日本リーダーパワー史(378) 日中韓三国志・『林董の「日本は開国以来、未だかつて真の外交の経験なし」
日本リーダーパワー史(378)
<日中韓150年三国志―『日清戦争勃発に至る<日中誤解>
(パーセプション・ギャップ)の研究―
『日中韓の外交戦・『日米同盟』のルーツを林 董
(ただす)の外交論を読む=「日本は開国以来、
未だかつて真の外交なるものの経験なし」
前坂 俊之(ジャーナリスト)
① 連休中に安倍首相はロシア、中東を訪問するという。「近攻遠交」の外交政策をとっている。
② 米国は参謀総長が習近平主席と会談するなど、話のできない日本の頭越しに米中外交を積極的に進めている。
③ 日本の政治家に外交センスなし、首相以上に「外務大臣」ほど、コロコロ変わる軽く扱われているポストはない。
④ 林 董(明治の外務大臣、日英同盟の締結者)は日清戦争の後に「臥薪嘗胆論」を唱え、日本の外交政策のないことを批判した。この外交論は大いに参考になる。
⑤ 安倍自民党は「日米同盟」を何かというと強調する。しかし、100年前に英国のソールスベリイ首相は「同盟の条約とは一片の故紙(ホゴ)に過ぎず。利害を共にする者の相提携こそ、真の同盟なる」といっている。
◎『日本は外交の大方針を定めるべし』
1895年(明治28)5月28日 時事新報掲載)
外交の術はすなわち談判の術(交渉術)なりとは、もっぱらその連用について説き明かしたる言葉にして、外交術なるものの結局の目的に至りては、ただ自国の利益を謀るの一事に外ならず。
そもそも国の利益に2種の別あり、①は貿易の利を収得する事と、また②は国勢を伸暢する事なり。こうして貿易上の利害のごときは、これに従事する各商人輩(経済人)が、中旬から抜け目なく注意して、決して等閑に附することなければ、この事に付き外交術に倍る所は、わずかに通商条約締結の手加減位に過ぎざれども、もしそれ国勢を伸暢するの一事に至りては、最も外交家の苦辛経営を煩わす所にして、外交の術は要するにこの一事に在すと云うも過言にあらざるべし。
けだし国土いかに大なりといえども、兵力いかに強しといえども、孤立して列国連合の衝に当り、なお久しさを保つの国はあるべからず。
故に大国の間に列して国勢の伸暢を謀る者は、まず第一に意気相投じ、利害相共にすべき所の者を選んでこれに交わり、以って敵とする所の者を孤立せしむることを勉めざるからべからず。支那戦国時代の合従連衡の策、もしくは我が元亀・天正時代に行われたる諸侯の味方積りなるものは、すなわちその実例にして、いずれも利を共にする所の者と相結んで、害となる者を制御するを以って目的となすものなり。
安政以来我が国は弘く外国と交通を開くといえども、その締結したる条約はいわゆる偏務的(片方、平等条約ではなかった)の条約にして、我が貿易を利するがために計画したるものにあらず。また連合同盟の策のごときにいたりては、とんとこれに心を傾けたるととなく、列国を見ることと平等一様、あたかも賓客のごとくにこれを待遇し、一国に親交して他国を制するなどの政略は、未だ.かつて実際に施したることなし。
されば甲国の公使がたまたま有為の人物なるときは、多く甲国の文物を採服し、乙国に留学したる書生が帰朝して要路に立つときは乙国の学風、風俗にわかに奨励を受けで世に流行する等、
百般の取捨去就、すべて一時の感情よれ生じて、従って朝野ともに各自その好悪の情を基本として親疎(親しい、疎遠、好き嫌い)の区別を立てるが故に、親交決して真交ならず、疎外必ずしも疎外ならず、その親疎は国の親疎にあらずして、むしろ人の親疎と云うべき可なり。
右のごとき次第にして英国といいドイツといい、フランスといい米国という、その学問の行わるること、その機械の輸入せらること、皆、一時の流行に止まり、決して国の利害に基づいて計定したる不抜の根拠ありて、以って親疎を分かつにあらざれば、我が日本は開国以来、未だかつて真の外交なるものの経験なしと云うも不可なきがごとし。
しかるに、昨年初夏、干戈(兵)を朝鮮に動かして(日清戦争)より以来、事態にわかに一変し、我が国もまたいよいよ外交の政策を講ぜざるを得ざるの位置に臨めり。
将来の国運の、消長は全ぐこの一事に係ることなれば、当局者は宜しも深く察して以って計画する所なかるべからず。
それ東洋に国を立つるもの、トルコ、ペルシャ(イラン)、いずれも我を距ること遼遠にして、いわゆる風馬牛相及ばざるものなり。支那(中国)、朝鮮、シャム(タイ)の三国のごときは、近く我に隣国といえども、勢い微かに力弱く、兵に攻防同盟の事を語るに足らず。
ただ欧洲列国の中、露、仏、英の三国は、その境土、一葦帯水を隔てて我と相接し、常に東洋に数十の戦艦を備えて、以って彼此椅(けものへん)角の勢いをなすを以って、我もし今後の策を講ぜんと欲せば、この三国の中に就いて親交する所を撰ばざるべからず(選ばざるを得ない)。
しかししこうして、列国もまた各々その利害を異にするが故に、予めこれを察知することを最も肝要なりとす。
たとい彼等は東洋に於いて、いかに日本の親交を利とすると云うも、欧州に於ける列国間の関係またこれよりも更に切なるものあるとき時、むしろ東洋に於いて且本を敵とする不利益あるも、これを忍んで以って欧洲同盟の利益を収めんとすることなきにあらず。
例えばこのごろのごとき、ドイツは東洋に於いて敢えて大利害を感ずるの国柄にあらざるにも、かかわらず「自ら進んでかの「友誼的忠告」(三国干渉)の主動者、発頭人たりしにあらずや。また仏国(フランス)は平素、常に我に対して交誼を敦うしたるにも拘わらず、なお忠告同盟の一国たり。けだし彼等は必ずしも日本を仇とするの心あるにあらざれども、その自己の利とす所、さらに更に大なるものあるよりして、ついにやむを得ずかかる挙動に出でたるものと知るべし。
すなわち彼(フランス)は、我(日本)を愛せざるにあらず、ただ彼、自から己れを愛すること、我を愛するよりも更に切なればなり。
昔、蘇子斉の閔王に説いていわく、
「諸侯の故に明にし、地形の理を察する者は、約せずして親しみ、相質せずして固く、趨(は)しらずして疾(はや)し。事を衆(おも)くして反せず、こもごも割して相憎まず、ともに強くしてますますもって親し。なんとなれば、形、憂を同じうして、兵、利に趨(は)ればなり」と。
ききに英国の首相—ソールスベリイ侯は、同盟の事を釈して、「同盟の条約は一片の故紙(ホゴ)に過ぎず。利害を共にする者の相提携するこそー天然真乎の同盟なれ」と云えり。
同盟の極意を説く者へ古今東西符節を合すがごとし。できれば今日、欧洲列国中より我が同盟たるべきものを選ばんと欲せば、まず彼(相手国)、列国相互の関係、内情を観察することはなはだ肝要なるは、多言をまたずして明らかなり。
関連記事
-
-
知的巨人たちの百歳学(108)ー『世界天才老人NO1・エジソン(84)<天才長寿脳>の作り方』ー発明発見・健康長寿・研究実験、仕事成功の11ヵ条」(下)『私たちは失敗から多くを学ぶ。特にその失敗が私たちの 全知全能力を傾けた努力の結果であるならば」』
再録・ 百歳学入門(96) 「史上最高の天才老人<エジソン(84)の秘 …
-
-
『Z世代のための百歳学入門』★『知的巨人の百歳学(149)-失明を克服し世界一の『大漢和辞典』(全13巻)編纂に生涯を尽くした漢学者/諸橋徹次(99歳)」★『学問の大道は、読むべきものを読み、学ぶべきものを学んでから、本格的な研究に入らなければならぬ』
2019/03/27 知的巨人の百歳学(14 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(210)記事再録/『晩年の達人の渋沢栄一(91歳)③』★『別に特種の健康法はないが、いかなる不幸に会おうともそれが人生なのだと達観し、決して物事に屈托せざるが(くよくよしない)私の健康法です』★『いつまでも「若々しい」人はドコが違うのか 中曽根元首相に茂木健一郎氏が聞いた秘訣』
2017/08/08 &nbs …
-
-
『オンライン/75年目の終戦記念日/講座⑦』★『新聞は昭和アジア/太平洋戦争(昭和15年戦争)をどう報道したのか』★『『戦争とジャーナリズム』ー前坂氏に聞く 図書新聞(2001,5,5)』
●『戦争とジャーナリズム』(図書新聞(2001、5,5)再録 &n …
-
-
『リモート京都観光動画』/外国人観光客への京都ガイドー清水寺の舞台から下って音羽の森に向かう』★『清水寺の北御門・月照の碑の裏にある石仏群』★『わが愛するイノダコーヒー・久しぶりで京都清水店で味わう「確かに絶品、究極の香り」』
外国人観光客への京都ガイドー清水寺の舞台から下って音羽の森に向かう① 外国人観光 …
-
-
『世界サッカー戦国史』①ー『W杯ロシア大会と日露戦争(1904)の戦略を比較する。西野監督は名将か、凡将か➀
『世界サッカー戦国史』① W杯ロシア大会2018と日露戦争(190 …
-
-
『百歳学入門(213)』蟹江ぎん(108歳)きん(107歳)さんのギネス長寿姉妹『スーパーセンテナリアン10ヵ条』★『「人間、大事なのは気力ですよ。自分から何かをする意欲を持つこと』★『「悲しいことは考えんほうがええよ。楽しいことを夢見ることだよ』
『百歳学入門(213)』 蟹江ぎん(108歳)ギネス長寿姉妹 長寿の双子姉妹「き …
-
-
『オープン講座/ウクライナ戦争と日露戦争⓶』★『ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナ軍の対艦ミサイル「ネプチューン」によって撃沈された事件は「日露戦争以来の大衝撃」をプーチン政権に与えた』★『巡洋艦「日進」「春日」の回航、護衛など英国のサポートがいろいろな形であった』』★『ドッガーバンク事件を起こしたバルチック艦隊の右往左往の大混乱』
前坂 俊之(ジャーナリスト) 日英軍事協商の目に見えない情報交換、サポートがいろ …
-
-
日本リーダーパワー史(413)『中国の沙漠を甦らせた奇跡の男・遠山正瑛』<歴史読本(2009年3月号)
日本リーダーパワー史(413) 『中国の沙漠を甦らせた奇 …
-
-
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉗『来年は太平洋戦争敗戦70周年―『東條英機開戦内閣の嶋田繁太郎海相の敗戦の弁と教訓』
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉗ 『来年は太平洋戦争敗戦から7 …
