前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

◎『「申報」からみた「日中韓150年戦争史」(77)下関条約1ヵ月前『中国は絶対に倭人の領土割譲要求を許すわけ にはいかないを諭す』

      2017/07/06

 

◎『「申報」からみた「日中韓150年戦争史」

日中韓のパーセプションギャップの研究』77

 

 

1895(明治28)10 光緒21年乙未214日【申報】


以下は、下関条約(日清講和条約)が1895417日に下関の春帆楼

で締結される約1ヵ月前の中国紙「申報」の論説です。

 

 

 

中国は絶対に倭人の領土割譲要求を許すわけ

にわいかないことを諭す』

 

 

倭奴(日本),きわめて横暴かつ傲慢だ。わが軍が平壌から退却すると,ついに大軍を率いて鴨緑江を渡ってきた。そして彼らは,「中国は惰弱で無能だ」と見てとるや,軍をほしいままにして,長躯して一気に奉天などの諸都市を蹂躙した。

こうした行為は,ほとんど昔の倭寇と変わらない。わが軍は身を顧みず.命をかけて防御するけれども.いかんせん彼らは死をも恐れず,相変わらず横暴に振る舞うので,とうとう美しいわが国土も,だんだんと敵どもに占領されてしまった。

 

昨秋より数えあげれば,九連城・寛旬・海城・牛荘・蓋平・熊岳・復州・金州・鳳皇庁・旅順の諸処がしだいに陥落してしまった。先ごろは,奉天から山東までやってきたので,威海衛・劉公島・寧海州・登州までもが敵の手に落ちてしまった。ああ,いったいだれ

がこうした事態を招いたのだろうか。

 

いや.今となっては過去はとがめぬことにしよう。李傳相はすでに重ねて講和会議に赴くよう朝廷の特命を受け,陛下においとまを告げ,都を出発してから,かなりの日数になる。

ところで.この堂々たる季傳相は.以前から倭奴に尊敬されており.したがって,このたび,外交折衝に赴けば.必ず戦争状態から講和状態へと移行させることができると私は信じている。そうすれば.東北一帯にいる数千万の人民の生命も保たれ,家庭の破壊も免れる。

 

このような一髪千釣の重い任務は,李傳相でなければいったいだれが当たることができようか。とりわけ倭人は横暴非道で,わが聖清の地の要地に無断で踏み込んだ。そして.わが軍の兵士が恐れをなし,追撃して敵陣を落とすことができないでいるのを前もって知っていたので,倭は得意満面で.いろいろな方法で脅迫し,とうとう領土割譲を望み.また賠償金を求めてきたのだ。

 

したがって.わが国の使者があまりに強硬な態度をとると.必ず事態は決裂してしまうだろう。逆に柔軟な態度で臨んでも.敵方を調子づかせるだけでなく,国の威厳をも損なってしまうだろう。

 

だから,強硬・柔軟2つの態度をバランスよく並用して臨めば,すべてうまくいくのだ。こうすれば,講和の処理を速やかに行うことができるではないか。愚見を申し述べるならば,日本がもし領土割譲を要求すれば.わが国としては絶対に従うわけにはいかない。なぜならば,日本は旅順を奪い取った後.その地に野戦病院を設けて.負傷した日本の兵士を収容して治療に当たっており,さらに銀行を開設して兵士が給料を受け取り,国内に送金して家族の費用に充てられるようにしているからだ。

 

 

ああ.奉天はわが聖祖神宗の発祥の地だ。今わが軍の勢いでは,敵を破ることはできない。しかしそうかといって,たとえ尺寸の地であっても,軽々しく人に与えることなどできようか。

旅順は天然の要塞の地であり,その地形は強固で,この他を手に入れたならば,北洋の門戸を抑えることができる。逆に,この地を失ってしまうと,敵に攻められてしまう。もし日本軍が長駆して侵入してきたとしたら,われわれには防戦できる土地はない。

 

ああ,倭人の計略はどうしてこんなにもずる賢いのだろうか。幸いにもわれらが傳相は,穏健・慎重で神技のように敵を料ることができるので,両国の会議のときには,おそらく決して境内の地を割譲しろという要求に従わないだろう。

 

倭人は数えきれないほど多くの気力を使い.また万国の非難を甘んじて受けて,わが聖清の地を侵したのだ。それが傳相のひと言を急に聞き入れて.手ぶらで帰るだろうか。

 

いや,倭は口から出任せに,いろいろと要求してくることだろう。それではわれわれは,いったいどう対処すればいいのだろうか。

それはつまり.領土割譲よりも賠償金を支払う方がいいと言えよう。なぜならば,倭国は国庫が鳴き,民衆が窮乏しているからだ。倭国の人民は以前,紙を衣服としていたが,あつかましくも「紙こそが体にいちばん適している」と言うのだ。

 

 

今倭国は.米穀が足りず,人民は皆,サツマイモとナマコとで飢えをしのいでいる。そして以前,その君主はたびたび金持を脅して.無理やり財宝を献上させていた。ところがこのごろは.脅して巻き上げることさえもできなくなってしまったのだ。そこでやむを得ず.上野の故徳川将軍の祠堂にある金製の獣環と塊吻を11つ壊して,銀に換えて軍需に充てている。このことを倭の新聞はひた隠しにして載せていないが,市中では人々が口々にうわさしあっている。以上のことから.目下の倭人の気持がわかるだろう。もしわが国から

戦費の賠償を受けることができるならば,彼らは2度と矛先をわが国に向けることはないだろう。

 

 

しかし.あらかじめ心しておかなければならないことがある。

それは,日本人の性格は奇怪なところが多く,往々にして一方的に約束を破るということだ。また,信じられないでたらめな言葉が,ときとして彼らの口からは出るということだ。

 

彼らがもし,ある土地を担保にして.われわれが賠償金をすっかり支払い終えるのを待ってから撤兵しようと欲するなら,わが国は決して迎合したり,妥協したりして,その術中にはまってはならない。

また.万一きちんと賠償金を支払ったにもかかわらず.兵を撤退させず.依然としてこれらの地を不法に占拠し続けるなら.倭はうそつきの名を甘受することになるだろうが,わが国もこれを解決するのに.またまた大いに苦労するに違いない。

 

そうなるくらいなら.むしろあらかじめ準備を周到にして断固として争う方がよい。そうすば,おそらく日本人は奸計を用いることができず,わが中国も平穏を取り戻すことができるだろう。また,その後この問題をめぐってごたごたが起こったとしても.傳相には成算がある。そして傳相の計略はすでに熟しているので.小生がよけいな策をめぐらしてもなんの役にも立たないのだ。

 

 - 現代史研究 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための大谷イズムの研究』★『「神様、仏様、大谷様」―大谷が世界を変える』★『大谷の市場価値は「世界のトップへ」「MLBでは1位』★『真田広之の「SHOGUN 将軍」がエミー賞18部門を独占1』

10月には80歳(傘寿(さんじゅ)を超える私の「生きがい」と「元気」「やる気」の …

no image
「日韓衝突の背景、歴史が一番よくわかる教科書」④記事再録/日韓歴史認識ギャップー「伊藤博文」について、ドイツ人医師・ベルツの証言『伊藤公の個人的な思い出』伊藤博文④-日本、韓国にとってもかけがえのない最大の人物

2010/12/05 の 日本リーダーパワー史(107) 伊藤博文④-日本、韓国 …

no image
日本リーダーパワー史(765)ー『今回の金正男暗殺事件を見ると、130年前の「朝鮮独立党の金玉均らをバックアップして裏切られた結果、「脱亜論」へと一転した 福沢諭吉の理由がよくわかる②』★『金玉均や朝鮮独立党のメンバーを族誅(罪三族に及ぶ)して、 家族、親族、一族の幼児まで惨殺、処刑した。福沢は社説『朝鮮独立党の処刑』と題して、過酷、苛烈な処刑を野蛮国と激しく批判した』

    日本リーダーパワー史(765) 今回の金正男暗殺事件 …

 日本リーダーパワー史(792)ー 「日清、日露戦争に勝利」 した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス』➉『朝鮮半島危機には児玉源太郎のインテリジェンスに学べ』★『クロパトキンの日本敵前視察には包み隠さず、一切合切すべてみせろ』と指示。

 日本リーダーパワー史(792)ー 「日清、日露戦争に勝利」 した明治人のリーダ …

no image
日本リーダーパワー史(422) 『日中韓150年対立史⑧英「タイムズ」,外国紙は中国が侵略と いう「台湾出兵」をどう報道したか①

 日本リーダーパワー史(422)   ―『各国新聞からみた日 …

『Z世代のためのジェンダ―フリー歴史講座』★『日本初の女性学を切り開いた高群逸枝夫妻の純愛物語』★『強固な男尊女卑社会の<封建国家日本>の歴史を独力で解明した先駆者』

  2009/04/09 「国文学」09年4月号に掲載記事を再録 <結 …

「今、日本が最も必要とする人物史研究④」★『日本の007は一体だれか』★『日露戦争での戦略情報の開祖」福島安正中佐➄』★『三国干渉』後に川上操六はスパイ大作戦をどう組み立てたか『日英同盟締結に向けての情報収集にエース福島安正大佐 をアジア、中近東、アフリカに1年半に及ぶ秘密偵察旅行に派遣した』

2019/09/29  日本リーダーパワー史(673) 『三国干渉』と …

no image
チャイナ/メルトダウン(922)『南シナ海、中国の主張認めず=「九段線」に法的根拠なし-初の司法判断・仲裁裁判所』★『中國が一貫して日本軍国主義の暴走と非難してきた謀略の満州事変と国際連盟の反対を押し切った『満州国建国』と同じ失敗パターン!、習近平の『核心的利益政策』という名の独善的『共産党独裁帝国主義は国際的な孤立を招くだろう。

 チャイナ/メルトダウン(922)  中國は日本軍国主義の暴走として批判して き …

『オンライン講座』★『最強の英語交渉力を持った日本人とは一体誰か!』◎『日本最強の外交官・金子堅太郎①>『日露戦争開戦と同時に伊藤博文の命令で米国に派遣され、ハーバード大の同窓生のルーズベルト大統領をいかに説得したかー その驚異のディベート・テクニック』

  「金子堅太郎」の検索結果 75件 http://www.maesa

『オンライン講座・吉田茂の国難突破力⑨』★『歴代宰相の中でも一番、口の堅い吉田じいさんは公式でも突っけんどんな記者会見に終始して、新聞記者と個人的に会談したケースは少ない。『総理番記者』は『新聞嫌いの吉田ワンマン』取材用に誕生した」●「伊藤博文の大磯邸”滄浪閣“を買取り、自邸の『海千山千楼』に改築した

     2016/02/09 日本リー …