前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

 ★『アジア近現代史復習問題』福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む』(7)「北朝鮮による金正男暗殺事件をみると、約120年前の日清戦争の原因がよくわかる」●東学党の乱に対して『速(すみやか)に出兵すべし』★『計画の密ならんよりも、着手の迅速を願う』★『念に念を入れて緩急の時に狼狽せざるよう、 意を用いるは当然のことだが、あまり念入りに過ぎては,かえって時機を失い、 折角の用意も実用をなさずして徒労に帰して、失敗を招く』(教訓)『兵は拙速を貴ぶ』

      2017/02/28

★『アジア近現代史復習問題』・福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む』(7)

「北朝鮮による金正男暗殺事件をみていると、約120年前の日清戦争の原因がよくわかる」●

 

東学党の乱の拡大について、社説『速(すみやか)に出兵すべし』『計画の密ならんよりも、

着手の迅速を願う』で福沢一流の文武に通じた鋭い戦略論を展開している。

 

『速(すみやか)に出兵すべし』』(「時事新報」明治27年6月5日付〕 

近報によれば朝鮮東学党の騒動はいよいよ甚だしく、次第に京城(ソウル)に近寄るの勢にして、朝鮮政府の狼狽一方ならざるよし。

右に就ては目下帰朝中の大鳥公使も至急彼地に赴く可しと云ふ。その騒動は単に朝鮮の内乱として認む可らず。事の次第に由りては日清両国間の関係ともなりて、東洋問題を惹起すに至るの結果も図る可らず。

此際公使の帰任は素より必要なれども、これは外交政略上の事にして人民の敢て容喙す可き限りに非ず。我輩は日清の関係に関せず、東洋の問題を問はず、唯、目下の急として彼の国に在る我居留人民の生命財産を保護せんことを願ふのみ。

彼の乱民の乱暴なる、日本人に対して如何なる危害を

加ふるやも知る可らざるは申す迄もなく

彼の政府の官兵とても等しく乱暴の徒にして

、官民共に兵と云へば兵なれどもその実は

無頼漢に兇器を授けたるものなり。

賊勢の猖獗(しょうけつ、いきおい)、官兵の跋扈(ばっこ)、甚だ危険の至りにして、其中に生命財産を托する我居留人民の不安心この上もなせ次第なれば、何は兎もあれ速に相常の実力を用意して、保護の手段を取らざる可らず。

或は兵隊を徴するには天津條約の談もある可きなれども、我輩の今日に急なるは唯、人民保護のためのみにして、他に狭む所のものあるに非ず。仮令へ兵を送ればとて真実の保護に必要なる教を限ることなれば、支那政府に於ても一応の通知を得た

る上は必ず嫌忌の念もなかる可しと信ずる者なり。 

 〔六月五日〕

 ----------------------------------

   『計画の密ならんよりも、着手の迅速を願う』(「時事新報」明治27年6月6日付〕 

朝鮮東学党の乱はその影響を我国にまで及ぼして、既に廟議に上りたる上は、之を目して単に隣国の一揆内乱のみと云ふ可らず。

事と品に由りでは日本帝国の栄辱にも関係す可きことなれば、我輩は固よりこの廟議に付て喙を容れんとするにあらず、又、或は多少洩れ聞く所のものあるも之を公けにせんとするにあらず、

専ら新聞紙紙上の徳義を重んじて政機の機密を守り、以て当局者の外交政略を自由自在ならしめんと欲する者なれども、事の全体を眺めて敢て忠言を試みんとすれば、自から亦言ふべきものなきに非ず。

何ぞや。云く、今回の事につては都で計画の綿密ならんよりも、寧ろ着手の迅速ならんことを願ふの一事なり。

 

人間、万事、念に念を入れて緩急の時に狼狽せざるよう、

意を用るは当然のことなれども、あまり念入りに過ぎて却て時機を失ひ、

折角の用意も実用をなさずして徒労に

属するのみか、反対の失敗を招くことなきにあらず。

往年徳川政府の初、天草騒動のときに、寄手の大将が陣中に号令して万一の時には半鐘を撞く可しと約束し、この半鐘を容易に鳴らす者ありては一大事なりとて、外面を莚(むしろ)に包みたるは至極念入りたることなりしが、その後一日火急のときに例の半鐘を鳴さんとして、むしろ包みの巌重なるがため印刻の間に合はず、速に軍機を誤りたりとの談あり。

最上の念入りも時として大に誤るの事実を見る可し。

近東我国の進歩は驚く可き次第にして、政事なり、軍事なり、一切万事規律を重ん

じて、一事一物も規律の外に逸するを得せしめず。実に祝す可きことにして、斯くありてこそ文明の名にはじず、

又、実際に事もあげる可きなれども、又一方より大胆に構え.変通の眼を開いて見るときは、急に臨んで多少規律外の処置を許し、着手を速にして実効を収るの利益を忘る可らず。(中略)

今回の朝鮮事件については政府の議、既に熟して万般の準備遣る所なかる可し。我輩の喋々す可き限りに非ざれども、唯その準備の余り鄭重にして念入りに過ることはなかる可きやと稀に掛念に堪へず。

尋常一様の場合なれば用心に用心とこそ注意す可きところを、大胆迅速など云ふは、近頃奇なるに似たれども、之を近年来の事例に徹し、又目下の情勢に照らして一片の婆心自から禁ずる能はず、敢て贅言を試るのみ。              

  〔六月六日〕

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

「パリ・ぶらぶら散歩/ピカソ美術館編」(5/3日)②「ピカソはオルガ・コクローヴァーの完璧な無表情と平静さを湛えた美しさを数多く肖像画に描いている」

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ (108)』 パブロ …

no image
3/11フクシマ原発事故か3年◎『土壌汚染フクシマの放射性物質のゆくえ』 中西友子・東京大学大学院教授の会見動画(90分)

   3/11フクシマ原発事故から間もなく3年 & …

no image
速報(298)●『実は中国に屈しなかった小泉首相を尊敬している?』オランド新大統領が握る「ユーロ圏崩壊」の現実度』ほか

速報(298)『日本のメルトダウン』   ●『実は中国に屈しなかった小 …

『Z世代への歴史の復讐問題③』★『明治維新・大政奉還は西郷隆盛と勝海舟の話し合いで平和裏(江戸城無血開城)に解決した』★『明治維新は世界にも例のないほどの「話し合いによる民主的、平和革命」★『明治維新(1868年、死者約3万人)、米南北戦争(1861 ―65 、約 62 万人)、米第2次世界大戦(約40万人)、フランス革命(1789 ―99、約200万人と比べる』

  2024/05/22 記事再録編集 2024年10月7日 …

no image
速報「日本のメルトダウン」(483)◎「すべてを台無しにする米国の不注意な政治家」「米国の政府閉鎖:こんな国家運営はあり得ない」

    速報「日本のメルトダウン」(483) <米 …

no image
 日本メルトダウン(996)ー『プーチン大統領12/15来日』●『安倍総理の「歴史に名を残したい!という功名心、前のめり姿勢がロシア側に見透かされている』(江田憲司)★『対露経済協力に前のめりになる安倍首相の突出が目立った。 安倍首相が対露経済協力相を新設し、世耕弘成経済産業相に兼務させたことも異例だ』

   日本メルトダウン(996) 北方領土交渉。ロシアの腹芸にだまされた?・・・ …

知的巨人たちの百歳学(107)ー『世界天才老人NO1・エジソン(84)<天才長寿脳>の作り方』ー発明発見・健康長寿・研究実験、仕事成功の11ヵ条」(上)『隠居は非健康的である。死ぬまで研究、100歳までは引退しない』

   再録 百歳学入門(93) 「世界天才老人NO …

『オンライン/明治維新講義★『明治維新の元勲・大久保利通の性格は典型的な武士気質の「寡黙不言・決断断固実行型」★『ほとんど口をきかない。いつも葉巻タバコをふかし、全く寡黙で、周囲から恐れられた。』

    2016/11/09/ 日本リー …

no image
 日本リーダーパワー史(168)名将・川上操六(26)ー『ドイツ・ビスマルクのスパイ長官』・シュティーベルから学んだのか。

 日本リーダーパワー史(168)   空前絶後の名将・川上操六(26) …

no image
日本リーダーパワー史(765)ー『今回の金正男暗殺事件を見ると、130年前の「朝鮮独立党の金玉均らをバックアップして裏切られた結果、「脱亜論」へと一転した 福沢諭吉の理由がよくわかる②』★『金玉均や朝鮮独立党のメンバーを族誅(罪三族に及ぶ)して、 家族、親族、一族の幼児まで惨殺、処刑した。福沢は社説『朝鮮独立党の処刑』と題して、過酷、苛烈な処刑を野蛮国と激しく批判した』

    日本リーダーパワー史(765) 今回の金正男暗殺事件 …