『リーダーシップの日本近現代史』(339)<大経営者の『座右の銘』―人を動かすトップリーダーの言葉>『明治以来の日本経済を昭和戦後期に<世界1、2位の経済大国>にのし上げた代表的な起業家たち80人のビジネス名言・金言・至言を一挙公開』
2020/06/16
2011-04-29 記事採録
新刊発行<『座右の銘』―人を動かすリーダーの言葉>
前坂俊之編著 新人物文庫 667円+税
『日本経済を再建した創業者たち80人の元気の出る名言・格言・訓言』
前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)
<2011-04-29 >書く
いまのビジネスマンの座右の書といえばドラッガーであり、ハーバードビジネスクールのテキストであり、『ロングテール』の著者が描く21世紀の経済モデルのクリス・アンダーソン『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』なのかもしれない。
また、今回の大震災でポンと私財100億円を寄付した超人・孫正義(ソフトバンク創業者)の経営学も大いに読まれていることであろう。
それにしても、日本の経営者でかくも多額の寄付をした例はなく、孫正義の決断力と器量の大きさには瞠目する。
日本の経営学というと、どうしても米国からの翻訳が主流となりがちだが、明治維新によって世界に経済の門戸を開いた『日本資本主義の父』渋沢栄一は「右手にソロバン、左手に論語の「道徳経済合一説」の理念を唱えた。
これはリーマンマンショックを引き起こした米国の収益至上主義的なビジネスモデルとは明らかに対極にあるものであり、きわめて日本的な経営哲学であり、勤労態度といえるであろう。いわば、武士だった渋沢が刀をソロバンに持ち替えたとは言え、商売の本質は公共に尽くすものという武士道精神が根底に強く流れていたのである。
この渋沢哲学が約150年たった現在まで、ベンチャー経営者、サラリーマン経営者、中小企業経営者までその背骨に連綿と受けつがれてきたことは間違いない。現在、日本の経営者、サラリーマン精神はいわば武士道、儒教、仏教的なものがミックスされた日本的な経営学と米国流とのハイブリット型であるいってよい。
日本のビジネスマン(商人)の歴史をたどってみると、古代にまでさかのぼる。建国230年のアメリカよりもはるかに古いのはいうまでもない。奈良時代には都の東西に物々交換などの官立の「市」が立ち、商人が生れる。鎌倉時代から室町時代にはいると商工業や流通も盛んになり、本格的な行商人が地域を超えて活動し、各地の物産をもちより、市や「座」もふえ、貨幣流通もさかんになった。
戦国時代に入ると、各戦国大名は自らの城下町の繁栄のために商工業者の来住を歓迎し、便宜を与えたが、市や座といういまのマーケット、商店街を作った。織田信長が特に熱心で人、物、金の妨げとなる通行税や課税していた座を廃止した、楽市、楽座をつくり商人はあらそって楽市に集まった。
徳川時代には江戸はパリをしのぐ当時世界一の100万都市として、消費経済が花開き、各地に豪商や近世商人が誕生し、大名よりも力を持った三井、三越、住友、鴻池組、大丸などや、河村瑞賢、銭屋五兵衛、紀伊国屋文左衛門らの巨富を得る投機的な大商人も現れる。いまでいうベンチャービジネスの成功者である。
ところで、明治まで日本を支配した武士たち、リーダーたちの言行録の古典といえば上野館林藩士の岡谷繁実(おかのや しげざね、天保6年(1835年)― 大正8年(1919年)12月9日)が、16年の歳月をかけて完成した大著『名将言行録 (全8冊)』(明治2年初版)がある。
これは武田信玄,上杉謙信,織田信長,明智光秀,豊臣秀吉,伊達政宗,徳川家康など戦国時代の武将を中心に192名の名将の名言、言行を浮き彫りにした名著である。
明治以来の日本は『富国強兵』の政策をとり、この150年の歴史は「日本株式国家』であり、『日本官僚会社国家』でもあった。その代表的な企業家、リーダーの言行録について岡谷の『名将言行録』なものはない。
このため、私はあえて岡谷の経営者版に挑戦し、明治以来、平成までの150年間にわたる日本経済を世界一に届くまでに発展させた代表的な企業家、創業者、リーダーたちを渋沢栄一から岩崎弥太郎、大倉喜八郎、豊田佐吉、野村徳七、大原孫三郎、出光佐三、松下幸之助、本田宗一郎、井深大、現代の孫正義、三木谷浩史まで500人を網羅した『名企業家言行録』(経営名言千語)なるものを書き続けて「ビジネス名言海」など何冊かの本に出版した。
本書はその中から、約80人を選んで珠玉の経営名言、経営訓と、簡単な解説をつけて並べたものである。
本書は明治以来のトップの企業家の経営哲学のエッセンス、事業成功、発展のトラの巻の集成であり、経営のキーワード集ということもできる。
こうして並べてみると明治、大正、戦前、戦後と時代や環境、社会は大きく違い、各企業の発展の経緯は異なっていても成功のノウハウは変わっていないことに気づく。
こうして並べてみると明治、大正、戦前、戦後と時代や環境、社会は大きく違い、各企業の発展の経緯は異なっていても成功のノウハウは変わっていないことに気づく。
成功、発展、衰退、倒産には不変的の原則が存在するといってよい。
それは本書を読んでいただければわかるが、ほぼ次の三点に集約できる。
① 「事業は人なり」。事業が成功するかどうかのカギはなんといっても人である。どのような困難な仕事や小さな企業でも、いい人材を得れば発展していくし、逆に一部上場の大企業でも経営者に人を得なければ組織は疲弊し倒産の危機にあう。事業を興すのも滅ぼすのも人である。
② 人を得て、さらに時代の流れを的確につかめば事業成功、発展は間違いない。明治以来の企業の栄枯盛衰をみると、わずか二、三〇年で個人企業から日本を代表する大企業にのしあがった企業家、起業家は、数多くいる。そのためには人材と同時にニーズをいかにつかむか、という点が勝負のわかれ目になる。
③ 人材、ニーズの両輪がそろうと組織がいかに活性化して、成長のスピードを加速するかである。組織の活性化、時代の変化に適応できるかどうかがカギとなる。組織が大きくなり、中、大企業となって安定してくる積極策から安定指向、官僚化が必然的に生まれ、大企業病に陥る。これは『死にいたる病』である。ダイエー、日本航空など日本一となって潰れた会社も少なくない。
『大きいもの、強いものが生き残るのではなく、状況に適応したものが生き残る。強者生存ではなく、適者生存原則である。』
以上の三点だが、本書の中の各先人の教えの中には含蓄に富んだ言葉が数多い。日々の経営やの中で悩み考え、苦闘しているビジネスマンに「読めるクスリ」「名言のクスリ」となればこんなうれしいことはない。
日本を代表する創業者たち80人
青井忠治、浅野総一郎、安藤百福、池田亀三郎、石川一郎、石橋信夫、飯田亮、井植歳男、石本他家男、市村 清、出光佐三、岩井勝次郎、岩切章太郎、岩崎弥太郎、伊藤忠兵衛、伊藤雅俊、稲盛和夫、井深大、牛尾治朗、馬越恭平、江崎利一、大倉喜八郎、大塚正士、大原孫三郎、岡田卓也、岡野喜太郎、小倉昌男、小林中、小林一三、
渋沢栄一、嶋田卓爾、下村彦右衛門、小原鉄五郎、鹿島守之助、小菅丹治、鈴木修、鈴木三郎助、孫正義、立石一真、、田路舜哉、辻信太郎、堤康次郎、坪内寿夫、豊田幸一郎、鳥井信治郎、中内功、中島董一郎、中山素平、永野重雄、永守重信、西本貫一、根津嘉一郎、藤原銀次郎、
堀威夫、野村徳七、服部金太郎、早川 徳次、福富 太郎、堀場 雅夫、本田宗一郎、松下幸之助、三木谷浩史、三島海雲、宮崎甚左衛門、宮島清次郎、森 泰吉郎、森 矗昶、盛田 昭夫、安田善次郎、柳井 正、矢野 恒太、山内 溥、山下亀三郎、山田 晃、山田 光成、山本 猛夫、吉田 忠雄、米山 稔、渡邊美樹
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