前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『リーダーシップの日本近現代史』(182)記事再録/★『高橋是清の国難突破力(インテリジェンス)②』★『「明治のリーダー・高橋是清(蔵相5回、首相)は「小さな 政治の知恵はないが、国家の大局を考え、絶対にものを恐れない人」 ★『政治家はすべて私心を捨てよ』(賀屋興宣の評)

   

 

   

  2013/11/11   日本リーダーパワー史(432

前坂俊之(ジャーナリスト)

今から5年後の2018年は明治維新(1868年)からちょうど150年目に当たる。明治維新によって日本は封建国家から近代国家に生まれ変わり、有色人種の国ではじめて百年前に西欧列強と肩を並べる先進国になった。明治は「坂の上の雲」の躍進の時代であり、その原動力となった明治人の進取の気性とリーダーパワーを今こそ学ぶ必要がある。

以下で紹介するのは賀屋興宣(1889-1977)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B3%80%E5%B1%8B%E8%88%88%E5%AE%A3

の身近に知る明治のトップリーダー・高橋是清の印象記である「明治の評価と明治人の感触」(動向社編集部、動向社、1967年刊 395-399P)から参照する。

賀屋は「政治家はすべて私心を捨てよ」と苦言している。

明治の政界はたしかに大物がおりましたね。今、日本の政界について感じることは、政治にたずさわる者はすべて、
私を抜くということですね。自分の地位、自分の権力、自分の名誉、そのために仲間同志が閥を作ったりする。
もう少し、俺たちは日本国民のためにやるんだという、志が大切だと。


『小知恵をもたない高橋是清』賀屋 興宣(大蔵大臣、法務大臣)の話

 ずっと大正に近い人ですが、高橋是清(1854-1936、蔵相5回、首相)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A9%8B%E6%98%AF%E6%B8%85

さん。あの人は、大きな子どもというところがあった。しかしものはよく見ている。小さい意味の聡明さはありませんけれど、大きな見地からものを見ている。それに私心のない人です。また絶対にものを恐れない。そういったところが特徴でしょうね。

 

 必ずしも小さな政治の知恵はない人です。小さな権力争いとか、地位の争奪とか、金儲け、そういうことは殆んど眼中にない。大局を考え、国家というものを真剣に考えていました。よく小知恵が働くという人がおるが、それとは全く逆の人なんです。

 われわれ下僚からいって非常に困るのは、小さいことはどうでもいいんだから、ちょいちょい困ることを言ったりやったりする。 

 しかし、大きいことには、あのくらい力があって、頼りになる人は少ないですね。その頃の金で日本の予算が二十何億の時代に、陸海軍にせっつかれて、三千万やろう、といいかげんに分けちまった。たいへんなんですよ。そのときは三千万円でも、他に急を要するものから充当しなければならないでしょう。

その年即ち初年度は三千万円でも、先にずっと、たいそうな金がいるようなことがあったらたいへんでしょう。そのあと金がないんだ。こっちで、ちゃんと大事なことからきめて歩かなければいかんのです。第一、陸軍と海軍が大喧嘩をはじめる。しかし、両方三千万円出すからということですよ。

非常に跡始末に骨が折れる。けれども、これで予算編成上の難関が一気に乗り切れたというわけです。

 藤井其信さん、あの人はほんとうに真面目な人で気の毒なんですよ。肺炎をやって肺結核をやって、休んで静養しなければならないところを、無理にやらせちゃったから。

高橋さん、ほかの人は信用しないですからね。あれは立派な人ですからね。高橋さんに信用されちゃったもんでやったけれども、だいたい無理だったんですね。高橋さんが総理のときは骨は折れるし、骨が折れるかわ

りに、大きな柱があるような感じになるんだね。大きな柱に寄りかかっている感じです。

われわれで高橋さんのことを「鎮遠」というあだ名をつけておった。これが日清戦争のときの支那の軍艦の名前ですよ。これは大きな砲をもっているんです、十二インチ砲を。そのかわり、支那の海軍というの

は、よく訓練されていないから、撃った弾丸がどこへいくかわからない。強力だけど・・。それで、「鎮遠」をとって、チンエンという名をつけた。高橋さん、ドンと撃ってくるけれども、こっちへというと、オーといってバッと撃っちまう。しかし、あのくらい大きな風格の人はないですね。

常人に卓越した心境をもっていますよ。あの人は十年以上休んでて、大蔵大臣にまたなった。だからだいたい役人の名前なんか覚えてないですよ。しまいには、藤井というのをやっと覚えたかな。

「大蔵省で名前のわかるのが二人いるよ。藤井ともう一人、なんとかという男だよ」。そのなんとかという男がの私のことなんですよ。非常に大まかな人ですね。気にいらんことをこっちが言うもんだから…、大まかだからこっちから言わなければならない。だから、覚えていたんですよ。今後はああいう人は出ませんよ。ものに拘泥しないということの最たるもんでしょうね。

   政治家はすべて私心を捨てよ

 明治の政界はたしかに大物がおりましたね。今、日本の政界について感じることは、政治にたずさわる者はすべて、私を抜くということですね。自分の地位、自分の権力、自分の名誉、そのために仲間同志が閥を作ったりする。もう少し、俺たちは日本国民のためにやるんだという、もっと大きく、世界のなかの日本をどうするかということでやるんだから、それさえしっかりしておれば、そんなに悪いことなんかできないんですよ。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
速報(175)『日本のメルトダウン』『人間はいかに生きるべきかー小出裕章ら異端研究者たち』(毎日放送ドキュメンタリー)ほか

速報(175)『日本のメルトダウン』 『人間はいかに生きるべきかー小出裕章ら異端 …

★「英国のEU離脱の背景、歴史の深層を読む』「英国のEU離脱へのドイツ、フランスなどの対応』(ジャーナリスト・ディープ緊急座談会)動画80分

  「英国のEU離脱の背景、歴史の深層を読む』① 「英国のEU離脱の背 …

no image
昭和外交史② 日本で最も長い日 1945 年8 月15日の攻防②

1 ―<大日本帝国の最期②>- 前坂 俊之(静岡県立大学国際関係学部教授) To …

no image
『世界戦史史上、空前絶後の完勝だった日露戦争ー山本権兵衛のリーダーパワーに学ぶ』

                             <2009、03,01 …

no image
世界を制した日本人ー「ハリウッド」を制したイケメン・ナンバーワンは-「セッシュウ・ハヤカワ」とは何者かー②

世界を制した日本人     映画の都「ハリウッド」を制したイ …

no image
速報(176)『「テルル131m」「セシウム汚染スギ林の花粉」の影響』『海外機関の発表・セシウム137海洋流出30倍・・

速報(176)『日本のメルトダウン』 『「テルル131m」「セシウム汚染スギ林の …

知的巨人の百歳学(153)記事再録-『晩年の達人の渋沢栄一(91歳)③』★『別に特種の健康法はないが、いかなる不幸に会おうともそれが人生なのだと達観し、決して物事に屈托せざるが(くよくよしない)私の健康法です』

  2017/08/08/ 百歳生涯現役入門(17 …

 日本リーダーパワー史(794)ー 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス』⑪『ロシアのクロパトキン陸相が敵前視察に来日した影響』●『 恐露病とクロパトキン来日疑惑が日本側に疑心暗鬼を生んで露探事件が起きた』

 日本リーダーパワー史(794)ー 「日清、日露戦争に勝利」 した明治人のリーダ …

no image
「日本敗戦史」㊴徳富蘇峰が語る『なぜ日本は敗れたか』⑤「昭和天皇の帝王学とリーダーシップー明治天皇と比較」

『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㊴   『来年は太平洋戦争敗戦から70年目―『日本 …

no image
★『オンライン70歳講座』★『今からでも遅くない、70歳からの出発した晩年の達人たち』★『農業経済 学者・近藤康男(106歳)ー70才の人生の節目を越えて、以後40冊以上の超人的な研究力』★『渋沢栄一(91歳)-不断の活動が必要で、計画を立て60から90まで活動する,90歳から屈身運動(スクワット)をはじめ、1日3時間以上読書を続けた』

  百歳学入門(88)農業経済 学者・近藤康男(106歳)ー70才の人 …