前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(503)勝海舟の外交突破力を見習え⑤『三国干渉』くらい朝飯前だよ』②

      2015/01/01

  日本リーダーパワー史(503

 

 

いま米国の一国支配構造は崩れ、中国の躍進で国際秩序は大きく変化

している。そんな中で、憲法改正、集団的自衛権の論議、TPP加入問題、

尖閣問題などによる日中韓との対立の長期化懸念―など外交的懸案

が山積しているが、<外交力のある政治家>がいないのである。

明治維新の国難で幕府側の外務大臣(実質首相兼任)の、

勝海舟の外交突破力を見習え。⑤

 三国干渉くらい朝飯前だよ。幕府がオランダから購入した軍艦

「開陽丸」のお雇い海軍士官をめぐるオランダ、イギリスとの紛争を

アッっという間に解決したタフネゴシエーターぶり>

 

前坂俊之(ジャーナリスト)

  

「海舟先生氷川清話」(吉本襄 撰著 大文館書店 1933)にみる勝海舟「外交談」

 

 

『三国干渉』くらい朝飯前だよ②

 

            

 それからまづ一方の談判が落着したから、今度は、英吉利(イギリス)の方へ掛け合をして、この方はもうわけもなくうまくやり付けたが、この事件を片付けるために、おれはあの時、早馬で三日の問横浜へ通った。

 この頃の英吉利公使といへば、かの有名な.バークスだが、今のサトウ(アーネスト・サトウのこと)などは、その頃の書記生でたしか二十四歳ぐらいで、年の若いのに似合はない遣り手であったよ。  

この時分にはね、おれを暗殺しようと企てて居る連中がいくらもあつたから、パークスなども「貴下は是非、私の公使館へ来て居て下さらなければ危険だ」と言ってくれた。

 

けれどもおれは、いやしくも天下の難局に当る以上は、暗殺ぐらゐの事を恐れては、何事も出来るものではない、国事に斃れるのは、志士の本分だと考へて居つたから、外国の公使館へ逃げ込むやうな、そんな卑屈未練の心は、露はども起さなかった。

 

それだから、サトウには『御親切はありがたいが、ともかく一国の大事に身を投げ出したからには、命が惜しいやうなことでは、何事も出来ないから、公使館へ逃げ込むやうなことは御断り申す』と言ったら、

 

 

サトウが言ふには、「それならば、いつ、いかなる事変が貴下の身辺に起るかも知れないから、写真を一枚撮っておきなさい」といって勧めるから、それもさうかと思って、すなはちその時撮った写真はこれだ(とて示されたるは、すなはち本書の巻頭に挿入せる翁の肖像これなり)。

 

 そこで、話が前に戻るが、さういふ風に、当時外交問題といへば、たいていおれが担任して居ったから、おれの姓名は外国人には古くから知られて居る。それだから、多少名のある外客が、日本へ来る時は、たいていその子供らまでも、勝さんのところへ寄って見ようといって、おれを尋ねて来るよ。

 

おれは、日本ではあまり名前が知れないけれども、勝安芳といへば、西洋にはずいぶん鳴り響いて居るのだ。今の先生たちが、いくら生意気なことを言つても、それはいけない。

 まあ近い話が、あの遼東半島の態(ざま)(三国干渉のこと)はどうだ。あんなことは疾(とっく)くに知れて居つたから、早くからおれはちゃんと注意してやっておいたのに、生意気におれの言ふことを聴かないものだから、あの通り知れ切った馬鹿な目に遇ふのだ。外交がむつかしいなどとは、呆れ返るよ。

 

おれは、これまで外交上の事に就いては、いろいろの目に出会って見たが、遼東半島の三国干渉くらゐのことは、朝飯前の仕事であったよ。おれもこの頃になって、身体がますます丈夫になるのにつけて、世間のことがとかく癪に

 さわに障ってならない。

 

   つづく

 - 人物研究 , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『オンライン講座/総理大臣と日銀総裁の決断突破力の比較研究』★『<男子の本懐>と叫んだ浜口雄幸首相は「財政再建、デフレ政策を推進して命が助かった者はいない。自分は死を覚悟してやるので、一緒に死んでくれないか」と井上準之助蔵相を説得した』

 2019/10/23  『リーダーシップの日本近 …

no image
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑰『日本の最も長い日(1945 8月15日)をめぐる攻防・死闘ー終戦和平か、徹底抗戦か②』

 『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑰     『日本の最も長い日―日本帝国最後の日 …

『リモートワーク/巣ごもり動画(1時間)で日本史最大の英雄/西郷隆盛の終焉の地を訪ねる旅』★『西郷精神「敬天愛人」をたずねて「城山終焉の地」「最後の司令本部洞窟」★『「終焉の地」で「晋どん、もうここらでよか」と果てた』★『南洲墓地にお参りする』★『 日本最大の国内内乱/西南戦争の最激戦地「田原坂」を訪ねる』★『前坂俊之×西郷隆盛の記事 =検索結果 243 件』

 2015/09/23  「日本史見える化動画」-西郷精神『敬天愛人」を訪ねてー …

no image
現代史の復習問題/「延々と続く日韓衝突のルーツを訪ねるー英『タイムズ』など外国紙が報道する120年前の『日中韓戦争史』➄ー『日清戦争の結果、朝鮮統治のむつかしさ』★『日本は朝鮮において,英国にとってのアイルランド問題に手を染めたようだ』

  2011年3月10日の記事再録 英紙『タイムズ』が報道する『日・中 …

no image
弁護士・正木ひろし(まさき・ひろし)の資料、記録について

正木ひろし(まさき・ひろし)の資料、記録について   前坂 俊之    …

『オンライン/長寿歴史学講座』★「渋沢栄一(91歳)の公益資本主義」★『なぜ、いま渋沢栄一なのか!?。―時代の大転換期に求められるリーダーの先駆者として渋沢哲学とその巨大な業績が見直されているのではないか、』

   「渋沢栄一(91歳)の公益資本主義」   今、世界は「新型コロナ …

no image
知的巨人の百歳学(103)-長崎原爆に被災地に「平和祈念塔」を創った彫刻家・北村西望(102歳)の『たゆまざる 歩み恐ろし カタツムリ』★『日々継続、毎日毎日積み重ねていくと、カタツムリのように1年、2年、10年、50年で巨大なものができる』

「わたしは天才ではないから、人より五倍も十倍もかかるのです」 「いい仕事をするに …

no image
日本リーダーパワー史(519)『杉山茂丸の国難突破力に学ぶ」➂「 22歳の杉山と45歳の元老黒田清隆のスピーチの決闘」

  日本リーダーパワー史(519)   『「明治大 …

no image
★『リーダーシップの日本近現代史』(77)記事再録/ 『 朝鮮宮廷(政府)の「親清派(事大党)対「朝鮮独立党(日本派)」 の争いが日清戦争へ発展!,50年後の太平洋戦争への遠因ともなった』

 2015年7月11日/終戦70年・日本敗戦史(108) <歴史とは現 …

no image
日本リーダーパワー史(460)「敬天愛人ー日本における革命思想源流の陽明学の最高実践者「西郷隆盛」論・ 中野正剛著②

 日本リーダーパワー史(460)   「敬天愛人」日本におけ …