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日本一の「徳川時代日本史」授業③福沢諭吉の語る「中津藩で体験した封建日本の差別構造」(旧藩情)を読み解く③

      2021/05/02

 

日本一の「徳川時代の日本史」授業③

 

「門閥制度は親の仇でござる」と明治維新の立役者・

福沢諭吉の語る「中津藩で体験した封建日本の

差別構造の実態」(「旧藩情」)を読み解く

 

前坂俊之(ジャーナリスト)

 

徳川封建時代の武士はどのような社会、政治。経済環境の中で、

生活をしていたのか、福沢諭吉の「旧藩情」を読み解く③

 

 

徳川幕藩体制の支配の構造は家康が天下を取った後に天海僧正らブレーンの参謀のアドバイスで打ち出したものだ。織田、豊臣の興亡を眼前に見てきた家康は人を頼る愚を避けて、制度・機構に頼る以外には、永久政権樹立の道はないことを知っていた。家康は過去の歴史を調べ、側近や天海僧正らの意見を聞いて、新制度を設計した。

 

    皇室は敬してこれを遠ざけ政治との関係を断つ(鎌倉幕府の方針と同じ)

    大名は三家、譜代、外様の三種に分類し、親藩三家(尾張、紀州、水戸)と譜代大名のうち特別の関係あるものを除き、その他に対しては厳に政治権力と、経済力(武力)を、分離する方針で臨む。外様大名には高禄は与えるが、幕政に参加させず、譜代大名,旗本は小禄に甘んじさせるが、幕政に参加させて老中、大目付、目付、奉行等の重要な役職につける。

    大名の全国配置を、計画的に再編し従来の歴史を考え、仇敵感情を持つライバル同士の外様大名を隣国に配し、相互に牽制させ、その付近には必ず、譜代大名、または天領代官(旗本)を置いて常時、外様大名を監視する体制を築いた。

    全国の水陸交通の要衝、皇室の関係地(伊勢神宮)、金銀銅山などの産出地に、天領(幕府直轄地)を設け、幕府の財源とすると同時に、天領代官(旗本)をして付近の大名の監視役を兼ねさせた。

    京都に所司代を置き、幕府の保護、幕府との連絡に当らせる外、大名と皇室との接触の監視をさせた。

    大阪に城代をおき、直接支配をするとともに、その経済力を幕府の掌中に握る。

    参勤交代と賦役制度を設け、外様大名の出費の増大を計り、その経済力の増大を抑えて・あわせて江戸邸にある大名の正妻を人質としてとって、万一の変に備えた。

    厳格な武家を律する法律(武家法度)を宣布して、いかなる場合でも必要とあればこの法律に当てはめて、自由に大名を懲罰(国替、取潰し)できる弾圧監視体制を作った。

 

制度の骨子は以上の八項目に尽きるが、特に②権力と経済力(武力)の隔離③大名の計画的配置⑦外様大名の経済力制限策⑧過酷な武家べからず法律は、その政策の核心をなすもので、分割・支配・監視・スパイの徹底と、その基盤である被支配者間の不和の恒久化を制度的に実現することに成功したのである。

直参の旗本は、禄がすくなく不断に大名を嫉視し、譜代の小藩も、外様の大藩に反感を持ちつづけ、大藩はまた、政権の座につく小藩を羨み、幕府の幕府の権威を笠に着る、旗本を憎む。すべてこれ家康の作りだしたものだが、巧妙にお互いに恨み合い、憎悪しあう体制は家康の狭智によるものであった。

 

これに、鎖国を徹底し、世界とのもコミュニケーション、外部世界の発展、進歩に完全に目をつぶり、孤立した島国内のみ閉じこもり、3猿主義(見ざる、聞かざる、言わざる)に国民を閉じ込め、士農工商の徹底した身分制度、階級制度に縛り付けて日本史上空前の徳川230年の長期支配政権を完成したのである。

中津藩という小藩のなかの、武士の抑圧体制も次のようなものであった。

 

 

福沢諭吉の「旧藩情」の現代訳です

 
「旧藩情」③


② 第二、上等士族を給人

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%A6%E4%BA%BA

と称し、下等士族を徒士または小役人といい、給人以上と徒士以下とは何等の事情あるも縁組

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A4%8A%E5%AD%90%E7%B8%81%E7%B5%84

 

したものはなかった。

この縁組は藩法においても風俗においても共に許されなかった。単に表向の縁組のみならず、古来士族中にて「和姦」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%92%8C%E5%A7%A6

 

の醜聞ありし者を尋るに、上下の士族各その等類中に限り、各等の男女が互に通じたる者ははなはだ稀であった(注・つまり、自由恋愛的なものはなかったとうこと)。(ただし、日本士族の風俗は最も美にして、和姦などの沙汰は極めて稀に聞くこともあるが、中津藩士ももとより同様なれども、ここにはただ事実の例を示さんがために、その稀に有る者の数を比較した)


 かつ限ある士族の内にて互に縁組することなれば、縁に縁を重ねて、二、三百年以来今日に至ては、士族はただ同藩の好あるのみならず、現に骨肉の親族にして、その好情の篤きはもとより論を俟(ま)たず(好意と親密な関係はいうまでもない)

 

然るに、今日、試に士族の系図を開てこれを見れば、古来上下の両等が父祖を共にしたる者なし、祖先の口碑を共にしたる者なし。あたかも、一藩中に人種の異なる者ということもできる。故に、この両等は藩が同じで君(藩主)を共にするの「交誼」(こうぎ)

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/72250/m0u/

あっても骨肉の親情ある者ない。(骨肉の縁を異にす)

 

③第三、上等士族の内にも「家禄」(給与)

http://kotobank.jp/word/%E5%AE%B6%E7%A6%84

http://homepage1.nifty.com/SEISYO/kyuryo.htm

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%A9%E7%A6%84%E5%87%A6%E5%88%86

 

にはもとより大きな差があって、大臣は千石、二千石、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E9%AB%98

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E9%AB%98%E5%88%B6

 

なおこれより以上の者もある。上等の最下、小姓組、医師のごときは、十人扶持

http://homepage1.nifty.com/SEISYO/kyuryo.htm

 

より少なき者もあれども、これを概するに百石、二百石、或は二百五十石と唱えて、正味二十二、三石より四十石から五、六十石の者が最も多い。

 

藩にて要路に立つ役人は、多くはこの百石以上の家に限るのが通例であった。

 

藩にては正味二、三十石以上の米あれば、普通の家族でて衣食に差支あることはなく、子弟にも相当の教育を施すことができた。
 これに反して、下等士族は十五石三人扶持、(食費)

http://www.weblio.jp/content/%E9%A3%9F%E6%89%B6%E6%8C%81

 

十三石二人扶持、或は十石一人扶持もあり、なお下て金給の者もある。中以上のところにて正味七、八石から十余石に上らず。夫婦暮しなれば格別、もしも三、五人の子供または老親があれば、歳入をよって衣食を給するに足らない。故に、家内で内職に堪る(たまる)=こらえる。がまんする)者は男女を問わず、あるいは手細工、紡績等の稼(かせぎ)をもって辛うじて生計を立てていた。

 

名は内職なれども、その実は内職を本業として、かえって藩の公務を内職にする者なので、純然たる士族ではない。一種の職人というべきもの。生計を求めるには忙しく、子弟の教育を顧るいとまはない。

このため、下等士族は文学その他の高尚の教養に乏しくして、自から賤しき商工の風があった。(貧富を異にす)
  

 

                                 つづく

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