前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界史の中の『日露戦争』③『戦争迫るロシアと日本』(戦争勃発3ヶ月前)『ニューヨーク・タイムズ』(明治36年12月20日付)

      2016/01/17

 『日本世界史』シリーズ

 

世界史の中の『日露戦争』③-

英国『タイムズ』米国「ニューヨークタイムズ」は

「日露戦争をどう報道したか」を読む③

 

『日本世界史(同時進行・比較外交報道・世界史)講義』

<日本の現代史(明治維新からの明治、大正、昭和、平成150年)は

日本の新聞で読むよりも、外国紙で読む方がよくわかる>

 

 『ニューヨーク・タイムズ』1903(明治361220日付)

 

『戦争迫るロシアと日本(戦争勃発3ヶ月前)

<ロシアは陸海軍兵力をアジアへ集結している。日本はいずれ国運をかけて
ロシアと戦わなければならず,シベリア鉄道がまだ能力いっぱいに開発
されていない現在の方が,後にそうなったときより,勝てる可能性が
高いと一致して見ている>

 

最近満州各地を訪れた旅行者たちはロシアの鉄道が同国の軍隊を東へ輸送するため限度いっぱいに操業していると伝えており,また同時に,ロシアはありったけの海軍部隊を北太平洋のアジア沿岸に派遣中との報道も流れている。

 

最近の情報によれば,ロシアはアジア艦隊増強のため地中海の海軍力をすべて引き揚げたという。行動は言葉より雄弁であり,こうした準備行動がとぎれも緩みもしていないことは.ペテルプルグや東京で外交官が公式に事態の平静を請け合っているのよりはるかに説得力がある。

 

世界は戦争になりそうだと信じており,これほどの戦争の事態ついて憶測を避けることは不可能だ。

 もちろん事前の憶測はすべて1度戦乱が起これば,往々にして覆るものだ。われわれは,最も慎重ながら,事前に下された結論が事実によって覆されたのをごく最近まのあたりにしたばかりだ。

 

情報に通じた観測者の大半は10年前,日本が中国を攻撃する(日清戦争)などは狂気のさただと思い,中国の方があらゆる資源,ことに数でまさっていることを指摘しただろう。

 

だが,理論的には弱いはずの小国(日本)が,理論的には強いはずの大国(中国)を海陸のすべての地点で打ち破った。外部の干渉さえなければ,中国は勝者である日本の思うがままに征服されたはずだが,日本は戦争で予想外の手腕を発揮したのと同様,勝利にあたっても,予想外の賢明さを示してその要求を和らげたのだった

 

だがなおその後,ブール人(南アフリカのボーア人、ボーア戦争の相手)がイギリスに対しあれほど頑強かつ長期の抵抗を見せるとは,だれも夢にも思わなかった。ブール側へ最後通告を発した後,ロンドン・タイムズ紙は,陸軍の1個軍団さえあれば,南アフリカ現地で徴募可能な不正規兵の援助を得て,十二分に鎮圧できると断言した。

 

統計に示された両交戦者の能力比較を見る限りその予言は外れるはずがなかったが,実際にはいかに途方もなく的外れとなったか,だれもが知っている。そこで,今回の場合も,似たような即断は慎まなければならない。

 

 ロシア人は,自分たちの方がすぐれた人種だから,勝つに決まっていると言うだろう。

 

だが巨大なロシア帝国は大いなる複合体である。そのすべての戦力が「コーカサス」人種だというわけではない。その大きな部分はコーカサス地方の彼方の出身者だ。ナポレオンは「ロシア人を引っかけばタタール人が現れる」と言った。これを現代風に焼き直してラジャード・キプリング氏は「ロシア人は腕まくりしなければいいやつだ」と言うが,その意味はロシア人はヨーロッパ人よりアジア人に近いというものだ。

 

実際,ロシアが中央アジアの汗の諸国を同化し,ロシア文明の恩恵を与えるのに成功したのは,ロシア人の侵入者がアジア人に近かったり,アジア系だったりしたからだとよく説明されてきたものだ。

 

 物質的な比較では.海軍評論家が詳細な見積りを行い,数か月前,仮にロシアの全海軍が太平洋で任務に就いたとしても,日本が海軍力でまさっていると推定した。地上軍ではロシアがもちろん圧倒的に優勢だが,これはもしロシアが,日本より大きな陸軍部隊を,その根拠地からアジア一帯に輸送して補給することによりその優勢を活用できればの話であって,一方、日本は,戦争がアジア本土で行われる場合でも,いわば地元で戦うことになる。

 

そして軍事評論家は,日本がアジアで攻撃的な戦争に出ても,ロシアの旅順とウラジオストクの両海軍基地に対し「内線」の利点を保持することになると指摘する。

 だが,日本の満州侵攻も,ロシアの日本侵攻も,もちろん起こり得るとはいえ,戦争が起これば海軍力がこれを決定すると見られる。いずれにせよ朝鮮の争奪戦では海軍力の方がものを言う。そして朝鮮の支配権が実は肝心の問題なのだ。日本はいずれ国運をかけてロシアと戦わなければならず,シベリア鉄道がまだ能力いっぱいに開発されていない現在の方が,後にそうなったときより,勝てる可能性が高いと一致して見ている。

 

また,ロシアが朝鮮の支配権取得という有利な地位に立つことに命がけで抵抗しなければならないという点でも一致しているようだ。日本は,ロシアが満州において「特別の地位」を占めるのを認めるから,ロシアは日本が朝鮮で同様の地位を占めるのを認めよという立場であり,それが満たされない限り満足しそうにない。そしてロシアが誠意をもってそれを認めるという兆候はない。

 

 - 現代史研究 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本メルトダウン脱出法(812)「世界同時株安は金融市場の“宴の終わり”を示す」●「互いに密告し合う時代に逆戻りする中国ー日本人スパイ疑惑は監視強化の表れか」●「「1日1万歩で健康になる」は大きなウソだったー15年にわたる研究で”黄金律”が明らかに」

   日本メルトダウン脱出法(812)   日本株「年初6連敗」の次に …

no image
日本メルトダウン脱出は不可能か(695)ガラパゴス日本株式会社の終焉、「東芝は明らかに粉飾」と専門家 過去の粉飾事件に匹敵する巨額さ」

    日本メルトダウン脱出は不可能か(695)   上場廃止回避も… …

no image
<1時間でわかる超大国中国の謎と対日感情>動画座談会ーチャイナウオッチャー・松山徳之氏から聞く

<1時間でわかる超大国中国の謎と対日感情>   ★★お勧め(動画座談会 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(103)』「パリぶらぶら散歩」③―街中を歩くと、 微笑はモナリザだけではないな、と感じました。妙齢のご婦人が微笑で返して来るのです>

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(103)』 「パリぶらぶら散歩 …

no image
日本リーダーパワー史(53)辛亥革命百年②孫文を助けた日本人たち・・・宮崎滔天、秋山定輔ら①

日本リーダーパワー史(53) 辛亥革命百年・孫文を助けた日本人たち宮崎滔天ら① …

オンライン/藤田嗣治講座②』★「最初の結婚は美術教師・鴇田登美子、2度目は「モンパルナスの大姉御」のフェルナンド・バレー、3度目は「ユキ」と名づけた美しく繊細な21歳のリュシー・バドゥ』★『夜は『エ・コールド・パリ』の仲間たちと乱ちきパーティーで「フーフー(お調子者)」といわれたほど奇行乱行をしながら、昼間は、毎日14時間以上もキャンバスと格闘していた

2008年3月15日 「藤田嗣治とパリの女たち」            …

『Z世代への<日本史クイズ?>日本史最大の難問の行政改革をわずか一言で、実行した超リーダパワーの持ち主は誰ですか?⑱」★『西郷隆盛です。廃藩置県の真相とは?ー全国で261藩が廃藩されると各地で暴動‣反乱が起きると恐れた明治天皇、大久保、木戸、岩倉らから不安の声が上がると、<わしが兵を起こして鎮圧する>との西郷の一言によって決まったのです』★『 西郷が大決心で当たったからこそ、廃藩置県の一大事を乗り切ることができた。西郷は真の民主主義者である』と福沢諭吉は絶賛した」

2016年11月3日/日本リーダーパワー史(249)記事再録 山口藩知事・毛利元 …

no image
 世界、日本メルトダウン(1022)ー「トランプ大統領40日の暴走/暴言運転で『2017年、世界は大波乱となるのか」②『日米会談(1/28)は成功か?、これからが本番、交渉難航が待っている』●『日米首脳会談で安倍首相は「罠」にハマったー「マッドマン・セオリー」に騙される日本』★『トランプ米政権、主権侵害するWTO決定従わず=USTR報告書』

 世界、日本メルトダウン(1022)ー「トランプ大統領40日 の暴走/暴言運転で …

no image
速報(267)★『「甲状腺がん」予防の検査態勢を急げ(池田龍夫』●『大阪府・市、全原発廃止提案へ』

速報(267)『日本のメルトダウン』   ★『「甲状腺がん」予防の検査 …

no image
   ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟はなぜ結ばれたのか」➂ 1902(明治35)年2月14日『英タイムズ』-『日英同盟の意義』●『日英同盟がイギリス植民地、米国で受け入れられたことは,極東,太平洋と南洋全域,進歩を阻んできた嫉妬と誤解を解消していく。』★『中国に味方する者の多くは,日本は革命国家で,わけのわからぬ,他人に言えぬ意図を秘めた国家と見てきた。だが、日英同盟にそうした警戒感は消えていくだろう』

               ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同 …