終戦70年・日本敗戦史(103)昭和天皇による「敗戦の原因分析」②『軍備は平和確保のための一手段である』ところがその軍備の力を使用したがる軍人があった。
2015/07/02
終戦70年・日本敗戦史(103)
ー昭和天皇による「敗戦の原因分析」➁ー
①立憲君主国に於て、国務と統帥との各最上位者の
完全なる意見の一致をもって上奏し来りたる事柄は、
かりに君主自身内心に於ては不賛成の
事柄なりとも、君主はこれに裁可を与うるを
憲政の常道なりと確信す。
②国民の不満を負うて軍が立ち上がり、軍の中心勢力の少壮
客気の者達が手段を選ばざる無謀を敢てするも、抑止
することは難事中の難事であった。
③鈴木首相と米内海相とは「大勇」があったのでよく終戦
の大事を為し遂げた。
④なぜ日本人種は嫌われたかー(イ)白色人種の有色人種に
対する優越感(ロ)日本人の独善性
(ハ)日本人の教養の不足(二)日本人の宗教の
異なること
⑤わが国の国民性は付和雷同性の多いことが、戦争防止の
困難の1つであった。この欠点を矯正して国民の
教養を高め、宗教心を培って確固不動の信念を
養う必要がある。
⑥『軍備は平和確保の為の一手段である』。
平和の為に軍備をするといいながらその軍備
の力を使用したがる軍人があった。
⑦敗戦の結果とはいえ我が憲法の改正も出来た今日に
於て考えて見れば、我が国民にとって勝利の結果、
極端なる軍国主義
となるよりも却って幸福ではないだろうか。
以上は「<防衛庁防衛研究所戦史部監修・中層裕次編「昭和天皇発音言己録集成(下巻)」 ㈱芙蓉書房出版 2003年>
の中から1946年4月ごろと思われる「天皇の敗戦記録」の部分を転載させていただいた。
聖談拝聴記録原稿③ 《側近日記214-217頁》
◎「結論」
以上緒論及び本文に於て戦争の原因とその防止の不可能なりし所以をは々述べて来たが、結論として概括的に私の感想を話そう。
先ず我が国の国民性に付いて思うことは付和雷同性の多いことで、これは大いに改善の要があると考える。近頃のストライキの話を聞いてもそうであるが、共産党の者が・その反対者を目して反動主義者とか非民主主義者とか叫ぶと、すぐこれに付和雷同する。
戦前及び戦時中のことを回顧して見ても、今の首相の吉田(茂)などのように自分の主義を固守した人もいるが、多くは平和論乃至親英米論を肝に持っておっても、これを口にすると軍部から不忠呼ばわりされたり、非愛国者の扱いをされるものだから、沈黙を守るか、又は自分の主義を捨てて軍部の主戦論に付和雷同して戦争論をふり廻す。
かように国民性に落ち着きのないことが、戦争防止の困難であった一つの原因であった。将来この欠点を矯正するには、どうしても国民の教養を高め、又宗教心を培って確固不動の信念を養う必要があると思う。
又このことが日本民族の向上ともなり、世界に向かって人種平等を要求する大きな力ともなることと思う。
次に軍備のことであるが、抑々軍備は平和確保の為の一手段である。しかるに従来の有様を見ると、平和の為に軍備をするといいながら・軍備が充実すると、その軍備の力を使用したがる癖がとかく軍人の中にあった。
最後に為政者に付ての感想であるが、以上述べたような国民と軍人とを指導すべき人物として、この困難に当った近衛(文麿)、東條((英機)、鈴木(貫太郎)、米内(光政)に付て1言すると、近衛は思想は平和的で・ひたすらそれに向かって邁進せんとしたことは事実だが、彼は自分に対する世間の人気ということを余りに考え過ぎた為、事に当って断行の勇気を欠いたことは、遂に国家を戦争という暗礁に乗り上げさして終い、次に立った東條の最後の努力をもってしてもこれを離礁せしめることが出来なかった。
これに引きかえ鈴木首相と米内海相とは・政治的技術に於ては近衛に及ばなかったけれども、大勇があったのでよく終戦の大事を為し遂げたのである。
以上は他人に関する感想であるが、私自身としては不可抗力とはいいながらこの戦争によって世界人類の幸福を害い、又我が国民に物心両方面に多大な損失を与えて国の発展を阻止し、又、股肱と頼んだ多くの忠勇なる軍人を戦場に失い、かつ多年教育整備した軍を武装解除に至らしめたのみならず、国家の為粉骨努力した多くの忠誠の人々を戦争犯罪人たらしめたことに付ては、我が祖先に対して誠に申し訳なく、衷心陳謝するところである。
しかし負け惜しみと思うかも知れぬが、敗戦の結果とはいえ我が憲法の改正も出来た今日に於て考えて見れば、我が国民にとって勝利の結果、極端なる軍国主義となるよりも却って幸福ではないだろうか。
歴史は繰り返すということもあるから以上の事共を述べておく次第で、これが新日本建設の1里塚とならば幸いである。
戦争の原因
1、列国が人種間題によりて日本の発展を阻止したこと(人種間題によらぬ列国相互の競争はさほど国民的憤慨を巻き起こすものではない)
なぜ日本人種を嫌ったか
(イ)白色人種の有色人種に対する優越感
(ロ)日本人の独善性
(ハ)日本人の教養の不足
(二)日本人の宗教の異なること
2、軍人の戦争癖なぜ戦争癖に陥ったか
(イ)真の武士道のすたれたこと(愛之を律するに義を以てし、之を貫くに力を以てす 之を武士道という)(これは木下の独自の見解なれど)
(ロ)政治家に対する信頬心が軍人になくなったこと
三、国民の付和雷同性――なぜ付和雷同性になったか
(イ)国民の教養の不足
(ロ)国民の宗教心の薄いこと
将来の日本
①、日本人種に対する白人の尊敬心と信頼心とを高めること、どうすればよいか
(イ)日本人の教養を高め、眼界を広くする
(ロ)日本人の宗教心を刷新する
(現状をもってすれば、国民の宗教心が溌剌になれば基督教徒は増加するであろう)
②、軍備が撤廃された以上、是非とも国の威力を強靭にしておかねはならぬことーーーどうすればよいか
(イ)義によりて律し 力によりて貫く愛の教育
(ロ)たくましき体躯の養成
③、為政家に対する国民の信頼心を高めることーーどうすればよいか
(イ)為政家自身の自覚
(ロ)為政家達に対する陛下の御工夫
関連記事
-
-
「日韓衝突の背景、歴史が一番よくわかる教科書」①★『福沢諭吉の「脱亜論」ですべては解明されている』150年前から日本が悪いという「反日の恨(ハン)の思想」の民族意識は今後ともかわらないのでは」
日本リーダーパワー史(765) 今回の金正男暗殺事件を見ると、130年前の「朝鮮 …
-
-
『大迫力!台風24号接近中の怒涛の稲村ケ崎サーフィン10分間動画決定版(2018年9/29am720-8.30の圧縮版)-怒涛の大波とサーファーの対決決闘編!だれが勝つか!
2018/10/02 大迫力!決定版◎台風24号接近中の稲村ケ崎サ …
-
-
『オンライン講座・日本はなぜ敗れたか、ベンチャーがなぜでないのかの研究』★『 日本の統一教育(文部省)の欠陥、「個性無視、型にはまった人間を粗製乱造した画一的な教育制度が日本を滅ぼした」★『いまも政府、文部省の中央直轄のダイバーシティー(多様性)無視の失敗教育を繰り返し、2度目の日本沈没寸前!』
2015/04/26/終戦70年・日本敗戦史(67) …
-
-
『オンライン講座/議会政治の父・尾崎行雄の語る明治、大正、昭和史・政治講義』★『日本はなぜ敗れたかー① 政治の貧困、立憲政治の運用失敗 ② 日清・日露戦争に勝って、急に世界の1等国の仲間入り果たしたとおごり昂った。 ③ 日本人の心の底にある封建思想と奴隷根性」
2010/08/06 日本リーダー …
-
-
日本リーダーパワー史(926)-『良心と勇気のジャーナリスト桐生悠々の言論抵抗とは逆のケース』★『毎日新聞の「近畿防空演習」社説訂正/言論屈服事件の真相』
毎日新聞の「近畿防空演習」社説訂正事件 桐生悠々の「関東防空大演習 …
-
-
『日本の運命を分けた<三国干渉>にどう対応したか、戦略的外交の研究講座③』『リーダーシップの日本近現代史』(56)記事再録/<国難日本史ケーススタディー④>林董(ただす)の『日英同盟論を提言ー欧州戦争外交史を教訓に』 <「三国干渉」に対して林董が匿名で『時事新報』に日英同盟の必要性を発表した論説>
2012-03-10 /<国難日本史ケーススタディー④>林董(ただす)の『日英同 …
-
-
Z世代のための日本戦争史講座』★『東京裁判で検事側証人に立った陸軍の反逆児・田中隆吉の証言①』★『1941年12月8日、真珠湾攻撃前後の陸軍内、東条内閣の動向を克明に証言している』
2015/05/17 …
-
-
日本リーダーパワー史(478)日本最強の参謀は誰か-「杉山茂丸」の研究④「人跡絶えた谷間の一本杉のような男だ』(桂太郎評)
日本リーダーパワー史(478) <日本最強の参謀は誰か& …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(196)ー『憲法改正を進める安倍自民党はダレス米国務長官の強硬な再軍備要求を断固拒否した吉田茂のリーダーシップ・外交術を学べ』★『ダレス長官は「敗戦国の貧弱な総理大臣だと思っていたらみごとに吉田にやられた。彼が世界の一等国の一等大使(吉田は駐英大使)だったことを計算に入れなかったのが私の間違いだった』
2016/02/1/日本2リーダーパワー史(662)記事再録 < …
-
-
★『明治裏面史』 -『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,リスク管理 ,インテリジェンス㊻★『児玉参謀次長が日露開戦と同時に命令したのは満州馬賊をシベリア鉄道の破壊工作に活用する 『特別任務班』の編成で福島に指示した。』★『青木宣純大佐を『特別任務班』隊長に任命』
★『明治裏面史』 – 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパ …
