池田龍夫のマスコミ時評(98)◎『一段と深刻化する汚染水、政府の〝逃げ腰〟 に呆れる(10/28)』
◎『一段と深刻化する汚染水、政府の〝逃げ腰〟
に呆れる(10/28)』
池田龍夫(ジャーナリスト)
福島第1原発汚染水漏れは台風、地震なども影響して収束のメドはいぜん立っていない。
10月26日未明、北海道から西日本の広い地域で地震が発生、宮城県石巻市で震度4が観測された。震源は福島県沖約300㌔で深さは約10㍍、マグニチュードは7・1と推定。岩手から千葉県沖に津波注意報・警報改善(今年3月)後初の注意報だったが、津波被害がなかったことは幸いだった。
「前面に立つ」は掛け声倒れ
これに先立ち東京電力は25日、福島第1原発内の排水溝でストロンチウムなどベータ線を出す物質が1㍑当たり2500ベクレル検出されたと発表。この地点での最高値で、海から約150㍍しか離れておらず、一部が海に流出した可能性があるという。東電側は「放射性物質の海洋流出の危険性は少ない」と説明しているが、相次ぐ汚染水漏れ対策が万全といえない状況である。
東京電力の〝漏水漏れ〟発表は連日のように続いているのに、政府は「前面に立って対処する」と言いながら、未だに流出の事実を隠蔽している。
「完全にブロック」をまだ繰り返す
安倍晋三内閣は25日の閣議で、汚染水漏れ問題について「影響は完全にブロックされている」とする答弁書を決定した。安倍首相は9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会の演説で「汚染水による影響は原発の港湾内の0・3平方㍍の範囲内で完全にブロックされており、全体として状況はコントロールされている」と発言し、国会質疑で野党議員から批判を浴びているが、首相は「完全に」という表現を抜いたり加えたりするなどして、自説にこだわり続けている。状況の変化に応じて、軌道修正すること自体、決して恥ずかしいことではないのに、これでは〝恥の上塗り〟ではないか。
外国メディアの批判も高まる
汚染水問題はインターネットを通じて時々刻々海外に流れており、外国メディアからも厳しい批判が寄せられている。各国とも「日本政府の姿勢のおかしさ」に気づいているはずで、日本への信用失墜につながる恐れがある。先に本欄で、「20年東京五輪にも影響か…」との外国メディアの報道を紹介したが、「2年半経っても収束のメドすら立っていない福島事故の現状を見ると、7年後の五輪は安全」と言い切れないことが懸念される。
福島原発では9月以降トラブルが続き、放射線量の高い現場で働いていた作業員が汚染水を浴びる事故まで引き起こしている。1日で2㍉シーベルトも被曝する作業員もおり、一般人の年間被曝限度の2倍近いというから恐ろしい。建屋周辺は今も毎時100㍉シーベルト超の場所がざらで、1年間の被曝限度50㍉シーベルトを超えると、その年は現場で働けなくなるという。
放射線量を超えた作業員は〝ポイ捨て〟
朝日新聞10月14日付朝刊が1~2面にわたって現場ルポを報じていたが、改めて過酷な作業実態に驚かされた。
「国や東電は作業員は年間1万2000人が必要とみて要員計画を作った。しかし年間放射線量を超えると〝ポイ捨て〟されるため、すぐ人員不足に陥る。しかも、事故現場最前線の作業員のうち、東電社員は1割ほど。危険な作業の大半を担うのは下請け、孫受けの人たちだ。それでも足りないため、全国各地から原発作業には不慣れな土木業者を雇わざるを得ない状況だ」との報告を読んで、汚染水対策だけでもこの過酷な実態に驚くとともに、肝心の建屋内の点検・修復の見通しは立たないのではないかとの心配が一層募った。
東電が昨年、作業員4000人を対象に行ったアンケートでは、半数近くが偽装請負の状態で働かされている恐れが判明。賃金が中抜きされ、安全管理も不完全だったという。国は「東電の指導を強化する」と口先だけでは言うが、〝下請け頼み〟は全く改善されていない。
最終的には、数十年続くという「廃炉」の難作業が控えている。政府は〝逃げ腰〟ではなく、現場作業員の確保、待遇改善の抜本策提言を急がなければならない。東京五輪準備に作業員が転出する恐れもあり、「五輪はスリムに、東日本大震災復興が最優先」の旗を高く掲げなければならない。
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
◎<今も続く汚染水!【福島第一原発の汚染水問題まとめ】
http://matome.naver.jp/odai/2137179335598486901
○「小泉純一郎が繰り返す「原発ゼロ」発言 その真意は
http://dot.asahi.com/aera/2013100200039.html
◎『数百人に1人が1ミリシーベルトの被爆でガンを運命づけられ
るということだと思います。/小出裕章助教 第4回インタビュー
Powered by ホワイトフード文字起こし
http://hiroakikoide.wordpress.com/2013/07/15/whitefoodqa_2013jury15/
関連記事
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(40)☆『普天間辺野古移設は困難―新打開策提示し〝沖縄差別〟払拭をー』
池田龍夫のマスコミ時評(40) ☆『普天間辺野古移設は困難―新打開 …
-
-
<クイズ>-世界で最ももてたイケメンの日本人は誰でしょうか?-ファースト・サムライの立石斧次郎
<クイズ>-世界で最ももてたイケメンの日本人はだれでしょうか① 全 …
-
-
『オンライン/昭和史の外交大失敗から学ぶ講座』★『山本五十六のリーダーシップー日独伊三国同盟(今から80年前の1940年の大外交失敗)とどう戦ったか』★『ヒトラーはバカにした日本人をうまく利用するためだけの三国同盟だったが、陸軍は見事にだまされ、国内は軍国主義を背景にしたナチドイツブーム、ヒトラー賛美の空気が満ち溢れていた』
2012/07/29 記事再録・日本リーダーパワー史(288) <山本五十六海軍 …
-
-
真相究明に〝新聞力〃を = 「旧石器発掘ねつ造」スクープの教訓=
1 平成16 年3 月1 日 新聞通信調査会報 <プレ …
-
-
『オンライン講義/140年前の外国新聞 (フランス紙『ル・タン』)がズバリと指摘した<死に至る日本病>とは』★『①論理的な学問なし②記憶力、詰め込むだけの教育③理性的学問では小学生レベルの無能な学者を量産④優柔不断で論理性のない人間ばかり⑤新しい状況に適応できない、実際的な良識にかけた人間を作っている』
(記事再録) 1874(明治7)年5月23日付 フランス紙『ル・タン』 報道の『 …
-
-
日本メルトダウン(1006)―『惨敗!プーチンに授業料3000億円を払って安倍首相が学んだこと』●『 困難は自明の北方領土交渉、過去の約束を突きつけよ ソ連だけでなくアメリカにも翻弄されてきた北方領土』★『北方領土はこうしてソ連に奪われた 日本の歴史的領土は千島列島全体だった』●『 習近平主席の改革が成功し得ない理由 中国危機は時間の問題、レーニン主義が強すぎる一党制国家の宿命(英FT紙)』●『アメリカの「核の傘」がなくなったら…を想像できない困った人たち』●『 安倍首相「真珠湾訪問」は、中国ロシアを牽制する絶妙の一手 日米ハワイ会談の正しい読み方』
日本メルトダウン(1006) 惨敗!プーチンに授業料3000億円を払って安 …
-
-
『中国紙『申報』が報道した『明治日本』― 日中韓150年対立史のパーセプションギャップの研究』①
『中国紙『申報』が報道した『明治日本』― 日中韓150 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史]』(27)-記事再録/野球の神様・川上哲治の『V9常勝の秘訣』とはー「窮して変じ、変じて通ず」(野球の神様・川上哲治の『常勝の秘訣』とは) ①「窮して変じ、変じて通ず」 ②スランプはしめたと思え ③「むだ打ちをなくせ」 ④ダメのダメ、さらにダメを押せ
2011/05/20/ 日本リーダーパワー史( …
-
-
『Z世代のための日韓国交正常化60年(2025)前史の研究講座④」★『井上が書いた「華兵凶暴」の記事に支那側(李鴻章)か猛反発、井上の暗殺指令を出し、『漢城旬報』の販売差し止めを命じたので井上は辞任1884年(明治17)5月に帰国した』
「華兵凶暴」の記事が支那側から激しい抗議があり、辞職、帰国のやむな …
-
-
世界リーダーパワー史(937)ー『トランプ大統領の弾劾訴追の可能性は?』★『弾劾訴追と上院、下院の関係の手続きはこうなる』
世界リーダーパワー史(937) ★弾劾訴追と上院、下院の関係の手続き …
