前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(123)「戦後70年、「偏見のない首相談話」を期待」(5/11)

      2015/05/11

池田龍夫のマスコミ時評(123)

「戦後70年、「偏見のない首相談話」を期待」(5/11

 

戦後70年、「偏見のない首相談話」を期待(5/11

世界の研究者187人が声明

 

安倍晋三首相の間違った歴史認識に基づく、右翼偏向的な言動が危惧される折、欧米の日本研究者や歴史学者ら187人が5月7日、声明を発表。戦後70年間の日本の平和主義を称賛した上で、第2次世界大戦以前の「過ち」について「全体的で偏見のない清算」を呼びかけた。

特に慰安婦問題などの解決で、安倍首相の「大胆な行動」に期待を表明しており、ハーバード大学のエズラ・ボーゲル・名誉教授と入江昭名誉教授、マサチューセッツ工科大学のジョン・ダワー名誉教授、ロンドン大学ノラルド・ドーア名誉教授ら著名な学者が名を連ねている。この声明は「戦後70年という年に当たり、日本とその隣国のあだに70年間守られてきた平和を祝うためのものです」と前置きして、日本政府に対して次のような警鐘を鳴らしている。

「日本の過去」の歴史的事実を率直に反せよ

「日本の平和主義が世界から祝福を受けるにお当たっては、障害となるものがあることを認めえざるを得ません。争いごとの原因と最も深刻な問題のひとつ、いわゆる『慰安婦』制度の問題があります。(中略)慰安婦の正確な数について、歴史家の意見は分かれていますが、恐らく永久に確定しないでしょう。

最終的に何万人であろうと何十万人であろうと、いかなる数にその判断が落ち着こうとも,日本帝国とその戦場となった地域において、女性たちがその尊厳を奪われたという歴史の事実を変えることはできません。

(中略)多くの国にとって、過去の不正義を認めるのは、いまだに難しいことです。第2次世界大戦中に抑留されたアメリカの日系人に対して、合衆国政府が賠償を実行するまでに40年以上がかかりました。アフリカ系アメリカ人への平等が奴隷制廃止によって約束されたにもかかわらず、それが実際の法律に反映されるまでには、さらに1世紀を待たねばなりませんでした。人種差別問題は今もアメリカ社会に深くすくっています。

米国、欧州諸国、日本を含めた、19・20世紀の帝国列強の中で、帝国にまつわる人種差別、植民地主義と戦争、そしてそれらが世界中の無数の市民に与えた苦しみに対して、十分に取り組んだといえる国は、まだどこにもありません。(中略)今年は、日本政府が言葉と行動において、過去の植民地支配と戦時における侵略の問題に立ち向かい、その指導力を見せる絶好の機会です。

民主主義を強化し、各国の協力関係の構築を

4月のアメリカ議会演説において、安倍首相は、人権という普遍的価値、人間の安全保障の重要性、そして他国に与えた苦しみを直視する必要性について話しました。

私たちはこうした気持ちを賞賛し、その一つ一つに基づいて大胆に行動することを首相に期待してやみません。過去の過ちを認めるプロセスは民主主義を強化し、国と国のあいだの協力関係を養います。『慰安婦』問題の中核には女性の権利と尊厳があり、その解決は日本、東アジア、そして世界における男女同権に向けた歴史的な一歩となることでしょう」。

まことに的を射た指摘ではないか。入江昭ハーバード大学名誉教授は「戦後日本が平和と人権をを尊重してきたことは世界から評価されている。だからこそ過去の過ちを反省することが大切だと多くの歴史家は考えている」と述べている。朝日新聞5月8日付朝刊は、1面に声明主文、3面にコメント、11面に声明全文を掲載、その価値判断が断トツに優れていた。

世界が注目している8月の「安倍首相談話」が、意義深い内容になることを切に願っている。

(いけだ・たつお)毎日新聞OB。

 - 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための日本の超天才人物伝⑦』★『世界の知の極限値』★『ーエコロジーの先駆者、南方熊楠の家族関係』★『父・弥兵衛は遺書(財産分与)に「二男熊楠は学問好きなれば、学問で世を過すべし。ただし金銭に無頓着なるものなれば一生富むこと能わじ』と記していた」』

日本天才奇人伝③「日本人の知の極限値」評された南方熊楠の家族関係  & …

サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会の日本対ドイツ初戦が23日午後10時から始まる」★『戦略眼からみた世界サッカー戦国史』①ー『前回のW杯ロシア大会(2018)と日露戦争(1904)の戦略を比較する。西野監督は名将か、凡将か➀-8回連載を再録する』

       2020/03/ …

no image
日本リーダーパワー史(639) 『日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(32)田中義一はロシア国内を偵察・諜報旅行して、革命家・レーニン、スターリンに接触(?)したのか③

日本リーダーパワー史(639) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(32)   …

no image
日本メルトダウン脱出法(809)『ネット時代、「名誉毀損」はこんなに変わったー「損害」と認められる範囲が広がった意味』●『中国政府がいま最も恐れているのは、ネット上の「くまのプーさん』●『 2次創作は非親告罪化の対象外に 文化審議会の小委員会、方向性まとまる』

 日本メルトダウン脱出法(809)   ネット時代、「名誉毀損」はこん …

no image
世界、日本メルトダウン(1019)―『トランプを討つ明智光秀は誰だ! 早くも余命のカウントダウン始まり、ペンスの注目度急上昇』●『トランプを勝たせたロシアのスパイ、その見事な手口 ヒラリーを標的にウィキリークスと巧みに連携、さて日本訪問では・』★『ナチス、ソ連の二の舞を演じ始めた米国 科学リテラシーゼロの宰相が国家を崩壊に導く』●『仏大統領選、最有力候補をスキャンダルが直撃 家族に不正給与を支払っていたフィヨン元首相』●『世界に溢れる「偽ニュース」から学べること 人を動かす情報とは何か』●『トランプ政権誕生で注目される 「インターネット・アーカイブ」とは何か』

世界、日本メルトダウン(1019) トランプを討つ明智光秀は誰だ! 早くも余命の …

『リーダーシップの日本近現代史』(296)日本興亡学入門⑩1991年の記事再録★『百年以上前に<企業利益>よりも<社会貢献>する企業をめざせ、と唱えた公益資本主義の先駆者』ー渋沢栄一(日本資本主義の父)、大原孫三郎(クラレ創業者)、伊庭貞剛(住友財閥中興の祖)の公益資本主義の先駆者に学ぶ』

    2019/01/09日本興亡学入門⑩記事再 …

no image
日本メルトダウンの脱出法(557)『官邸相場を操る官房長官が主宰』『ロシアが国際社会から孤立」『中国の原発建設計画270基超 』

      日本メルトダウンの …

『世界最先端技術<見える化>チャンネル』★『熊本・菊陽町に建設中の台湾積体電路製造(TSMC)の工場建物などを現場中継する(2022年12月29日、江藤則幸レポート)

江藤則幸レポート『世界最先端技術<見える化>チャンネル』 半導体受託生産の世界最 …

no image
日本リーダーパワー史(726)《対中交渉の基礎的ルール10ヵ条》『中国人の交渉術(CIAの秘密研究)』尖閣諸島、南シナ海対策の基礎知識

  以下は、米中和解を実現したキッシンジャー、毛沢東、周恩来の初会談以 …

『Z世代のための百歳学入門』★『全財産をはたいて井戸塀となり日本一の大百科事典『群書索引』『広文庫』を出版した明治の大学者(東大教授)物集高見(80歳) と物集高量(朝日新聞記者、106歳)父子の「学者貧乏・ハチャメチャ・破天荒な物語」★『神経の細かい人は、自爆するんですね。あんまり太すぎると、世渡りに失敗する。最も良いのが「中間の神経」だね、ま、中間の神経でいながら、目標を何かにおいて、『こいつをものにしよう』『こいつを乗り越えてやろう』って人が生き残る」

2021/05/27   記事再録   前坂 俊之(ジャーナ …