)であると、1989年の消費税導入、中国経済の減速、リーマン・ショックなどの『危機を好機」とみて、値下げや出店攻勢をかけ、さらに高い目標を目指している。

「ニトリ」の似島氏に対して『ユニクロ』の柳井正氏の『戦略経営』

 

ユニクロ」の「ファーストリテイリング」・柳井正会長兼社長(66歳)は今年1月19日、母校の早大で、学生や若手経営者ら約300人を相手に『熱血授業』を行い「日本で一番足りないのは起業家精神だ」と持論を展開した。 年間1兆7千億円を売り上げるアパレル世界大手のファーストリテイリング。世界で1700店を運営するカジュアル衣料品店「ユニクロ」のカリスマ柳井氏は

冒頭で「先日、孫正義さん(ソフトバンクグループ社長)、永守重信さん(日本電産会長兼社長)の3人で話したが、僕らは執念深く、最後まであきらめないんです。みなさんは私を超えていい経営者になり、日本と世界を変えていってほしい」と熱いエールを送った。学生、若手経営者の心に火をつけた柳井氏の2時間の感動スピーチのエキスを紹介する。

(以下は「柳井正氏、早大生に『人生のピーク論』―人は必ず死ぬ、それまでに何ができるか」(東洋経済オンライン)2016年01月24日http://toyokeizai.net/articles/-/101610

第1条―「人間の能力のピークは25歳だ。一生は一回しかない。みなさんいつかは確実に亡くなる。そのときまでに何が出来るか。それを考えることが起業家として成功する」―どんな仕事でもスキルをつけるには、10年はかかる。一番早くスキルがつく方法は自分で事業をすることだ。

 

第2条―「100メートル10秒を切ろうという人は9秒9で走ろうと思う人しかできない。13秒の人には絶対できない」ー経営者はだれよりも高い目標を持たないとダメ。低い目標だと絶対成功しない。

 

会社は「社会の公器」であり、会社の評価は成果を上げたかどうかで決まる。特に上場企業は市場で自分の会社を売っているのと同じ。どれだけ成長したか、どれくらい収益を上げたか、人材を育成しているかで会社が評価される。

第3条―「日本では経営者が経営をしていない人が多い」-「日本が20年以上停滞したのは、経営者がバックミラーを見て、繰り返しをしていたからだ」と手厳しい。

第4条―『成功するには時代を追っかけていてはダメ。変化を自分で作って行かなければならない』ー日本人は変えるということに自信がない。日本の一番の長所であり短所でもある『安定』『安全』『安心』思考は、経営にはまったく必要ないともいう。

不祥事が続きで、身売りする大企業が続く中で経営者にアドバイスー

第5条―『日本の悪い癖で、順送りでバトンを渡すような経営はダメだ。前の人と同じようなことをやっているんだったら、経営者は代わる必要がない」

「デジタル革命」の進展で世界中のあらゆる人が情報に接することができるようになった。デジタルベンチャー企業の躍進で『世界企業競争地図』は毎年コロコロ変わる。それなのに、日本は島国であり、企業は守られていている『ガラパゴス政財官癒着閉鎖国家』であり『日本株式会社』である。そうしたグローバル競争の中で、日本企業は負け続けている。

第6条―「うちもそうだが、海外の会社を買ってうまくいっている会社がほとんどない。(成功のためには)本社、本部自体がグローバル化し、世界中に出て行くようにしないといけない」-いち担当者がいって、現地の経営者に話したってよくなるわけない。オーナーシップがない」

第7条―「うまくいってない会社は、人事が停滞している。偉くなっちゃいけない人が偉くなって、本来能力ある人が下に沈んでいる」-だから、下に沈んでいる人をポップアップすることと、本来管理職とか偉い人になっちゃいけない人をそうでないようにしていく」

第8条―「中小やベンチャー企業では10人入ったら8~9人は辞めるのが普通。残った見込みがある人には将来の夢を語らないといけない」

第9条―「うち経営幹部で活躍しているのは一流大学出身ではなく三流大学だ。その方が、人間力、人をまとめる力がある。そういう人を見つけ、一緒に夢を持っていければいい」

①  第10条―「最終目標は『グローバルワン・全員経営』で経営者がたくさんいる会社をつくること。超楽観的に考えて、事前の準備は綿密に練り、できることをやる。

 

100周年を迎えたシャープは存亡の危機にたつー創業者・早川徳次の逆境・逆転・成功人生に帰れ「ピンチの後はチャンスが来る

http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/2210.html

 - 人物研究, 現代史研究

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