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『2018年「日本の死」を避ける道はあるのか―日本興亡150年史』(1)前坂俊之 (静岡県立大学国際関係学部名誉教授)

      2018/05/05

  『2018年「日本の死」を避ける道はあるのかー
―日本興亡150年史』(1)
          月刊『公評』2013年1月号掲載
 
                   前坂 俊之
              (静岡県立大学国際関係学部名誉教授)
 
今、世界は21世紀のグローバルIT(Internet Tecnology)戦国時代に突入した。超大国アメリカの衰退、中国の大躍進と超大国化、EUの(統合ヨーロッパ)分裂か?、という大混乱期に遭遇し、 日本は、「人口減少」「少子超高齢社会」「1千兆円の国の債務」「迫りくる巨大地震の恐怖」「原発廃炉まで50年」の五重苦に、新たに「尖閣、竹島の日中韓冷戦勃発」が加わって、『日本沈没』の赤ランプが激しく点滅している
米大統領共和党候補ロムニーは同盟国日本を「100年衰退の国」と呼び、「米国経済は日本の二の舞になってはいけない」と警告した。
一九六二年(昭和37年)に「日本は経済大国になる」といち早く予測した英国週刊誌『エコノミスト』はこのほど出版した「2050年の世界」の中で「日本は没落、衰退国」の第一にあげ、世界は日本を危機的と見ている。
ところが、巨大船『日本タイタニック号』の船長室に陣取った野田民主党政権、安倍自民党、政治家のリーダーたちは、大氷山にぶつかって船底から海水がどんどん入り、船室の乗客は死傷者が続出しているのに、『世界一の不沈の豪華客船は絶対しずまない』とばかり、国会で党利党略に終始して、脳死状態の政治で日本丸は漂流、難破寸前である。(原稿執筆は2012年11月はじめ、その後野田政権は解散して、12月16日の総選挙では自民党が圧勝し、野田首相は退陣した。)
『座して死を待つ』のか。国民の多くにも火がついている。—この国難突破には文殊の知恵と即行動あるのみ。手始めにかっての新聞記者時代の敏腕国際記者を非常招集。大手の新聞記者OBで1人はワシントン支局長を勤め米政治、経済に強い国際記者。もう1人は北京支局長、中国ウオッチャーベテランとの3人による緊急座談会とあいなった。
中江兆民先生をまねて[3酔人経綸問答]というわけ。昔は酒豪でならした3人だが、いまやビール一本ですっかりご酩酊のご老体になり果てたが、口も頭の回転もさして錆びついてはいない。
いったん酒がはいると「今後の地球、世界の中の日本はどうなるか」をテーマに喧々諤々、へべれけのてい談とあいなった。以下は酔眼朦朧とした頭で、記録した泥酔、誤解、思い違いのパーセプションギャップ「やぶにらみ問答」レポートである。
◎第1の敗戦(1868年)は「徳川幕府の崩壊、明治維新」、第2の敗戦(1945年)は
大日本帝国の滅亡
、第3の敗戦(2011)は「3、11福島原発事故以降」
(A)「たしかに、今、世界はグローバルな政治経済、外交の大競争の時代に突入し、日本のメディアでは『第3の敗戦』『日本沈没』の見出しが連日、躍っているね。
この場合、第一の敗戦は1868年の徳川幕府崩壊、明治維新です。「第2の敗戦」は1945年(昭和20)のアジア太平洋戦争での敗戦、今回(2011年の3/11から)が「第3の敗戦」というわけですね。これが日本の興亡サイクルというわけだ」
(B)「その現状認識は70才以上のアジア太平洋戦争の体験者からみると当然の危機意識と思うね。ちょうど5年後の2018年が明治維新から150年目を迎えるよ。
この150年を振り返ると、明治時代(45年間)は日本が興隆した『坂の上の雲』の明るい上昇期であり、『大正時代』(15年間)その峠で一休みの大正デモクラシーが吹き出した時代、昭和前期(1925−1945)は『坂の下の泥沼、』に転落した軍国主義の暴走による『ファシズム、戦争の時代』と区分できます。
そして、「国破れて山河あり」、1945年(昭和20)8月の敗戦でリセットし、焼け跡、廃墟の中から再び立ち上がり奇跡の高度経済成長を遂げて米国に次ぐ世界第2の経済大国にのし上がり、1990年にバブルがはじけて、再び下降、衰退のパターンをたどる、コンドラチェフの波と同じく、文明、国家の興亡のサイクルは大体60~80年単位で波動を繰り返すのが、世界史の共通のパターンです」
(C)「まさに、売家と唐模様でかく三代目(三代目ともなると初代・創業者の苦労など知らず、ぜいたくに慣れて商売をおろそかにし、やがて家業が傾き家屋敷まで売りに出す)で、昭和戦前までの大日本帝国(72年)がつぶれたのですが、世界史の中でみても大英帝国の絶頂期は(150年)、大清帝国(270年)、徳川幕府(230年)、ソビエト連邦(70年)が各国の盛衰興亡で、最近ではそのスピードはもっと加速しているよ」
(B)「10年ほど前。北朝鮮がいつ崩壊するかと大騒ぎになったけど、金正恩体制になった今は逆に強固になっている。お隣の経済スーパーパワーの中国だって、ひと皮むけば、旧ソ連以上の一党独裁共産主義国国家で、いつ倒れるかわからない。
どこ国でも生物体なので賞味期限がある。表面的には資本主義を標榜しながらソ連、中国以上にガチガチの中央集権官僚独裁、封建的疑似民主主義のわが日本株式会社も大借金をかかえて台所は火の車。生活保護者の続出で、倒産寸前というわけだ。どの国だって三代目、2世3世の政治家が国を潰すのはかわりない。中国の太子党もまるで同じよ。
 
尖閣問題に互いにひくに引けない日中冷戦時代に突入!?
 
(A)『その、よる日中の対立は辛亥革命から百年、国交回復40年の節目に起きたが、互いにひくに引けない冷戦に突入だね、ただし、これまでの日中関係百年を振り返ると、日中の友好期間は意外に短い。戦争、対立の時代が長かった。
犬養毅、頭山満、宮崎滔天ら玄洋社、大陸浪人たちが全面的にバックアップして実現した孫文の辛亥革命(1911)が近代中国のスタートであり、―満州事変(1931)―日米戦争(1941)-日本敗戦(1945)-中華人民共和国(1949)-日中国交正常化(1972)-米中国交樹立、鄧小平改革開放路線(1978)―日本の1人当りGDP世界一(1993)-中国GDPで日本を抜く(2010)という日中逆転の興亡で火を噴いたのは中国の自信と日本の不安とのパーセプションギャップ(思い違い)です、すべての戦争は思い違いから起こるものだしね』
(B)『確かにその通りなのだが、今回の尖閣問題は根が深いし、下手をすると日本の「第3の敗戦」の足を決定的に引っ張るのでは危惧しているよ。日中貿易の落ち込みで、今後、貿易黒字国から赤字国へ転落する可能性が高い。そうなると国債の金利上昇につながる悪夢の再来が早まるよ』
 
政治の劣化はいまに始まったことではない、日本に本物の政治家は何人いたのか。
 
(C)「それにしても今の政治家の劣化はひどすぎるね。「野田民主党政権」『安倍自民党』そろって、サボタージュじゃないか、我々ジジイどもは怒り心頭だよ」
(A)「日本は失敗国家の歴史です。「オウンゴール国家」と私は最近、命名しています。アジア太平洋戦争だって、『米国とは戦争しても勝ち目はない』と全員分かっているのに、石油輸入禁止で1年分しか備蓄していないので、徹底して日米交渉して問題解決するのではなくて、先のことを考えずに東条英機内閣は『清水から飛び降りる』1かバチかで石油が尽きる前に真珠湾奇襲攻撃を加えた。
その結果、全面敗北で国がつぶれたのに、その原因や結果の戦争責任、アジア各国へ与えた被害についても調査、責任追及していない。中国、韓国との歴史認識ギャップがいつまでも克服できていないのはそのためだ」
(C)「今回の原発事故だって、世界一の巨大地震津波集中国なのに、国も東電も学者もメディアも一体となって海岸に集中して原発立地して『地震、事故を想定外』として、リスク管理しない。
史上最悪、猛毒の原発をクリーンエネルギーとして、安全対策を怠る、その結果事故がおきたのに、放射能の拡散,避難情報を隠して住民に知らせない。国、東電ぐるみの情報隠蔽の犯罪を重ねて、それを司法当局も責任追及しない、結果責任を問われないの、ないないずくしで、同じ失敗を次々に重ねる。その繰り返しですね。
そして、福島原発廃炉まで50年以上はかかり、事故の収束、低線量被曝が将来どのような被害をおよぼすか良くわからない時点で、わずか9ヵ月後に事故収束宣言を出して忘れてしまう。全く失敗からも学ばない脳死国家、だよ」
 
(B)「今回の日中大衝突でも、尖閣問題前までは中国との友好関係を強化して、貿易振興、観光客の誘致を積極的に推進しながら、尖閣問題で<大失策>しての中国側の強烈な反発を予想できず、対応を誤って空振り三振で大打撃を被っている。
まさに『オウンゴール国家』。リーダシップの不在と情報分析の失敗、インテリジェンスの欠如です。内閣に国家戦略本部、国家情報統合本部がない先進国は日本だけだよ。頭脳のないバカ国家だな、悲しくなるね」
 
(A)『個人にも国にも一番肝心なのは正確で客観的な自己認識ですね。それが決定的に欠けている。政治家にも官僚にもね。孫子の兵法の第一条『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』だよ。
これが国家戦略の基本です。その点で、日本の国際的な地位がこの20年間でどんなに低下したか、自国認識が全くできていない。「アジア各国がどんどん進んでいるのを、相変わらず日本はアジアナンバーワン、世界経済大国という昔の夢から覚めていない。
2010年、国内総生産(GDP)では中国に追い越されて3位になったが、国際通貨基金(IMF)の統計では、国民1人あたりのGDPは2000年は日本は3位だが、以後は低下の一途でいまや先進国では最下位の19位。英国『エコノミスト』の予測では2030年には韓国は日本の1、5倍,2050年には2倍となるという。
スイスに本部を置く国際経営開発研究所(IMD)の調査でも、日本の国際競争力ランクは1990年は1位だったのが、2010年には何と27位まで転落し。シンガポールと香港が1位と2位、中国本土は18位、韓国23位で、すでに『経済失敗敗戦国』なのですね。
それなのに、国内には危機意識がない、一番ないのは東京のど真ん中に座っている税金泥棒の永田村の政治屋と役人どもだ。腹が立ってしょうがないよ」
                              (つづく)

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