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「日米戦争80年」―インテリジェンスなき日本の漂流は続く

   前坂 俊之(ジャーナリスト)      

真珠湾攻撃への道は1940(昭和15)年9月27日、日独伊三国同盟が締結調印から始まった。この日、山本五十六連合艦隊司令長官は、親友の堀悌吉に「内乱(陸海軍の相克)では国は滅びないが、戦争では国が滅びる。内乱を避けるために、戦争に賭けるとは、主客転倒だ」と怒りをぶつけた。

その後、日米戦争を危惧した近衛文麿首相は山本を招き荻外荘で会談した。山本は「(日米戦争)ぜひやれと言われれば、初めの1年や1年半は、存分暴れてご覧に入れます。しかし二年、三年となっては、ぜんぜん自信はありません。日米戦争の回避に努力を願いたい」と申し出た。

●(写真説明)逆立ちが得意だった山本は外人とのパーティーでは恥ずかしがり屋の日本人は何も披露しないので、率先して逆立ちをしてやんやのの喝采を浴びた。

もともと、山本は米国の駐在武官5年以上の経験があり、米国の国力を一番よく知る海軍軍人だった。山本陸軍次官は、米内光政海軍大臣、井上成美軍務局長のトリオを組んで「60-100の国力差のある米国との戦争は絶対反対」を唱えていた。

山本はズバリとものをいう男だった。海軍記者クラブ「黒潮会」で「陸軍のバカどもにも困ったものだ。南も討て、北も討てと騒ぎ立てるが、だれが戦うのか。米英日の海軍力比率は、五・五・三の比率で、対米英戦となれば、一〇対三の戦いになる。こんな簡単な算術さえ奴らには分からんのだ……」と語っていた。

三国同盟の5相会議(首相・陸相・海相・蔵相・外相)が計70回以上も開かれたが、海軍は絶対反対を貫いた。昭和14年1月、平沼騏一郎内閣が誕生した際、米内は山本が暗殺されるのをおそれて、連合艦隊司令長官に任命し、洋上に逃がした。しかし、国内情勢は破竹の進軍のヒトラーのヨーロッパ侵攻に幻惑されて、「バスに乗り遅れるな」との時局便乗の同盟論者が増えた。

1939年(昭和14)8月末、独ソ不可侵条約が締結され、ドイツ、ソ連はポーランドに侵攻し第2次大戦が始まった。国際情勢を見誤った平沼騏一郎首相は、「欧州の天地は複雑怪奇なり」との迷言を残して退陣に追い込まれた。

同年7月、米国は三国同盟に対抗して日米通商航海上条約を破棄した。経営物資・資財・原料の輸入の大半の米国に頼っていた日本は経済面で大きな打撃を受けた。反米感情が高まった。

1940年9月5日に、及川古志郎海相が海軍首脳を東京に招集し、三国同盟に関する最終の意見を聞いた。条約調印の約三週間前である。
及川は「海軍が賛成しなければ、第二次近衛内閣はつぶれる。海軍は内閣瓦解の責任はとりたくないから、三国同盟に賛成ねがいたい」とあいさつした。山本連合艦隊司令長官は「企画院の物動計画によれば、その八割は英米圏内の資材でまかなわれる。三国同盟を結べばその不足をどう補うのか・・・」と質問した。
及川海相は山本の質問を黙殺した。「ご意見もありましょうが、同盟に賛成願いたい」と繰返し出席者は次々に賛成した。
会議後に山本は及川海相の無責任を追究した。及川はあやまったが、山本は「言語道断だ。米国と戦争することは、全世界を相手にするつもりでなければならぬ。自分はこうなった以上、最善を尽して奮闘する。そうして長門の艦上で討死するだろう。その間、東京あたりは丸焼けにされる」(原田日記)と述べた、という。

 

三国同盟締結後、英米は日本への経済封鎖を一層強化した。 1941年7月28日の日本軍の南部仏印進駐(ベトナム進駐)に対してルーズベルト大統領は日本資産の凍結,石油の全面禁輸を行いABCD包囲網(米英中蘭)を引いた。

日米外交を打開したい近衛首相はルーズベルト米大統領との首脳会談を申し込んだが、米側は「中国からの撤退」を要求し、実現しなかった。石油の全面禁輸がつづけば、あと一年で石油が底をつく土壇場に追い込まれた。

 

「戦争か、外交か、撤退か‥」―行き詰った近衛首相は十月十二日、豊田貞次郎外相、東條英機陸相、及川海相を招き、荻外荘会談を開いた。戦争に反対の及川海相は、和戦の決を総理に一任した。ところが、最高責任者の近衛は「戦争は私には自信がない。自信のある人にやってもらいたい」と発言。「戦争に自信がないとは何ごとですか」と東條は怒り、同十四日には「撤兵は絶対にしない」と答え、「人間、たまには清水の舞台から目をつむって飛び降りることも必要だ」と優柔不断ま近衛をののしった。近衛は万策尽き果てて十六日朝、政権を投げ出した。

次に指名されたのは東條英機・開戦内閣である。『昭和天皇独自録』によると、昭和天皇、木戸幸一内大臣は東條を高く評価しており、昭和天皇の「御前会議の決定を白紙還元せよ」という聖慮を実行できるのは彼しかいないと決定した。東條には全く予期せぬ首相指名に震えあがった。

トップの誤断と「責任回避と先延ばしの政治」によって誰もが望まぬ日米戦争に流されていった。

開戦日の1941年12月8日のヨーロッパ戦線での独対ソ連のモスクワの戦は冬将軍によってドイツの猛進撃が阻まれ、戦局が一変していった日だった。

筆者は12月8日、NHKBS1スペシャル放送の「ヒトラーに傾倒した男・A級戦犯大島浩の告白」を見た。大島は「ヒトラーは軍事力の天才で、一目で魅了された。三国同盟の黒幕は自分だ。ドイツの国力を判断する能力が自分にはなかった」と戦争責任を認めていた。

一方、山本司令長官機は1943年4月18日、米陸軍の暗号解読によってブーゲンビル島上空で撃墜された。情報戦に完敗した日本の教訓は今も生かされていない。

 

 

 

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