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地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

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『 地球の未来/世界の明日はどうなるー『2018年、米朝戦争はあるのか』③『歴代米大統領がこれまで米朝戦争に手を出さなかった理由』★『「選択肢は予防戦争しかない」―米外交誌「ナショナル・インタレスト」の衝撃レポート』★『ジョセフ・ナイ教授は「キンドルバーガーの罠」について警告』

   

『2018年、米朝戦争はあるのか』③

『アメリカ国内の米朝戦争への危機感は日本よりも高いということです。マティス国防長官も「北朝鮮のミサイルは世界のどこでも届く」と警戒し「今回、中国から輸入した移動式発射台を独自に改造している点も大きい。全ての発射台を破壊することがますます難しくなってきた」と軍事アナリストは分析している。

こうした背景で、予防戦争(先制攻撃)の声が強くなってきているわけです。民主党はトランプ氏が議会の承認なしに北朝鮮を先制攻撃することを阻止する法案を提示しましたが、共和党はこれに反対した。(前掲週刊文春)一体どちらに転ぶのかよくわからないね」

歴代米大統領がこれまで米朝戦争に手を出さなかった理由

『「ニューズウイーク日本版」(2017年10月10日号)の「米軍は北を攻撃できない」によると「過去に米朝戦争の危機は何度もあった、という。ニクソン大統領はベトナム戦争とは違って米朝戦争の場合は韓国への被害が余りにも大きいので武力行使を思い止まった。

代わりにニクソンが取ったのは.北朝鮮の近海に空母戦闘群を新たに送り込み、偵察飛行を再開し米軍に手を出すなと北朝鮮に厳しく警告したこと。当時の北朝鮮は今よりはるかに脆弱だったが、通常兵器によるソウルの攻撃で莫大な犠牲が出るためにニクソンもキッシンジャーも来車制服組のトップも、全面戦争を避けたのです。

北朝鮮領空を侵犯した米軍ヘリが撃墜された1994年のクリントン大統領時代、その後の「悪とは交渉しない。悪を打ち倒す」と宣言したブッシュ・ジュニア大統領時代も、戦争をあきらめたのはこの犠牲者の多さからです。

今は核ボタンは金正恩は核ボタンは自分の机の上にあると豪語している何倍ものハイリスクので、トランプ、マティスも手を出せないという指摘です』

『その点で、元海将・伊藤俊幸(金沢工業大学教授)の「ダイヤモンドオンライン「核戦争前提で北を先制攻撃する「5015作戦」の全貌」が参考になる。米韓は2015年に「5015作戦」(先制攻撃作戦)を作成しており、北朝鮮への軍事カードではこれをベースにしている。

北の核ミサイル攻撃の「兆候」を偵察衛星などでいち早く「探知」して、まずサイバー攻撃、電磁パルス攻撃で「攪乱」して、金正恩の核ボタン発射命令を阻止する。核、ミサイル発射の数多くの基地を通信不能、混乱に陥れて核攻撃、通常兵器を含めて無力化する。同時に特殊部隊に金正恩の生け捕り、殺害をめざす作戦で、この一連の流れを「キルチェーン(kill chain)名付けている。米韓合同演習で「5015作戦」実施訓練を年2回行っていますが、この作戦をGOにするには、米大統領の「自衛権」の発動か、国連の「武力制裁」決議が必要となるのです」

『ただしこのシュミレーションには多くの盲点がある。核ミサイル攻撃の「兆候」を100%完全に探知できないこと、電磁パルス攻撃でも完全に無力化できない。北朝鮮が日本に向けているミサイルは1100基以上もあるといいます。そのため、ソウル、東京には無力化できなかったものが、何%か飛んでくるということです、その犠牲者は甚大な数に上る。

伊藤元海将は日本への影響については、「5015作戦」がゴーになった場合は、日本は第3者として、自衛隊は「周辺事態法」(1999年成立)によって米軍の後方支援を行う。国連軍も参加するので「重要影響事態法」などにより、自衛隊は米軍を含む国連軍を守るため武力行使が可能となるということです』

  • 「選択肢は予防戦争しかない」―米外交誌「ナショナル・インタレスト」の衝撃レポート

『米外交専門誌「ナショナル・インタレスト」(電子版)は「選択肢は予防戦争しかない」のレポート(サンケイ、12月19日付)も、米朝戦争の今後の展開を鋭く分析している。

「2018年に予防戦争に踏みきった場合の日韓米の死者は約140万人だが、問題を先送りして開戦を回避してもいずれ「偶発的核戦争」が起こり、約770万人の犠牲者がでる」というショッキングな内容です。

このレポートは米シンクタンク「科学国際安全保障研究所」が➀「核抑止戦略」(北の核保有を認めて戦争を防ぐ)と②「予防戦争」(北朝鮮が核攻撃能力を持つ前に、軍事力で無力化する)の二者択一をシュミレーションしたもの。

北朝鮮は現在20キロトンの核弾頭25発を所有、今後毎年4発を製造する。今後数年間で250キロトンの核弾頭を搭載し、米国全土を射程に収めたICBMを実戦配備する。その前にたたく予防戦争に2018年に踏み切った場合は日本と韓国で140万人の犠牲者が出ると予測する。広島、長崎での原爆死者(23万人)を上回る大惨事となるため日韓、世論は猛反対で、この実現は難しいとみられる。

そのため、やむを得ず➀「核抑止政策」を選択して、危機を先送りして話し合いでの「核抑止の均衡、核の下での恐怖の平和」を選んだ場合でも年間2%の「偶発的核戦争リスク」は残るという。

1962年の米ソのキューバ危機の際も核発射ボタンを握る中佐らの判断ミス、情報の誤認によって2回も全面核戦争の危機一髪から救われたという。

核警報システム、コンピューター、機械の誤作動と核搭載潜水艦、地上ミサイル発射などでの核ボタンを握る指揮官の判断ミスによって年間2%の核戦争危機は避けがたいと計算する。

この偶発戦争リスクは年ともに高まると同時に、北朝鮮の核能力を向上し戦争となった場合の被害もますます甚大化する。

2020年の戦争勃発では360万人、48年で3420万人が死亡、今後30年間の年平均では750万人の死者につながる、との結果がでた。

ただし、これはあくまで軍事的なシュミレーションであり、国連や中ロの働きかけの外交的変数、経済的、文化的な変数などは含まれておらず、「恐怖の平和」か「戦争勃発」かどちらに転ぶかわからない。

いずれにしてもトランプ、金正恩の手の上に、米韓日の運命が握られていることだけは忌々しい事実です』

  • ジョセフ・ナイ教授は「キンドルバーガーの罠」について警告

『ハーバード大のジョセフ・ナイ教授はこう警告している。トランプ大統領は「弱すぎる中国」にも気をつけるべしとね。

世界の覇権交代の歴史が教える大きな「罠」に「ツキュディデスの罠」と「キンドルバーガーの罠」がある。

「既存の大国(現在の米国)が台頭しつつある大国(中国)を恐れて大戦争が起こる」というのが「ツキュディデスの罠」です。逆に中国が見た目よりも弱い場合に発生するのが「キンドルバーガーの罠」です。

アメリカは1930年代に世界一の大国の座をイギリスから譲り受けたにもかかわらず、グローバルな「公共財」(経済援助、国際金融制度など)を提供することに失敗したことを指しており、それがウオール街の大暴落から世界恐慌を引き起こし、第2次世界大戦へとつながる国際的なシステムの崩壊を起こした。

現在の米中覇権争いで、中国は、グローバルな「公共財」を世界に提供できるのだろうか?という疑問です。
習金平主席は共産党の1党支配で独裁的な権力を一手に握り、「一帯一路」など経済拡張一点張りで、国民の人権と自由を制限し中国経済の世界覇権を目指している。

国際協力、世界平和、各国の繁栄につながる安定した気候や金融、財政、航行の自由のような「公共財」を提供できないではないか、弱すぎる中国、身勝手で独善的な今のような中国であった場合が「キンドルバーガーの罠」というわけです。「アメリカンファースト」のトランプと「中国の夢」実現の習近平は同じ穴のムジナではないのかというナイ教授の指摘です』

『昨年12月18日、トランプ米大統領は「アメリカ・ファースト国家安全保障戦略」(NSS)を発表しました。

➀国土、米国民、米国の生活様式を守る②米国の繁栄を増進(3)力による平和を堅持するーなど4項目を掲げて、過去20年間に米国は中国、ロシアを国際機関やグローバルな経済秩序に受け入れ、中ロが信頼できるパートナーになることを期待したが、それは失敗した。中国とロシアは、米国の安全と繁栄を侵食していると敵視する戦略を明言したのです。

このため「力による平和」を追求し、宇宙、サイバー空間での競争力、核抑止力を再活性化する軍事路線を強く打ち出した。日本は、ニクソンの米中国交正常化の頭越しの外交ショックがトラウマ化しており、トランプが一方的に中国と取引して、米朝会談を進めて、最終的にアジアから手を引くのではと心配していたが、このトランプドクトリンによって、一安心というわけかね」

『いや、そうでもないよ。米中で北朝鮮危機をどうするかは秘密裏に交渉しており、トランプ・安倍の電話会談でも、安倍首相は「日本抜き」をしないよう執拗に念押ししている。だからと言ってトランプが『アメリカ第一主義』によって、米国人の生命と安全を日本、韓国以上に重視するのもこれまた当然のことで、日米中韓北ロの四つ巴の駆け引きは一層激しくなるよ」

つづく

 - 人物研究, 戦争報道, IT・マスコミ論

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