池田龍夫のマスコミ時評(52)●『京都・滋賀県知事が原発再稼動を危惧する提言』『石原都知事が「尖閣諸島を買う」と公言』
池田龍夫のマスコミ時評(52)
●『京都・滋賀県知事が原発再稼動を危惧する提言』
★『石原都知事が「尖閣諸島を東京都が買い
取る」と公言』
★『石原都知事が「尖閣諸島を東京都が買い
取る」と公言』
池田龍夫(ジャーナリスト、毎日新聞OB)
京都・滋賀県知事が原発再稼動を危惧する提言
野田佳彦政権は関西電力3、4号機(福井県おおい町)の再稼働問題について、新しい安全基準を満たしたとして、福井県とおおい町に再稼働への協力を要請している。この動きを警戒して、大飯原発30㌔県内に隣接する京都府の山田啓二、滋賀県の嘉田由紀子両知事が「国民的理解のため」と銘打った共同提言を政府に提出した。
立地県・福井だけの問題ではない
政府の原発関連指針改定案は、防災対策の重点地域として原発から30㌔圏内を「緊急防護措置区域」(UPZ)としている。大飯原発の30㌔圏内に両府県の北部地域が含まれることは明らかで、近畿の水源・琵琶湖があることも心配される。西川一誠福井県知事も再稼働には関西圏の理解が必要と主張しており、京滋を「地元」と見なすのは当然であろう。
さらに、橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事は、関西電力に対して原発から100㌔圏内の府県との間での「安全協定」締結を求めており、佐藤雄平福島県知事も京滋両知事の共同提案に賛意を示している。
仙石氏が「原発停止なら集団自殺も」と恫喝発言
野田首相は4月18日の参院予算委員会で「重要な指摘だ。政府としては基本的にしっかり取り組みたい」と述べただけで、再稼動見直しの姿勢は感じられない。こんな折、再稼動推進派と目される仙谷由人・民主党政調会長代行が16日、名古屋市内で講演、「原発全停止なら集団自殺も」と国民を恫喝するような発言が飛び出した。原発再稼働問題に関連し「止めた場合、経済と生活がどうなるかを考えておかなければ、日本がある意味で集団自殺をするような ことになってしまうのではないか」と発言、原発再稼働の緊急性を強調したのである。仙石氏は13日、「再稼動は妥当」との判断を決定した関係閣僚会議に同席しており、〝恫喝発言〟につながったような気がする。新聞各紙にも仙石氏の策士ぶりを臭わす行動が散見されるが、国民を愚弄する言動ではないだろうか。
国会の事故調は、政府の拙速判断に疑義
一方、18日に開いた国会の事故調査委員会で、委員長の黒川清・元日本学術会議会長が「必要な事故対策が先送りされ、原発の安全を守るのに十分なのか疑問が残る」と警告していたが、フィルター付きベントや免震重要棟の設置を再稼動の必須条件にしなかったことなどに委員からも批判が出たという。
この点、山田・嘉田両知事が〝被害当事者〝との認識で、原発に向き合う姿勢を示したことを評価したい。「共同提言」は脱原発依存社会への工程表を求め、社会構造を転換する機会にすべきだとも訴えている。エネルギー政策に自治体が当事者として関わるきっかけにもしたいものである。
石原都知事が「尖閣諸島を東京都が買い取る」と公言
石原慎太郎都知事が突然、「尖閣諸島を東京都が買い取りたい」と発言して、大きな波紋を呼んでいる。「石原新党結成へ向けたデモンストレーションか」と勘ぐれるが、中国・台湾を逆撫でするような行為ではないか。
「魚釣島など3島買い取りに基本合意」
この発言が飛び出したのは、訪米中の石原都知事が4月17日未明(日本時間)ワシントンで開いた講演会。先ず「都が買い取りを検討しているのは魚釣島(3・82平方㌔)と北小島(0・31平方㌔)南小島(0・40平方㌔)で、民間人所有者と売買の基本合意に達した」と述べ、「将来的には国が買い上げたらいいが、外務省がビクビクしているので踏み切った」と語っている。新聞報道によると、現在は国が民間人から島を賃借して維持・管理しており、年間賃料は魚釣島が約2110万円、北小島約150万円、南小島約190万円(2010年度)という。
周恩来時代から〝棚上げ〟されてきた難題
尖閣諸島問題は、1972年の日中国交回復交渉の際、周恩来総理が田中角栄首相の問いに対し「今回は話し合いたくない、今、これを話すのはよくない」と〝棚上げ〟提案した歴史的発言が伝えられているが、その後も鄧小平総書記に継承され、「次世代に解決を委ねる」方向で日中とも〝棚上げ〟容認によって紛争を回避してきた。
まことに巧みな外交判断といえるが、2010年9月の中国漁船衝突事件などの不手際によって領土紛争に火をつけてしまった感が深い。中国海軍の増強と中国・台湾漁船の尖閣諸島海域の操業が増加している現状を監視するのは当然だが、相手国の感情を逆撫でする行為は厳に慎まなければならない。
日中漁業協定の基本哲学は「自国の船に対して適切な指導および監督を行い、違反事件を早急に処理し、通報し合う」ことで、領土争いを未然に防ぐ責務がある。その点で 先の漁船衝突事件処理で、菅直人前政権が中国を必要以上に激怒させてしまったように思える。
石原都知事は最近刊行した著書で「尖閣問題は今後さらに過熱化し、日・米・中3国の関わりを占う鍵となる」と指摘していたそうだが、都庁幹部職員にも「買い取りの意向」などは伝えておらず、都庁内でもテンヤワンヤの論議を巻き起こしているという。
日中間の「領土問題」再燃の恐れ
元外務省主任分析官の佐藤優氏は毎日新聞4月17日付朝刊で「今回の発言には二つの要因がある。一つは石原氏が領土問題に敏感で国防意識があること。もう一つは『石原新党』が白紙に戻った中、領土問題で強硬姿勢に訴えれば、お金を使わず国民的人気を保ち続けることができる。
しかし今回の発言で中国との間に深刻な外交問題が生じれば『領土問題』になり、中国しめたものと思っているだろう」とコメントしていた。
河村たかし名古屋市長、橋下徹大阪市長に続いて、政治臭紛々のパフォーマンスを演じた石原都知事の意図を警戒し、監視していく必要があろう。
(いけだ・たつお)1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。著書に『新聞の虚報と誤報』
『崖っぷちの新聞』、共著に『沖縄と日米安保』。
『崖っぷちの新聞』、共著に『沖縄と日米安保』。
関連記事
-
-
★「英国のEU離脱の背景、歴史の深層を読む』「英国のEU離脱へのドイツ、フランスなどの対応』(ジャーナリスト・ディープ緊急座談会)動画80分
「英国のEU離脱の背景、歴史の深層を読む』① 「英国のEU離脱の背 …
-
-
柯隆氏(富士通総研主任研究員)が「2015年、中国経済の見通し」を日本記者クラブで講演の90分動画(1/19)
<柯隆氏(富士通総研主任研究員)が「2015年、中国経済の見通し」 …
-
-
『2014年世界・政治経済ウオッチ⑩』「アメリカなき世界に迫る混沌の時代」◎『日本は弱い、その自覚がなければ中国に負ける」
『2014年ー世界・政治・経済ウオッチ⑩』 …
-
-
記事再録/知的巨人たちの百歳学(128)‐『蟹江ぎん(108歳)きん(107歳)さんのギネス長寿姉妹『スーパーセンテナリアン10ヵ条』★『「人間、大事なのは気力ですよ。自分から何かをする意欲を持つこと』★『「悲しいことは考えんほうがええよ。楽しいことを夢見ることだよ』
百歳学入門(172)-『生死一如』 『百歳天女からの心に響くメッセー …
-
-
『Z世代への昭和史・国難突破力講座⑥』★『日本占領から日本独立へマッカーサーと戦った吉田茂とその参謀・白洲次郎(2)★『「戦争に負けても奴隷になったのではない。相手がだれであろうと、理不尽な要求に対しては断固、戦い主張する」(白洲次郎)』
2022/08/17 『オンライン講座・吉田茂 …
-
-
「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース]⑥」『開戦37日前の『米ニューヨーク・タイムズ』の報道』-『「賢明で慎重な恐怖」が「安全の母」であり,それこそが実は日本の指導者を支配している動機なのだ。彼らは自分の国が独立国として地図から抹殺されるのを見ようなどとは夢にも思っておらず,中国が外部から助力を得られるにもかかわらず,抹殺の道を進んでいるのとは異なっている』
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉚ …
-
-
日本リーダーパワー史(757 )―『トランプの政策顧問で対中強硬派のピーター・ナヴァロ氏「米中もし戦わば」(戦争の地政学、文芸春秋社刊)を読む」●「米中対話は不可能である」の結論は「日中韓朝対話も不可能であった」に通じる。」★「明治以降の日中韓朝150年戦争史は『エスノセントイズム」「パーセプション」「コミュニケーション」『歴史認識」のギャップから生まれ、『話せばわかるが、話してもわからないことが わかった!」、ならばどうするのか、難問を解かねばならない。
日本リーダーパワー史(757 ) トランプの政策顧問で対中強硬派の …
-
-
速報(159)『日本のメルトダウン』ー『すべての勝負は情報力・フリー・オープン・リッチコンテンツ』
速報(159)『日本のメルトダウン』 『すべての勝負は情報力・フリ …
