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<クイズ>世界で最ももてたイケメン・日本人は一体誰でしょうか②トミーの立石斧次郎

   

 
<クイズ>-世界で最ももてたイケメンの日本人はだれでしょうか②
 
米少女たちから花束、おっかけのイケメン・トミー②
前坂俊之(ジャーナリスト)
 
立石のコミュニケーション力はどのように養われたのか。
 
立石はアメリカ、アメリカ人を知りたい一心で、その積極的な気持ち、人見知り、物おじしない態度、フレンドシップさによって、異文化コミュニケーション力を身に付けた。英語でどんどん質問して、すぐスペリングを書いてもらい、それをまねして発音して覚えた。これが最上の英語上達法である。英語能力、日常会話はたちまちにして上達して、米国にわたる1ヵ月余の船旅で米船員とつきあうことであっという間にに人気者となった。
 
 
使節団の大部分の上級武士たちは文字通り、武士の作法に従って慇懃な態度で終始し、自分からはしゃべらず喜怒哀楽はほとんど示さなかった。これでは外国人とコミュニケーションできるわけがない。初めていく異国・アメリカを全く知らないうえに、どのように接したらいいのか、態度を示してよいか、不安感がいっぱいで考えあぐねていた。

しかも、日本人特有の恥ずかしがり屋、ひっこみ思案ときており、船室にとじこもっていたのが大半であった。

 
立石は船に乗った最初の日からじっとしてなく船員1人1人に「マイ・ネーム・イズ・タティシオノジロー」「私は立石斧次郎といいます」と自己紹介して歩いたが、そんなむずかしい名前をアメリカ人が覚えるはずがない。
 
 立石斧次郎はもともと米田為八といい、通訳立石得十郎の甥である。

得十郎は為八を養子にして斧次郎と改名させて、長崎につれていって英語の修業をさせた。得十郎が「為、為(タメ)と呼んでいるのを」、米船員には『トミー』と聞こえて、これがニックネームで呼ばれることになった。
 

その後、立石得十郎は斧次郎を横浜につれてきて税関の通訳になったた。斧次郎は気さくな性格なので横浜税関でもたちまち外国商人たちの人気者になった。「ポウハタン号」で何とか渡米になんとかして同行したいと得十郎に頼み込んで無給通詞見習いで乗り込んだのである。

 

乗り込むや否や、三百人のアメリカ人一人一人に「ハウ・ドゥ・ユウ・ドゥ」と自分から握手を求めて歩いたので、1日でポウハタン号の人気者になってしまった。
トミ―は簡単な英語なら少しはしゃべれるので、船員たちはヒマにまかせて彼をからかい、それがまた、トミーの英語を上達させ、アイドルになったのである。   
 
 トミーは平均一日に十回以上もたびたび士官室に出入りし、船酔いで気持ちの悪いときなどは、ソファーの上で少年そのものの可愛いらしく寝息を立てていた。一時間も経つとびっくりしたように立ち上がったと思うとあたりを見まわして「グッド・モーニング・オールジェントルメンズ」とあいさつすると、あたふたと出て行く。午後も夜でもいつも『グッド・モーング』であり、その何ともいえぬ愛嬌のあるかわいらしい姿に船員たちからは弟のよう愛され、おもちゃにされた。
 
最初に見る日本人一行を手ぐすねを引いて待ちわびていたアメリカの新聞記者に対しては、米士官も船員もトミ―をまず最初に愉快で、愛らしい日本人として話、伝えたものだから、米国に到着する前から「トミ―」の動静はニュースで大きく報道されることになった。
 
 
 
使節団が米国に到着してボルチモア、フィラデルフィアとまわり、ニューヨークへ来たときは、もう新聞はトミーの噂で持ちきりになって、その一挙手一投足が新聞種になったのである。
 
 
『ボルチルチモア・サン』によると、
 
『日本使節団の乗った汽車は“クダニエル・ウェブスター号“という機関車に引かれてフィラデルフィアにはいってきた。
機関車は日米の国旗で飾られている。すると途端にトミーこと立石斧次郎が機関車から飛び降りたので見物人はびっくりした。そしてこの少年が有名なトミーだと知った人々は、歓呼の声を挙げたのであった。バルチモアを出発するとき、希望者は機関車に乗せてあげるとの申し出があって、さっそく応じたのがこの陽気なトミーであった。
彼は途中大喜びで、はしゃいでいて、途中のウィルミンし「ン駅へ着いたとき、もう車内へはいったらどうかといわれると「ノ―・ワンモア」といって聞かなかった」
 
 
 
 
「フィラデルフィア・ザ・プレス」によると、
 
「 きょうは出発の準備と荷造りのため、使節の部屋のほかはあけ放たれていたので、一目でも、この 珍しい日本人の一行を見ようとアメリカ人が群がっていた。
トミーが出てきたとき、一人の十六ばかりの娘が流行の帽子をかぶって、どうしてもトミーと仲よくなろうと決心した様子でさかんにトミーにモーションをかけたが、トミーがさっぱり反応を示さないので、とうとうトミーを追いかけ始めた。室から室へ、廊下から廊下へと、この鬼ごっこは続いたが、とうとうしまいに警官が来て、この若いレディーをホテルから外へつれ出してしまった。
 
  その後トミーがパーラーに坐っているとき、近づいてきた十歳ばかりの女の子があった。トミーはこの子がとても気に入ったらしく、じつと見つめていたが、何を思ったかいきなり刀を抜いたので、居合わせた人は何をするのかと思ってびっくりした。

彼は自分の黒い美しい髪の毛の一房を切って、日本紙に包んでその小さな女の子にプレゼントしたので、他のレディーたちはとても羨ましがったという。トミーのフランクな行為がアメリカ人に受けたのであった。彼は身分こそ役人の中にはいっているが、無給の見習い通訳なので、こういう自由なふるまいができたのであろう。」

 
 
「ニューヨーク・ヘラルド」は「星から来た客」との見出しでこうトミ―の人気ぶりを書いている。
 
「フィラデルフィアを出発するとき、トミーのまわりにはレディーと子どもが群がって花を投げ、ハンカチを振り、口々に「グッドバイ・トミー」とか「また来てください」などと叫んで大騒ぎだった。
 
 日本人たちはみな上機嫌で、なかには買いたてのハイ・ハットを冠って、自や黄色のキッドの靴をはき、葉巻を吹かしている者もある。

汽車がボーデンタウンのビショップ・ドー女学校のそばを通ったときは、何千人の十二歳から十八歳くらいまでの少女たちがトミーを見るために集まってきて、汽車が速力をゆるめると、「トミー」という歓声が沸き起こって、汽車の窓から花束や、摘み立てのいちごを入れた籠が投げこまれるのだった。この沿線の光景は、「ニュー・ジャージー州の全人口が、この星から来たお客さんを歓迎するために鉄道の沿線に集まったというのが適当だろう」

 
  <参考文献・レオモンド・服部著「77人の侍アメリカへいくー遣万延元年米使節の記録」講談社昭和43刊)>
 
 

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