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  ★5日本リーダーパワー史(781)―『日中歴史対話の復習問題』明治以降、日中韓(北朝鮮)の150年にわたる紛争のルーツは 『朝鮮を属国化した中国」対「朝鮮を独立国と待遇した日本(当時の西欧各国)」 との対立、ギャップ』②★「中国側の日本観『日本の行動は急劇過ぎる。朝鮮は末だ鎖国状況で、 日本はともすれば隣邦(清国、台湾、朝鮮)を撹乱し、 機に乗じて奪領しようとする」(李鴻章)』★『現在の尖閣諸島、南シナ海紛争、北朝鮮問題に続く日中パーセプションギャップのルーツの対談』

      2017/03/17

★5日本リーダーパワー史(781)―

 

明治以降、日中韓(北朝鮮)の150年にわたる対立、戦争のルーツは

『朝鮮を属国化した中国」対「朝鮮を独立国と待遇した日本(当時の西欧各国)」

とのパーセプション、コミュニケーションギャップの衝突である。②

 

中国側の日本観『日本の行動は急劇(急激)過ぎる。朝鮮は、末だ鎖国状況で、

日本はどうもすれば隣邦(清国、台湾、朝鮮)を撹乱し、

機に乗じて之を奪領しようとしている」(李鴻章)

  

 明治9年の森有礼と李鴻章の『朝鮮属国論』の外交交渉②

李 いやしくも、日本がことを起さなければ、なんの紛争が起きようか

日本より、軍艦を出して朝鮮海を測量しなければ、朝鮮がどうして発砲することがあろうか。これによって考えれば、日本より苦情を訴えることもなく、朝鮮をうつ口実はない。

ひっきょう、朝鮮から日本軍艦に発砲したことは、日本が自ら招いたことだ。 況や、該砲船が海岸附近の所で、即ち、公法上所禁の三英里(カイリ)以内の所に進入し、さらに城池を陥れ、人を殺し、財を掠むる等の事をおこなった。ところが今、使節を派遣して、理非を糺さんとするす。これれ何為ぞや。

   

森 閣下は朝鮮人が我砲船に発砲した行為を罪なしするのみならず、現に我国より派遣した使節を悪意を抱く者と見倣している。思うに朝鮮事件(江華島事件)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E8%8F%AF%E5%B3%B6%E4%BA%8B%E4%BB%B6

に就ては多少、誤聞せられし所あり。閣下のために其実況を縷(るる)述せん。

第一、 我砲船は専ら海水測量のためのみに朝鮮に赴いたのではない。

たまたま、船用の水を求めんがため船を寄せたのである。但し、これを近寄せるためには、先ず海水の浅探を実測して、

船の進退を座礁しないようにしなければならぬ。

船頭に我国の旗章(国旗)を標したれば、朝鮮人はもとよりこれを認識しているはずである。 然るに国旗あるを顧みず、突然、わが船に向て発砲せり。閣下も定その点をて知っていただきたい。

我国と朝鮮とは二百余年の間、友情と交際を通じ、最近、更に両政府の間に取極をなし<日朝修好条規(にっちょうしゅうこうじょうき)=明治9年に締結>、以後は互に交信を通じ、双国の友誼を親密にせん事を約せり。

ところが、すぐにこの条規に背き、妄りに我国の名誉を汚し、次で我砲船に向て発砲せり。ここにおいて使を派遣してこれら暴行の理由を問うたのである。この問に理があることは、話さなくてもわかるはずだ。

もとより即座に罪を問うために軍を出動させて朝鮮を膺懲するは、我に於て容易の事である。

しかし、そうとはいっても我国はこうした行動はとらない。なるだけは懇親和好の意を旨とし、勉めて朝鮮の頑心(頑なな心、鎖国攘夷の思想)を改良し、以て我栄誉を全ふするに如ずと思考し、乃ち修好の使を派遣したのである。

第二、 閣下は我国の砲船が公法上所禁の近海【当時の領海3カイリ説】に進入したという。

これを考えてもらいたい、公法はこれを遵守するの国に用いるべきで、朝鮮のような公法の何たるを知らず、かえってこれを厭悪する国に用いるべきではない。朝鮮は仁愛の道を守らず、他国国の民を入れず、たまたま外来の船あれば、みだりに発砲し、あまつさえ沿海の測量を許さず。

これがために諸国の船舶の中、朝鮮海上を往来する隣国の船舶、往々沈没の災難を罷る者少なからず。 故に隣国の1つの我国の船、乗組員に対し、かかる不正の事を行わせないためなのです。

———————–

李 朝鮮においては貴国(日本)と交通を開くの意思がないわけではないが、彼れ深くその影響を憂慮するなり。 もし、他の各国が日本の例を追い、彼の狡猾なる商業を営まば、朝鮮はたちまちに衰亡せん。これが、朝鮮の恐れるところなり。

森 このこと憂うるに足らざるなり。いやくも朝鮮に於て、其海岸に漂着の外国人を懇切に待遇する以上は、外国通商のために国を開く必要はない。ただ外国人をして航海が無難のために朝鮮海の測量の自由をあたえればよろしい。

李 そうだといえども、外国商人らの欲望は閣下が説く所の事のみに止らない。

森 或はそうかもしれない。仮にそうであっても。外国人といえども、強いて通商を朝鮮に迫る事はできず、又、我国といえどもかくの如き強迫を朝鮮に加へるつもりはない。

李 閣下はこれを保証できるか。

森 固より然り。いやしくも朝鮮において外交を拒絶する道理があらばこれを行うことを妨げない。或は日本・清国の如き唇歯の国(近隣国)を容れ、自余の遠邦(遠くの国)を拒むこともそうであってもよい。

李 そのことはできるのか。

森 固よりなり。請う、我国の例に就てこれを明知せよ。

かって我国では欧洲の若干国を容れて交易を営みし事ありたり。(戦国時代、信長、秀吉のころ)今をへだてる約三百年前にあり。然るに、彼れ、我内国の事務に干与(内政干渉)せしを以て、和蘭国(オランダ)を除くの外はことごとくこれを逐斥して再び日本に来るを禁ぜり。

以来、オランダ人は良好友愛の情を我に示せし事、なお旧来、貴国(中国)の我国に於るが如し。故に貴国及び蘭国(オランダ)は数百年の間、我国と交通し、その間自余の西洋諸国は一切我国に来たるを拒まれたり。 漸く二十年前に至り、外交を開くことを是認して、遂に各国と交を結びたり。

李 果してかくの如くなれば、朝鮮もその計画を変ざるを得ない。

森 拙者は貴政府の協力同心を得ん事を切望し、依て此国に来りしが、今に於て貴政府の意を察するに、甚だわが所期に違へる者あり。

李 其然る所以は如何。

森 貴国大臣等云く、朝鮮は清国の隷属なり、故に彼れ清国を尊崇すと。然るに貴国大臣等は朝鮮の為に事務を理するを欲せず。 もとより我国より使節を朝鮮に派遣した真の目的は貴大臣等の既に了知する所なりといえどども、これに賛成の意思はなく、条約中和親の条款はむしろ招難の条款というべし。

この無用の条款の事につき、拙者に書を寄する事が数回あった。かの如き接遇を受けたことに実に失望した。

李 閣下の失望は実に察せり。然りといえども、我政府は何故に朝鮮の事に於てかかる措置を致せしや、請う閣下の為に弁ぜん。

我政府の目する所によれば、貴政府は事を行うに甚だ急劇(急激)に過ぐる所あり。いわんや朝鮮は、末だ貴国の望みを満足する景況(状況)に至っていない。そして貴国は台湾事件の例に倣ひ、動もすれば其隣邦(中国、琉球、朝鮮)を撹乱し、機に乗じて之を奪領(侵略)せんと欲するものの如し。

森 我国を貴国に比べれば、或は実に躁急快捷(そうきゅう、かいしょう=大忙しで駆け走ること)の風ある可し。

西欧人もこの両国人の性情(民族性)に大差異あるを見て、概ねて皆之を怪めり。欧人の見る所に依れば、我日本人は極めて敏捷の質を具え、清国人は極て耐忍の性を備う。

是によて視るに清国人たる閣下の目には、我国の朝鮮事件を処するの法、すこぶる短慮の様に見ゆるも宜なり。但し、貴説中、朝鮮は未だ我望を満たしむる景況に至らずというに至ては、蓋し、閣下は我期望如何を弁知せざるに似たり。

我より朝鮮政府に要むる所の者は極て容易の1,2件に過ぎず。之を許すに将た何の準備を要せんや。

其一、朝鮮より我国威相当の礼を尽さん事を要し、

其二、朝鮮海にて我船人救護のため必須の方法を尽さん事を要す。

我国の彼に需むる所の者は、此二件の外に出ず。期の如き至簡至当の請求を拒むは実に天譴を怖れざる所為と云ふべし。

又、奇説中に日本国は動もすれば隣邦を撹乱し云々と云へり。此語は英明なる閣下の説に似ず。 請う、我国の位置如何を察せよ。

四方環海の国にして即ち一個の島国なり。故に水に依て、以て生を営むものと陸に依て生を営むものと、其数幾んど相同じ。 是れ即ち、我国の人民が専ら海利(海産物、海も恩恵)、の事に関せる諸般の業に熱心する由縁にして、我政府も亦之が為に保護の道を設けざるを得ざる所なり。

今、閣下が云へる征台(台湾出兵)一件といえども、全く前条、やむを得ざるの事情に出しもの也。 将た現に派出せる遺韓公使も、その主意全くここに基けり。

抑も、我政府に於 て莫大の費用と苦辛とを厭はずしてよく是等の事を為すは、これ政府の政府たる義務を尽さんがためのみ。事情かくの如し。

果して知る可し、我国の志向は曾て閣下が臆測せし如き類のものにあらざる事を。いやくも征伐を以て我主意とせば、如何にぞ占有せし台湾の一部を棄るの理あらんや。 又目下朝鮮事件の如きも、何ぞこれほどまでに心を苦しむ可けんや。前にも述たる如く、我政府の趣意は良善実直なり。貴政府之を悟るの速かならざるは深く遺憾とする所なり。

李 朝鮮の事に就ては、拙者急に一書を総理衙門に致さん。我政府貴翰に答ふる書中に、条約中和親の条款、即ち双方互に領地を侵す事を禁ずる条款を援引せしは、我政府に於て少しく軽忽の事なりき。 森 其一語を拝聴し、実に愉悦の至に堪へず。切に望むらくは貴政府に於て充分我政府の真意を解得あらん事を。

李 願くは暫く之を忍べ。総理衙門に於て拙簡中の趣旨を熟思せん間は、幸に之に迫る勿れ。

森 誠に幸甚、貴国に到着以来、末だ斯の如き愉悦を覚へず。今宵は必ず枕を高して快眠すべし。

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