『リーダーシップの日本近現代史』(154)再録/『昭和戦前の大アジア主義団体/玄洋社総帥・頭山満を研究せずして日本の近代史のナゾは解けないよ』★『辛亥革命百年⑬インド独立運動の中村屋・ボース(ラス・ビバリ・ポース)を全面支援した頭山満』★『◇世界の巨人頭山満翁について(ラス・ビバリ・ボースの話)』
2019/11/18
日本リーダーパワー史(74)記事再録
前坂 俊之(ジャーナリスト)
大正四年の冬、インドの志士ラス・ビバリ・ポース(昔時の変名・タクール)が日本退去を厳命され、横浜出港のその乗船が上海,香港に寄港すると共に、その地の英国官憲の手に捕えられて無尋問のまま死刑を執行される絶体絶命の危機に陥った。
その生命は風前の灯となった時、大慈悲の人類愛に燃ゆる頭山翁の手が動いて、非常手段により神隠しを演じてポース氏を救助したことは頭山翁の眞骨頂を示す有名な話だが、ポースはこの大恩人たる頭山翁を始め、当時の同情者を毎年一度は欠かかさず招待して謝恩の会を、当時の隠れ家・新宿中村屋で開くことにしていた。したの写真は昭和七年のその会である。

(右から頭山翁夫人、犬養毅、その後はポース氏、頭山翁、内田艮平氏、大崎正吉氏、左は鈴木梅四郎氏で、いとも和やかを歓談の光景)
なおこの国際的大事件の眞相はすでに世人周知の事であらうが、ここに事件について努力された光輝あるその人々の芳名を記録して後世に伝えたい。
その第一は頭山翁その人である。翁が沈思黙考、この事のアジア民族の威信に関する重大案件たるを想ふと同時にその鉄石の意思は牢固として定まり、電光石火の間にこれに処すべき手配は定められた。
相手方は英国政府を代表する英国大使と石井菊次郎外相と日本政府であったが、これに対する頭山翁側でポースを援護のために翁の意志を体して起ったのは、
杉山茂丸、内田良平、寺尾亨、佃信夫、中村粥、宮川一貫、美和作次郎、的野半助、相馬愛蔵、大原剛、萱野長知、大崎正書、宮崎滔天、大川周明、本城安太郎、葛生能久、水野梅暁、白石好夫らの諸氏であった。
◇世界の巨人頭山満翁について(ラス・ビバリ・ボースの話)
私は一九一五年、政治上の理由の下に変名して日本に亡命避難した。当時、支那革命の巨頭・孫文も日本に来ておられた事を聞いた。偶然に或るインド人から孫文の居所を聞いたので面会に行ったところ孫文は大へん喜んだ。それ以来、孫文と親善の間柄になって度々往復した。
孫文の方から一度、私に向って、遅かれ早かれ貴君の本名が英国にわかるので英国として貴君を引渡してもらうために努力しないとも限らぬから、今の内に日本の有力者と知合になっていたらどうであるか、という話があって、孫文の友人であった宮崎滔天に連れられて頭山翁の宅を訪問し、日本語はわからぬので宮崎氏を通じて頭山翁と色々の話をした。
その時に私の感想としては、頭山翁に合うた時に、丁度インドの昔の仏教聖人に合うた時のような感じがした。白い髭を生やしてじっとして沈黙を守ってすわっておられる頭山翁の姿は、インドの古代の聖者を思いひ出させたのだ。その後日本政府から退去の命令を受け、危いところを領山翁に匿まわれ、後に自由になって今日に至っておる。
私が頭山翁を一番尊敬する点は、頭山翁の人類に対する愛情という事である。日本人であっても外国人であっても、何所の国の人でも悩み苦しんでいる人のために頭山翁は何時でも心配されておるのだ。翁の愛情は単なる人類界に限られておるというわけでなく、動物に対しても翁は同じ様を愛情を持っておるのだ。一度私はある米国人の友人を連れて行って、翁に紹介した事があった。その時に友人を翁に紹介して次の如き事をいうた事があった。
「先生、この人は人間が非常に好くって人にだまされてばかりいます』
翁はそれを聞いて静かに次のように言った。
「そうですか、それはだますよりだまされた方が好いです』
私がその事を英語で米国人の友人に通話すると、友人は涙を流しながら、「こういう言葉は私として始めて聞いたのだ、こういう場合に一般的な人は将来においてだまされない様にと云うべきものなのに、翁の
「だますよりだまされた方がよい」というた事を聞いて翁が精神的にどれ程、進んでおられるかという事を確信した」というのであった。
この一つの例によりても翁の人格がどれ程高いものかという事が証拠だてられておるのだ。郎ち、翁は精神万能主義の下に生活せられておるという事はこれによりて表されておる事だ。翁の言行が一致しておると云う事は翁の一つの特性である。
翁は何時でも犠牲心を充分に持っておる。自分の慾を犠牲にして個人のため社会、国家、全人類のためになる事なれば自己のすべてを捨てて犠牲になるという事が今日まで数多くあり、また、翁の一番の楽しみ得る事は、もらう事にあらず、与える事にある。即ち翁は自己を犠牲にし他を幸福にするという主義を持っておられるのだ。
人によっては、翁を浪人の親方、あるいは政治家である用に解する者もおるが、しかし翁はそれらよりも、ずつと優しくて全人類に対する愛情を持っておられる。故に寧ろ人類主義者と呼ぶ方が一番適当である。私は福島に講演に行った事がある。その時、福島のある友人は私に頭山翁は日本の大立者であるというた事があった。私はそれを反駁し、頭山翁は日本の大立者であるということは翁の人格を無視することに他ならない。
翁は日本の大立者でなく世界の大立者で、全人類界の大立であることを認めなければならない。翁は単なる日本の宝物でなく、世界の宝物であり、世界の巨人である。
<参考文献「頭山満翁写真伝」(藤本尚則著、昭和10年)>
関連記事
-
-
日本メルトダウン脱出法(874)『「伊勢志摩」が世界経済浮沈の鍵を握っている ー 先進国は財政出動に同調してくれるのか』●『東京五輪の「盛り下がりムード」は食い止められるのか?』●『過去最大の外債爆買いでも進まぬ円安、為替ヘッジが黒田日銀の妨げ』『大手企業志向が深く根付いている日本に「起業エコシステム」は根付くのか』
日本メルトダウン脱出法(874) 「伊勢志摩」が世界経済浮沈の鍵を …
-
-
速報(340)ビデオ座談会(120分)◎尖閣問題ー領土・歴史認識で<紛争、国家威信>対<貿易・経済利益>のバランスとる』
速報(340)『日本のメルトダウン』 ビデオ座談会( …
-
-
★人気リクエスト記事再録『百歳学入門(201)』<知的巨人たちの往生術から学ぶ③>『一怒一老 一笑一若 少肉多菜 少塩多酢 少糖多果 少食多岨(たそ) 少衣多浴 少車多歩 少煩多眠 少念多笑 少言多行 少欲多施』<渋沢秀雄(90歳)>
『知的巨人たちの往生術から学ぶ』③ 朝日の[天声人語]の名コラムニストの荒垣秀雄 …
-
-
速報(56)(お勧め記事)『原子力の死の灰の恐怖、その太鼓の音は専門家には響かない』(ニューヨーク・タイムズ・5月2日)
速報(56)『日本のメルトダウン』 ●(お勧め記事)『原子力の死の灰の恐怖、その …
-
-
『世界史を変えるウクライナ・ゼレンスキー大統領の平和スピーチ』★日本を救った金子堅太郎のルーズベルト米大統領、米国民への説得スピーチ」★
2017/06/23   …
-
-
記事再録/知的巨人たちの百歳学(116)/ 元祖ス-ローライフの達人・仙人画家の熊谷守一(97歳)のゆっくり、ゆっくり、ゆっくり
日本風狂人列伝(34) 元祖ス-ローライフの達人・仙人画家の熊谷守一(97歳)の …
-
-
日本メルトダウン(920)『南シナ海に迫る「キューバ危機」、試される安保法制 』●『出口が見えない中国との関係 、互いに非難し合うのは愚かな言動 柯 隆』●『仲裁裁判がまく南シナ海の火種』●『中国は戦前の日本と同じ過ちを犯し自滅に向かっている』●『南シナ海の洋上で中国製の原発計画が進行中 19年までに運転開始へ』
日本メルトダウン(920) 12日に南シナ海問題で国際裁定へ 南シナ海に迫る …
-
-
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 東アジア・メルトダウン(1070)>★『北朝鮮の暴発はあるのか?』★『人間は後ろ向きに未来に入って行く(ヴァレリーの言葉)』●『過去の歴史的な知見にたよりながら未来を想像し、後ろ向きに歩むので、未来予想は誤りやすい』★『それでも、北朝鮮の認識と行動のルーツを知ることは一歩前進ではあろう』
C 1894(明治27)年の日清戦争のそもそも原因は、朝鮮に起因する。 という …
-
-
日清戦争の遠因となった長崎事件(長崎清国水兵事件)ー2資料の『歴史秘話」を紹介
日清戦争の遠因となった長崎事件(長崎清国水兵事件)ー2資料紹介 ① …
-
-
日本リーダーパワー史(724)ー『歴代宰相の器比べ』元老・山県有朋はC級宰相①「日本陸軍のCEO」と同時に派閥を作って老害ボスで君臨、政治指導をそっちのけで、趣味の庭づくりに狂熱を傾け,『椿山荘」,「無隣庵」「古希庵」など生涯、9カ所の大別荘、大庭園を造った。①
日本リーダーパワー史(724) 山県有朋天保9年~大正11年 (1838~192 …
