「最後の木鐸記者」毎日新聞・池田龍夫氏(87)を偲ぶ会―晩年に病苦と闘いながら「新聞に警鐘を鳴らし続けた」不屈の記者魂をたたえる。
「最後の木鐸記者」毎日新聞・池田龍夫氏(87)を偲ぶ会―晩年に病苦と闘いながら「新聞に警鐘を鳴らし続けた」不屈のジャーナリスト精神
7月13日、池田龍夫さん(87)を偲ぶ会が東京都内で開かれ、毎日新聞の関係者、ジャーナリストら約50人が出席「反骨のジャーナリスト」を偲んだ。
池田氏の後輩の諸岡達一氏が司会進行役で、故人との半世紀にわたる新聞記者生活をふりかえり、若い時の有楽町の「新聞横丁」での酒豪の論客ぶりや、晩年の四半世紀は病苦と戦いながら数多くの雑誌媒体、Webサイトにほぼ毎日のように、新聞批評、マスコミ時報を書き続けた不屈のジャーナリスト精神を持続させたエピソードを紹介した。
また、天野勝文氏(元毎日新聞論説委員、元筑波大学教授、元日大教授、メディア研究者)が
池田氏の幅広いジャーナリスト活動とその業績、奮闘ぶりをたたえるスピーチをおこない、畏敬する故人をしのんだ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E9%87%8E%E5%8B%9D%E6%96%87
池田龍夫氏の略歴
昭和5(1930)年生まれ,旧制成蹊高等学校から成蹊大学政治経済学部。昭和28(1953)年に毎日新聞入社、新潟支局、社会部、整理部、昭和52(1977)年整理本部長(編集局次長)、昭和54(1979)年中部本社編集局長。
昭和57(1982)年新聞研究室長、昭和60(1985)年定年退職後、特別嘱託として平成4(1992)年まで毎日新聞紙面審査委員会を務め、その後「学園書房」編集長を経て、フリー・ジャーナリスト。一貫して良質な新聞編集製作を探求し続けた。2018年4月6日に逝去。87歳。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E7%94%B0%E9%BE%8D%E5%A4%AB
池田氏の主な著書
は『新聞の虚報・誤報 その構造的問題点に迫る』(創樹社 2000年)
『崖っぷちの新聞 ジャーナリズムの原点を問う』(花伝社 2005年)『時代観照 福島・沖縄 そして戦後70年へ』(社会評論社 2016年)などがある。
http://www.news-pj.net/topics/ikedatatsuo/mokuji.html
『池ちゃんの思い出』―バラ色のケンカ論客・新聞使命追及の人生
諸岡達一(元毎日新聞記者、コラムニスト)
http://www.shinchosha.co.jp/writer/3052/
追慕の念と畏敬の心から「池ちゃん」と呼称させていただいた池田龍夫さんが2018年4月6日午前2時40分逝った享年87歳であった。
池ちゃんとの懐かしくも強烈な思い出噺がある。
昭和35(1960)年6月15日(水)夕方も遅く、「池ちゃん」と僕は夕刊が終わって有楽町の毎日新聞社を出てお馴染みの「すし屋横丁」へ飲みに行くところだった。「池ちゃん」は突如として「おい、モロつ、国会前に行こう!」。
経緯は省略するが「60年安保闘争」真っ最中の夜である。4日前には「ハガチー事件」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E4%BF%9D%E9%97%98%E4%BA%89
があったばかり。新安保条約は「民主主義の破壊だ」……全学連どころか一般市民にも反対運動が広がり、国会議事堂周囲をデモ隊が連日取り囲んでいた。「池ちゃん」は俺たちも加わろうというのである。
僕は「やっぱア、新聞記者は行かない方がいいんじゃないの……」と、なだめた。「池ちゃん」はしつこい。しかし、ちょっと冷静になったのか、足は「すし横」へ向かい、入った店が「赤星(あかぼし)」。毎日新聞の記者連が寄り集まるハシゴ段を登った二階の飲み屋だった。
店ではラジオが鳴っていた。「池ちゃん」と僕の酔談はもっぱら安保闘争の推移と新聞紙面の扱いなどなど。その頃、紙面は硬派軟派そろって安保安保で埋まっていた。
「岸信介が安保騒動」と称したことに「冗談じやア、ないヨっ」と怒る「池ちゃん」。その頃、国会前デモは30万人。赤星の女将さんが叫んだ。「ラジオが言ってるわよ、死者が出たらしいってサ。タイへンなことになってるようよ……」。二人の目があった。
黙って飛び出して編集局へ駆け上った。日付変わって16日深夜には岸内閣が緊急臨時閣議声明を出すほどの大事件で、紙面づくりはひっくりかえっていた。それもそのはず、
樺美智子の死んだ夜である。
昭和30年代、血気盛んな「池ちゃん」に誘われての有楽町駅前「すし屋横丁」呑み屋巡りは日課だった。
「モロよ、お前、ハロルド・ラスキを知っとるか?」
威勢よくヨーロッパの政治哲学史や民主主義論を吹っかけてきた。若い時から論客中の論客「池ちゃん」は成蹊大学・石上良平教授ゼミの最一番弟子。
『ヨーロッパ自由主義の発達』『英国社会思想史研究』など石上教授の著書に読み耽り、その思想を快弁しては笑みを浮かべる。それが紙面づくりにも度々反映し、上司や出稿部デスクと喧嘩(論争)になった。最終版が刷り上がると
「池ちゃん」は喧嘩相手と連れだって「すし横」へ流れた。それは、まさに新聞編集の自由を謳歌する有楽町『編輯局の風景』だった。
「池ちゃん」はジャーナリスト……新聞の使命にこだわったメディア研究者
“一世の雄”である。病苦を抱えながら四半世紀を超える間、新聞の在り方を模索しつづけ、「メディア展望」「総合ジャーナリズム研究」「毎日新聞・新聞時評」「週刊金曜日」「池田龍夫のマスコミ時評」「ちきゅう座」「日刊べリタ」「メディアウオッチ100」など論評誌やウェブサイトへ書き続けていた。
「池ちゃん」は2004年春、大学同窓会で乾杯音頭の演説中倒れた。救急車で病院へ急行、心臓冠動脈3本が詰まる瀕死の重体だった。集中治療室に5日間留まり冠動脈バイパス手術をして、復帰した。
2012年夏、今度は腎臓動脈癌破裂で大出血する重症に見舞われて大手術。その時のことを「苦痛と恐怖の連続だったよ」
と言いながらも、しばらくして整理本部OB会に顔を出した。人工透析を続けているのは黙っていた。
安保関連法案が施行され日本が戦争の出来る国へ突き進む現政権を非難しながら透析のベッドに横たわり、立憲主義の回復とは憲法をないがしろにする政治家を政権からたたき落さねばならぬ、と思いながら治療を続けた。
「だいたいがねえ……」「冗談じゃあ、ないよ」。軍備拡張は国際政治の緊張を誘発するのみ、緊張は戦争の確立を高めるのみ。憲法9条の精神こそが軍事的抑止力を放棄することで緊張を緩和し平和へ向かう。日本の現状から言って日本の安全を保障する最も現実的だよ。「池ちゃん」の持論である。「池ちゃん」は歴史の逆行を許さず、正しい社会情報が伝えられない世相動向を心配し、日本の針路にしつこくも、しつこくも警鐘を鳴らした。
「西山事件裁判」も傍聴し続けていた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6
沖縄返還の際の「有事核再持ち込み密約」
など訴訟経過の新聞各紙の「扱いが小さい」「編集局の問題意識が薄い」と叫んでいた。
お亡くなりになる直前には、新聞記者たちの新肝世代の意識のズレが顕著になってきた時代背景にも探りを入れていた。インターネット状況下の新聞界全体における危機……情報の変質、無機質な情事酎こ毒されない記者個人個人のジャーナリズム哲学とモラルの確立の必要性を問うていた。「ちょっと待てよ! なあ……」。「おかしいことを、おかしい、と、言えなくなったら‥‥‥オシマイだぞ、モロよ」。
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