前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(87) 『いぜん打開策がない、日韓政府の反目(7/12)』 「廃炉回避」のため狂奔する日本原電(7/15)

   

  池田龍夫のマスコミ時評(87)

◎『いぜん打開策がない、日・韓政府の反目(7/12)
●「廃炉回避」のため狂奔する日本原電(/15)

 

ジャーナリスト 池田龍夫

 

◎「いぜん打開策がない、日・韓政府の反目」(7/12)

  安倍晋三政権発足から半年過ぎたが、対韓、対中外交打開の道はいぜん閉ざされたままだ。安倍首相は就任以来、米国、ロシア、欧州、東南アジア、中東などの13カ国を歴訪。積極的な首脳外交は結構だが、中国と韓国訪問にはブレーキがかかりっ放し。歴史問題、領土問題について政府の関係修復の動きが止まっており、北東アジアの安定を望む同盟国・米国の苛立ちも募っている。

  韓国の朴槿恵大統領は710日、日韓首脳会談について、「今も日本は独島(竹島の韓国名)や従軍慰安婦問題で、国民の傷に触れることを続けている。未来志向で行こうという雰囲気の中でやらなければならない」と述べ、時期尚早との考えを、またも表明した。

         慰安婦問題、米国での韓国ロビー活動が心配

毎日新聞77日付朝刊は「勢い増す韓国系ロビー」の見出しを掲げ、12番手と4面全段で扱っていた。

米政府要人に対する韓国系のロビー活動の凄まじさを報じたもので、ニューヨーク郊外、ニュージャージー州東部バリセイズパーク市の中心部に、「記憶にとどめる」と銅版に刻まれた御影石像が注目を集めているという。そこには「大日本帝国政府の軍によって誘拐された20万人以上の女性と少女のために、人道に対する罪を忘れずにいよう」と英文で書き込まれていた。同紙特派員電によると、「建てられたのは201010月。人口約2万人の同市は韓国系の人が52%と全米で最も多く、今や全米各地で建立の動きがある。

……そして今、新しい計画を進めている。ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺を記念するナッソー郡のホロコースト記念館で、慰安婦の特別展を開くというのだ。今までだったら実現は疑われたろうが、実現へ向けた韓国系のロビー活動は米社会に大きな影響力を持ちつつあるというから、等閑視できない大問題である。 …ワシントンにも、ホロコースト記念博物館がある。

1993年の開館以来、3000万人以上が訪れたという。無数に展示されている幸せだった頃の犠牲者たちの写真は、彼らの運命を知っている私に圧倒的な存在感を持って迫ってきた。それだからこそ、『慰安婦問題は、アジアのホロコースト』と言われると次元が違うのではないかという戸惑いを覚える。

対日批判で知られる民主党系の非政府組織アジア・ポリシー・ポイント理事長のミンディー・コトラー氏も『ホロコーストと慰安婦を結びつけるというのは一部の人の考え』と否定的だった」と報じていた。

     安倍政権は反省を込め、世界に「日本の立場」発信を

慰安婦問題に関し執拗な韓国のロビー活動は腹立たしいが、米国内でも日本の立場は厳しい。米国では制度そのものが女性の人権無視だとの考え方が支配的で、国連をはじめ西欧先進国の批判も広がっている。

最近でも、安倍首相の歴史認識の不見識発言に続き、日本維新の会の橋下徹共同代表の慰安婦問題に関する発言が、内外で物議を醸している。安倍内閣は形成傍観の姿勢を改め、過去の日本の暴虐を反省、前向きな方策を世界に向け発信すべきである。

 

○「廃炉回避」のため狂奔する日本原電(/15)

 

 原発だけに頼ってきた「日本原子力発電所」は、企業生き残りのため、血迷った方針を打ち出した。浜田康男社長が711日、敦賀原発12号機(福井県)と東海第2原発(茨城県)の3基について、原子力規制委員会への再稼働申請を目指す意向を表明したことに、驚愕させられた。

          規制委は敦賀原発直下に「活断層」と断定

 

 先に本欄で指摘したように、敦賀2号機は規制委が5月に行った調査で、原子炉建屋直下に活断層があると断定、遠からず廃炉の運命とみられていた。

 

運転開始から40年を超えている敦賀原発、東海村が反対を表明している東海第2原発再稼働を目論んでいるのは、廃炉による企業負担を食い止めたいとの一念からだ。日本原電は「断層は途中で消滅している」との再調査報告を規制委に提出したが、規制委の「活断層」判断を覆せるとは思えない。

 

朝日新聞712日付朝刊は「敦賀原発など3基の廃炉が決まれば、合わせて約2600億円もの企業損失となる。その場合、純資産の約1600億円では損失をまかなえない。日本原電は4月に約1000億円の借金返済のため、電力業界に保証してもらって借り変えた。電力業界が再稼働にこだわる背景には、廃炉を促す政府の取り組みの遅れもある」と指摘している。

          国は廃炉基準を明確にすべきだ

 

 日経も713日付社説で「自民党に、原子力規制委員会の新基準施行を受けた次の手立てを問いたい。規制委が建屋直下に活断層があると断定した原発について,廃炉の判断を電力会社任せにするのか。

原発を国策民営で進めてきた以上、国が廃炉の手順を示すべきだ。使用済み核燃料の再処理や、プルトニウムを原発で燃やす計画をどうするのかも説明不足だ」と、政府に踏み込んだ対策を求めている。

 

 政府自民党は成長戦略の一環に「原発再稼働と輸出」を掲げたものの、参院選挙戦では、

論議を避けている。また憲法改正の〝花火〟を打ち上げたが、世論の反対が選挙に不利とみて、逃げまくっている。

歴代自民党政権が「安全神話」を吹聴して、電力業界を動かし続けた責任大きい。電力業界の腹のうちには、「国の政策に全面協力したのに、政府が救済の姿勢を示さないのは怪しからん」との憤懣が溜まっているに違いない。その背景には、「国の財政援助」を引き出して、業界立て直しを図る深謀遠慮が潜んでいると思われる。

 

場違いな話かも知れないが、朝日新聞629日付朝刊に、「日本憲法を改悪する人に、私の1票は預けません」――というパンチの効いた全面広告が人目を引いた。3600人を超す賛同者名を掲げた迫力は凄い。若い有権者の投票行動にも影響を与える気がする。

 

 既に計12原発の再稼働申請を受けた原子力規制委の作業は大変だ。政府や自治体からの有形無形の〝圧力〟が強まることも予想される。田中俊一委員長のもと、初心を曲げずに再稼動の是非を判断してもらいたい。

 

(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。

 

 - 現代史研究 , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
★(まとめ記事再録)『現代史の重要復習問題』日本敗戦史(41)『太平洋戦争の引き金を引いた山本五十六のインテリジェンス』★『日本敗戦史(43)「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内幕—<ガラパゴス日本の『死に至る病』①』

★(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』 ★『ガラパゴス国家・日本敗戦史④』 & …

no image
速報(289) 『日本崩壊は不可避か?ー『日本政治と中国』『日中歴史ねじれ問題』を斬るー ディープ座談会』(80分)

速報(289)『日本のメルトダウン』 ◎『日本崩壊は不可避か?『日本政治と中国』 …

no image
世界、日本メルトダウン(1027)ー 「トランプ大統領の暴走/暴言/ひとり芝居で 『エアーホースワンはダッチロールをくり返し、墜落寸前! 世界の大波乱より前に,覇権国米国の没落が 毎日のように報じられている、オーノー」④『トランプは張り子の虎、オバマケア廃止撤回までの最悪の一週間』★『「アメリカは70年間、衰退し続けている」——チョムスキーの視点』

世界、日本メルトダウン(1027)ー 「トランプ大統領の暴走/暴言/ひとり芝居で …

no image
熊本地震を考える①『被災動画』と政府、気象庁、御用学者の『地震予知連絡会』の無能を追及する」★『東大のロバート・ゲラー教授は「日本政府は、欠陥手法を用いた確率論的地震動予測も、仮想にすぎない短期的地震予知も即刻やめるべきだ」と主張

  熊本地震を考える① 『被災動画』と政府、気象庁、御用学者の『地震予 …

no image
知的巨人の百歳学(149)-失明を克服し世界一の『大漢和辞典』(全13巻)編纂に生涯を尽くした漢学者/諸橋徹次(99歳)

『大漢和辞典』(全13巻)編纂に生涯を尽くした諸橋徹次(99歳) 諸橋轍次(もろ …

ヨーロッパ・パリ美術館ぶらり散歩』★『ピカソ美術館編④」★『ピカソが愛した女たちーその多種多様、創造的インスピレーションには本当に圧倒されますね。』

  2015/06/15  『F国際ビジネスマンのワールド・ …

no image
辛亥革命百年ー『松山徳之の現代中国驚愕ルポ』ー《革命のかまど》上海で見える繁栄の裏の実相(上)

辛亥革命百年と近代日中の絆―辛亥百年後の‘‘静かなる革命 …

no image
速報(363)『日本のメルトダウン』低線量被曝の現状●市民と科学者による内部被曝者問題研究会の会見『福島のチョウの奇形』

速報(363)『日本のメルトダウン』   <3/11から1年ヵ8月―低 …

no image
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』⑯「伊藤博文統監はどう行動したか」(小松緑『明治史実外交秘話』昭和2年刊)①

  「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓 …

新一万円札の肖像画となった渋沢栄一翁(91歳)は「日本株式会社の父」ー「すでに150年前に現在の米国型強欲資本主義」を超えた「道徳経済合一主義(仏教的資本主義)を実践した稀有の資本家」★「人生100歳時代の先駆者として、年をとっても楽隠居な考えを起さず死ぬまで社会に貢献する覚悟をもつ』

  日本リーダーパワー史(88)経済最高リーダー・渋沢栄一の『道徳経済 …