前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(65) 「本土と沖縄 内なる歴史問題(10・8)」● 「くるくる変わる野田改造内閣の評判は悪い(10・5)」

   

池田龍夫のマスコミ時評(65)
  本土と沖縄 内なる歴史問題(10・8)
 くるくる変わる野田改造内閣の評判は悪い(10・5)
池田龍夫(ジャーナリスト)

                   本土と沖縄 内なる歴史問題(10・8)
 
 
 米空軍は岩国基地に陸揚げした垂直離着陸輸送機MV2212オスプレイを10月1日から普天間飛行場(宜野湾市)に順次移動させ、6日に12機全部の沖縄配備を終えた。当初どおりの計画を強行し、県民の不安をよそに訓練飛行は本格化してきた。
この問題につき、「本土と沖縄 内なるなる歴史問題」として捉えた10月6日付毎日新聞社説面『視点』欄の指摘は鋭い。
 
                      植民地統治のような沖縄蔑視の現実
 
「配備の日程を変えず強行したのは沖縄に無力感や諦念を与える狙いがある。植民地統治の基本みたいではないかとの不信が広がりつつある。その怒りの意味を認識しなければ、本土と沖縄の溝はこの先もっと深まるだろう。
 
かつて独立王国だった琉球を強制廃止し近代日本に編入した明治の琉球処分、10万人近い民間人死者を出した太平洋戦争末期の地上戦、沖縄を本土から切り離した戦後のサンフランシスコ体制、米軍基地を集中させる結果になった72年の本土復帰。誇りを傷つけられ、多くの血の犠牲を払いながらも、本土の安全のため負担を引き受けてきた歴史のうずきが今、沖縄の人々の心を揺さぶっている。
 
問われているのはオスプレイ配備の是非ではなく、沖縄の歴史と現実にどう向き合うかということである。日本と中国、韓国の間には歴史認識問題があるが、本土側の琉球・沖縄史への理解もまだまだ足りない。沖縄の重い負担を減らすためにも、この『内なる歴史問題』をなくしていくことが必要だ」との鋭い分析は的を射ている。
 
                     「普天間への配備反対」が県民の9割
 
 琉球新報10月2日付社説では、「私たちが目の当たりにしているのは、日米両政府による民主主義の破壊、人権蹂躙にほかならない。
 
配備強行は植民地政策を想起させる蛮行であり、良識ある市民とメディア、国際世論の力で速やかに止める必要がある。琉球新報の世論調査では回答者の9割が普天間への配備に反対した。仲井真知事が強行配備について『自分の頭に落ちるかもしれないものを誰が分かりましたと言えますか。
 
県民の不安が払拭されない中で(移動を)強行するのは理解を超えた話だ』と批判したのは、県民の声を的確に代弁している。森本敏防衛相は『普天間飛行場の固定化防止と沖縄の基地負担軽減について県知事、関係市長と話し合う次のステージに進むと思う』と臆面もなく語るが、県民の多くはそもそも海兵隊が沖縄の安全に貢献してきたとは考えていない。むしろ戦後、基地から派生する事件・事故や犯罪によって県民の安全を日常的に脅かしており、沖縄からの海兵隊撤退を望んでいる。県議会も海兵隊の大幅削減を過去に決議している。
 
…オスプレイの配備強行により、県民の心は基地全面閉鎖、ひいては日米関係の根本的見直しという方向に向かうかもしれない」との警告は鋭い。野田佳彦政権も本土の人々も真剣に受け止め、米国の〝押し付け〟的蛮行を断固拒否する姿勢を示す必要性を痛感する。
 
 
 
   くるくる変わる野田改造内閣の評判は悪い105
 
 
 野田佳彦第3次改造内閣の評判は極めて悪い。毎日新聞10月1日付「余録」が、万葉集の言い回しに似せて揶揄した短歌は出色である。
 
「世の中を何に譬えん 民主党 居眠りの間に代わる大臣」「世の中を何に譬えん 定めなき少子化相の顔のうたかた」「世の中を何に譬えん 声高き政治主導の跡かたもなし」――不人気の野田政権を軽妙に言い当てているではないか。
 
民主党が政権の座を奪取してから3年余で、鳩山→菅→野田と首相が代わったばかりか、少子化担当相は10人、消費者担当相が10人も入れ替わっている。「政治主導」は名ばかりで、実は「官僚主導」。まともな政策を示さないだけでなく〝食言〟で、あっという間に消えてしまった閣僚も数人いたことに、国民は呆れている。
 
 今度の改造内閣の顔ぶれについて各紙は、「代表戦の論功行賞」「入閣希望者の在庫一掃」などと酷評。野党からも「思い出作り内閣」「卒業記念内閣」と辛辣な言葉が浴びせられており、まさに解散引き延ばしの〝悪あがき〟の印象が強い。
 
 朝日新聞3日付朝刊の緊急世論調査によると、「首相にふさわしいのは」との問いに、安倍氏39%、野田氏34%。「民主党内閣の今後に期待する」は30%で、「期待しない」が62%。安倍・自民党に対しても「期待する」は39%、「期待しない」が54%で、既成政党離れを示している。「日本維新の会」が次の総選挙でどこまで票を伸ばすか。政界再編のウネリがますます高まってきたようである。
 
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
 

 - IT・マスコミ論 , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『外国人観光客へのおすすめスポット」★『後楽園(名園)・旭川(清流)・岡山城(鳥城)』の3拍子揃った『歴史文化景観スーペース』は世界の都市の美的景観に引けを取らない』

  後楽園、右上の白い輝く三角の光は岡山城のライトアップ、5月末に撮影 …

no image
(記事再録)140年前の外国新聞 (フランス紙『ル・タン』)が指摘した日本病の正体とは①論理的な学問なし②記憶力、詰め込むだけの教育③理性的学問では小学生レベルの無能な学者を量産④優柔不断で論理性のない人間ばかり⑤新しい状況に適応できない、実際的な良識にかけた人間を作っている。

  (記事再録) 1874(明治7)年5月23日付 フランス紙『ル・タ …

「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース⑦」★『『開戦2週間前の『ロシア・ノーヴォエ・プレーミャ』の報道」-『英米に支援された日本とわが国の戦争が迫っている。日本はその過剰な人口を移住させるために朝鮮を必要としている。英米は商品を売るために満州と朝鮮の門戸開放を必要としている』

    2017/01/13 &nbsp …

『リーダーシップの日本近現代史』(334)-『地球環境異変はますます深刻化」★『豊穣の鎌倉海も海生物が激減、魚クンたちは逃げ出してしまったよ』●『米離脱後のパリ会議の行方はどうなる』

  2017/12/27 「湘南海山ぶらぶら日記」記事再録 …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(122)「沖縄を無視、対米追従の安倍首相演説」(5/3)

池田龍夫のマスコミ時評(122) 「沖縄を無視対米追従の安倍首相演説」(5/3) …

no image
『日中コミュニケーションギャップを考える』(2005/6/30)―中国人の行動原理は➀面子(ミエンツ)②関係(グアンシ③「人情(レンチン)」)

『日中コミュニケーションギャップを考える』(2005/6/30) ―中国人の行動 …

日本リーダーパワー史(877)★『目からウロコの歴史証言/「憲政の神様」「議会政治の父」の尾崎咢堂(行雄)が「日中韓、北朝鮮の150年対立・戦争の歴史ルーツを語る』

日本リーダーパワー史(877) 尾崎咢堂(行雄)https://ja.wikip

no image
『Z世代のための日中韓外交史講座⑧』★『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉓ 西欧列強下の『中国,日本,朝鮮の対立と戦争』(上)(英タイムズ)」★『朝鮮争奪戦の内幕、西欧列強の砲艦外交、策略と陰謀と暗躍の外交裏面史」をえぐっており、「日中韓戦争史」を知る上では必読の記事』

  2015/01/01『日中韓150年戦争史』㉓記事再録編集 日中1 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(257)/ 「2019国際ロボット展」(「協働ロボット、サービスロボットがつなぐ人に優しい社会)=1219/12/18ー21) で 日本ロボット産業の現状をみた』★『2020年は5G、AI元年だが、日本のAI(人工頭脳)産業のー未来は明るいか!』

  ロボットの未来ー2020年は5G、AI元年となる   & …

「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース]④」『開戦32日前の「英タイムズ」―『日英同盟から英国は日本が抹殺されるのを座視しない』●『極東の支配がロシアに奪われるなら、日英同盟から英国は 日本が抹殺されたり,永久に二流国の地位に下げられる のを座視しない』

    2017/01/12  『日本戦 …