日本リーダーパワー史(576)昭和戦後宰相最大の怪物・田中角栄の功罪ー「日本列島改造論』で日本を興し、 金権政治で日本をつぶした
2018/05/16
日本リーダーパワー史(576)
昭和戦後宰相列伝の最大の怪物・田中角栄の功罪ー「日本列島改造論』で日本を興し、金権政治で日本をつぶした。
日本の政治風土の前近代性と政治報道の貧困が続き、日本政治の漂流から
沈没が迫っている。
前坂俊之(ジャーナリスト)
「角さんが吉田ワンマンを抜いた」―戦後五十年の1995年(平成七年)終戦記念日の読売新聞世論調査で「戦後日本の発展に功績があった人」はトップが田中角栄(23%)、2位吉田茂(22%)、3位佐藤栄作(10%)の順となった。
「今秀吉」と呼ばれ「日本列島改造論」で一世を風靡した田中角栄は戦後政治の象徴、光とヤミである。絶大な人気を誇り54歳の若さで首相になったが、「金権腐敗政治」を批判されロッキード事件で失脚。それでも自民党の最大派閥「田中軍団」(最盛期120人)を率いて、4人の首相を次々に指名するなど絶対的な権力を握り「世界の非常識・永田町政治」の「キングメーカー」として君臨した。刑事被告人のまま世を去ったが、いまだにその評価は定まっていない。
1918年(大正7年)新潟の雪深い田舎(現・柏崎市)の馬喰のセガレに生まれた。
家が倒産し、貧乏のどん底生活をし、小学校を出ただけで土建屋となった。二歳のときドモリになったが、節をつけ歌うようにしゃべり、浪曲の猛練習をつんで直し、政治家でもトップの雄弁家に生まれ変わった。そのダミ声はこの名残りである。昭和14年から2年間は陸軍上等兵として、中国の満州国で兵役に従事し、生死をくぐり、辛酸をなめ尽くした。
敗戦後の1947年(昭和22)、新潟3区から衆議院選挙に29歳で出馬して初当選。以後、持ち前の馬力で八面六臂の活躍ぶりで「コンピューター付きブルドーザー」の異名をとり、田中が手がけた議員立法の数はトップ。39歳で郵政大臣、44歳で高小卒の角栄が東大卒のエリート官僚の総本山・大蔵省の大臣にのし上がった。
1965年(昭和40)5月に証券不況から山一証券事件が起きた。山一には大勢の客が押しかけ取付け騒ぎの様相となった。一歩処理を間違えると経済恐慌に発展しかねない。
5月28日夜、東京・赤坂の日銀氷川寮で政府、金融界トップの極秘会談が開かれた田中蔵相、大蔵事務次官、日銀副総裁、中山素平興銀頭取、富士、三菱の三行頭取が出席した。大蔵省、日銀側は三行経由の日銀特融を主張したが、銀行側は拒否し議論が長引いた。
そのうち三菱頭取が「証券取引所を閉めて、今後の方策を考えたらどうか」というと、それまで黙っていた田中が「それでもオマエは頭取か」と大声で一喝し、日銀特融を決定し証券恐慌を未然に防いだ。
この政治パワーで首相となった角栄は「決断と実行」をスローガンに、ただちに北京に飛んで昭和47年9月、日中国交正常化を実現、国内的には『日本列島改造論』をぶち上げたが狂乱物価を招き、1974年、月刊「文芸春秋」で立花隆の「田中角栄研究」で追及され、わずか2年半で、総理の座から滑り落ちた。
確かに、金権腐敗政治の代表といわれた角栄だけあって、金の使い方はかゆいところに手の届く気配りがあった。料亭で会合をする場合にも女中さんから玄関番まで必ずチップを忘れなかった。冠婚葬祭にも必ず金をだし、関係者の葬儀には一番に駆けつけ涙を共にし最後まで見送った。人からの頼み事は必ず果たし相手を感激させるた。早坂茂三秘書による数多くの「角栄一代記」には自ら政治資金を派閥メンバーに配って回った手口をあっけらかんと書いている。
ある人が角栄に百万円の金策を頼んだ。すぐ包みが届けられ、中を開くと三百万円入っておりメモがあった。「まず百万円で借金を返せ。しばらくの間、家族や従業員にうまいものを食べさせてないだろうから、次の百万円でうまいものを食え。残りの百万円は貯金しておけ。三百万円は全額返さなくてよい」
この人が一生恩を着きたのはいうまでもない。
このように角栄流の強力なリーダーパワーは「目配り」(政治的な見識、政策)「気配り」(人心収攬術)「金配り」(金権政治)の3本だが、「金配り」ばかり追及された。
そこに日本の政治風土の前近代性と政治報道の貧困があり、いまだに日本政治の漂流が続いている。
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(504)勝海舟の外交突破力を見習え⑥彼(英国)をもって彼(ロシア)を制した対馬事件
日本リーダーパワー史(504)   …
-
-
百歳学入門(170)長崎でシーボルトに学び、西洋の植物分類学をわが国に紹介した伊藤圭介(98歳)ー「老いて学べば死しても朽ちず」●『植物学の方法論ー①忍耐を要す ②精密を要す ③草木の博覧を要す ④書籍の博覧を要す ⑤植学に関係する学科はみな学ぶを要す ⑥洋書を講ずる要す ⑦画図を引くを要す ⑧よろしく師を要すべし』
百歳学入門(170) 長崎でシーボルトに学び、西洋の植物分類学を わが国に紹介 …
-
-
池田龍夫のマスコミ時評(88)『安倍政権の安全保障政策に高まる不安(7/29)ー「熟慮の政治」を望む
池田龍夫のマスコミ時評(88) ◎『安倍政権の安全保障 …
-
-
百歳学入門(105)本田宗一郎(74歳)が画家シャガール(97歳)に会ったいい話「物事に熱中できる人間こそ、最高の価値がある」
百歳学入門(105) スーパー老人、天才老人になる方法— 本田は74歳の時、フラ …
-
-
F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(203)★『2017/5月、6、7年ぶりに、懐かしのアメリカを再訪した』★『NYでは、コニーアイランドとNathansのホットドッグやシーフード、ブルックリンとイーストリバー、9.11 跡地、Staten島往復と自由の女神、 セントラルパークと5番街、有名教会見学、タイムズスクエア周辺ウオーキングとカフェ巡り。』
6、7年ぶり、アメリかにきてしまいました。5月、GW中なので格安チケットがとれな …
-
-
日本メルトダウン脱出法(815)「人工知能、「予測」を制する者が世界を制す」●「絵文字フィーバー日本から世界へ」●「「褒めて育てる」でダメになった日本の若者―エセ欧米流が子どもの生命力を歪めた」
日本メルトダウン脱出法(815) 人工知能、「予測」を制する者が世界を制す …
-
-
速報(208)『日本のメルトダウン』 『小出裕章情報』『日本国債の暴落は起こるか』『大津波が西日本を襲う!?』
速報(208)『日本のメルトダウン』 ●『若い人達にこれだけ汚染した世の中を残す …
-
-
日本メルトダウン脱出法(733)「ヨーロッパ最大の危機。日本ではあまり報道されないヨーロッパの難民問題に関する10の事実」●「世界で「評判のいい国」ランキングー 日本は16位」
日本メルトダウン脱出法(733) ヨーロッパ最大の危機。日 …
-
-
日本メルトダウン( 988)-トランプ次期米大統領の波紋 『スティグリッツ氏警告「トランプは危険人物」―「米国経済がトラブルに陥るリスクは高い」』●『トランプ政権の威力をあなどってはいけないー「よいトランプ、悪いトランプ」を考える』●『トランプの経済政策で懸念される円安と金利上昇』★『トランプ、強硬保守とソフト路線の「バランス戦略」は成功するのか』★『トランプ氏が英国独立党党首ファラージを駐米大使に指名?──漂流する米英「特別関係」』●『トランプ氏の首席戦略官、早くも解任求める政治広告―スティーブ・バノン氏、2018年中間選挙向けTV広告の標的に』
日本メルトダウン( 988)—トランプ次期米大統領の波紋 スティ …
-
-
百歳学入門(151)元祖ス-ローライフの達人「超俗の画家」熊谷守一(97歳)●『貧乏など平気の平左』で『昭和42年、文化勲章受章を断わった。「小さいときから勲章はきらいだったんですわ。よく軍人が勲章をぶらさげているのみて、変に思ったもんです」
百歳学入門(151) 元祖ス-ローライフの達人・「超俗の画家」の熊谷守一(9 …