日本リーダーパワー史(921)-『メディアと権力の戦い』★『『ジャーナリストはいいたいことではなく、言わねばならむことをいうことだ(桐生悠々)』★『豊かな時代の権力・リーダーの愚行は笑い話ですむが、国難の際の愚行は国を滅ぼす』(スミス『国富論』)★『汝、君主たるすべを知らざれば君主になるべからず』(バルザック)』
2018/07/23
2010年1月29日の記事再録/
日本リーダーパワー史(35)
➀リーダーへの苦言―『豊かな時代の愚行は笑い話ですむが、国難の際の愚行は国を滅ぼす』(スミス『国富論』
②『汝、君主たるすべを知らざれば君主になるべからず』(バルザック)
③良心の桐生悠々『ジャーナリストはいいたいことではなく、言わねばならむことをいうことだ』
http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/3554.htm
『桐生悠々の言いたいことと、言わねばならないこと』
前坂 俊之
(静岡県立大学名誉教授)
明治・大正・昭和の三代にわたる反骨のジャーナリストー桐生悠々。昭和8(1933)年、『信濃毎日新聞』の主筆として執筆した「関東防空大演習を嗤(わら)う」の一文で主筆を追われた彼は、個人雑誌「他山の右」に立て籠り、死の直前その廃刊に至るまで、発禁・差押えの弾圧に壊せず、八年間にわたって軍部ファッショと戦い反軍、批判の文を書きつづけ、憤死した。
その桐生悠々のジャーナリストの基本姿勢が『言いたいことではなく、いわねばならぬことを書く』ということである。以下でその全文を紹介する。
- 言いたいことと、言わねばならない事と
人ややもすれば、私を以て、言いたいことを言うから、結局、幸福だとする。だが、私は、この場合、言いたい事と、言わねばならない事とを区別しなければならないと思う。
私は言いたいことを言っているのではない。徒に言いたいことを言って、快を貪っているのではない。言わねばならないことを、国民として、特に、この非常時に際して、しかも国家の将来に対して、真正なる愛国者の一人として、同時に人類として言わねばならないことを言っているのだ。
言いたいことを出放題に言っていれば、愉快に相違ない。だが、言わねばならないことを言うのは愉快ではなく、苦痛である。なぜなら、言いたいことを言うのは権利の行使であるに反して、言わねばならないことを言うのは、義務の履行だからである。
もっとも義務を履行したという自意識は愉快であるに相違ないが、この愉快は消極的の愉快であって、普通の愉快さではない。
しかも、この義務の履行は、多くの場合、犠牲を伴う。
少くとも、損害を招く。現に私は防空演習について言わねばならないことを言って、軍部のために、私の生活権を奪われた。
私はまた、往年、『新愛知新聞』によって、いうところの檜山事件に関して言わねばならないことを言ったために、司法当局から幾度となく起訴されて、体刑をまで論告された。これは決して愉快ではなくて、苦痛だ。少くとも不快だった。
私が防空演習について、言わねばならないことを言ったという証拠は、海軍軍人が、これを裏書している。
海軍軍人は、その当時に於いてすら、地方の講演会、現に長野県の或地方の講演会において私と同様の意見を発表している。何ぜなら、陸軍の防空演習は、海軍の飛行機を無視しているからだ。敵の飛行機をして帝都の上空に出現せしむるのは、海軍の飛行機が無力なることを示唆するものだからである。
防空演習を非議(非難)したために、私が軍部から生活権を奪われたのは、単に、この非議ばかりが原因ではなかったろう。
私は信濃毎日に於て、度々軍人を恐れざる政治家出でよと言い、また、五・一五事件及び大阪のゴーストップ事件に関しても、立憲治下の国民として言わねばならないことを言ったために、重ねがさね彼等の怒を買ったためであろう。
安全第一主義で暮らす現代人には、余計なことではあるけれども、立憲治下の国民としては、私の言ったことは、言いたいことではなくて、言わねばならないことであった。そして、これがために、私は終に、私の生活権を奪われたのであった。決して愉快なこと、幸福なことではない。
私は二・二六事件の如き不祥事件を見ざらんとするため、予め軍部に対して、また政府当局に対して国民として言わねばならないことを言って来た。私は、これがために大損害を被った。
だが、結局二・二六事件を見るに至って、今や寺内陸相によって厳格なる粛軍が保障さるるに至ったのは、不幸中の幸福であった。
と同時に、この私が、はかないながらも、淡いながらも、ここに消極的の愉快を感じ得るに至ったのも、私自身の一幸福である。私は決して言いたいことを言っているのではなくて、言わねばならない事を言っていたのだ。また言っているのである。
最後に、二・二六事件以来、国民の気分、少くとも議会の空気は、その反動として如何にも明朗になって来た。そして議員も今や安んじてーなお戒厳令下にありながら-その言わねばならないことを言い得るようになった。
斎藤隆夫氏の質問演説はhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E8%BB%8D%E6%BC%94%E8%AA%AC
その言わねばならないことを言った好適例である。だが、貴族院に於ける津村氏の質問に至っては言わねばならないことの範囲を越えて、言いたいことを言ったこととなっている。
相沢中佐が人を殺して任地に赴任するのはけしからぬというまでは、言わねばならぬ
ことであるけれども、下士兵卒は忠誠だが、将校は忠誠でないというに至っては、言いたいことを言ったこととなる。
言いたい事と、言わねばならない事とは厳に区別すべきである。
(1936年(昭和11)6月)
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(478)日本最強の参謀は誰か-「杉山茂丸」の研究④「人跡絶えた谷間の一本杉のような男だ』(桂太郎評)
日本リーダーパワー史(478) <日本最強の参謀は誰か& …
-
-
『オンライン講座/ 初の現代訳『落花流水』一挙掲載 ―ヨーロッパを股にかけた大謀略 「明石工作」の全容を記した極秘文書 小説より面白いスパイ報告書。
『日露インテリジェンス戦争を制した天才参謀・明石元二郎大佐』(前坂俊之著、新人物 …
-
-
『オープン歴史講座』・なぜ日本は21世紀のAIデジタル世界で後進国に転落中なのか』★『「桜田義孝五輪相のお笑い国会答弁とゾッとするサイバーセキュリティーリスク』★『国家も企業も個人も死命を分けるのは経済力、軍事力、ソフトパワーではなく『情報力』である』★『サイバー戦争で勝利した日露戦争、逆にサイバー戦争で完敗した日米戦争』』
2018/12/02 2018/12/03世界/日本リ …
-
-
速報(336) 8月15日「無条件降伏の日」原発事故は陸軍軍閥の満州事変暴走が大陸政策を誤り、日本敗戦となる歴史に学べ ②
速報(336) 『日本のメルトダウン』 8月15日「無条 …
-
-
速報(320)『国会事故調報告書会見』―『事故は人災』で政・官・財・学会・マスコミの総癒着『虜(とりこ)』の国家破綻構造を解体せよ
速報(320)『日本のメルトダウン』 ●『国会原発事故調査委員会の …
-
-
日本メルトダウン脱出法(618)「仏紙襲撃、地元出身のジハード主義者の「報復」[グーグルがERPに参入する衝撃-
日本メルトダウン脱出法(618) ●「仏紙襲撃、地元 …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(897)『米朝会談は5月に迫る、トランプの仕掛ける貿易戦争では日本もターゲットにされた。 トランプ大統領と蜜月の安倍首相は、寝耳に水の窮地に立たされている。
世界/日本リーダーパワー史(897)- 安倍首相が森友学園をめぐる財務省の公文 …
-
-
日本リーダーパワー史(311)この国家非常時に最強のトップリーダー、山本五十六の不決断と勇気のなさ、失敗から学ぶ①
日本リーダーパワー史(311) 【世界最速の超老人国 …
-
-
片野勧の衝撃レポート/太平洋戦争とフクシマ原発事故『悲劇はなぜ繰り返されるのか』<ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ>①
片野勧の衝撃レポート 太平洋戦争とフクシマ原発事故 『 …
-
-
新刊です・申元東 著, 前坂俊之監修『ソニー、パナソニックが束になってもかなわない サムスンの最強マネジメント』徳間書店 (1600円)
新刊刊行・申元東 著, 前坂俊之監修『ソニー、パナソニックが束になってもかなわな …
