前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(43)『原発事故収束の険しさ訴えた「世界会議」の意義』『原発事故被害、なお続く「家族離散」』

   

池田龍夫のマスコミ時評(43)

 
原発事故収束の険しさ訴えた「世界会議」の意義
原発事故被害、なお続く「家族離散」

池田龍夫(ジャーナリスト)
 
 
      原発事故収束の険しさ訴えた「世界会議」の意義
 
原子力の問題点を話し合う「脱原発会議 2012 YOKOHAMA」が1月14~15日、横浜市西区「パシフィコ横浜」で開催された。約30カ国から延べ1万2000人が「脱原発」を目指し、テーマ別「セッション」を開いて討論を行ったが、市民運動に対するメディアの視点は希薄で、国民への情報伝達義務を果たしていないように思えてならない。

この点については飯島一孝氏が指摘していたが、原発被害に苦しむ首長が語り合った「特別セッション」を特に取り上げて、新聞各紙がほとんど報じなかった論議を福島民友新聞やネットメディアから拾い上げて、問題点を指摘したい。

         福島県南相馬・双葉町長らが悲痛な訴え

「地域発・原発に頼らない社会のつくりかた」と題されたこの会議には、福島第一原発を抱える福島県から双葉町の井戸川克隆町長、南相馬市の桜井勝延市長が出席。「私は乳搾りから始まった人間。

百姓が百姓をできなくなった現実を国会議員はどう感じているのか。政府は、当たり前のことができなくなった現場を本当に見ようとしない」と桜井市長が語り始めると、会場は静まり返った。同市長は「多くの市民が、家族も捜せないまま避難を余儀なくされ、何も変わっていない」と現状を紹介したあと、「岩手県から茨城県までの震災、原発事故の収束が国家的事業のはず」と、一向に進まない国の復興施策を痛烈に批判した。井戸川町長も政府の事故収束宣言について「まだまだ危険で、大変な憤りを感じる」と語った

        原発再稼働には「住民投票」を求めたい
浜岡原発(静岡県御前崎市)と隣り合わせの牧之原市の西原茂樹市長が「原発に私たちの未来は託せない。国に頼っていた農業、財政、年金、医療はみんな崩壊した。命と財産にかかわることは地方からきっちりやっていきたい。浜岡原発の安全は担保できない。国が運転再開を許可する時は自治基本条例に基づき住民投票で信を問う」と発言した。

また湖西市の三上元市長は「今回の事故は日本の技術に信頼が置けないことを証明した」と語り、日本の原子力政策の在り方に疑問を呈した。

住民投票で原発誘致計画を退けた新潟県巻町の笹口孝明・元町長は「国策であっても住民に大きな影響があるならば発言する権利がある。原発が国策ならばもっと国民的な話し合いが行われていたはずで、もっと大きく議論し、この国から原発をなくすべきだ」と、相次ぎ熱弁を揮った。

電力の大消費地である東京都からは上原公子・元国立市長が「都民は事故の加害者であり、被害者ともなった。原発について都民が必死になって考えなければ」と語り、2月9日まで行われている「原発都民投票」の実施を求める署名への協力を呼びかけた。世田谷区の保阪展人区長は「少々高くても自然エネルギーを買いたいという声を、電力消費地で高めていく必要がある。と語るなど、首長の訴えは迫力満点だった。
各首長が真剣に討論した結果、脱原発の推進に向け、「自治体首長レベルで全国ネットワークを組織する」ことを決議した意義は大きい。脱原発へ向けた地方自治体のスクラムがますます強固になると推察される。
 
       発事故被害、なお続く「家族離散」
 
福島大学災害復興研究所が実施した「双葉郡8町村災害復興調査」がまとまり、関西学院大学シンポジウムで1月8日報告された。福島第1原発事故で最も被害の大きかった地域の調査で、「離散家族」の悲劇的実態を映し出している。

調査は昨年9~10月、原発周辺の双葉地域8町村(浪江町・双葉町・大熊町・富岡町・楢葉町・広野町・葛尾村・川内村)の計2万8184世帯に、調査票を郵送する形式で実施。1万3576世帯から回答を得た。回答率は48・2%。調査を担当した丹波史紀・福島大准教授は「5割近い回答率は住民意識の高さの証拠」と分析しており、激甚被災地の具体的調査が注目される。ところが、詳しく報じたメディアが見当たらないので、産経新聞1月8日配信のネットニュースと福島大学ホームページをもとに問題項目を整理して、参考に供したい。

 
      「国の安全宣言を信用できない」が6585%も
 
 先ず「故郷に戻りたい」との回答(66・9%)の内訳は、「すぐにでも」が4・4%、「インフラ整備後」が16・2%、「除染後」が20・3%、「他の住民の帰還後」が25・5%だった。
「帰還まで待てる年数」は、「1年以内」が12・3%、「1~2年」が35・7%、「2~3年」が22・8%で、約7割の住民が3年以内に帰還できなければ帰還が困難になるとの認識を示している。「戻る気はない」と回答したのは、24・8%。「戻らない理由」(複数回答)は「除染が困難」(83・1%)が最も多く、「国の安全宣言が信用できない」(65・8%)、「原発事故の収束に期待できない」(61・4%)との回答には驚かされた。丹波准教授は「住民たちが『なぜ戻れないのか』という理由を提示したことに意義がある。復興に向けた施策を行う際に活用して欲しい。この種の定点観測は今後も続けたい」と意欲的なのが頼もしい。
 被災者が暮らす住居は行政が借り上げた民間住宅(47・8%)、仮設住宅(18・4%)、親戚・知人宅(9・6%)など。避難所暮らしは減ってきたものの3・9%。自己負担で民間賃貸に居住する人は9・8%にも上る。震災によって失職した会社員は3割を超え、パート・アルバイトの76・4%が職を失っている。住居がなく生活が不安定、放射能への恐怖感は消えぬ深刻な現状を調査数字が物語っている。
 
       
避難区域と定住地確保、健康管理を最優先に
 
家族離散については、全体の97・9%が現在も離散または一時的に離散していたことが判明。放射線による健康リスクを懸念して妻子を他地域に避難させ、両親を親類に預けているケースも多々見受けられる。福島市の仮設住宅で暮らす福島県双葉町の無職、吉田義雄さん(84歳)は「帰りたい人が7割というのは当然だ。昨年末、仮設住宅の集会場で童謡『ふるさと』を歌ったが、みんな泣いていた。

子供を持つ若い世代とは違うだろうが、高齢者は双葉を恋しく思っている。老い先短い私も帰る望みは捨てられない」と語る。一方、埼玉県加須市の廃校で避難生活を送る双葉町の元会社経営、渡部晃さん(65歳)は「帰れることになっても、若い人は戻ってこず、町が成り立たない。

その上に中間貯蔵施設が双葉町内に作られる可能性が高いという現実を見ると、帰ることは考えられない。私と同じ考えの避難者が徐々に増えていると感じるし、避難が長引けばそうした人はさらに増えるだろう」と、調査員話に話していた。橋本摂子・福島大准教授は「避難区域の確定、定住できる住居、健康調査が喫緊の課題だ」と強調していたが、まさにその通り。弱者対策最優先の施策へのリーダーシップを政府に求める声は強い。

 
 
 

 - IT・マスコミ論 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

  関連記事

no image
  世界、日本の最先端技術『見える化』チャンネルー『中国インターネット事情がたった12分でわかる名解説動画』→『中国からアクセスできるWebサイトの作り方』●『簡単にわかる! 中国のインターネットとウェブサービス事情』●『中国のネット検閲』●『WEBデザイナーが語る!中国のインターネット最新事情』●『  日本企業がぶち当たる中国市場の3つの壁とは?』

  世界、日本の最先端技術『見える化』チャンネル   ITpro2016-NIF …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(122)「沖縄を無視、対米追従の安倍首相演説」(5/3)

池田龍夫のマスコミ時評(122) 「沖縄を無視対米追従の安倍首相演説」(5/3) …

no image
近現代史の重要復習問題/記事再録/日本リーダーパワー史(293)ー『凶刃に倒れた日本最強の宰相・原敬の清貧の生活、非業の死、遺書、日記』★『原敬暗殺の真相はー「お前は「腹を切れ」といわれたのを、「原を切れ」と勘違いした凶行だった」』

        2012/08/12 /日本リーダーパワー史 …

no image
世界最先端イベント『見える化』/チャンネル世界最大級の観光の祭典『ツーリズムEXPOジャパン-『 『日本財団』日本パラリンピックサポートセンター』●『 東京都の『多摩、島しょと東京の特産品」』★『山口のパビリオン』★『鹿児島のパビリオン』

世界最先端イベント『見える化』チャンネル 世界最大級の観光の祭典『ツーリズムEX …

no image
世界リーダーパワー史(939)― 安倍首相が三選―歴代首相でトップの最長政権(2021年9月までの通算10年間弱)を達成するか』★『安倍首相の解決スピード不足と出口戦略がないために、現実の「人類史上初の超高齢化・少子化・人口減少、消滅自治体、国家財政のパンク、迫りくる巨大災害」にキャッチアップできていない。』

世界リーダーパワー史(939) 安倍首相が三選―歴代首相でトップの在任期間(21 …

no image
73回目の終戦/敗戦の日に「新聞の戦争責任を考える③」再録増補版『太平洋戦争下の新聞メディア―60年目の検証③』★『記者は国家登録制に、国体観念を養うために練成実施』★『戦う新聞人、新聞は弾丸であり、新聞社は兵器工場へ』★『朝日社報の村山社長の訓示『新聞を武器に米英撃滅まで戦い抜け』(1943/1/10 )』

「新聞の戦争責任を考える③」再録増補版『太平洋戦争下の新聞メディア―60年目の検 …

no image
<動画ビデオ>米Apple社のジョブズの「巨大UFO型の新本社」プレゼン」と『全長3.6kmの「ソーラー・トンネル」』

●「巨大UFO型の新本社」をジョブズがプレゼン(動画)」  &nbsp …

no image
『鎌倉海山ぶらぶら日記 』- 鎌倉光明寺「観桜会」(3/25)を見に行く中継ビデオ、 『 関東一を誇る山門の特別拝観で釈迦三尊、四天王、一六羅漢に感嘆』★『「森の踊り衆」による岩手県の民族芸能『鬼剣舞(おにけんばい)』は迫力満点』(動画5本20分)

鎌倉海山ぶらぶら日記 鎌倉光明寺「観桜会」(3/25)を見に行く、 関東一を誇る …

no image
日本メルトダウン(926)『資本主義の成熟がもたらす「物欲なき世界」』●『仲裁裁判所の裁定に反撃する中国の「情報戦」の中身 本格的灯台の設置で人工島の軍事基地化に拍車』●『沖ノ鳥島問題で露呈した日本と中国の共通点』●『「自動運転バブル」はこのまま崩壊の道を歩むのか?』●『 土俵はできた~今こそ真正面から客観的な憲法論議を 中国、韓国、護憲派の懸念はお門違い(筆坂秀世)など8本』

   日本メルトダウン(926) 資本主義の成熟がもたらす「物欲なき世界」 ht …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(115)「国の借金」、過去最大の1024兆9568億円(8/14)●「雇われ日本人、ベトナム戦争で犠牲に」 (8/11)

 池田龍夫のマスコミ時評(115)   ◎「国の借金」、過去 …