前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『百歳長寿経営学入門』(209)―『生涯現役の達人・渋沢栄一(91歳)の晩年・長寿力に学ぶ/『老人になれば、若い者以上に物事を考え、楽隠居をして休養するなどということは、絶対にしてはいけません。逆に、死ぬまで活動をやめないという覚悟が必要なのです』

   

2011/05/04記事再録

生涯現役の達人・渋沢栄一(91歳)の晩年・長寿力に学ぶ

前坂 俊之(ジャーナリスト)

 

3・11ショック以来、政治家、経済人のリーダーシップが問われている。ちょうど88年前に東京を直撃した関東大震災(大正12年(1923年)9月1日)の時、『日本株式会社の父』,『財界の大御所』渋沢栄一は83歳。兜町や飛鳥山の邸宅、事務所は全焼した。

家族は老齢と健康を心配して埼玉の郷里に避難をすすめた。すると、渋沢は「バカなことをいうな!。

わしのような老人は、こういう時にいささかなりとも働いてこそ生きている申しわけが立つようなものだ。それを田舎に行けなど卑怯千万な!これしきの事を恐れて八十年の長い間生きてこられたと思うのか。あまりといえば意気地のない」と怒鳴りつけた。

東京復興計画の後藤新平(内相)と手を組んで栄一は早速、まだあちこち火の手があがる町に出て、財界トップとして全面協力し、陣頭指揮に立ちあがった。

九月九日には商業会議所と国会とが共同で「大震災善後会」が発足させ、救済寄付金の募集や救護活動、被害状況の視察や罷災者の慰問など目の回る忙しい活動を老齢をものともせず続けた。

さすが、幕末、明治維新、日清、日露戦争の動乱と修羅場を切り開いてきた財界トップだけに、今回の東電や政治家、経済人比べてその決断とスピードは段違いである。

いうまでもなく渋沢栄一(一八四〇~一九三一)は日本ではじめて株式会社を作り、生涯、第一国立銀行(日本銀行)、王子製紙、東京瓦斯ガスなど500社以上を創立した『日本資本主義の父』である。平均寿命が40歳代という明治期に九十一歳という長寿を記録した『財界の大御所』として生涯現役を貫いた日本最高の偉人といってもいい。

私は3・11ショック以来、この「渋沢栄一の晩年突破力」に感激し、自分でできることは何かー

と考えた末に、『日本のメルトダウン』(ガンバレ、日本)なるHPを立ちあげた。さらに、災害、原発事故の当事者に取材して動画で『youtube』で発信することを思いついた。即実行あるのみと、ビデオカメラ、三脚、パソコンなど30万円ほどで買い込み、福島原発の技術者からの動画取材を悪戦苦闘しながら4月23日にアップした。

70歳前のネットブログビデオジャーナリストのデビューである。

さいわい『youtube』からの反響は大きく、問い合わせ、リンクの要望が多くよせられた。

私の座右銘は『いまやらねば いつできる。わしがやらねばだれがやる』(平櫛田中)と『少なくして学べば壮にして為すあり 壮にして学べば老いて衰えず 老いて学べば死して朽ちず』(佐藤一斎)の2つで、このビデオジャーナリストは体力の続く限りやりたいと思っている。

ところで、渋沢翁の生涯現役・晩年長寿学を調べてみると、ますますその凄さに敬服の念を強くした。あれだけ公私両面で人の何倍も大車輪で生きてきた渋沢はもともと体はあまり頑健でなかったという。すぐに風邪を引く。腹痛をよく起こしでゼンソクもあった。

六十四歳から翌年に掛けての長患いでは一時危篤に陥り、徳川慶喜(最後の将軍)が駆けつけて手を握り涙をこぼす一幕もあった、という。還暦(60歳)や古稀(70歳)のころの栄一は、自分の寿命が九十を超えるとは毛頭思っていなかった、という。

それが『国難来るー関東大震災』ではあれだけの決然たる行動力と気概を示したのだから、その気魄には圧倒される。

関東大震災からから4年後。87歳となった渋沢は『健康法』についての新聞のインタビューにこう答えている。

「若返って元気になるには、不断の活動が大切です。つねに計画を立て、六十から九十のあいだに実行することです。同時に節制も大事で、活動が過度にならないように注意する。活動と節制とが、車の両輪のように調和してこそ、元気の要素がえられる。

また精神的に、憂いかあってはいけない。現状に満足し、穏健で平和な毎日を送る。煩悩、苦悩、すべて快活に愉快にというのが、わたしの秘訣です。酒は飲まない、食物に好き嫌いはない。暇を見て経書(儒学の経典)を読むくらいですね」
この見事な教えを3つ目の『座右銘』としているこの頃である。

ところで、渋沢はなぜ長生きしたのか、彼の伝記を調べているうちに松浦玲『還暦以後』(筑摩書房、2002年)にその記述の一部があった。ちなみにこの松浦の『還暦以後』は晩年を如何に生きるべきか考え出す60歳以上のものには必読の名著と思う。

この『渋沢栄一』の項目によると、『渋沢栄一は、慶喜公伝の編纂を急がせた。慶喜公は高齢、自分も高齢、二人が生きているうちに仕上げようというのである。とくに栄一は「著者」なのだから、途中で死んでは本にならない。

慶喜については、この危惧が当った。完成前の一九一三年(大正二)七十七歳で病没する。ところが渋沢はなんと九十二まで生きたのだった。

健康とは言えなかった。すぐに風邪を引く。腹痛が頻繁で喘息もあった。約束を断り自宅や別荘で療養することが多い。

六十四歳から翌年に掛けての長患いでは一時危篤に陥り、慶喜が駆けつけて手を握り涙をこぼす一幕もあったようだ。還暦や古稀のころの栄一は、自分の寿命が九十を超えるとは毛頭思っていなかったのである』とある。長生きしようと思っても、これは自分の養生、節制ではどうにもならない天寿なのである。

 

渋沢の九十のときの日課を見てみると、

午前六時から七時に起床。午前八時から八時半に朝食。午前九時から十一時まで読書し、午後は仕事で外出。昼食はとらない。午後五時から六時に帰邸し、午後六時から七時に夕食。食後は十時まで読書して、十時から十一時までに就寝する。ちなみに渋沢は、昼寝、仮眠などをいっさいしなかと、いう。

「老人になれば、若い者以上に物事を考え、楽隠居をして休養するなどということは、絶対にしてはいけません。逆に、死ぬまで活動をやめないという覚悟が必要なのです」

とも語っており、一喝される思いである。

 - 人物研究, 健康長寿, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

  関連記事

no image
★「ストップ・ザ温暖化で地球を救え、人類を救え!」ー国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPPC)は「温室効果ガス増加による人類の未来は今後数年の対応によって決まる」と声明』★『海が想定の1.6倍も熱を吸収していたことが判明、地球温暖化への取り組みの見直し』

  国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPPC)は「温室効果ガスの …

no image
記事再録/『中国/内モンゴルのゴビ沙漠の不毛の砂漠を300万本のポプラの木を植えてと緑の農地によみがえらせた奇跡の男・遠山正瑛(97歳)★『中国で、生前銅像が建てられたのは毛沢東と遠山の2人だけで、その台座には「90歳の高齢ながらたゆまず努力し、志を変えなかった」』

    2009/05/06 &nbsp …

no image
日本メルトダウン脱出危うし(834) 『世界の壁』『日本バカの壁』の宴のあとー『あきれた東芝!存亡の危機に瀕してなお「長老支配の強化」に乗り出すとは 大赤字に紛れて、驚くべきことが発表』●『野村克也 清原逮捕に「天才だが考えられないバカ。野球人としての復帰は難しい」●『島尻沖縄北方相「歯舞(はぼまい)群島」読めず」●「英紙がベッキー騒動を報道「日本の芸能界にはびこる性差別」●「東国原英夫、大嫌い「文春」の“ハニートラップ”手法を明かす」

   日本メルトダウン脱出危うし!(835)         『世界の壁』『日本 …

no image
<まとめ>金子堅太郎について―日本最強の外交官はルーズベルト米大統領をいかに説得して日露戦争を有利に進めたか

<まとめ>金子堅太郎について ―日本最強の外交官・金子堅太郎はルーズベルト米大統 …

By: See-ming Lee
「中国人の日本語作文コンクール」最優秀賞の姚儷瑾さん(20歳)が日本記者クラブ(2/6)で会見動画【100分】

昨年の「中国人の日本語作文コンクール」(日本僑報社、 日本交流研究所所長主催) …

no image
日本リーダーパワー史(152) 国難リテラシー⑨最後の首相・鈴木貫太郎、木戸幸一、宇垣一成は敗戦をどうしたか

 日本リーダーパワー史(152)   国難リテラシー⑨最後の首相・鈴木 …

no image
人気リクエスト記事再録『百歳学入門(212)』―『清水寺貫主・大西良慶(107歳)の『生死一如』10訓-『ほっといたって、人問いつか死によるんやから、死ぬこ となんか考えてないの!』

百歳学入門(53) 清水寺貫主・大西良慶(107歳)の『生死一如』10訓- ①  …

no image
知的巨人の百歳学(136)-『六十,七十/ボーっと生きてんじゃねーよ(炸裂!)」九十、百歳/天才老人の勉強法を見習えじゃ、大喝!★「少くして学べば、則ち壮にして為す有り。壮にして学べば、則ち老ゆとも衰へず。老いて学べば、則ち死すとも朽ちず」(佐藤一斎)』

記事再録/ ボーっと生きてんじゃねーよ(炸裂!)団塊世代こそ<老害といわれ …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(124)』「日本の過去最大の会計スキャンダルの東芝問題」を外紙はどう論評したか

  『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(124)』 「 …

By: Cristian Bortes
日本メルトダウン脱出法(619)「テロの陰にいる狂信者と世界を分かち合う方法」「ロシア:孤立の危険性」の6本

日本メルトダウン脱出法(619)   「テロの陰にいる狂信者と世界を分 …