『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑱』『開戦4ゕ月前の『英ノース・チャイナ・ヘラルド』の報道ー『日露紛争ーロシアの行動を正当化するもの』●『日本は急速に経済面でも教育面でも,朝鮮の実質的支配者の地位を占めつつある。すでに実質的に日本のものになっている』★『その日本の進出は,朝鮮における他の国々の利益に対する脅威であり,朝鮮自身に対する脅威だと,日本では考えられていないのだろうか?』
1903(明治36)年10月9日
『英ノース・チャイナ・ヘラルド』
『日露紛争ーロシアの行動を正当化するもの』
日本政府は現在朝鮮に干渉すべきだと,日本の新聞が強く主張していることは,よく知られている。 当然のことだが,旅順のロシア人社会は,日本の新聞のこのような扇動を不満に感じている。
ノーゲイ・クライ紙は最近の論説の中で,東京の国民新聞の記事を引用している。 その記事は朝鮮をわらぶき小屋にたとえ,この小屋は住人の不注意のために今にも火事になりそうな危険をはらんでおり,隣人がよく面倒を見てやらないと,その出火によって隣人が迷惑を被ることは確実だ,と論じている。
上に引用したロシア紙によれば,このような日本の新聞の興奮ぶりは,数人のロシア人が最近境線江岸の竜岩浦で一片の土地を賃借したというだけのことに起因しているという。 この竜岩浦問題に入る前に,日本がこれまで朝鮮において演じてきた役割について少々触れてみたい。
日本がまずやろうとしたのは,朝鮮のこれからの世代をつかむことだった。
この目標を念頭に置いて,日本は朝鮮のいたるところに学校を作り,もちろん日本の学習課程を教えさせた。日本がこの壮大な計画を実行するにあたって,すばらしい根気のよさを示したことは,認めなければならない。 この計画が軌道に乗り始めると,次に日本は2つの重要な港,済物浦と釜山を日本化する作業に取りかかった。
これら2港はすでに実質的には日本が所有している。 その時点から現在に至るまで,あらゆる方面で日本の事業が進められてきている。日本は・ソウルー済物浦間の鉄道を建設した。
現在はソウルー釜山間の鉄道を建設中だ。ほぼ18か月以内にはこの鉄道系統が全部開通するが,釜山はその最南端の駅になる。 何千という朝鮮人が日本人に指揮されて鉄道建設の労働に従事している。 船の貨物を直接鉄道貨車に移せるようにするために,埠頭や堤防が建設されつつある。
日本の商人たちは,鉄道の沿線や駅周辺の最良の土地を買い占めた。 駅は港の中心に位置している。同じ地域に,かなりの広さを持っ日本の材木置き場ができあがっている。日本人地区にはあわただしさと活気があふれている。
長く延びた幅広い街路が,すでに土台石で区分されている。その地域で住宅用や店舗用の土地を買うことは,もはや不可能だ。 すでに全部日本人が買い占めたからだ。
朝鮮皇帝はときどき思い出したように,土地を外国人に売ることを禁止する勅令を出すが,この不思議な国では,こうした勅令は順守されないのが当り前になっているようで,日本人への土地売却は相変わらず活発に続けられている。
ソウルでは不動産の3分の1,済物浦では不動産の半分が,日本人の所有に帰している。一一方,そのほかの町における日本人の利益も,これほどではないにしてもかなり重要なものだ。
貧しい朝鮮
朝鮮人は一般的には無一文で,のんきな性格で,ミコーバー氏のように,いっも何かが起こるのを待っている。
そうした場合たいがい日本人の金貸が現れて,何かを期待している朝鮮人に,家や土地を担保に金を貸すのだが,その結果日ならずして,その不運な朝鮮人は追い立てをくらい,日本人は取り上げたその財産を最大限に活用する,という結果になる。
朝鮮の実質的支配者かくして日本は急速に経済面でも教育面でも,朝鮮の実質的支配者の地位を占めつつある。機会があり次第,朝鮮は,すでに実質的に日本のものになっているように,名義上も日本のものになってしまうだろう。そして,この機会が早く来ればよい,というのが.全日本人の熱望なのだ。
竜岩浦事件
竜岩浦問題に戻如i,日本の新聞は英字紙も日本語紙も,こぞってわれわれに対し正面から十字軍的論陣を張り始めている。 問題になっている朝鮮の村で数人のロシア人が数エーカーの土地を賃借したことを取り上げて,朝鮮の主権を侵害する試みであり,日本の利益に対する脅威だと言う。いや,それだけではない。
これは,朝鮮の独立はおろか,日本の独立まで脅威にさらすものだと言うのだ。 しかし,このような日本人の熱狂的妄想も,竜岩浦問題が純粋に商業的性格のものであることを,うまく覆い隠してはいないと思う。
この賃借に関する協 定が締結されたのは,かなり以前の1896年にさかのぼるが,当時は必要な作業を実行に移すだけの条件が整っていなかった。 しかし現在ある企業がこの利権を引き継ぎ,それを活用しているところだ。
ロシアが侵略行為を行っている。と非難される理由はどこにあるのか?
何千という日本人が釜山から元山までの地域で働いているではないか。 朝鮮半島でのこの恐るべき日本人の進出を,日本の新聞は皆,あらゆる点で厳密に合法的で,安心でき,満足のいくものでは全くないと見なしているだろうか。
その日本の進出は,朝鮮における他の国々の利益に対する脅威であり,朝鮮自身に対する脅威だと,日本では考えられていないのだろうか?
それでも,ロシアの材木商人が朝鮮北部でささやかな事業を始めたら,とたんに日本中の新聞が半狂乱になって,これはロシアの侵略であり戦争を意味するというのだ。 しかも,日本の新聞は,今こそ日本が望みなき、そして力なきは 朝鮮に干渉すべきときだと考えているのだ。
文明の恩恵
ノーゲイ.クライ紙は次のように言う。 「この陰うつな悲嘆の声すべてに対するわれわれの回答はこうだ。 北部朝鮮におけるロシアの利益が,純粋に平和的なものであることは公平な観察者ならだれでも認めるはずだ。 また、日本の強硬外交論者には.正義と相互尊重の原則にのっとり,隣国に文明の恩恵を平和的に.しかし確実に導入しようという,ロシアの決意を揺るがすことはできないということを付け加えておこう」
関連記事
-
-
知的巨人たちの百歳学(165)ー『一億総活躍社会』『超高齢社会日本』のシンボル・植物学者・牧野富太郎(94)植物学者・牧野富太郎 (94)『草を褥(しとね)に木の根を枕 花を恋して五十年』「わしは植物の精だよ」
94歳 植物学者・牧野富太郎 (1862年5月22日 …
-
-
百歳学入門(24) 『画家は長生き』・奥村土牛(101歳) 「牛のあゆみ」で我が長い長い道を行く
百歳学入門(24)『画家は長生き』奥村土牛(101歳)「牛のあゆみ」で我が長い道 …
-
-
百歳学入門③ー知的巨人たちの往生術から学ぶ③
知的巨人たちの往生術から学ぶ③ 前坂 俊之 …
-
-
『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『新型コロナと世界の沈没―コロナ共存社会は数十年続く可能がある②』(8月15日)★『ワクチン開発の国際的な大競争と囲い込み』★『 米中対決のエスカレートは加速一方!』
『新型コロナと世界の沈没―コロナ共存社会は数十年続く可能がある②』( …
-
-
知的巨人の百歳学(145 )-声楽家・中川牧三(105 歳)-『生涯涯現役/健康長寿法、「好きなことを好きなようにやってきたら、いつの間にか100歳を迎えていました」
2015/10/13 / 知的巨人たちの百 …
-
-
3年ぶり★「ANAウインドサーフィンワールドカップ横須賀・三浦大会」(11月11日―15日)歓迎動画』★『Kamakura材木座ウインドサーフィン(2021 /12/1正午)』★『国道134号上のサーフィンと白雪の富士山に向かって飛び、舞い上がれ!、エキサイティング!」
Kamakura材木座ウインドサーフィン(2021 /12/1正午)   …
-
-
「老いぼれ記者魂ー青山学院春木教授事件四十五年目の結末」(早瀬圭一、幻戯書房)ー「人生の哀歓が胸迫る事件記者の傑作ノンフィクション!』
「老いぼれ記者魂: 青山学院春木教授事件四十五年目の結末」 (早瀬 …
-
-
鎌倉鶴岡八幡宮の「さくら」を見に行く。外国人観光客でにぎわう(4月2日午後3時すぎ)②』 ★『4月5日(土)-6日(日)がほぼ満開だよ』
鎌倉鶴岡八幡宮とは https://www.hachimangu.or.jp/ …
-
-
日本最長寿の徳川家三代の指南役・南光坊天海(108歳)の養生法とは・・・<百歳仙人・超人術>
日本最長寿の徳川家三代の指南役・南光坊天海(108歳)の養生法 …
-
-
横山大観は岡倉天心の理想を受け継いだ日本画の育ての親であり、明治、大正、昭和の三代にわたり、日本画を革新して日本画壇の最高峰に君臨していた。〝酒仙大観〟は酒で栄養をとりながら八十九の長寿に
『百歳学入門』(226) 〝酒仙大観〟は酒で栄養をとりながら八十九の長寿に 横山 …
- PREV
- 『 新選/ニッポン奇人・畸人・貴人・稀人・伝伝伝』①『泉鏡花・幻想文学の先駆者は異常な潔癖症・・』●『泉鏡花は文字を至上のものとしていた。佐藤春夫が訪れた時、鏡花の話す字がわからず、夕タミの上に指で書くと、鏡花は烈火のごとく怒り「文字をもって世すぎするものが、人の踏む夕タミに尊い字を書いてはダメ」と叱った』●『「呂」という言葉に「キス」とシャレたルビをふる』
- NEXT
- 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑲『開戦3ゕ月前の『英タイムズ』の報道-『満州撤退の最終期限10月8日が過ぎたが,ロシアは過去3年間と 変わらず満州に居座り続けた』●『ロシアは満州全体をおさえ、その前進運動をさらに朝鮮に拡大、竜岩浦に軍事基地をつくった。』●『日本は平和的な措置をとり.難局において,また紛争の長期化を通じ,日本は自制を保ち続けてきたが,これは日本が大国になって以来の最も称賛すべき特徴だ。』